雑記帖 - つれづれのことのは

No.41

筍といえば、義兄の持ち山に竹林があり、子供達が小さい頃は筍堀が春の恒例行事でした。竹の根って深くてがんじょうなんですね。傷つけないように回りを掘り起こし、最後にさくっと鍬を入れるときの快感はなかなかのもの!子供達も自分なりの大きさのものを見つけては、歓声あげて掘り出して喜びました。汗流した後に、さやかな風を感じながら竹林で食べたおにぎりの味は格別。そして、やはり堀立の筍の味も格別!

(2002-04-18)

No.42
米のとぎ汁

筍の季節になると精米器から出る米ヌカが下茹でに利用できるので便利です。日頃は堆肥の中に混ぜ込んでいるのですが、余分なものが役に立つと、ひときわ嬉しい。米のとぎ汁も、排水に流さず、毎日せっせと庭に捲いたり鉢物に順番に水やりに使っています。おかげで、十年程かけて少しづつ増やしてきた庭の苔も、柔らかい緑がじわじわと広がってきました。沢山のシンビジュームや君子蘭も東向きの玄関で花をいっぱいに付けて、咲き競り、朝目覚めて戸を開けると、むせ返るような香りが部屋いっぱい!知人のお宅では、米のとぎ汁でふき掃除。ワックスは塗っていないという廊下が、ぴっかぴっかで、びっくりしました。

天然100%の自然の物といえど、やはり抽出されたものを直接川に流してしまうと汚染源になるんでしょうね。米のとぎ汁も、器にいれておくと下に糠がたまるので、やはり汚染源となるのかなと理解しています。昔、読んだ東北地方の「またぎ」の人の語る話しですが、山の暮らしを大事にする人は、川でお米を研いだら、とぎ汁はしっかり土にしみ込ませて自然の浄化を計るという心遣いを忘れないのだと親方に躾られ、厳しく教えられたということでした。どうも、それ以来、単純な私は、排水にそのままざ~っと流すと罪を犯しているような気持ちがしてならないのです。

沢山の花鉢にとぎ汁をかけていたのは、母譲りの習慣ということもあります。「火鉢その1」でも書きましたが、母が丹精していたゼラニュウムは、母が亡くなって我が家にやってきたのですが、最初に植えられてからもうかれこれ25年近くになるでしょうか。油かすと鶏糞を年に一度与えるだけ、後は順番の回ったときに「とぎ汁」をかけてもらえるだけという待遇にもめげず、毎年花を一杯にさかせてくれ、道行く人達にも喜んで貰っています。

(2002-04-18)

No.43
三里四方

ゆくも帰るも浪速の夕凪ー田辺聖子さんのエッセイ「春野菜」にこんな一文がありました。「人はな、生まれた在所から三里以内にでけたもん食べてたら、体によろしねん」聖子さんの祖母の言葉です。聖子さんもこの頃、野菜大好き少女?となり、野菜の滋味に開眼しているという話しに、同好の仲間としては嬉しい限り。ふむふむと続けて読んだら、「これは老いたしるしであろう」(笑)しかし、97歳の母上は往復三里の道を下駄で歩いて女学校に通い、道ばたのつくしなんかを食べていたおかげで長生きとか。

(2002-04-24)

No.44
ダンゴムシ

鶏糞や牛糞・油かすを利用し野菜の土も混ぜ込んだ2坪半の小さな家庭菜園も、今年で4年目。これまで、これといった害虫の被害もなく、トマト・ナス・キウリ・ピーマン・南瓜等、夏野菜をたっぷり収穫してきました。

今年も深さ50センチ余りの土を掘り返し、野菜屑にぼかし肥を混ぜ込んだもの、自宅の火鉢の藁や炭灰・ストーブの木の灰・腐葉土に野菜の土を加えて土造り。4月の末に苗を植え込んだまではよかったのですが、キウリとカボチャの若葉がどんどん食べられるのに困っていました。

昨年辺りからダンゴムシやわらじ虫がふえたな~と思っていたら、今年はやたら目立つようになってきたのです。とにかく無農薬は居心地がいいようですが、こっちにだって新鮮野菜の収穫の楽しみという目的があるんだけんねと、なぜか椎名さん風につぶやきながら、ネットで対策を検索。ダンゴムシには、ジャガイモをおとりにして食べて頂くのが効果ありと知りました。さっそく、ジャガイモの切ったのを根元へ順に置いてやり、回り終えて最初の苗に目をやれば、もう食べてました、じゃがいもを。

ダンゴムシは手元の本でも「土づくりの名人」等と紹介されていて、かわいいやつだと思っていたのですが、たくさんいればいいというものではなさそうです。有機無農薬ってたいへんじゃ~っ。

(2002-05-07)

No.45
けんか山祭り

今日は、地元の街のお祭り。港町のお祭りはとんでもなく荒っぽく「えいやさ~えいやさ~っ」といいながら山車が街を練り歩き、向こうから来た山車と「かっちゃ」と称して、ぶつかり合うというなんとも血気盛んなお祭りです。

昔は、それこそ処かまわず喧嘩がはじまり、決まったように酔っぱらいが山車に巻き込まれて死んじゃうという激しさと荒々しさがあったのですが、いまや規制に従い、「かっちゃ」も予め決められた場所と時間で執り行われるという具合になりました。

高校生の頃は、夜中まで山車の後について喧嘩山見物を楽しみ、翌日は友人の家から学校へ出かけたものですが、最近では酒宴の後片付けにおおわらは。終わると座り込んでお茶してしまうというなさけなさ、つくづく歳を感じます。

ようやく、街も静けさを取り戻してきまたようです。今日は番狂わせで仕事が7時半まで終わらず、大慌てでご馳走を準備。こわめしのできがいまいちだったのですが、気の置けない友人ばかりで楽しいおしゃべりとお酒の宴でした。これにて、今日はおやすみなさいませ。

(2002-05-15)

No.46
包丁研ぎ

日頃、得意料理を語れる男性を秘かに尊敬しております。その上、欲張りな私は、自分の包丁を持ち、研げる人、そして後始末をきっちり出来る人であれば、なおいいと。まず基礎から始まる男の料理であらまほしい。職人の誇りを持つ大工さんの修行の「いろは」は、鑿や鉋の刃研ぎ3年とか…。

台所仕事は何もしなかった父ですが、包丁研ぎはまめにしていました。「よ~きれるようになったぞ~」と誇らしげな顔だったことを思い出します。小さい頃、父が入院することになって、そのことはもちろん心配だったのですが、それと同時に、「誰が包丁を研ぐのかしらん?」ということが何にもまして心配だったことを思い出します。父は、多分週に1度位は包丁研ぎをしていました。

包丁研ぎの様子はもっとしかっりみておくんだったな~と今になって思っても後の祭り。時々、研ぎやさんへ持っていってプロの手元をじ~っと観察しています。「かえり」を指先でそ~っとさぐり、「とくそ」が出るまで砥石を使えれば切れ味よくなること間違いなし。

ちなみに、若かかりし頃、いつも帰りの遅いトさんを待つ間、シャッシャッシャッと丁寧に包丁を研ぎ、キラリンと輝く包丁を眺めては心しずめるという秘かな趣味を持ち合わせていたのでした。ところが、最近では、後かたづけの際にシャシャと研いで後はバタンキュ~。お先に失礼と寝てしまう。「歳は体にとっても妙薬」ということにしておきますか。

食という字は「人に良い」と書く位です。手段と方法を具体的に知り、身につけることは人間に自信と誇りを持たせると思っています。動植物を育てる事、釣りや狩りや収穫の喜びに始まり買物すること料理すること始末することのどれもが人を良く育て心をわくわくさせること。こんな楽しいことを経験しないと損だと思っています。

(2002-05-17)

No.47
ダイエット考

中年を過ぎると、友人間で必ずといっていいくらい話題になるのが「この頃太った!」。ト・ぺこもご多聞にもれず。体に付いた体脂肪は内臓にとっても負担になるようですから、やはり余分なものは除きたい。自動車の普及していない国ネパールでは、太っている人は使用人を持つ人が圧倒的に多いと現地に暮らす人から聞きました。

秦の始皇帝は「燕痩環肥」と称して、燕のように細く軽やかな女性も豊満でたおやかな女性も共に美しいと褒め称えたそうです。それにしても最近の若い女性は細すぎて健康が心配。おっかさんは、「お産は大丈夫?」「骨は大丈夫?」と、ついおっせかいなことを考えてしまいます。「美白・痩身・不老不死」の薬には一番インチキが多いとか?

トさんは、先日の結婚式に15年以上前から着ているタキシード(イタリー製で特別高価だった)をなんとか着んとて努力し、凸さんは出し物(裸踊り)参加に向け、秘かに夜ごと腹筋運動にこれ努めたようです。オシャレ心は最大の痩せ薬?

(2002-05-19)

No.48
ドクダミ

今日の富山は爽やかを通り越しちょっと暑い一日でした。シーツも洗濯ものもスッキリ干せたし、お布団もぽかぽか♪ぽこちゃんは日陰を探しては、びよ~んと延びきってお昼寝。作物もみんな元気でぐんぐん大きくなっているし、雑草もよくのびる。苔庭の草取りしていたら、「ぷぅ~ん」と不吉な音がしてパチンッ。どういうわけか蚊に好かれる私は、これからの季節、ドクダミが欠かせません。庭や菜園の手入れの際、「あっ、やられた」と思うと、葉を少しちぎってもみもみし、汁をこすりつけておきます。手品のように跡もかゆみもなくなります。

小さい頃は、家々の裏庭や空き地にはドクダミがどこにでも一杯咲いていたのに、最近は目にしなくなりました。動物園長の中川氏のエッセーを読むと、春に野の草をお猿さんにどっさり与えるときまって奪い合いが始まるのだとか。お目当てはもちろんドクダミで、体中にこすりつけて毒消しにするそうです。ドクダミが十薬ともいわれる所以なんですね。賢いお猿さんの自然を知る知恵に脱帽!です。

(2002-06-01)

No.49
名画の影響

幼い頃接した映画や本の影響は大きい。洋画が大好きだった母の影響で、小さい頃から映画にお供し「旅情」「カサブランカ」「ローマの休日」にチャップリンシリーズを何度もみました。中でも、決まって登場するカフェで使われるワイングラスや、手さばきよく使われる銀のナイフやフォークには目を奪われ、いまでも憧れ続けています。ヴェネツィアの骨董屋で赤のリーデルのグラスに巡り会い「買おうねっ、買わんなんねっ!」と手に入れた小ぶりのアンティークグラスや、ブールージュで見つけた銀のポットセットは大切な宝物です。

(2002-06-08)

No.50
そうめん

これからの季節、喉ごしの良い素麺が美味しくなります。実家では、そうめんといえば、白海老の出汁でよく食べましたが、私は苦手でした。そうめんには椎茸出汁が一番すきです。みりんを1カップ煮きってアルコールをとばしたところへお醤油を1カップと出汁を2カップ入れ、ふわぁ~と沸騰させれたものを冷ませばできあがり。暑くなると、鰹出汁はアシがはやく悪くなりがちなので、作り置きはせいぜい3日までにしています。

そうめんのおかずといえば、小さい頃から、なすとピーマンの紫蘇味噌炒めでした。どじょうや鰻の蒲焼きも食べたな~。どじょうは実家の近くで焼いていたので、昼時には街中に芳ばしい匂いぷ~んと漂っていました。それに、真っ青に漬かった漬茄子。お豆腐はボールを持って買いにゆき、庭のミョウガを刻み、鰹節をたっぷり削って冷や奴で。塩ジャケの焼いたの、塩いかの焙ったの、鰯の糠漬け、にしんのみりん醤油焼き、いかの黒作りなんかも、いいなあ。

夏休みのお昼時、エビと椎茸とお醤油がないまざった甘いかおりが、ぷぅ~っと家中にしたもんです。そしておかずに焼きたてのドジョウの蒲焼きが良く登場したのですが、好き嫌いの激しい私はそうめんに茄子のおしんこだけで十分「おなかがいっぱい!」な子供でした。で、私はシロエビを入れない先に椎茸と昆布だけの出汁を作ってもらっていた手のかかる子供でもあったのでした。

(2002-06-12)