雑記帖 - つれづれのことのは

No.81

掲示板で灰つきワカメが話題になりましたが、考えてみると、灰って不思議ですね。「燃えかす」といえども疎かにはできないものがあります。春のワラビの灰汁(アク)抜きも、字の如く灰が一番。また、この寒い季節になると、我が家の居間では火鉢が活躍します。その火鉢に入っているほこほこの藁灰は、心も体も温めてくれます。焼き物をされる方はご存じかと思いますが、釉薬として使われる灰は、備前では松の灰、琥珀色を出すには樽灰、他にも栗灰、ミカン灰と、それぞれ独特の味をかもしだすのになくてはならないものだそうです。燃え尽きた後に、様々な役回りを果たしてくれるのだから、やはり灰はエライ。

ところで、子孫代々伝えたいと思っている灰にまつわる諺があります。「金持ちと灰吹き(煙草の吸いがらを入れる筒)は溜まるほど汚い」。というわけで、溜めないために、せっせと働き、せっせと遊び、せっせと使い、ムダなことに精をだしとります。はぃ。

(2002-11-22)

No.82
たそがれ清兵衛

昨日は、魔法瓶に珈琲を詰め、大好きな藤沢作品の映画化にわくわくしながら近くの映画館へ。武士社会の身分制度に怒り餓死する貧しさに涙しながら、自死する人が年間3万人を超える現代社会の矛盾を思い起し、呆けてなお家族に見守られるおばぁさんの存在に、コンクリートの巨大な箱に閉じこめられる現代の多くの老人達の境遇が思われます。

虫達にとってかっこうの住処となる茅葺きの家々から立ち上る煙、夜は暗いのが当たり前の行灯の明かり。季節の移ろいが暮らしに溶け込み、へっついを囲んで立ち働いた日常の様子に京都の平野茶屋が思い浮かぶ。学問することで知を力にする大切さ。そして嬉しく切ないことに、「時の人」と同じく出世を望まない「変わり者」の清兵衛さんなのですが、実は剣の達人!「~でがんす」の美しい庄内弁にもほっとします。

間近で講演を聴いた山田監督の優しい表情を思い、脇を支える芸達者で渋い役者さん達の演技にも、う~むっ。藤沢さんが愛した山形海坂藩を訪ねた昨年の東北への旅を振り返り、汗も涙も笑いもこぼれ、息づかいが聞こえる映画を、しみじみほのぼの心暖かくして観たことでした。

(2002-11-25)

No.83
遊び五分、仕事五分

の人生だったはずなのにな。この頃はなんか変です。11月からず~っと急がし過ぎの働き過ぎ…。「師走で、おっしょうさんが走るなら判るけど、いつもパシリの私が、更に走ることはない。」などとブツブツ。昨晩は、絹針の穴程ささいなことでトさんと言い争そい「あっ、そうっけ!」あっちむいてこっちむいてプイ!だったのですが、今朝からまたまた忙しくて細かな打ち合わせ「か~ちゃん、どうする?」「あ~して、こ~うして、おねが~~いっ。」

(2002-12-25)

No.84
一夜明ければ

雪国はいきなり本番突入。昨夜は稲妻が光り雷鳴が轟く雪嵐。今朝は喜ん勇んで庭に飛び出してみたポコねこさんも戸惑ってしまうほどの大雪です。明日からの仕事始めは、除雪仕事となりそうです。今日は、火鉢を囲んでお屠蘇の残りを酒を澗し盃を交わして正月気分のおさらい。今年、新しくおせちに登場した「吹き寄せ(牛蒡、人参、蓮根、百合根、油揚、干椎茸、銀杏)」「芋ぼう(真鱈と里芋)」「栗の甘煮」「鰤の幽庵」など手数がかかった分どれも好評で嬉しく、いつもの「数の子」「黒豆」もぷちぷち、ふっくらと食べ飽きません。美味しく食べ、飲み交わす平和と健康に感謝し改めて乾杯!

(2003-01-05)

No.85
七草・七種

富山では、七草粥というより七種粥で、雑穀に草はすずな・すすしろを混ぜたりします。今の季節、大根や蕪の葉、川っぷちの芹等は使いますが、地面はどっさり雪の下になっているので、「草」は手に入れ難いのです。今日は炊きたて御飯に細かく刻んだ芹をまぶして塩味だけの芹御飯。う~ん春の香り。

小さい頃から大好物だったのが数の子で、昔は、乾燥した数の子を戻して瓶一杯に作ってお正月を迎えてました。今夜も、こりこり・ぷちぷちの食感を愉しみながら食べました。無漂白の数の子を選んで、多少面倒でも家で塩出しし、丁寧に膜を除くと、ホントに美味しいのです。イクラもそうなのですが、下拵えする手がぷよぷよ・ふにゃふにゃになっても、やっぱり止められません。

今年は、母が必ず作っていた棒鱈が懐かしくて挑戦。かなづちで叩ける程に固く乾燥した上等の真鱈を七尾の「しら井」さんで購入。3日間かけて水戻し、アクを取りながら茹でたものを、じっくり3時間かけて煮込みました。母の味にはまだまだかないいませんが、一緒に炊き合わせた里芋もつやつやに炊けました。こちらは柚子の千切りをたっぷりかけて頂きます。

(2003-01-09)

No.86
いよいよ改造はじまります

事の発端は、お正月に帰省した凸さん夫婦のお嫁様が冷たいお風呂からぶるぶる震えながらあがってきて、風邪を召されてしまったことにあります。23年使ったボイラーのサーモスタットは10年前から壊れており手動になっています。逆境には強い?方なので、入浴中にボイラーのスイッチが切れ、冷たい水になると「誰か~」と叫ぶか、不幸にして誰も近くに居ない場合は震えながら上がってきてスイッチオンし、再び入浴するのですが、まさかお客様にそんなことはさせられない。それで、ボイラーの釜当番をつけたのですが、その方がテレビに気を取られ、湯が水になっているのに気が付かなかったのです。

その上、その事件のしばらく後に、お風呂のパイプが完全にパンク状態となり半端な水漏れではなくなってしまい、築25年の台所の給水パイプも老朽化で腐食と相成り、どうにもこうにもいかなくなってきたと言うわけです。大分前からささくれていた床もはぐれて惨めな様子となり、あまりな貧乏物語になんとかせんならんと、台所周辺の水回りの修繕と居間の床と壁の貼り替えに着手することになりました。

実は、10年以上使ったクーラーも2年前から言うことをきかない単なる送風機と化し、今冬にはクリーンヒーターも壊れ、全館季節外冷暖房完備で、吐く息白い家と化しています。クーラーなしでも暑さは結構平気で、かえって自然の「あいの風」のありがたみに深く感謝の日々で2年間の耐暑生活もなんなく乗りきって自信満々。できるだけ電気と石油に極力頼らない生活をと、クーラーもクリーンヒーターもこの度お払い箱にすることにしました。暖房は薪ストーブと火鉢、夏は海からの風を取り込む窓を設置して暮らしてみるつもりです。しかしクーラーなしはともかく、半端じゃない寒さの方は…。ここのところは、洟垂らして耐えてみてますが。

昨日は、居間の引っ越し大作戦。今回の計画では、木は無垢材を用い、壁は漆喰塗り。昔ながらの伝統的な日本の木と壁と紙のシンプルな暮らしをめざします。しかし、座敷に引っ越しさせた大量の本やごちゃごちゃしたもんはどこへやりゃいいんだ?

(2003-01-19)

No.87
真鱈

腹身の片身は昆布締めにしてからお造りにし、薄味に味つけした真子をまぶす「こつけ」にします。もう片身は昆布出汁で醤油味の煮物に。真子の場合は煮つけに。白子の場合は酢物、揚げ物、昆布焼き、粕汁とバラエティ豊かです。白子は、さぁ~っと火を通して頂きます。煮すぎると溶けちゃうので鍋に入れるときは、自分で入れて自分でころあいを測って待ちかまえてます。頭と薄腹は粕汁にしてぼつぼつ切った白葱をたっぷり散らします。というのが、鱈1匹の食べ方です。でも、最近、地の真鱈がとんと捕れないそうです。残念。

(2003-01-28)

No.88
年々歳々 満願成就

義姉夫婦と義妹と一緒に野沢温泉スキー場に行ってきました。「私達、こんなに上達したのよ!」とトさん、O子さん、私の3人で誉め合って、それぞれに天狗状態で無我の境地。双子ロッタと呼ばれる程気の合う義妹とおしゃべりが止まらない2泊2日。温泉入りながら、リフト乗りながら、笑い転げてました。おこたに入って食べた妹持参の埼玉銘菓が、その名も「年々歳々 満願成就」。

いつもどんな処でいったい何しているのやらと、ゴンドラに乗って頂上まで見物にやってきた義姉夫婦も、今日はちょうど青空の広がってきた山々の景色やダイヤモンドダストにびっくり大喜び!ちょうど姉の誕生日とあって、とてもラッキーな記念写真となりました。

生まれて始めてスキーを履いた義兄も、1時間後にはリフトに乗ってボーゲンで初滑り、30分かけて柄沢第一ゲレンデを滑り降りてきました。朝刊野球の銘ピッチャーとして現役で活躍中の義兄は、教える方もびっくりの上達。おんとし60才なのです。

(2003-02-02)

No.89
大いなる豆

三度の食事に御飯を食べる我家では、お味噌汁がつきもので、手作り味噌が欠かせません。大豆は成人病や更年期障害予防にもいいそうなので、未だに更年期の症状にあまり悩まされないのは、ひとつには「大いなる豆」のおかげかも。「寒作り」といえばお酒とお味噌とお餅が代表的。昔は、寒の餅を作りましたので、菅で編まれた「かんもち」が階段横の竿に行儀良く並んでたことを懐かしく思い出します。日本の食文化の原点はお米と大豆という気がしているのですが、今や、月に一度も御飯を食せぬ若者が生きて暮らしている日本ですからな~。やんぬるかな…。

(2003-02-08)

No.90
セールスマンの死

アーサーミラー原作「セールスマンの死」を仲代達也さんの舞台で観ました。郊外に家を建てた筈がいつの間にか街並みとなり、猫の額の庭は日当たりが悪くなり、雨漏りを修理したと思うと、冷蔵庫も中古で買った自動車も調子が悪くなり…、勤続30数年の会社を首になってしまう。家のローンを払い終えたところで死を迎えるという余りに現実的で厳しい課題に会場はし~んとなって、課題を突きつけられ、足取りのおもい帰路でした。

滝沢修氏演ずるセールスマンを観た30年前には、我家には、自動車もカードの1枚もなく小さな冷蔵庫がやっと一台。ところがいまや…。石油文明にどっぷり浸った暮らし、安全と保障を保険や株式投機で買う仕組みの裏に、家庭や人間関係の崩壊が潜んでいる。ミラー氏が原作を書いたのは1947年。55年も前のお話とは思えず、まさに今日の日本の抱える課題そのもの。

死を迎える前、自らの手で庭に人参やレタスの種をまくシーンがとても印象的でした。

(2003-02-09)