雑記帖 - つれづれのことのは

No.211

夏と言えば蚊。どうした訳か私は小さい頃から、誰よりも蚊に好かれます。まぁ、好かれないよりはいいかもしれないのですが…。不思議なことに、しこたまお酒を飲んでアルコールの匂いぷんぷんさせているトさんよりも先に喰われてしまうのです。とってもヘン。

たとえ「買ってはいけない」製品であろうとも、蚊取りグッズだけは誰がなんといおうが必需品。環境に悪いかも知れないが許してくだはれ~。だって、昨夜は除虫菊から作られた本物志向の蚊取り線香を炊いていたのに3カ所も刺されたあげくに、風下にいたので燻されてむせかえったのです。眠いし痒いし、むにゃむにゃ言いながら「キンカン」つけとったら、ぽこにゃんが横にやってきてぼりぼり顎を掻き出した。きゃ~、やめてぇ~。

(2005-06-27)

No.212
重箱の隅

時々、どういうわけかむやみに整理整頓・掃除をしたくなります。どこかというと、棚の中、引き出しの中。まず、お箸や箸置き、取り箸、スプーンと食事の度に使う引き出しを全部空にし、区分け箱を重曹でぴかぴかに磨き上げたのが十日前。

さて、お次はと狙いを定めて下駄箱にとりかかりました。これがなかなかクセもので、食器棚の中の物と違い、食洗機で一気に洗い上げる訳にはいきません。日に2足を目標にしたのですが、この処殺人的に仕事が忙しく日に1足が精一杯。革靴といえどもざぁっと水で汚れを洗い流すという方法がいいのだと本で読んで、実行しています。よく陰干して後は丁寧にミンク油を塗り込みます。これで6足まで仕上げ、只今4足陰干し中。

そうこうしながら、トさんのタンスと洋服ダンスを1本づつ片付けながら中を掃除し整理整頓。半分までなんとか終えましたが、おしゃれなトさんのタンスはまだ2本あるのです。

そのうち、事務用品やメモ類、薬などをいれている机の引き出しも気になりだしました。中の物を取り出すと、まるで落語の「道具屋」さんみたいに、足の折れたマグネットマスコットやバネのあまくなってしまったペン、使えない電子手帳等も出てきておもしろい。現在、居間には文房具類が店開きされたまま。

あれこれ重箱の隅をつつきだすと面白くて止まらなくなるのです。朝目覚めると、そのまま掃除を初めてしまうくらいに面白い♪お肌が曲がり角になろうが、目尻の皺が深くなろうが、自分には見えないのでいっこう気にならず、マッサージやパックと手入れに夢中になることはまずない(なまくらなだけ)のですが、家中のあちこちの汚れを落として小綺麗にし、ぴかっとひかるのをみると、なんとも心持ちがすっきりし、なんか心身共に張りがましたようで気分爽快、笑顔ですっきり。

安あがりと言えばそうだし、結構いやがやれる性格の姑だともいえなくはないので、この楽しみは一人で悦にいるに限ります。

(2005-07-06)

No.213
せんたくめ

この三日間は、ひたすらせんたく女。金曜日に旅の荷物が届いたので、海、滝、市場に夜の街にと汗かいて遊び歩いた旅の後始末。土曜・日曜もあいにく?の洗濯日和。ぼたぼた汗流しながら、朝から家中のカーテンを洗っています。年に1度の暮らしの行事。

なにも、この暑さに、ぼたぼた汗して働かなくともと思われるでしょうが、聞いてください。あまりの重労働に耐えかね、一度試みに1階部分の居間のカーテン一式をクリーニング屋さんにお願いしたことがあります。「ふひゃ~」2万円也の請求書をみて、どっと冷や汗が流れました。家中のカーテンをお願いすれば5万円はくだらない。家計を預かる主婦として、これはなんとしても、自力でやらねば。

昔、木綿のシーツ類をすべて手洗いしていた母の手順に習います。脱水を途中にして洗濯物を思い切りよくぱんぱんと縦横に延ばしてやるのです。脱水機に頼ってしまわないところがミソ。更にふくよかな体をのっけてノシをし、まるでアイロンかけたみたいにピ~ンとさせていたのが母のやり方でしたが、ここは私流で、もう一度縦横に延ばして素早く干してしまいます。

1年間の埃がたまったカーテンレールの周りも、しっかり丁寧に拭き掃除。「あちっちっ」といいながら熱湯に浸した使い古しの雑巾が、真っ黒になってゆくのに快感を覚えながら(掃除好きな人には共感して貰えるかな?)、拭きあげていきます。手縫いの古雑巾にはここで成仏して頂いて「ごくろうさ~ん」とお礼を言いながら使い捨てにします。母は捨てるときにも綺麗に洗って捨てる人でしたので、これは私流。

クーラーのない古家で、地球に優しい快適な暮らしを続けるための必需品は、簾に立て簾に風にそよぐ涼しげな風合いの暖簾、日除けに役立ってくれる木綿入りのカーテン、そして和紙の団扇に籐に寝ござ。そして、もうひとつ、かかないのが沖縄民謡。清涼?アイテムをずらり勢揃いさせるんさ~。

(2005-07-24)

No.214
四谷怪談

さて、今夜のお楽しみは、人間国宝 一龍斎貞水の怪談噺「四谷怪談」でした。小さい頃、夏休みになれば、四谷怪談や番町皿屋敷が怪談話の定番。講談や浪花節が大好きだったじぃちゃんとラジオに耳傾けて真剣になって聴いていたことを思い出します。あのころから、こわぁ~い話は苦手なのですが、怖い物見たさ聴きたさ。幽霊が客席を歩いてくれたりしてサービス精神もたっぷりの面白い舞台作りでした。

幽霊はたいがい女性と決まっているのですが、怨念を胸にした人が死んだからといって全て幽霊になれるわけではないそうです。一応条件が必要で、幽霊は元美女。そうでない普通のお方は「お化け」に、そして、不幸にしてそれにも該当しなかったお方は、妖怪変化となって怪しくどろどろ登場するのだそうです。どろどろ~。

(2005-07-31)

No.215
狂言と能

名水の黒部まで、年に一度の狂言の会へ出掛けました。今回は10周年記念で能と饗宴という取り合わせ。いつもながら、かろやかな所作に大きな振りの狂言は、実に明快で判りよく愉快に笑えます。萬斎さんはまるで狂言師になるべくして生まれてきた人みたい。どこかいたずら小僧のようでいて表情がコケティッシュ。正しく太郎冠者に相応しい。みるからに豆腐みたいにふにゃふにゃな面白みを秘めている叔父さんも味わいがあって是非にもいて欲しい存在。なにか失敗毎があてっも「どうしたかいのぉ。これ、これ。しょもない、しょもない。」と、その場を治めてくれそうなじぃちゃんばぁちゃんの如き、かかせない存在感があります。

小さい頃観て以来、久しぶりの「能」は、動きの美しさに改めて目を見張りました。笛や鼓、太鼓の音に合わせる謡の音の心地よさは、日本の音の美しさだと感じ入ります。日頃、あまりに雑多な機械的な音の洪水の中にいると、音に対し、だんだんと心を閉ざしつつある日常生活って、やっぱりどこかへんです。

(2005-08-07)

No.216
真夜中の饗宴

昨夜は熱帯夜だった上に、更に熱くなっていたニャンコが一匹…。
「じ、じ、じ、じぃ~、じぃじいい~」
庭の蝉がやけに騒いでいると思ったら、ぽこにゃんが深夜のセミ狩りをして暗躍していました。得意げに捕らえた蝉を足下にして庭の真ん中で、ハイ・ポーズ。

興奮冷めやらぬまま、座敷と仏間を掛け走り、飛びつき、そうかと思うと脱兎の如く走り抜け、と今度はヤモリ狩りに大興奮。
「ぽこにゃん、すごい。わかったから、お願いだから、もう寝て」と、眠い目こすりながらなんとか落ち着かせようとすれども全く聞く耳もたず。興奮は納まらない。1時間あまりも疲れを知らず跳び走っていました。動物の狩りの本能にはなすすべなしでした。まいった、まいった。
これもまた夏の恒例行事なのです。

(2005-08-10)

No.217
リンダ リンダ リンダ

映画「リンダ リンダ リンダ」を観ました。なんでもないごく普通の女子高校生達が、ちょっとしたきっかけで学芸祭にむけて俄ロックバンドを結成して練習する数日の様子を描いているのですが、なんでもないのになぜか心惹かれ、なんか胸がきゅんとくるような切なく甘い青春がそこにありました。たしか、昔、凸ちゃんが唄い踊り、鴨居に頭をぶつけていたことなども思い出し。しばらく「リンダ リンダ リンダ」が頭の中にこだましそう♪

(2005-08-14)

No.218
当たり!

「あなたがあたりました」。日頃縁のない銀行から嬉しいお知らせが届きました。事務所に来てくれる銀行の外務員さんのノルマ達成に協力しただけの懸賞付き預金がまぐれ当たり!「宵越しのカネはいらねぇ。みんなにおごるぜ」と威勢はいいものの、なんのことはない三千円ぽっきり。

おわら風の盆最終日は、よっぴいて桟敷席でお大尽遊びを楽しみ、翌日は寝不足。読書は諦め、うりこ先生のお買い物に相伴することにしました。山の中腹のギャラリィでお気に入りの品を手に入れ、山の野菜もどっさり買い込み、ほくほく。日の落ちないうちにと山を下り、知人の焼物展示会へ顔を出してから、自宅に帰り着いたころには、もう真っ暗。台風の前触れかどしゃぶりの雨でミラーが見えない上に、お隣の作業車がライトを点けたまま駐車していて乱視の目に眩しい。切り返しを省略して車庫入れしてしまったところ、今度は車が当たり!

当面、ふぐは避けたがよいかも。

(2005-09-09)

No.219
読書の秋

梢をゆらす風も爽やかで秋の気配が漂ってくると、好きな読書がしたくなります。先日、明るく快活な京都の子供達と夏の休日を一緒に楽しみました。実は、楽しませて貰ったのはこちらの方だったというのに、お礼にと本が三冊も届きました。父上の篠原貴之さんが装丁を担当された乙川優三郎さんの時代小説です。

さっそく一気に読みました。「生きる」は、主君の死に際し、現代では考えられない「追腹」を禁じられた異常な状況設定で始まっています。いつの時代も、翻弄され惑い悩みながら生きる人々への、作者からの応援歌のようで、現代の閉塞的な事件の加害者と被害者の立場にも思いを寄せながら読みました。大好きな藤沢周平さんとは、またひと味違う面白さで、読みやすく心にしみる筆の運びに、ぐんぐんひきこまれました。

正直でかさこ地蔵のような暮らしをしていた両親に育てられ、貧乏をさげすむ事がないのを喜んでいます。しかし一方、気持ちのどこかで、命を切り売りするような苦界に身を落としてしまう人達を、正視しえないでいました。歳を重ね、仕事で様々な人と出会い、「落ちざるをえなかった」悲しさや弱さや厳しさに心を寄せられようになってきました。

どんな人でも必ず持っている楽しい幸せの情景の記憶が、必ずや希望の力になって、人を生かし続けるのだという作者のメッセージは、読んでいる物の心をぬくめて幸せにしてくれます。そして、貴之さんの墨絵が映えてます。泪しながら、しみじみハッピーエンドはいいな♪

(2005-09-09)

No.220
天下の一大事

最後の晩餐にはもちろん、毎朝の食卓になくてはならないのが「梅干し」。おしかばぁさんのように虎の子を潜めている瓶ではないけれど、床下から「よっこらしょっ」と取り出し、蓋を開けるときのときめきが、何物にもかえがたい。九州への旅の際、鹿児島の龍門寺焼きの窯元で求めたお気に入りの蓋物に小分けして、食卓にのせます。

ところが、先日、「さてっ」と蓋をとって「あっちゃ~」となってしまいました。昨年漬け込んだ梅干しの表面に、ほん少しばかりだがカビがきているでなないか!これは、天下の一大事。保存している梅干しにカビがくる筈がなかったのに。早速、焼酎でしっかり手入れをすませました。3日で半年分の雨がふったり、雷が倍増したり、この頃の世にきっとお天道様が怒ってござるに違いない。

先月、きれいに掃除して電気を切った小型の方の冷凍冷蔵庫も愛着があって捨てきれずにいたのですが、とうとう廃棄することに心をきめました。暮らしをスリムにしよう、しなくっちゃ!長い間故障もなく活躍してくれて、ありがとさん。

(2005-09-15)