雑記帖 - yo:ku:nel

No.51
神亀

熟成旨み派に圧倒的人気を誇る酒。「松翁」の常備酒。 埼玉県蓮田市と言えば、おー、トの従兄弟がいる町ではないか。これまで、彼から神亀を貰ったことも聞いたこともなかったなー。まず、ラベルの「神亀」のロゴが秀逸。亀は、象形文字。銀盤はこの辺がださいのが残念。製品が全部純米酒と言うのが凄い。

一口目、まず感じるのは、丁寧にしっかり造ったお酒であるという印象である。口に含んだときに感じるひね香が、ここの特徴でありかつ好みの別れるところ。同じタイプの酒である愛知常滑の「白老千寿」は、それがなくもっと素直である。浦霞と一緒に燗酒を飲む。両方とも旨いが、やはり同じ印象。神亀にはひね香を感じる。噂に高いここの純米大吟醸「ひこ孫」も飲んでみたいものだ。

最近は、吟醸酒よりも、熟成燗酒こそが日本酒であるという流れがある。吟醸酒は、食事に合わず、燗酒こそが「食中酒」であると言う人もいる。しっかり作ったお酒の燗酒が旨いのは認めよう。吟醸酒特にアル添した大吟醸が、料理と喧嘩する事があることも認めよう。しかし、料理となんら喧嘩することなく、むしろ料理との相乗効果でお互いが美味しくなる純米を使った品の良い吟醸酒がある事は事実である。燗酒の旨さはどれもこれもよく似た味になるが、吟醸の方は多様である。この多様性が日本酒の魅力である。一般的に旨み酒は、太平洋側に多いように思う。

「椀盛り」と適温に冷やした極上純米吟醸と交互にぐびぐびやるのが、との極上の幸せ。両方の香りが五感を刺激し、美味しさが五臓六腑に染み渡る

(2005-10-08)

No.52
亀の王(久須美酒造)

夏子の酒の久須美酒造が、酒米として、亀の尾80%使って作った純米吟醸酒(生)。1升瓶が、約2800円。寿司貫で、〆張鶴「純」と比較しながら飲んだ。ここの流儀の、ビールグラスを漆塗りの枡に入れて、若女将なみちゃんが、文字通りグラスも枡もなみなみと注いでくれるのが、呑んべい心を限りなくくすぐる。もっとも、これがくせ者で、とも、じゅんちゃんも、グラスから飲もうとして、枡を傾けて、升酒をテーブルにも呑ませてしまったのだ。とは、日本酒は美肌のもとと顔や腕に塗りたくりました。

亀の王が、口当たりが滑らかなのには驚いた。「純」が荒く感じる。亀の王は、楚々としたなんともいえない上品な香り。菊の井特注酒にも匹敵するかも。この蔵は、とにかく水が良いようだ。一般酒は「清泉」と命名している。こんな酒は、いわゆる旨酒にはない香りや透明感がある。結局、両方が必要と言うことだと思う。

久須美酒造は、昨年豪雨と中越大地震のダブルパンチで、蔵が壊れ、保存していた酒の大半を失ったという。どん底から復帰してきた蔵人の努力は並大抵なことでは無かったと思う。「夏子の酒」頑張れと言いたい。

(2005-10-10)

No.53
酒は、どこで味わうか

「クロワッサン」の作家永沢光雄へのインタビュー記事を読んだ。彼は下喉頭ガンを患らったおかげで、声帯がなくなり、嗅覚もない。それでも朝から、酒を飲む。彼は嗅覚を無くして、酒は8割が香りだったことを思い知ったという。それでも飲み続けるのは脳への刺激と麻痺のためだろうか、それとも人間の業だろうか。8割が香りというのには驚いた。皆さんは、どうでしょう、舌でも喉でも味わうような気がするが。

本日、ペコさんと泡盛と焼酎を飲み比べると、ペコさんは焼酎の方が飲みやすいという。Wやすこさんは、同じ事をおっしゃる。表現が適切ではないかも知れないが、泡盛は、口に含んだときに油臭く感じる。そこがWやすこさんの関所になっているのだと思う。 と言うことは、やはり、香りが決めてか。とにとっては、この関所越えが、むしろ焼酎より泡盛がインパクトが強く感じるようになっている理由である。

さて、酒を飲まなくても酔っぱらう方法が或る。 それは、とっておきの「酒書」を飲むこと。おいおい推薦したいと思うが、本日の推薦書は「万国酒場見聞録」松島駿二郎著筑摩書房。いちばん強くて、いちばん安くて、その土地と一体になれる酒を求めて世界中を飲み歩いた筆者。各国の紹介コピーがまたいい。

イタリア「強い酒を、うらさびれた居酒屋で飲みたかった」
オーストリア「10人に5人は、翌日死んだ方がましだという気分になる」
ブラジル「内臓まで真っ赤に染まった放浪者の道ずれ酒」
ノルウェー「頭と体が切り離されてそれっきり」
中国「月と影を友にして独り酒を飲む」
サンフランシスコ「誰もが主人公で、人生の寸劇を演じるような酒場」
ハワイ「よい酒場には人生が無くてはならない」などなど
この筆者の酒を毎日飲み続けた20数年の決算報告書は、酒で失った物も、得た物も「少しばかりの記憶。いくつかの信用と約束。僅かな知識と知恵。友情」という。

車にたとえれば、食がガソリンとすれば、酒はエンジンオイルだが、その結末は上記の通りということ。上記の「少しばかり」「いくつか」「僅か」が、「沢山」になるかどうかは(失ったもの)、酒量次第であろう。

(2005-10-13)

No.54
九州蔵元紀行

ペコさんの体脂肪率24超は、焼酎濃度。トは、最近は16%台、これは、日本酒濃度だぜ。次に目指すは、ワイン濃度。最終的には、ビールまでと言うのは無理じゃなー。この辺は、高橋尚子や、野口みずきの世界だ。でも、男は+10なので、私の方が少ないというのが、ペコ様のいいぶん、ハイハイ、へいへい。

さて、本日の酒書は、「山里の酒」 副題九州蔵元紀行 前山光則著葦書房。・・・・・土地の風物にふれ、地酒に出会い、ほろほろと酔ってしまう旅、主として九州の山間部にある焼酎・日本酒の酒造元をめぐった紀行記。これが、また楽しいんだ。地酒は外を歩いちゃいかんと言い言葉が出てくるが、地酒こそ飲みたい、「薩摩すんくじら」という名前を聞いただけで、無性に飲みたくなる。

本日は、残り酒に公平にご挨拶した。

(2005-10-14)

No.55
更科藤井

さて、本日は、久しぶりに金沢のお蕎麦やさん「更科藤井」。ここには、最近東京の「一」さんが出没したらしい。ご紹介ありがとーございますとマスターに感謝された。

あいにく満員で、入店は約一時間後、久しぶりに賑やかな片町界隈を散歩すると、石川の地酒ショットバーが出来ている。店の前におかれた看板をのぞき込むと純米大吟醸、純米吟醸など純米酒を各種そろえている、それもそのはず、かって高岡で酒の会をした谷本亙さん(「日本酒の楽しみ」文春文庫)がコーディネートしている?お店にすいこまれそうになった時「トさん、こんなとこで何してるんですか」と声がかかった。世間は狭い。

更科藤井でのお酒は、能登の優良蔵「宗玄」特別純米。昔から、甘い酒というイメージであったが、非常に軽くて飲みやすい酒になっている。香りがやや寸足らずではあるが。それと、蕎麦焼酎のそば湯割りがまたヨカッタ。蕎麦焼酎は、きりっとして飲みやすい。

(2005-10-15)

No.56
黄麹仕込み芋焼酎「伝」

本日は、ほんとに久しぶりに、日本の古き○き宴会で、煙草の薫製になって帰還した。そこで、飲み直しは、「伝」鹿児島県日置市濱田酒造製。黄麹菌を用いているところが、目新しい、と思いきや、そもそも焼酎の原点は、黄麹だったそうだ。ところが、沖縄から黒麹が鹿児島に入り、黄麹に変わり主流となり、そのうち黒麹の突然変異として白麹がうまれ、白麹の方が酵素活性力が強かったので、白が用いられるようになったようだ。最近、芋焼酎ブームで、黄麹や黒麹に回帰する作り手も出てきたようだ。

さて、本日は、白と黄と比べてみた。白は、練れてとろっとしているが、黄は素朴で生一本の印象。素っ気ないくらい。日本酒で言えば、辛口である。にわか勉強によると、麹菌は「子嚢菌糸系不完全菌類コウジカビ属」の菌類の総称で、185種有るそうだ。カビと言えば思い浮かぶのは鏡餅の青カビとか、ゴミに繁殖しているのとか。有害な物もアルらしいが、カビのために人類の食事やお酒が、どれだけ豊かに成っていることだろう、ありがとさまな。

(2005-10-19)

No.57
8月のクリスマス

本日は、ぺこさんと映画鑑賞。高岡を舞台にした「8月のクリスマス」。いっそのこと、映画館で寝ようと思って、映画前に軽く1500m泳いででかけた。しかし、さすがに見慣れた風景が、次々に出てくると、おちおち寝ておれない。高岡銅器の金屋町の写真館が、ヒーロー山崎きよしのお店。ヒロインが臨時教師を勤める小学校は、ペコさんの母校博労小学校が舞台。皆さんも、暇があったら、みてくだはれ。今の高岡が出てくっがいちゃ。冒頭の火葬場シーンになんと、うりこコーチが山崎きよしの横に並んで、合掌しておられました。

さて、映画の後は、「あぐら」で、キノコずくし。 実は、きのこづくしの名店は、粟巣野にアルらしい。約20種類のキノコを出してくれるという。昨年行った、馬場島途中の「早月荘」もよかったが、種類は圧倒的とか。キノコと、きときとの氷見のふくらぎとメジマグロのお酒は「天狗の舞山廃純米吟醸」山田錦100%だけあって、山田錦特有の酸味を感じる。それと金沢のお酒はやはり甘い。山廃はなぜか、ヨーグルトぽく感じる。しかし、しっかり作ってある。石川県では、菊姫と双璧と言われているお酒で、美味しんぼにしばしば登場した。

(2005-10-21)

No.58
ヴォルネー プリミエ クリュ

金沢にて、全盲のピアニスト梯剛さんのシューベルト。ピュアーというか、クリスタルな音がホール最上階の我々のいる天井桟敷席にも到達する。このクリスタルサウンドは、美しいけれど、影のあるシューベルトには、どうかなという気もするが、これが、梯さんのシューベルトだ。

フレンチ&イタリアンの「恵是留」でのワインは、梯さんに負けないピュアーな、ブルゴーニヴォルネー1999。時間がたつにつれ、さすが、一級酒の実力を発揮する。うりこさんの日本海マスターズ水泳必勝祈願パーティに相応しく、多彩な料理が次々に並べられ、益弘禁じ手のチェンジプレートはお手の物。「あっちゃー これも うっまいからたべてみられ」とテーブル上に皿が行き交い、一人何種類食べたか判らない。食べたものが喉まできたあと、食べ放題デザートの出番。これも「全種類、二皿っ!」「そんなでかいと、食べらるっけ」という心配は無用だった。真っ白な皿しか残らなかった。

(2005-10-22)

No.59
越乃寒梅金無垢純米吟醸

かっての幻の銘酒、その昔は火事見舞いの酒。ところが、日本中の酒蔵が、戦時中の3増酒のアル添、糖類添加酒を戦後も作っているときに、まじめに辛口酒を作り続けた。そこで、新潟に幻の酒があると言う噂が広まり、富山でも、越乃寒梅本醸造が、プレミアムがついて一升瓶1万円で売られていたこともあった。これだけ、値が付いたのは、他のお酒があまりにもひどすぎたせいだと思うけど、教養人石本社長の頑固さが幸いしたのかな。

お酒は杜氏さんが作るけど、味を決めるのは、そこの社長さんだと思う。社長さんが、何を美味しいと感じるか、どんな人生観を持っているかが、その蔵の味を決める。さて、金無垢は、山田錦精米歩合45%のお酒。淡麗辛口ではなく、かといって、甘口芳醇でもない、中間のお酒というイメージだった。かって、越乃寒梅全シリーズを飲んだことがあったけど、その時とは、印象が違った

(2005-10-26)

No.60
ふらっと、アッカ

昨年秋に一回行っただけで虜に成ってしまった。味が透明感溢れ、独創性抜群。イタリアらしい明るいトラットリアという雰囲気ではないけれど、懐石風イタリアン。アッカのマスターは、林冬青さん、父の友人土門拳の命名という。

ポルチーニは、香り高きスープに、鱧寄せて。ポルチーニの香りがむんむんでした。パスタは、ウニのパスタに、蝦夷鮑のスパゲッテイ。メインは、赤陸奥のキャビア添えに、ホロホロ鳥。合間にレモンと牛乳のグランケ、フォアグラと蜂蜜のシャーベット、ペコリーニという絶品のチーズもあった。

赤ワインは、ドルチェット・ダルバ2003。軽いのを頼んだのにこってり。ここのワインは、管理がいい。料理の出方が遅いと一部に不評が有ったが、随分早くなってきた。

(2005-10-28)