雑記帖 - 旅日記

No.17
2007秋〜金豚の旅 その4

007でお馴染み(知らなかったのですが)ハロン湾クルーズに出かけたのは、ちょうど日曜日。「みんなハロン湾にむかってんの?」というほど道行く人がやたら多い。通訳さんの説明では「仕事の休みに郊外の実家へ里帰りという働く人達が多いのですよ」とのこと。行けども行けどもバイクの一団が観光バスに伴走してくれているのか、いやバイクに伴走している中継車の如きバスと表現する方が正しいのか、とにかく疾走するバイクの行列は絶える事なく、バイクは走るぅ〜よぉ〜どぉ〜こまぁ〜でぇも〜♪

道端にフランスパンだけを売っている物売りの人がやたらめだつ。「?」と思って又通訳さんに尋ねると、「都会で働く人達の故郷へのお土産」とのこと。街道沿いの建物はコロニアル風の建物が圧倒的に多くフランス統治の影響が忍ばれたのでした。どこまでも続く田園風景は、人口の7割が農業従事者なのですから当然といえるのですが、半世紀前程の日本の田園風景そのまま。馬や山羊は見かけなかったのですが、牛と人が力を合わせて耕し、鶏があちこちで餌をついばみ家族総出で田に働く様子はとても懐かしい風景でした。

ハノイからハロン湾まで3時間の走行距離。途中お決まりなのがトイレ休憩の茶屋。ここの主力商品は、刺繍画。実は、昨夜の内に刺繍画店をいくつか下見しておいたのです。これはというものは、確かに絵も素晴らしく刺繍の美しさにうっとりするものでした。ひととおり店内をみまわしたぺこの目に、例のごとく危険な光が宿りました。吸い寄せられるようにすっかり魅せられてしまったのは「ばぁばと猫」。齢80はとっくに過ぎた思え、毅然としてかつ優しい眼差しには人への愛が感じられ、抱かれている猫の鼓動が伝わってくるようで表情がまたいいのです。とても刺繍とは思えない表現力で細部が描かれている。

「これだ、旅の記念は、これしかない!」同行の旅人全員にみるように強要し、「これは素晴らしい!」と高い評価をせまり、我が身の鑑識眼に満足し値段の交渉に入ったのですが、「う〜ん、つぅ〜えくすぺんしぃぶ!!」後ろ髪引かれながらも、「帰りがあるもんな」とバスにのりこんだのでした。

「南の桂林」と表され観光の名所でもあるハロン湾は、薄墨で描けばちょうどこの風景を判って貰えそうな、もやいだ柔らかい曲線の島々のシルエットが美しく、時々驚くべき高所に家があったりしてノルウェーのフィヨルドを思い出したのですが、船内では採れたての魚料理を肴にビールとワインがどんどんすすむのでした。

途中、島に上陸しこれも鍾乳洞といえばおきまりの観音様や竜を思わせる面白い姿を楽しんだりしながらも、「暑い点は沖縄と共通するさぁ〜。この辺りに泡盛を秘蔵しておきゃ如何なもんじゃろかいね。」と、のんべぇの発想は世界中どこまでも明るく発展的?なのです。

船に帰り着き出発の時間になったのですが、同船の乗客(老人夫婦とガイドさん)が待てど暮らせど還ってこない。回りの船はどんどん返って行ってしまったというのに一向に姿は見えず・・・。やがて、脚をひきずり、どっこいしょと無事にご帰還となり、一同、ほっ。

しかし、おかげで夕陽の沈むゆく素晴らしい景観を船の中からも観ることができました。トさんは、シャッターチャンスとばかりに指がなり、「トさん、小津安さん風にこの目線からやよ」と注文の多いぺこから檄が飛ぶ。

最終日、朝のバイキングはさすがにゆっくり目の待ち合わせとなったものの、もうすっかりお馴染みになった作りたて香菜たっぷりのフォー、野菜オムレツ、馬鈴薯・空心菜・ベーコン・白豆・小松菜とベトナムの美味しい食べ物でお皿は色とりどりにてんこ盛り!連日の大歓迎会・大宴会の疲れもみせず、こんなに食べて大丈夫なのかという程に、最後まで食欲は一向に衰えなかったご一行様でしたとさ。

文 ト・ぺこ 編 ぽこ