雑記帖 - 旅日記

No.19
2008夏〜沖縄と大文字と その3

ところで、出発当日のこと、関空に向かう途中に凸さんからメールが。「(沖縄から戻る)16日って京都でご飯食べていかはるんですよね?その日は二十時から大文字ですけど?」「あっちゃまぁ〜、とさん、帰ってきたら大文字やと!こりゃみんなんがいね♪ そういやぁ、去年はポヨポヨさんちに若い人達が集まって見物したがやった」

勿論、二人の意見は一致。どんな時にも遊ぶ事に関してだけは、いつも即座にウムを言わせず挙党体勢がしかれ、お尻に帆がかかるんです。急遽、予定を変更する事に!ために、汽車がホームに滑り込んで間もなく、ANAさんに直行する筈だったじぃとばぁは緑の窓口のカウンターから身を乗り出していたのであります。

「お客さん、何時に変更いたしましょう?」「こうなったら、日曜日は午前中に花ノ坊のお掃除・洗濯に精出し、お昼は「かねい」さんの蕎麦、午後は美味しいデザート持参でテンテンちゃんのお祝いだね!」訪問先の予定も確かめず、計画だけがどんどん決まってしまう危ないじぃとばぁなのでした。「変更は一回だけですよ」浮かれている二人を知ってか?窓口の人の対応は、眼鏡越しにややきっぱりとしたものだったのでした。

ということで沖縄からの飛行機が伊丹に降り立つと、予約しておいたジャンボタクシーが荷物も人もひとまとめに玄関先まで送り届けてくれる。小さい赤ちゃん同行の身には大助かり。いつものことながら旅から戻ると一番に取りかかるのが洗濯。殊に「暑いときには、熱い処へ」と出かけた旅のお土産は、どっさりひとかかえの洗濯物なんさぁ〜。大きなトランクを開け、とにかく洗濯機を始動。

しかし、お腹も空いている。これまた帰路の車内で予約した町家の洋食やさんへ急がねばならない。さっとシャワーで旅の汗を流し、さっぱり着替えを済まして上七軒のお店まで、団扇片手に散歩しながらみんなで出かけたのでした。

たま母さんによると「じゅわ〜と肉汁が口中に広がるおいしいおいしいハンバーグ」を食べさせて貰える、街の小さな洋食屋さんへ。「こんな小さい籠に入って来てはったのに、みるみる大きくなりはるなぁ〜」と、たまさんもしっかり一人前にお客さん待遇で歓迎して貰っている。お馴染みさんのたまちゃには、子供用椅子も絵本もしっかり用意されており、店内は「大文字」に向かう家族連れの常連さんが既に満席でお食事の真っ最中。何年ぶりに食べただろうか、洋食屋さんの揚げたてほかほか海老フライを食べながら「『フジヤ』さんがなつかしぃねぇ〜」と富山の洋食屋さんの思い出話に花が咲いた。

たどり着いた船岡山は、ひと・ひと・ひと。ちょうど具合良く花壇のヘリの石垣をアテにして居ながらにして「大」の文字を見物できる場所をみつけたのだが、空間はふたりまで。先に席取りしているふたりのおばぁの横にはバックが置かれている。いかにも「陣どってはる」という様子でせわしなく団扇を動かしているばぁさんに、バックを指さして「ここはこられますか?」と訪ねるが、どかっと置いたバックを改めて手で押さえて目で睨み返されてしまった。京都のいけずなばぁさんだった。

いよいよ左大文字に火がはいると、人の群れは見物席に相応しい崖際にどっと移動する。歓声はあがるし、パシャパシャあっちでもこっちでもフラッシュやシャッター音が鳴り、現代の送り火は賑やかしいのだ。ご先祖様の御霊も、静かな処に帰りたくなってしまうのではと思える喧噪。

凸さんがちょっとつま先立ちすると全体が観れる場所を見つけてくれたので、そっちに移動。人と人との間からめいいっぱいつま先たてながら首を伸ばしていた処、「こっちに登れば見えますよ」と大きな踏み石の上で盛んに写真を撮っていた長身の若者が声を掛けてくれた。親切に場所を交替して貰ったところ、全体が見渡せるではないか♪「おおっっっ、これぞ大文字やね」と満足。京都の人はいけずな人ばかりではないがやちゃ

次に舟形がすっきり下まで観れる場所をとさんが教えてくれたのでそっちへ移動。「なるほど、なるほど、舟形だ」と見物しながら、三カ所ばかり蚊にくわれ、誰かが飲み残していった缶ビールが足下でひっくりかえってサンダルをぬらし、送り火は夏祭のように賑やかなのでした。

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