第46回青少年読書感想文全国コンクール

毎日新聞社賞

「きいちゃんとわたしの兄」

神奈川県横浜市立茅ヶ崎中学校 二年 江頭実希

 4人兄弟の私の兄は、今年の春から、県立の養護学校高等部に入学しました。

 きいちゃんは宿舎に入っていましたが、わたしの兄は家から通学しています。入学してしばらくは母が学校まで送り、授業が終わるまで待って一緒に帰って来ていました。そして少しずつ練習して、家から駅まで、駅からバス停まで、バス停から学校までといった具合に兄はひとりで通学できるようになりました。母と18歳の姉とで兄の練習を手伝ってきたのです。

 この本に出会った時、わたしの姉や自分と妹のいつかは来るはずのこの場面、すなわち結婚問題について考える、よき手本となった気がしました。「きいちゃん」はまるでドラマのような美しい映画のようにつづられていました。

 しかし、このお姉さんの結婚式が決まるまでには、もっとドラマがあったのではと思いました。好きな人とせっかく出逢っても、もしかしたらその家族に反対されたり、好きな人にいろいろ気をつかわせるのがとてもつらかったのではないかなと考えたりしました。さまざまな壁を乗り越えての結婚だけに、きっと二人の絆も強く、深いものだろうなと思ったりもしました。

 障害は持っているのではないそうです。自分から好きで障害を持ったのではなく、障害があるという表現の仕方の方がいいと思うのです。

 兄は障害がありますが、わたしの中では、全く普通の家族の一員です。去年まで同じ中学の特殊学級に通っていました。入学するまでは、特殊学級に兄がいることが友達に知られることを、少しおそれていました。しかし現実には、友達がそのことによって変わることもなくわたしの家族を理解してもらいうれしく思いました。それには、やはり、時間をかけることも大切だと思いました。同じ学校で仲間として過ごしていれば、少しずつでも理解できるのだと実感したのです。

 結婚の事も同じだと思いました。きいちゃんのお母さんは、お姉さんの結婚式にきいちゃんは出席しないでほしいと言いました。わたしも兄と同じ中学へ行かないで、私立中学に行く事も考えた事がありました。しかし、逃避的な考え方ではいけないと思い、同じ中学へ入学することを決心しました。

「生まれてこなければよかったのに」と言ったきいちゃんも、言われたお母さんもとても悲しかったことと思います。しかし、お母さんはきいちゃんのお母さんでもあり、お姉さんのお母さんでもあるから、しかたがなかったのだと思いました。

 わたしの母は以前からよく言っています。

「あなた達三姉妹の結婚相手はきっとまちがいなく、すばらしい人だよ。」

それは、兄がいるからだと言います。

「人を差別することなく生きていける人と、必ず出逢える。」と信じているからです。

 きいちゃんがお姉さんの為に一生懸命ゆかたをぬいあげました。その気持ちが届いたのか、結婚式に出席して、お姉さんもそのゆかたを着て、皆の前ではっきり、きいちゃんを紹介してくれました。

「妹はわたしの誇りです。」と言いきったお姉さんも、とても立派ですばらしい人だと思いました。

 この本はとても短い文章でつづられています。それがかえって中身の濃い伝わり方をしている気がしました。ゆかたの色、すなわち夕日の色もとても美しく感じられました。

 わたしの結婚式は?と聞かれたら、迷わず「兄のことは皆にかくすつもりはない。」と答えます。それは、以前から決めていることでしたが、「きいちゃん」を読んだ後は、その思いがいっそう強くなりました。母が言うように、兄の事を理解してくれない人との結婚はあり得ないし、まわりの人に隠して生きていく必要はないと思うからです。

 真面目に、一生懸命生きていれば、何も恥ずかしい事もないし、むしろ純粋な兄で身体は身長百八十センチもあり大きいのですが心はとてもピュアでかわいい人です。そういう兄の存在は、運命的なことだったと共に、兄を通じて知り合うすばらしい人との出会いがあることに感謝することが多くあるからです。この本に出会ったのも兄のおかげなのかもしれません。

 最後に、きいちゃん、お兄ちゃん、「どうもありがとう。」

 これからもきいちゃん、お兄ちゃん、みんなの心の支えとして、元気に頑張って下さいね。

山元加津子 絵・多田順「きいちゃん」(アリス館)

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