月刊「寺門興隆」2001年4月号 より抜粋
“本山懇志金の額と基準を
  裁判所で争う今日的意義”
“住職3人があえて申し立てた東本願寺懇志金をめぐる調停の前代未聞”

 

・・・〔略〕 
3人の寺院住職が、自らが属する組の組長と教務所長を相手に調停を申し立てたのだ。

この事実だけでも驚きなのだが、さらにその内容が切実で、関心深い。

申し立てに出てくる「経常費」とは、「御依頼金」とも呼ばれるものだ。
本来、大谷派の会計条例第26条第1項に上げられている懇志金の一つ。
その経常費(懇志金)が寺院に毎年課せられており、
それに対し3人の大谷派寺院住職が「経常費の金額が不当に決められており、
納得がいかない」と訴えたのだ。

・・・〔略〕

だが、ここで
「懇志金がなんでお寺に課せられるのか。自由な懇志なら問題が起きるはずもないのに」
と 疑問を持つ読者もおられるだろう。
調停について触れる前にまず、その疑問について説明しよう。

川端住職らによれば、毎年経常費の納入金額が、
本山(東本願寺)→各教区→各組→各末寺→各門徒の順で降りてくるという。
納入実務は本山より依頼を受けた教区が“義務金”として扱い、回収しているのだ。
同派全国30教区の多くが、この経常費を義務金として扱っているという。

「懇志金が義務金として扱われている」という矛盾が、割当の不当性云々以前に存在しているわけである。
当然、川端住職らが所属する京都教区(約400カ寺)も経常費を義務金とし、
教区から依頼を受けた組が、各寺が納める経常費を割当しているという。
名ばかりではない。
経常費を義務化した教区の多くでは経常費を滞納すると、
住職の交代や得度をさせないなど、諸願事を受け付けないという。
この諸願事停止については、各教区により違いがあるという。
京都教区では「経常費が滞った場合、願事停止ということが教区で議決されている」ということだ。

ここで整理しておきたいのは、宗派への賦課金との別である。
賦課金と、いま問題にしている経常費とはもちろん違う。

大谷派における賦課金は宗費賦課金と共済賦課金に分かれている。
普通寺院および教会が納める宗費賦課金は、
それぞれ定められた賦課号数と所属僧侶の資格により決められている。
当然義務を伴うものであり、計算式がある。

一方、本山への経常費は義務化されているにもかかわらず、
その割当の基準がよくわからないのである。

話を戻そう。
川端住職は今回の申し立てに至ったきっかけをこう話す。

「7年前、経常費を総代さんにお願いしたところ、
“そのお金の根拠はどういうものなのか”と聞かれたんだ。
正直、その返答に困ってね。
そう言えば何も疑問を持たずに経常費を集めて、納入してきたことに気がついたんだ」

その具体的な金額を挙げよう。
たとえば、長蓮寺は平成10年度、約53万円の経常費を納めた。
これに加えて、長蓮寺では宗費賦課金や共済賦課金など10万円を納めているという。
長蓮寺の門徒は約120軒というから、その負担の大きさが分かるだろう。  ・・・〔以下略〕