第2回裁判

準備書面
(被告=本山側)

 

第1 本案(請求の趣旨)に対する答弁
 1 原告の請求を棄却する
 2 訴訟費用は原告の負担とする
との判決を求める


第2 請求の原因に対する認否

1 請求の原因第1項(当事者)記載の事実については,認める。
被告真宗大谷派と原告の関係は,正確には,被告真宗大谷派は,原告を包括する包括法人である。

2 同第3項(賦課金その他の支払請求)
 (1)記載の事実については,認める。
 ただし,宗費賦課金については,賦課金条例第3条に「宗費賦課金は,別に定めるところにより,毎年寺院及び教会に賦課する。」とあり(甲3),また教区費については,教区制第2条に「教務所長は,教区会及び教区門徒会の議決を経て,教区内の寺院,教会その他の所属団体に対して,教区に必要な経費を賦課徴集することができる。」,同第3条に「教区の経費は,前条の教区費及び交付金その他をもってこれに充てる。」とあるように,ともに規定の仕方から見て法律上の債務といえる。これに対し,経常費については,答弁書3頁に記載したとおり,あくまでも門徒の自発的な信仰心に依拠して門徒にご依頼するものである。

 (2)記載の事実については,蓮如上人500回御遠忌懇志金が,上記と同様の趣旨で教務所を通じて門徒の自発的な信仰心に依拠して門徒にご依頼するものであり,その金額が4,568,400円であることは認める。

3 同第4項(賦課金その他の支払請求の性格等)記載の事実については,賦課金条例第9条に「賦課金の滞納があるときは,当該寺院・教会に係る諸願事の取扱いを停止する。」との規定が存在することは認めるが,同規定に基づく諸願事の取扱いの停止が「制裁」という性質のものであるかどうかは争う。

4 同第5項(原告の滞納と被告の請求)については,原告が賦課金については完納し,懇志金や経常費等については一部未納があることは認めその余は否認する。答弁書3頁に記載の通り,被告真宗大谷派は懇志金や経常費等を「請求」しているのではなく,あくまでお願いをしているにすぎない。
 また,原告の未納額について,経常費未納分のうち,80,000円については,既に平成14年4月25日に納金済みであるので,正確には,748,300円となる。

5 同第6項については,争う。


「第3事情等」についての認否

1 第1項第1文記載の事実について,普通寺院が門徒の進納する経常費及び蓮如上人500回御遠忌懇志金を取りまとめをしている事実は認め,その余は否認する。
被告真宗大谷派能登教区における経常費及び蓮如上人500回御遠忌懇志金の御依頼割当については,寺籍簿記載門徒戸数の8割を原則として各組で調整したものが御依頼門徒戸数となり,かかる御依頼門徒戸数が基準となる。

  同第2文記載の事実については不知。

2 同第2項第1文記載の事実については,不知。
 同第2文記載の事実については,否認する。
 被告真宗大谷派能登教区における経常費及び蓮如上人500回御遠忌懇志金の御依頼割当については,上記のとおり,御依頼門徒戸数が基準となる。
 同第3文及び第4文記載の事案については,不知。

3 同第3項記載の事実については,原告が組長,教務所,被告真宗大谷派に対
 し,門徒戸数の見直しを求めてきた事実は認め,その余は否認する。

4 同第4項記載の事実については,原告が,教務所を相手として七尾簡易裁判
所に調停を申し立てた事実,調停が不調になった事実,教区内に御依頼門徒戸
 数調査特別委員会が設置された事実,御依額と願事の停止のあり方等が答申さ
 れた事実は認める。


第3 被告の主張

1 はじめに
 被告真宗大谷派が門徒に御依頼する経常費や懇志金がどのような性質の金員であるかについては,答弁書第3項(3頁)に記載のとおり,被告真宗大谷派の教法,儀式,教化事業等と深く関係するところであり,極めて宗教性が強く,これを宗派の教法等と離れて説明すること自体が困難を極める。

2 被告真宗大谷派と原告の関係等
 原告は,これら金員の性質についてこだわるようであるが,そもそも原告と被告真宗大谷派の関係は宗教的な結びつきであって,両者の関係を単純に割り切って考えられるものではない。
 すわなち,被告真宗大谷派は,宗祖親鸞聖人の立教開宗の精神に則り,教法を宣布し,儀式を執行し,その他教化に必要な事業を行い,もって同朋社会を実現することを目的としており,被告真宗大谷派に包括される原告ら法人の目的も同様である。この日的に向かい,事業を推進するため,すべて宗門に属する者は,常に自信数人信の誠を尽くし,同朋社会の顕現に努め,宗祖親鸞聖人の真影を安置する真宗本廟を宗門と一体としてこれを崇敬護持し,その運営はあまねく,同朋の公議公論に基づいて行うことは,被告真宗大谷派の最高規範である真宗大谷派宗憲により確認されている。
 そして,経常費や懇志金などの財源は,こうした教えに出遇った人がこの教えを今の世に広め・その教えと真宗本廟が後の世に相続されんことを願って進納される性質の金員であり,僧俗を問わず,真宗門徒の自覚により行われるのである。
 このような経常費や懇志金などの財源のあり方は被告真宗大谷派にとって,最も基本的で重要な問題であるからこそ,被告真宗大谷派においても,予算として計上する際には,僧侶の代表である宗議会,門徒の代表である参議会により議決されることを定めるとともに,必要な金員は全国30教区に御依頼割当され,御依頼を受けた教区は,計画された宗派事業が円滑に遂行されるよう,割当額全額を進納するため様々な方途を講じることになるのである。

3 経常費等の未納と願事の停止等との関係
 被告真宗大谷派にあっては,上記のとおり,予算自体は宗議会等の議決を経て決定され,各教区に御依頼割当されることとなるが,各教区において御依頼金額をどのように進納するかについては,教区ごとに取り決めがなされることになる。
 原告の属する能登教区にあっては,当該教区の僧侶の代表である教区会と門徒の代表である教区門徒会で取り決めており,その内容は「過去において直近の2年間の経常費等が完納されていなければ,その未納額を再度御依頼し,災害等特段の事情がないにもかかわらず完納に至らなければ,住職任命申請および得度願並びに僧侶の法要式における序列である法要座次の進席,それに伴う法衣の許可が行えない」というものである。
 このような取り決めは,被告真宗大谷派が一方的に行うものではなく,あくまで目的を一にする共同体の一員として,原告を含め宗門に属する者が僧侶の責務を確認しあい,目的遂行を全うするために自律的に行われたものである。
かかる取り決めをもって,被告真宗大谷派の原告に対する「制裁」などということは決してできないのである。

4 まとめ
 以上のとおりであるから,被告真宗大谷派は,答弁書に記載のとおり,本件訴えを却下すべきと思料する。
仮に本案要件を審理するということであれば,本件請求については,棄却を求める次第である。

以 上