チェルノブイリ原発事故から10年余り

日本は唯一の核被曝国であるがゆえに安全な原発にさえ過剰な反応を見せる・・・・かつては、このような“暴論”が展開されていましたが、さすがに現状では、そのような論調はトーンダウンしています。

暴論の自粛に多大な功績を示したのは、なんといってもソ連チェルノブイリ原発の爆発事故でしょう。

事故後、10年余りを経過してもなお深刻な汚染被害がソ連国内からつぎつぎに報道されるにおよんで、世界の国々は、あの日、たいへんな事故か起きてしまったことを、身にしみて感じ取っています。

現に、今なお、チェルノブイリから3、4百Kmも離れたところで多くの人々、とくに子供たちが、白血病や甲状腺障害、免疫力の低下や貧血、ガンなどで苦しんでいます。

そして、ガンはまだまだ増え続けるだろうと考えられています。

あの日、1986年4月26日、2度にわたる大爆発を起こしたチェルノブイリ原発4号炉は、ちょうど箱根山の高さに数億キュリーの死の灰を吹き上げ、毒の風はヨーロッパに汚染をまき散らしました。

ジェット気流にのった死の灰は、1週間後には日本にも到着します。

異常に高い放射能を検出した観測員は、その並はずれたスケールに愕然としたといいます。

空気が、水が、大地が汚れ、大地に育つ植物も農産物も放射能にまみれました。

案の定、事故から半年以上経過した12月、神戸港に到着したトルコ産へーゼルナッツから日本の制限値を上回る放射能が検出され、輸入業者は輸出港へ積み戻しする羽目になりました。

しかし、水や空気の流れには国境はないのですから、地球全体に汚染が拡散し、人間を含めた生きる動物はみな汚れ被曝しました。

地球被曝という言葉さえ生れたほどです。

確かに地球はひとつ、宇宙船地球号なのです。

 

 

日本の原爆はウラン不足で挫折した?

 

さて、日本は核兵器を保有したこともないし、開発したこともないと思われているようですが、じつはそうではありません。

太平洋戦争中に旧日本軍が開発しようとしていた「2号兵器」こそは原子爆弾そのものでした。

1940年4月、当時の陸軍航空技術研究所長・安田武雄少将は鈴木辰三郎大尉に対して、原爆の可能性を検討するように命令しました。

そして1年後には理化学研究所の仁科芳雄博士を中心にする超軍事機密兵器の研究がスタートしています。

「2号研究プロジェクト」は外部との連絡を航空本部だけに限り、資材も資金も無制限という超待遇で推進されましたが、けっきょくはウラン鉱石の入手難、電力の不足などによって頓挫、いっさいは記録とともに闇の中に消えてしまいました。

挫折した2号研究からおよそ20年後、茨木県東海村に建設された日本初の原子力発電所は核の平和利用として、一躍脚光を浴びることになりました。

いずれは枯渇が予想される石油や天然ガスに取って代わる代替エネルギーとしての華々しい登場ですが、じつはこのときから2号研究と同じ限界点がささやかれていたのでした。

ウラン燃料の不足です。

必至になって鉱脈を探しまわり、外国からの輪入で当座はしのいだとしても、その限界は必ずやってくるはずです。

原発は誕生して以来、2つの決定的な矛盾を抱えています。

「ウラン資源の枯渇と困難な廃棄物処理」です。

この2つを根拠に、エネルギー産業の一部からでさえ、その限界が指摘されているほどです。

  

 
世界は脱原発

「平成維新の会」を旗揚げし脚光を浴びた大前研一氏は、工学博士であり、かっては日立製作所の原発設計技師でしたが、著書である「平成維新」の中で次のように述べています。

「日本はエネルギー自立などできない。
水力では足りないし、石炭では公害がある。
石油はどこを掘っても出てこない。
原子力の燃料であるウランやトリウムは、石油より世界的にもっと偏在している。
エネルギーは産業政策よりも前に、外交政策として論じられなくてはならない。
・・・・電力は独占、高価、非能率という状況から抜け出せないし、・・・・。
原子力にいたってはあれだけカネと人を注ぎ込んでやっているのに、住民に十分な説得ができないお粗末さである。
中・短期的でみれば日本に原子力エネルギーはいらない。
原子力は絶対安全ではない。
この二つは真実である。
原子炉の事故はほとんど、設計時に想定されていなかった原因で起こっている。
車だって運転手の気が動転して、ブレーキとアクセルを踏みまちがえれば大事故につながるように、原子炉だって完全なものはないし、またできない。」

 

アメリカ合衆国ヘーゼル・オリアリー・エネルギー省長官は、就任にあたって上院エネルギー委員会に出した回答書の中で

「短期的に電力会社は、もうこれ以上、原発を建設しようという意欲は、持っていない」
こと、さらに、
長期的には放射性廃棄物の処理問題がきわめて重要」
である点を指摘した上で
「クリントン政権は、以上のような理由から、現時点で原発への依存度を増やすことに反対している」
と発表しました。

 

また、ドイツの二大電力会社の社長が、コール首相に重要書簡を手渡し、原子力発電所の終り」を伝えました。

@運転中の原発は、規定の年数に達すればすべて停止する。

A新しい原発を建設するには、高レベル廃棄物処分の方法を明示すること、また国会で3分の2の賛成を必要とする。

B原発から発生した「プルトニウムと高レべル廃棄物を含む使用済み燃料」は、再処理せずに、そのまま保管する。

C外国(英仏)に委託してきた再処理は、補償金を支払っても、できるだけ早く契約を破棄する。

と、書簡の内容はこういうものでした。

 

米独という欧米の二大経済大国の原発撤退に象徴されるように、まさに世界は脱原発への道を歩み始めています。

それでも、なおひとり日本は、良識と正反対の原発推進の政策を取り続けています。

PKOや米自由化問題以上に、日本は原発政策において世界の流れから逆行し、孤立への道を歩き始めています。

「日本の原発は安全」という盲信は、「日本は神国、神風が吹く」と信じて突進した太平洋戦争に通じるものがあるようにさえ思えます。

 

金丸さんの教え?

 

田中角栄や金丸信の事件に代表されるように、ロッキード、リクルート、共和、金扉風、佐川・・・・と懲りることなく続く汚職事件。

私たち国民の生活とは無関係に、利権でのみ政治は動かされていたように思えます。

建設に数百億円という金が動くという原発、そこに利権が発生しない理由はありません。

エネルギー確保のためだ、地球温暖化防止だ、地域活性化だと推進される原発ではありますが、私には、利権目的以外に原発を推進する理由がないように思えてなりません。

兵器を商いするものを「死の商人」と呼びますが、金目宛に、私たちの生命を危うくする原発を推進する者たちも、死の商人にほかなりません。

政治が証明してみせたように、この世の中まったく嘘だらけです。

とるに足らない嘘なら、騙されるのは馬鹿だといってすますこともできます。

しかし、戦争問題、エネルギー問題、環境問題などで、政治の嘘に騙され大衆が合唱すると、とんでもないところに連れて行かれます。

かつての日本の「正義のための戦争」がそうであったように。

現代における嘘の筆頭は原子力だと思います。

政治権力の思うままに引き回されると、自分だけではなく子孫までも不幸にしてしまいます。

そのようなことのないようにするには、政治の嘘に騙されて合唱してはいけません。

そのためには、嘘を見抜き他の人々に伝える努力をしなければなりません。

前の戦争のように、何もかも終ってから騙されたと反省し、事実はこうであったと告白しても、合唱によって騙しに協力したことによる結果はもはや元には戻らないのです。

仏教の教えによりさとりの境地に至るということは、真実を見、真実を語る人間になるということです。

私も汚い政治になどかかわりたくはありません。

しかし、人間社会で生活するには、好むと好まざるとに関わらず政治とともに生きていかなければなりません。

ならば、仏教者として私利私欲を離れたところから世の中を見、真実を語っていきたいと願います。

合掌

 

 

 

 

MENUに戻る |