産廃誘致に思う

輪島市門前町の大釜地区に、大規模な民間の産業廃棄物の最終処分場が建設される計画が進められているそうです。
東京の産廃処理業のタケエイという会社が建設・運営をするそうですが、何事も起こらなければいいが・・・と心配しています。

建設予定地の大釜地区は志賀町(旧富来町)に隣接する山間部で、谷あいに5世帯8人が住んでいて、全員が60歳以上の高齢者だそうですが、買い物、医療など日常生活さえままならなくなったため、集落に産業廃棄物の最終処分場を誘致し、その補償金で隣村に集団移転することになったということです。
産廃処分場は、環境の悪化、水の汚染などで住民から嫌われてきました。
今でも嫌われものです。
かって、産廃処分場の建設をめぐっては住民が賛成反対に分かれ、あるいは住民対業者が対立し、何年もかけて争うことが過疎地のいたるところで起きました。
その産廃処分場を自ら誘致するというのです。
先祖伝来の土地を捨て、家や神社や墓まで手放し、隣村に移住するのです。

産廃処理場について、大釜地区内の最初の説明会では「近隣に迷惑をかけたら住めないから」と環境悪化への不安の声もあがったそうです。
大釜地区は、高爪山から日本海に注ぐ川の河口近くにあり、その海には漁港や磯の漁場もあります。
産廃処理業者や誘致を進めた宮坂一雄区長は、「全く問題ない」と説明したらしいが、出て行くことを決めた集落の人々にも「魚の養殖とかに影響はあるかもわからん」と、特に海や漁業への影響を心配する気持ちは消えていないようです。
当然でしょう。
全く問題のない安全な施設なら、高い金を払って山・土地を買ってくれるはずがないではありませんか。
迷惑施設で、皆が嫌がる施設だから高い金を支払うんでしょう。

一旦、処分場の下に敷かれたシートが破れるなどして毒物が地中に流れ出し、それがじわじわと海に流れ出すと、産廃下流の海岸の汚染だけでは済みません。
海流にのって奥能登一帯の海岸が汚染されるのは明らかなことです。
公害で汚染されると、輪島をはじめ奥能登の魚介類、海藻は大きな被害を受けるでしょう。
それに伴って観光も打撃を受けると想像できます。
そんな施設を、過疎で年寄りしかいなくなった村落だからと、自分たちの子や孫は能登には帰ってこないからと、あとは野となれ山となれという無責任さで売っぱらってしまうというのは、私は大釜地区の人たちはあまりにも自分勝手だと思います。
そんな自分勝手が許されるなら、過疎地の独居老人は皆、産廃業者に高く土地を買ってもらいたいでしょう。

地元雇用約四十五人が見込まれて、輪島市への固定資産税や法人税収入などの税収アップにもつながるとして、受け入れが進められているようですが、果たしてそれだけのために山を売り渡して大丈夫なのでしょうか?
得る金銭より失うもののほうが大きいのではないでしょうか?

もちろん、産廃施設が必ず公害汚染を起こすとは限りませんし、施設を作ったからといってすぐに汚染されるわけではないでしょう。
しかし、五年後、十年後。私たちが生きている間は問題が起こらないかもしれませんが、五十年後、百年後。私たちが受け入れた施設によって子孫が苦しむことになるかもしれない、そんな施設を自ら誘致するということ。
これは、金のためなら毒をも食らい生命をも売り飛ばすという暴挙ではないでしょうか?

何も起こらなければいいですが・・・。


MENUに戻る