田舎弁護士日記(その1)

 福井県は、人口82万人で、全国で下から3、4番目の県です。弁護士は、去年今年と新人が1人ずつ入 ったので、ようやく35人になりました(33人までが福井市に事務所を構えています)。福井市は、人口 25万人の小都市ですが、住み易さでは全国で総合3位だそうです。私 は、福井市の隣の人口2万人余りの田舎に住んでいます。

                        

 自宅(1軒屋)の前には広々と田圃が広がる、のどかな田園地帯で す。そろそろ田起こしが始まり、田圃は一面の池になり、カエルがそろ そろうるさく鳴き始めてきました。

 自宅と事務所との交通手段はマイカーで、片道20分程度です。朝 は、少し遅めの7時に起き、少し英会話の勉強などもして、時間をつぶして8時20分ころ自宅 を出ますが、8時40分には事務所に着きます(東京にいた頃は、9時40分過ぎに事務所に出ていた。そ の当時は、地方の弁護士が朝8時30分頃電話をして下さいと言っていたのに違和感を覚えたが、今では、 自分もそんな生活をしている)。コーヒーをすすりながら新聞を読んでいると、9時前頃から、法廷に出る 前の弁護士を捕まえるための依頼者や相手方からの電話ラッシュが始まります。

 電話の応対をしながら、事件の準備をしていると、何の連絡もなく、依頼者が突然訪れてきては、事件の 打ち合わせをしたり、経過報告をします(東京にいた頃はやはり考えられないことでしたが、突然の来客は 日常茶飯事です)。裁判所は通りの向こうですし、裁判所への書類の提出や訴訟関係書類の取り寄せその他 は全部事務局任せで、しかも警察に接見に行ったり、事件関係者の所へ行くのは全部マイカーですから、ほ とんど1日歩きません。

 そうこうして、日が暮れて、7時を過ぎると、記録を持って、夕飯を食べに帰宅します。7時半には帰宅 して、テレビを見たり、風呂に入ったりするというのが、日課です。

 事件としては、破産管財事件が7件、交通事故損害賠償事件が5件、簡易裁判所事件が6件というのが地 方ならではのケースで、後は刑事事件や、株式買い取りの事件や、県相手の土地買収に係る国家賠償請求事 件や、産業廃棄物処理場や屠蓄場建設に係る環境事件や、特許権訴訟等、事件の多種多様さと件数の多さは 、都会を遥かにしのぐものがあります。

                                1997年4月22日記