雑記帖 - yo:ku:nel

No.41
大七

本日のお酒は、先日上京したときに酔いに任せて六本木で衝動買いした「大七」純米生もと。福島県二本松市の蔵元。全て生もとづくりという丁寧な作りを売りにした蔵。かの田崎真也の評は「白い花や白桃のコンポートのような上品な香りとミネラル香、そして生もと特有のクリーム系の香りとほのかに海のよーどの香り。まろやかでバランス良く、余韻に心地良い旨みと酸味がこくを与えている」と最大限の評価。トの乱暴な評価は、冷やすと砂糖水の感じ、評判の高い燗酒では、砂糖水では決してないが、日本一とまでいえるかなー。

さて、この蔵のマスターさんは、ワイングラスで有名な「リーデル」社が、日本酒吟醸酒向けのグラスを開発したときに深く関わったらしい。我が家にも何故か、この時開発されたリーデル「大吟醸」と命名された黒い筒に入ったグラスが二個ある。つつには12個のラベルが貼ってあり、その内の一個はたしかに「大七」。確か、上高地傍の「深沢酒店」で購入した記憶がある。形状は白ワイン用っぽく、細身で、口も狭い。しかし、今日まで一回も使ったことがないので、その威力の程は未体験でした。

1997年リーデル社は金沢の福光屋から日本酒用グラスの依頼を受けた。まーその前に作ろうかなと言う話はあったようだけど。そういえば、リーデル大吟醸の黒筒に福光屋「加賀鳶」のラベルがある。リーデル社の開発方針は、純米酒や本醸造ではなくて大吟醸に絞って、大吟醸の味や香りを最大限に味わえるグラスを日本の関係者や酒通に試飲して貰って形状を決めたようだ。さすが、ワイングラスメーカーらしい。そこで、もう一度「大七」試飲、リーデルの威力がわからん、あーそっか、これは大吟醸ではなかった。

(2005-09-13)

No.42
紹興酒

中国料理「しゃんりん」での紹興酒は、まず1本目が、10年物「虞美人」ぬるめの燗で貰った。こくがあって、マイルド。中華料理に、紹興酒がぴったり。

あっという間にあいたので、同じものと注文したら、あいにく、無い。やむをえず、8年物をといったら、之もない。やむを得ず、5年物を常温で貰った。虞美人を飲んだ後だけに、いかにもシンプルで寂しい。しかし、料理と合わせて飲んでいる内に、紹興酒は元が一緒で、5年と10年は僅かな違いと言うことに。いつの間にか、料理にも舌にもなじんでいた。

(2005-09-18)

No.43
「渓流」朝しぼり

テニス仲間のカンちゃんからの夏旅行のお土産。信州須坂市の遠藤酒造、ここも日本一小さな酒蔵と自称しているらしい。高岡の勝駒もそうだが、さて、どっちが小さいのか。

この酒、予約の取りにくい宿、あの洞窟風呂で有名な「仙仁温泉岩の湯」の特注酒らしい。ラグビーのメッカ菅平高原の麓にあり、風情がまことによさげな宿。実は、これまで何度予約の電話を入れたか判らない、といっても、我が家は、発作的に当日や前日電話しているだけなのだが。

さて、このお酒は、酵母は、アルプス酵母。非常にフレッシュ=生酒らしくかつマイルドで、飲みやすい。仙仁温泉の料理まで想像がつきそうな気がするというのはたぶん言いすぎであろう。

(2005-09-19)

No.44
無可有(むかう)

無可有とは、荘子の言葉で作為が無くて自然なことを言うとか。さて、その名前を付けた焼酎がある。限定生産本数990本、そのうち市場に出たのが半分以下という説もある。なぜか、そのうちの1本が我が家にあった。現時点では、入手がかなり難しいと思う。確か埼玉県のI酒店に欲しい日本酒を分けて貰うために、焼酎も適当にと頼んだら、混じっていたのだ。

鹿児島の本坊酒造屋久島工場製。芋焼酎で、37度。屋久島の水を使い、1次・2次仕込みとも甕壺でじっくりと行い、小型蒸留機で蒸留し、それを屋久島の太忠岳の麓にある隧道の中で貯蔵した。太忠岳と言えば、かって宮之浦岳に登ったとき、屋久杉ランドから太忠岳という標識があった。屋久島の焼酎と言えば何と言っても「三岳」だけど、最近は本坊酒造が進出し、「屋久島」という銘柄の芋焼酎などを出している。

本坊酒造は、世紀替わりに「ミレニアム桜島」という、かってトが飲んだ最高の芋焼酎を生んだ蔵。あれは、確か43度あったはず。今回は何故か37度に押さえてある。本坊酒造は、山梨でウィスキー製造も行い、ここのアルコール度数67度のウィスキーを飲んだことがある。口の中で火花が散ったけど、独特のうまさがあった。湯沢のスキー宿へ持って行ったら、一緒にいた酒豪が、それまで、だらりと横にしていた体を起こし、「こりゃー敬意を表さなくては」と思わず座り直して飲んだ。

さて、無可有は、文句なしにうまい、とろりとして、芋の甘い香りは、空になって久しいグラスからでも立ち昇る。これは、無空有だ。これ位になると割るのはもったいないので、ロックがいい。荘子の世界にまでは、到達できないかも知れないが、しばし極上の世界に遊べる。

(2005-09-21)

No.45
金沢・能登

能登で飲んだお酒のまとめはコチラ→2005年秋~「たべたのんだ金沢・能登」泡盛饗宴

(2005-09-24)

No.46
浦霞

この酒は、宮城県塩竈市の銘醸。酒の名は、源実朝の歌「塩竈の浦の松風霞むなり八十島かけて春や立つらん」に由来すると言う。協会12号酵母発祥蔵。今日飲んだのは、純米酒を冷やして。クセがないことが特徴の酒。

(2005-09-28)

No.47
現代宴会事情

本日は、業界の宴会。掛け流し温泉と新鮮な魚介類の料理が自慢とは幹事のうたい文句。あー彼を幹事にした俺が馬鹿だった。温泉は、それなりにヨカッタ。しかし、料理が。お酒って言えば、仲居さんに焼酎のメニュー持って来てと頼むと、うちは、いいちこしか有りません。最近の宴会は、誰も宴会に付きもののお酒の徳利を頼む人はいない。これが現代宴会風景なんだ。美味しい日本酒もあるのに。結局、キリンラガーといいちこ。それに相応しい、食事。

やっちゃいけないけど、箸探りのト。だって、9月は、「さか本」「雅乃」で食事をしたので口が、こえてる。当然、家に帰ってやけ酒シリーズで、作り置きの肴をあてに現在家にある美味しいお酒「無可有」「王朝の邦」「立山雨晴」「浦霞」など軒並み飲んで、始めて我に帰った。小さな違いなのか、大きな違いなのか。受容し難いと言う意味では、やはり大きな違いである。

これも、世間のつきあいの一つである。つきあいと言えば、最近流行のセレモニーホールの初七日の法事の料理は、料金こそ、我が家推薦のお店と同じであるが、「あー」ため息が出るものだった。世間は、この辺のレベルでお金が流通しているのかと思うと、寂しい。しかも我が家がひいきにしているお店が次々にやめているのもかなり寂しい。一方で、良いお店で若者が眼をきらきらさせながら修行している姿を見かけるのは嬉しい限りである。京都の店で、富山の若者が修行して、金沢で、京都の若者が修行している。これもシルクロード。

(2005-09-30)

No.48
薪づくり

本日、来るべき冬に備えて、薪1.3トン余り用意した。今年も、出来るだけ石油エネルギーのお世話にはなりたくない。日本もちょっと前までは、薪や炭が家庭用主エネルギーだった。砺波の頼成の森の「モリモリハウス」で、約40センチに輪切りをした薪材を薪割り機でせっせと割って薪づくり。例によって、姐夫婦の手伝いを仰ぐ。雨なので作業が大変かと思ったら、屋根がかけられていた。ラッキー。

2mの丸太は、半額だけど、チェンソーから始まるので、まーいいとして、40センチの「輪切りの私」。しかし、今年は、電動薪割り機が、導入されている。ガソリン式とは、操作性が全然違う。ストーブの御師匠さん、巌鐵さんは、材料費は全てただで、薪を調達するという達人である。今年一夏乾燥させただけの薪なので、シーズンはじめはちょっと辛いかも知れないが、後半は我が家のT-ONEにも大丈夫だろう。T-ONEの中で、真っ赤にかつ透明に燃える薪を選んできた。

薪を積み上げると、ぽこ・ペコ食堂の美味しい食事が待っていた。腹が減っていたので、ご飯をあっという間に平らげた。薪割りの後に、炊きたて新米、我が家の秋茄子の漬け物、茄子の炒め物、江政の鰯のぬかずけ、さっぱり鍋、あー幸せ。その後は、プールで体をほぐし、テニスもダブルス2ゲーム。肉体酷使の日は、当然喉が渇く。ビールに、芋焼酎「砂のかけはし」をロックをぐびぐびでした。

(2005-10-02)

No.49
葡萄

富山特産の呉羽梨は絶品の「幸水」が終わり、今は「新高」。この時期には、富山でも葡萄が出回る。我が家のお気に入りは、頼成の森近くの音川農園。きのう、もりもりハウスまで薪狩りに行ったので、帰り道、立ち寄った。葡萄や梨の他にシュナイター教育の教材やオーガニックコットン製Tシャツ、赤ちゃんがなめても良いおもちゃやアジアの雑貨が売っている楽しい店である。葡萄は、どれもこれも甘くて素朴な味がする。シチューベン、ピオーネ、巨峰、巨峰より大きい?等がある。

さて、ワイン。本日は、赤ワイン「ブルゴーニュ・ピノ・ノワール”ラ ヴィニェ」2003 ワイン評論家の評価で5星とか。 昨日開栓したとき、渋みが有ったが、今日は練れていた、香りも十分ある。我が家では久しぶりの肉氷見牛にあわせた。

(2005-10-03)

No.50
銀盤米の芯

銀盤は、黒部川扇状地の地下水を使った富山県第2の酒蔵。2004年の出荷石数は、20133石。全国28位。かっては、まじめにつくってみましたというイメージだったが、近年はコンピューター管理が徹底され、コンピューター付き自動製麹機、自動攪拌機つき酒母タンクや醪タンクなどを駆使した酒づくり。「米の芯」は山田錦の精米歩合35%(米の芯の由来、蕎麦で言うと透明感の高い更科ということか)のこの蔵の最高ランク。

富山の日本料理「山崎」では、この4合瓶を3人で開けた。むむっ、かってのとろりとした重みが消え、軽い酒になり、非常に飲みやすい酒になっている。フルーティーだが、吟醸香はほどほどであり料理を追いやらない。昔ながらの作り方による雑味や複雑な揺らぎが無いのが、玉に瑕だが、女性に人気というのは十分うなずける。

山崎では銀盤4合瓶1本で納め、あくまで清い食事だった。しかし、それだけでは納まるわけがない。女性が腹一杯食べた後ケーキは別腹と称してケーキを食べるが如く(なぜかフランネルさんの手作りモンブランが無性にたべたくなったが、それはさておき)、我々は、「泡盛」は別腹と称して、家に帰って泡盛パーティを始めた。泡盛は、「どなん」「王朝の邦」。それにとどまらず芋焼酎「無何有」や日本酒「神亀」「浦霞」「渓流」などが食卓の脇にいつの間にかずらりと並んでいた(酒瓶が、歩いてくるわけ無いでしょうと言う声もあるが)。

肴は、ペコさんがぱっと用意して、小林のいなだ、江政の糠鰯、自家製ぬかずけ、青カビチーズなどくさい物がテーブルに並んだ。そして、泡盛と言えばかすかに残っていた貴重な豆腐ようを出さないわけにはいかない。なんと、チク君は豆腐ようを自分で作ってみたことがあるとこともなげに言う。さすが、主夫志願のチク君。食や食の安全に関心の深いチク君は、今日は「山崎」明日は「雅乃」へ。先輩のヨネッチは我が家にしばらく通ったことで食に目覚め(笑い)、今や一児の父だが、奥さんは、鎌倉育ちのモダンな感じながら、和食中心で料理大好きという。

「友有り 遠方より来たる また楽しからずや」とはこのことか。夜が更けるまで久しぶりの再会に話が弾んだ。良い酒ばかりだったので、翌朝はスッキリした目覚めだった。

(2005-10-06)