運行表に戻る 前の停車駅 次の停車駅


「 中 庸 の 徳 」





過剰に殺さず

過剰に殺されず

適切に殺し

適切に殺され



過多を得ず

過多を奪われず

安易に与えず

安易に与えられず



しかし常に与えることを想い

与えられることを疑わず

蓄財の愚かさを知り

浪費するを戒め



喜びを貪らず

悲しみに溺れず

楽を心から楽とし

苦を心には苦とせず



生と死は

個人のうちにも

社会のうちにも

相応しい揺らぎを保ち



樹を一本の樹としてよりも

種と森の総和として観じ

風に季節の言葉を聞き

光に影の意志を読み



平穏に埋もれず

争乱に堕ちず

裏切りの繰り返しにも

ただ希望を以て応え



左手と右手にいる人々をつなぎ

自らはつなぎ目の対岸で賑わいを見つめ

相反するものの均衡と連続性を保ち

孤独なその宿志を嘆くことなく



そういう人間になりたいとでも言うの?

中庸というのは、そんなつまらない言葉ではないだろう

言葉や定義よりも、生きることが弾けていなければ

後で誰かが翻訳してみて初めて言葉が輝くんだ


運行表に戻る 前の停車駅 次の停車駅