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「 頭 痛 」





僕は罪を犯したい

この世で唯一絶対の罪悪を

弱い者をいたぶり殺してそれを笑う

そういう吐き気と陶酔が最悪だと信じていた

けれど

そんなことは誰でも毎日やっている

そんなことを罪だと思いこむ精神の異常性だ

大量殺戮はどうだ

そんなことをしたら英雄になってしまう

ああ、この世に純粋な罪がない!

それを犯した刹那

至高の極地に叩きつけられるような

研ぎ澄まされた透明な罪がこの世には見つからぬ

たかがかりそめの法律に縛られた罪などは

何を以て罪と呼ぶに値するだろうか

この時代に生きるに相応しい

何ものにも代え難い罪

貫かれるその時の恍惚を思いながら

僕は今日もまた社会の中でいななく

もういい加減、中途半端な罪を喜ぶのは止め給え!

犯罪者だと思いこんでいる見苦しい君たちよ

本当の罪を犯す自由は僕にだけ許される

ああ、しかし本当の罪がないのだ!

鏡に映った僕と同じくらい醜い世界の中で

鏡に映るはずもない美しい僕が丸くなる

君の行いは全て良いことだ!

悲しみも苦しみも、全て良いことだ!

ああ、罪がない!

この世のどこにも、罪がない!

僕はこのまま、本当の罪を知らずに死んでいくのだろうか・・・。


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