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「 詩 人 」





ある女性が詩を書いた

彼女は不治の病で入院していたが

その病室から見える景色が

とても美しくて

それで一編の詩を書いた



ある日それが人の目にとまり

たくさんの人がその詩を読むようになった

さりげない景色を描くことにより、生と死を見事に表現している。

そう言って人々は

彼女の詩を誉めてくれた

たくさんの激励の手紙が届くようになり

たくさんのお金が治療のために集まり

たくさんの賞が彼女に贈られた

励ましの言葉を聞くたびに彼女は

透明な笑顔を浮かべてお礼を言った



しばらくして彼女の詩は

小学校の教科書にも載ることになった

それを聞いて彼女は

初めて涙に汚れた笑顔を見せた

子供達なら、この詩をちゃんと読んでくれるわ。

それが彼女の遺言になった



ある街の大きな小学校の片隅で

小さな国語の授業をしていた

詩を作るという課題に一人の男の子が

自分の家の庭の景色というタイトルで

例の彼女の詩を丸写しにして提出した

男の子はキラキラと笑っていた

けれども先生は悲しそうな顔をしたし

クラスメイトもみんなして男の子を非難した

盗作、真似っこ、卑怯者。

学校に呼ばれたと言って親からも叱られた

それで男の子は涙を流しながら

自分の言葉で一編の詩を作って提出した

先生も親もよく頑張ったと笑顔で誉めてくれたし

クラスメートもしばらくして何も言わなくなった

そして

男の子はそれを最後に

二度と詩を読んだり書いたりすることなく

一生を幸せに送って死んでいった







poemed by Kobashiri






comment



「 詩 人 」



私は、詩を愛しています。

それは詩が“心”だからです。

私にとって“詩人”っていうのは、

“心を育てる人”なのです。



EMAIL:kobashi@nsknet.or.jp
http://www.nsknet.or.jp/~kobashi/




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