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「 川は上流に向かって流れる 」





ある男が、

川を眺めていた。

毎日毎日、

ジッと川を見つめていたが、

ある日大声で叫んだ。

川は上流に向かって流れている!



それからというもの、

男は毎日誰かを捕まえては、

川の流れについて尋ねてまわった。

そして相手が間違えるのを満足そうに聞くと、

勝ち誇るように教え諭してこう言った。

川は上流に向かって流れている!



そんな男に腹を立てた人々は、

男を川に放り込んだ。

どんどん下流に向かって流される男を見て、

人々は大声で笑いながらはやし立てたが、

男は溺れかけながらもこう叫んでいた。

それでも、川は上流に向かって流れている!



男はどこまでも流されて、

やがて広い海に出た。

それから海流に流され波にのっかって、

男は真っ白な浜辺に打ち上げられた。

浜辺で働く漁師たちに向かって、

今度は男はこう言った。



波は沖に向かって進んでいる!



漁師たちは不思議そうな顔をしながら、

勝ち誇ったような男に向かってこう言った。

今さら何を当たり前のことを言ってるんだ、

そんなことより網を引くのを手伝え。

男は一人唇を噛みしめて呟いた。

それでもお前たちは知らないだろう、



川が上流に向かって流れているっていうことを!


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