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「 三 十 年 」





君と僕がまだ、兄妹だった頃

僕たちは、儚い天使だった

別々のいのち与えられて

下界に解き放たれるその日

たったひとつ、約束したんだ



決して死なないようにね

元気で生き抜くようにね

そして三十年後のその時

何気ない出会いのように

言葉を交わしていようね



そして三十年

いつか三十年

約束を果たした君と僕は

もうあの頃の天使じゃない

無邪気なだけの天使じゃない



これでもまともに生きてるつもり

遊びも仕事も楽しくやってる

嫌なことの方が多いけど

踏み外さずにここまで来れた

なかなか、立派なもんじゃない?



疲れたなんてため息は

もうつきたくはないけど

自分だけが傷ついてく嘘も

つきたくなんかないけど

ちょっと汚れてる毎日



たかが三十年

されど三十年

埃まみれの顔で笑う君は

天使よりあたたかく見える

物憂げな日溜まりの中で



重なりあう季節の中

自分らしさを確かめて

息苦しさも憎しみさえも

ポケットの奥に詰め込んで

今日からまた歩いていく



だけど三十年

きっと三十年

心からの喜びも悲しみも

これから始まるんだからね

少しだけ、新しい日々の中で



だから三十年

つぎの三十年

君よ、妹よ約束をしよう

その日も何気なく出会って

言葉を交わしていようね


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