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ホムンクルスU-2





あなたの手は不思議

糸を絡めた五つの指が

リズミカルに動いて

次々と新しい形を

創造していくの



わたしの指は

何のためにあるのかしら

あなたより一本多いくせに

まだ何も生み出せない

あなたを喜ばせることさえもない



あなたがガラスを指でなぞる

わたしの輪郭を形作る

それは魔法だった

何かに貫かれたみたいに

わたしは泣きじゃくり叫んでいたの



声なんて出ないのにね



あなたが好きです

あなたに触れられたい

ガラス越しなんかではなくて

あなたに抱きしめられたいのです

死んでしまってもいいから



あなたはびっくりしたように

おろおろとわたしを見つめているだけ

魔法が使えるくせに鈍感なのね

仕方なくガラスの内側から

あなたの輪郭をなぞってみせる



あなたはとっても嬉しそうな顔をして

小躍りするように跳ね回っている

こんなにはしゃいでいるあなたを見られるなんて

わたしの指が初めてあなたを喜ばせた日

指には魔法がかかっているのです




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