ALBUM COLLECTION バックナンバー 2001

January Februaly March April May June July August September October Nobember December


  1. SANCTUS IGNIS/ADAGIO
  2. REBIRTH/ANGRA
  3. CARNIVAL DIABLOS/ANNIHILATOR
  4. WAGES OF SIN/ARCH ENEMY
  5. BURN THE SUN/ARK
  6. NOD TO THE OLD SCHOOL/ARMORED SAINT
  7. SACRED PATHWAYS/ARTENSION
  8. THE DAMNED SHIP/ARTHEMIS
  9. DRAGONCHASER/AT VANCE
  10. PERFECT BALANCE/BALANCE OF POWER
  11. ATLANTIS ASCENDANT/BAL-SAGOTH
  12. AND THEN THERE WAS SILENCE/BLIND GUARDIAN
  13. METUS MORTIS/BRAINSTORM
  14. HIDING PLACE/BRAVEHEART
  15. THE BEST OF BRUCE DICKINSON/BRUCE DICKINSON
  16. CONTINUUM IN EXTREMIS/CONSORTIUM PROJECT II
  17. BITTER SUITES TO SUCCUBI/CRADLE OF FILTH
  18. INSANITY/DARKANE
  19. THE HALL OF THE OLDEN DREAMS/DARK MOOR
  20. DOMINATION COMMENCE/THE DEFACED
  21. SILENT NIGHT FEVER/DIMENSION ZERO
  22. THE ANTICHRIST/DESTRUCTION
  23. DREAMLAND/DGM
  24. PURITANICAL EUPHORIC MISANTHROPIA/DIMMU BORGIR
  25. STORMBRINGER RULER(THE LEGEND OF THE POWER SUPREME)/DOMINE
  26. ARCANA/EDENBRIDGE
  27. MANDRAKE/EDGUY
  28. WITHIN/EMBRACED
  29. MEGALOMANIA/ENSLAVEMENT OF BEAUTY
  30. A VIRGIN AND A WHORE/ETERNAL TEARS OF SORROW
  31. IN SEARCH OF TRUTH/EVERGREY
  32. DIGIMORTAL/FEAR FACTORY
  33. JAKTENS TID/FINNTROLL
  34. MY GOD/FLOTSAM AND JETSAM
  35. MANIFEST OF FATE/THE FORSAKEN
  36. CRYSTAL EMPIRE/FREEDOM CALL
  37. HEAVEN OR HELL/GAMMA RAY
  38. NO WORLD ORDER/GAMMA RAY
  39. THE GRAVE DIGGER/GRAVE DIGGER
  40. HATESPHERE/HATESPHERE
  41. SIGN OF THE WINNER/HEAVENLY
  42. WHEN THE AURORA FALLS.../HIGHLORD
  43. THE MELANCHOLY E.P./ICED EARTH
  44. HORROR SHOW/ICED EARTH
  45. THE TOKYO SHOWDOWN LIVE IN JAPAN 2000/IN FLAMES
  46. SUNRISE IN RIVERLAND/INSANIA
  47. HIGHEST BEAUTY/IN THY DREAMS
  48. DARK ASSAULT/IRON SAVIOR
  49. 2/JAMES LABRIE'S MULLMUZZLER
  50. FLYING OF EAGLE/JEREMY
  51. DEMOLITION/JUDAS PRIEST
  52. SWAMPLORD/KALMAH
  53. KARMA/KAMELOT
  54. VIOLENT REVOLUTION/KREATOR
  55. UNLEASHED MEMORIES/LACUNA COIL
  56. AWAKENING THE WORLD/LOST HORIZON
  57. EDEN/LYZANXIA
  58. REALITY IN FOCUS/MAGNITUDE 9
  59. THE WORLD NEEDS A HERO/MEGADETH
  60. METALMACHINE/MIDNIGHT SUN
  61. IMMORTAL MISANTHROPE/MISANTHROPE
  62. THE PROPHET OF EVIL/NOSTRADAMEUS
  63. BLACKWATER PARK/OPETH
  64. COLLISION COURSE/PARADOX
  65. OPERATION:LIVECRIME/QUEENSRYCHE
  66. LIVE EVOLUTION/QUEENSRYCHE
  67. WELCOME TO THE OTHER SIDE/RAGE
  68. CASTLE OF YESTERDAY/REPTILIAN
  69. RAIN OF A THOUSAND FLAMES/RHAPSODY
  70. THE ORACLE/RING OF FIRE
  71. THE MISSION/ROYAL HUNT
  72. SABER TIGER/SABER TIGER
  73. POETS AND MADMEN/SAVATAGE
  74. A TIME NEVERCOME/SECRET SPHERE
  75. NATION/SEPULTURA
  76. BARBE-Q マイケル/SEX MACHINEGUNS
  77. SHADOW/SHADOW
  78. LEGACY/SHADOW GALLERY
  79. INFATUATOR/SILENT FORCE
  80. FLESH ON YOUR BONES/SINS OF OMISSION
  81. GOD HATES US ALL/SLAYER
  82. IOWA/SLIPKNOT
  83. A PREDATOR'S PORTRAIT/SOILWORK
  84. SILENCE/SONATA ARCTICA
  85. MACHINE/STATIC-X
  86. REFLECTIONS/STORMWIND
  87. CROSSROAD/THE STORYTELLER
  88. FAR BEYOND THE WORLD/TEN
  89. AVANTASIA−THE METAL OPERA−/TOBIAS SAMMET
  90. EPILOGUE/TO/DIE/FOR
  91. INFECTIOUS HAZARD/UNITED
  92. SADISTIC SYMPHONY/VICIOUS RUMORS
  93. VIRGO/VIRGO
  94. GOLDEN SIGNS/VOICE
  95. DAVI/VOLCANO
  96. SYMPHONY FOR THE DEVIL/WITCHERY
  97. REALITY/ZONATA
  98. 見知らぬ世界/人間椅子

January

IRON SAVIOR | MAGNITUDE 9 | PARADOX | REPTILIAN | SABER TIGER | TOBIAS SAMMET | VICIOUS RUMORS

DARK ASSAULT/IRON SAVIOR

ダーク・アソート/アイアン・セイヴィアー

VICTOR VICP-61248

[☆☆☆☆]

ドイツのパワーメタルバンド、アイアン・セイヴィアーの3枚目のアルバムです。めずらしくスペーシーなイントロ無しに始まった今度のアルバムはやっぱりソリッドなリフにこれでもかって叩きまくるドラムで暑苦しいサビとキャッチーなコーラスワークのパワーメタルなわけで。そういえばドラマーのトーマス・ナックが出戻って以前にも増して叩きまくってるような。カイ・ハンセンもメインで酢っぱいヴォーカルを聴かせたりギターソロを弾いたりで時にガンマ・レイだったりハロウィンだったりするのも毎度のことで特に今までとどこが違うと言われても困ってしまうようなアルバムですが(そんな事は訊くな)、この同じようなバリエーションの中で分かりやすい曲を何曲も出し続けるのは、ある種凄い才能かもしれないと思ったり…微妙に褒めていないような。
そして恒例のチャレンジ!カバー曲はクロークスとジューダス・プリーストです。

REALITY IN FOCUS/MAGNITUDE 9

リアリティー・イン・フォーカス/マグニチュード・ナイン

MARQUEE INC., MICP-10222

[☆☆☆☆]

アメリカのテクニカルバンド、マグニチュード・ナインのセカンドアルバムです。ゼロ・コーポレーションが無くなったおかげでリリースまでに苦労したようですが、その分内容は充実したものになってます。テクニカルなギターとキーボードでドラマを作りながら、情感豊かに唄い上げる伸びのあるヴォーカルでダークでミステリアス、更に緊張感のある楽曲を生み出してます。インストゥルメンタルのパートとヴォーカルがバランスよく配置されてどちらの魅力も充分に引き出されており、フラッシーなソロパートがより強調されるという効果を作り出していて、手が込んでいながらも複雑になり過ぎない展開の妙を感じさせます。スリリングな展開と叙情性を併せ持ったサウンドはテクニカル系の醍醐味を味あわせるものになっています。
で、アイアン・メイデンとレインボーのカバーもやってます。

COLLISION COURSE/PARADOX

コリジョン・コース/パラドックス

KING RECORD KICP-766

[☆☆☆☆☆]

約10年ぶりに復活したドイツのパワーメタルバンド、パラドックスのサードアルバムです。昨年に発表されたこのアルバムは解散した当時のままに激しく物悲しいメロディを持ったヘヴィメタルをやってます。初期のメタリカにも通じる切れ味鋭いギターリフと重くタフなリズム隊が繰り出す衝動的で爽快なサウンドは、憂いを帯びたメロディを奏でるツインリードギターを乗せて劇的に展開していきます。独特のクセを持ったフックのあるメロディは彼等の完全復活を強く印象付けると共に、ダイナミズムに満ちた楽曲に活気を与えており、ヘヴィメタルの醍醐味を堪能できるものになってます。

CASTLE OF YESTERDAY/REPTILIAN

キャッスル・オヴ・イエスタディ/レプティリアン

MARQUEE INC., MICP-10224

[☆☆☆☆]

マジェスティックのヴォーカリスト、ヨナス・ブルムとドラマーのヨエル・リンダーが中心となって北欧系の実力派アーティストを集めて作ったニューバンドのデビューアルバムです。その音楽性は多少荒れた声質のヴォーカルが唄い上げるマジェスティックに近いネオクラシカル系のスピードメタルですが、さらにリリシズムとクラシカルな展開を追求したものになっており、華麗なサウンドが展開されていきます。ピアノとギターの絡みが官能的なインストナンバーやパワーメタリックに押してくる曲、叙情性たっぷりのバラードなど揃え、北欧メタルらしい哀愁のあるメロディでドラマティックに仕上げています。

SABER TIGER/SABER TIGER

サーベル・タイガー/サーベル・タイガー

VAP INC., VPCC-81355

[☆☆☆☆☆]

北海道を本拠地とする正統派パワーメタルバンド、サーベル・タイガーの多分9枚目のアルバムです。遂にセルフタイトルとなったこのアルバムでは多くの面でレベルアップしたサウンドが縦横無尽に駆け巡っており、様々なプロジェクトで実力を発揮しているヴォーカルも水を得た魚のようにパワー全開で情感豊かなパフォーマンスを聴かせています。また、鬼気迫る迫力の壮絶さらに華麗なギタープレイもいつもに増して切れ味鋭いもので、ヴォーカルに負けず劣らずエモーショナルに弾きまくっています。
特に強いフックを持ったリフとコーラスワークが鮮やかなのが印象的ですが、バラードナンバーからスピードナンバー、ヘヴィな曲にいたるまで純粋なヘヴィメタルが産み出す美学が貫かれており、ダイナミズムに満ち溢れたドラマティックな楽曲が目白押しのハイテンション、ハイエナジーな、まさしくヘヴィメタルを体現したようなサウンドを展開しています。とにかくイントロから最後のパワーバラードまで隙の無い緊張感に満ちた密度の高いサウンドが広がっています。

AVANTASIA−THE METAL OPERA−/TOBIAS SAMMET

アヴァンタジア −ザ・メタル・オペラ− / トビアス・サメット

VICTOR VICP-61260

[☆☆☆☆☆]

エドガイのヴォーカリストであるトビアス・サメットが豪華なメンバーを集めたプロジェクトアルバムです。オリジナルストーリーに基づいたファンタジックな世界を表現するこのアルバムは配役毎にヴォーカリストを配置する手法をとっており、そのメンバーにはヴァージン・スティールのデイヴィッド・デファイス、元アングラのアンドレ・マトス、ウィズイン・テンプテーションのシャロン・デル・アデルやゲストでおなじみのガンマ・レイのカイ・ハンセンなどのメロディックメタルでは名の知れたアーティストが集められています。また、バックのプレイヤー陣にはガンマ・レイ、ハロウィン、ラプソディーなどのメンバーが参加しています。
曲の方はもちろん、トビアス・サメットがメインでパワフルなヴォーカルを楽しげに唄うさまを聴かせたりするわけですが、それに次ぐ露出度なのがマイケル・キ…じゃなかった謎のヴォーカリスト、アーニーで伸びやかなハイトーンヴォーカルを披露しています。ロックオペラとは言ってもそれほど芝居がかった展開などは無くてシンフォニックでオーケストレーションが派手なパワーメタルサウンドが中心になってます。さすがにヘヴィメタル好きな人選だけあって、各ヴォーカリストの個性を活かした配置でドラマティックに曲を盛り上げます。とりあえずメンバーを眺めるだけでクラクラしますが、自分の好きな音を自由に楽しく作り上げたという感覚が伝わってくる気持ちの良いアルバムになってます。
さらに、めずらしいことに本編以上にボーナストラックが良かったりします。

SADISTIC SYMPHONY/VICIOUS RUMORS

サディスティック・シンフォニー/ヴィシャス・ルーマーズ

VICTOR VICP-61024

[☆☆☆☆]

アメリカのパワーメタルバンド、ヴィシャス・ルーマーズの8枚目のアルバムです。紆余曲折を経るうちにオリジナルメンバーはバンドの創設者であるジェフ・ソープだけになってしまいましたが、このアルバムではダーティな声質ながらパワフルでメロディを唄い上げる押しの強いヴォーカリストの加入によって故カール・アルバート在籍時のソリッドなパワーメタルサウンドが戻ってきています、ジャケットはバンド史上最も危険な薫りが漂ってますけど。楽曲の傾向としては「WORD OF MOUTH」アルバムの次あたりに位置するようなパワーメタルとヘヴィでグルーヴなリフがせめぎあうものですが、カール・アルバートを失った後の彼等がひどく遠回りをしてようやくここに辿りついたという思いを強く感じさせます。
重いリフを刻み込むヘヴィなナンバーから叙情的なメロディを紡ぎ出すメロウなナンバー、気だるい雰囲気を産み出すグルーヴィなナンバー、そして本領発揮の疾走感あるパワーメタリックなナンバーと色々ヴィシャス・ルーマーズらしい良いところ悪いところ全部ひっくるめた再スタートを切るにふさわしいアルバムになってます。





Februaly

ANNIHILATOR | DARK MOOR | FREEDOM CALL | ICED EARTH | MISANTHROPE | SECRET SPHERE | SOILWORK

CARNIVAL DIABLOS/ANNIHILATOR

カーニヴァル・ディアブロス/アナイアレイター

NIPPON CROWN CRCL-4774

[☆☆☆☆☆]

カナダのベテランバンド、アナイアレイターの8枚目のアルバムです。前作で復帰したランディ・ランペイジは脱退して、どういうわけか元オーヴァーキルのギタリスト!!だったジョー・コミューをヴォーカルに迎えて製作されています。
基本的にはダーティなスタイルを中心にしたヴォーカルを軸にアナイアレイター特有の細かいギターリフと、とにかく弾きまくりなテクニカルなギターソロを持った楽曲が揃っていますが、メタリックで切れのある1からヘヴィに迫りながらもインストゥルメンタルパートでは華麗に展開する2、スラッシーで小気味いいリフを主体に二転三転する盛沢山なスピードナンバーの3、“NEVER,NEVERLAND”風のダークでメロウな4までの彼等らしいナンバーに続いて、どうを切ってもAC/DCな5(かなり笑える)からジューダス・プリーストの“THE RIPPER”的なインストを含むオーセンティックな6にパワフルなスクリームを聴かせる7、叙情的なパートと攻撃的なパートのコントラストが鮮やかな8、メランコリックなインストナンバーからアイアンメイデンばりのツインリードを聴かせるパワーメタルナンバーの10、華麗に突進するスピードナンバーの11など、彼等のキャリアを回顧させるようなバラエティに富んだものになっています。
予想以上に表現力のあるヴォーカルを迎えたことで、スラッシュメタルの制約から解放されて様々な楽曲を自在に表現する、ジェフ・ウォーターズの本領を充分に発揮したアルバムになってます。

THE HALL OF THE OLDEN DREAMS/DARK MOOR

ザ・ホール・オブ・ジ・オールデン・ドリームス/ダーク・ムーア

SOUNDHOLIC TKCS-85010

[☆☆☆☆☆]

スペイン出身のシンフォニックメタルバンドのセカンドアルバムです。女性ヴォーカルを擁するそのサウンドはネオクラシカルなフレーズを活かしたドラマティックなものになっていて、ファンタジックな歌詞世界と共に起伏に富んだ楽曲が揃っています。叙情的なマイナーメロディを唄い上げる繊細でいてパワーのあるヴォーカルは重厚なバックの演奏を導いて扇情力の強いダイナミックなサウンドを産み出しており、 イントロからネオクラシカルな風味の強い2、キャッチーなコーラスの3、ブラインド・ガーディアンもかくやと思わせるクワイヤとパワーメタリックな展開を聴かせる5など劇的な展開の渦が形成されていきます。
華麗で荘厳な劇的世界を飛翔する北欧的な透明感のあるサウンドを持ったラテンの血が燃え滾るドラマティックなヘヴィメタルが隅から隅まで詰め込まれた会心の一枚になってます。

CRYSTAL EMPIRE/FREEDOM CALL

クリスタル・エンパイア/フリーダム・コール

VICTOR VICP-61271

[☆☆☆☆]

元ムーンドックのクリス・ベイとガンマレイのダン・ツィマーマンによるバンドのセカンドアルバムです。ファーストアルバム同様ファンタジックなオリジナルストーリーに基づいたアルバムになってます。リリカルなイントロからキャッチーなメロディのファンタジックメタルが展開されていきます。クワイアも盛沢山で合唱必至のサビ満載の思わずツーバスを連打してしまう壮大なサウンドと分かりやすいギターソロが深刻にならない粘り腰のヴォーカルと結びついて、歌詞はともかく何故かのほほんとした雰囲気になってきます。あまり緊張感を強調しない、言ってみれば誰も死なない任天堂的ファンタジーRPGみたいな明るい面を押し出したポジティヴな楽曲が揃っていて、それは聴く人によっては作り物めいてウソくさいと思えたりディズニーランド好きな人にはエンターテイメント万歳って感じです。
夢と希望と愛が待ちうける冒険の世界にようこそ!に馴染める人は幸せになれます。

THE MELANCHOLY E.P./ICED EARTH

ザ・メランコリーE.P./アイスド・アース

VICTOR VICP-61308

[MINI]

SOMETHING WICKED THIS WAY COMES」アルバムからの曲のシングルカットを中心としたミニアルバムです。バッド・カンパニーやブラック・サバス、ジューダス・プリーストのカバーなどが入ってますが既出の曲ばかりなのでバンドを知らない人には向いていない、と言うかこれはニューアルバムの出荷数を決めるための試金石ですか。もしかして熱心なファンにとっての忠誠心を確かめるための踏絵ってやつですか。お金と彼等の新作に期待を持っている人は無理して買ってください。

IMMORTAL MISANTHROPE/MISANTHROPE

インモータル・ミサントロプ/ミサントロプ

MARQUEE INC., MICP-10230

[☆☆☆☆]

フランス出身のデスメタルバンドの5枚目のアルバムです。いきなり飛び出すキラキラキーボードなフレーズが暴虐なヴォーカルと一緒に迫ってくる、形としてはチルドレン・オヴ・ボドムみたいな展開を見せながらイン・フレイムスもやってみるというオリジナリティ?はあ、何ですか?なサウンドです。激情の叫びと普通に唄うパートを使い分けたりしてダイナミズムを産み出そうとしてますが曲自体はキーボード主導なので今一つ押しが弱いかもしれません。雰囲気自体は良いような気もしますが、どこかしら微妙な出来映えが隔靴掻痒ってやつですか。それともちょっと巻き舌だからですか。
とりあえずヴォーカルは様式美体型な上にフリル付き様式美装備で決めてます。

A TIME NEVERCOME/SECRET SPHERE

ア・タイム・ネヴァーカム/シークレット・スフィア

MARQUEE INC., MICP-10229

[☆☆☆☆☆]

イタリア出身のシンフォニックメタルバンドのセカンドアルバムです。とりあえず、とんでもなく成長しています。神秘的なSEから物悲しいピアノで幕を開けるアルバムは起伏に満ちた楽曲が揃っており、壮絶で炸裂するような疾走感に満ちたヘヴィリフとドラムの連打の有無を言わさぬ迫力と凄みを感じさせるパートと華麗に舞い踊る透明感あるキーボードサウンドにテクニカルなギターの流麗さが作り出すダイナミズムは物語性を強く打ち出しています。リリカルなフレーズと激烈なパートの切り返しがカタルシスを産み出しており、予想のつかない展開はプログレッシブロックの空気を感じさせます。
一人の少女の自分探しのオリジナルストーリーに基づいた濃密で分厚いサウンドはさしずめイタリアに染まったシンフォニー・エックス、もしくはガンマレイの曲をやってるストラトヴァリウスのようですが、それはさておき。
バックのサウンドとの均衡を保つためにはもう少し馬力と迫力のあるヴォーカルの方が良いような気もしますが、何はともあれ先達の影響をほとんど自分達のものとして更に乗り越えんとする気概に満ちた渾身の一枚になってます。

A PREDATOR'S PORTRAIT/SOILWORK

ア・プレデターズ・ポートレイト/ソイルワーク

SOUNDHOLIC TKCS-85011

[☆☆☆☆☆]

スウェーデンのメロディックデスメタルバンドのサードアルバムです。突進力と切れ味鋭いギターが特徴的なバンドでしたが、今回のアルバムではクリーンな歌唱法を大幅に取り入れて扇情力と叙情性に満ちた湿ったメロディの強化を図っています。オーセンティックなヘヴィメタルの薫りが漂うメロディアスなリフに破壊的なヴォーカルと浮遊感あるヴォーカルが交互に乗る様は曲に強いドラマ性を生み出しており、狂おしく情感豊かに切れ込むメロディアスなギターソロがダイナミックに展開する曲の構成に拍車をかけています。
バックで微かに流れるキーボードのサウンドとUKロックを彷彿とさせるクリーントーンのコーラスが欧州的な寂寥感を作りだしており、独特の触感を与えるアルバムになっています。





March

ARK | DARKANE | INSANIA | KALMAH | LACUNA COIL | LOST HORIZON | RAGE | SEPULTURA | SEX MACHINEGUNS

BURN THE SUN/ARK

バーン・ザ・サン/アーク

MARQUEE INC., MICP-10236

[☆☆☆☆☆]

ノルウェー出身の元コンセプションのトゥーレ・オスレビーが中心になって、イングヴェイ・マルムスティーンズ・ライジング・フォースに参加しているヨルン・ランデ、マッツ・オラウソン、ランディ・コーヴェン、ジョン・マカルーソって、ギタリスト以外は全部ですが、が参加して制作されたセカンドアルバムです。様々な音楽要素を詰め込んで、テクニカルなプレイを聴かせるバンドですが、二枚目のこのアルバムではヴォーカルを前面に出して、実験的とも思えた前作よりも分かりやすいキャッチーな魅力を持ったメロディアスなハードロックサウンドを作り出しています。ブルージーだったりジャジーだったりスパニッシュだったりプログレッシヴだったりするスリリングな変幻自在のギターと、それを支えるリズム隊にキーボ―ド、そして情感あふれるパフォーマンスを聴かせるヴォーカルによって、作りこまれていながら艶っぽい感触を持ったサウンドが繰り広げられ、懐の深い奥行きのあるアルバムになってます。

INSANITY/DARKANE

インサニティ/ダーケイン

TOY'S FACTORY TFCK-87237

[☆☆☆☆☆]

スウェーデンの元アーク・エネミーのドラマー及びAGRETATORのメンバーによって結成されたバンドのヴォーカルが交替して製作されたセカンドアルバムです。スラッシュメタル色の強い疾走感のあるデスメタルを前作で披露した彼らですが、今度のアルバムではホラー映画のサントラのような雰囲気を持った怪奇色の強い長尺のドラマティックなイントロダクションから始まり、攻撃的なスラッシーで切れのあるリフと嵐のような激しいドラムの渦に叩きこんでいきます。今度のヴォーカリストは狂ったように叫ぶ狂暴なところばかりでなく、怪しいメロディを朗々と唄ったり、多彩な表情を見せたり、楽曲の方も激烈なパートとのコントラストを強く打ち出すかのようにギターソロはメロディアスかつ滑らかにプレイされ、またクリーンなコーラスがヒートアップする曲にアクセントを加えており、ノンストップ・ジェットコースターのような起伏の激しい展開がほとんど全編で繰り広げられています。
突出して目立つパワフルで派手なドラミングが特徴的なサウンドですがテクニカルなギターも一歩も引かずにぶつかりあっており、そのキャッチーな要素をも持った密度の高い音は轟音系なデヴィン・タウンゼンドを思い出させたりします。凶悪さはかなり上回ってますけど。
さらにインターミッションがあってアウトロで締めるこのアルバムはもしかするとコンセプトアルバムかもしれないです。

SUNRISE IN RIVERLAND/INSANIA

サンライズ・イン・リヴァーランド/インサニア

MARQUEE INC., MICP-10233

[☆☆☆☆]

スウェーデン出身のバンドのセカンドアルバムです。ジャケットを見れば一目瞭然のヒロイックファンタジーな世界観を構築するメロディックメタルを前作同様やってるわけですが、ぶっちゃけた話限りなく守護神伝なハロウィン及びストラトヴァリウスに近づいてきたというか、初めて聴いた気がしないサウンド、さらに曲名、さらにフレーズ!?(具体的には“HEADING FOR TOMORROW”といいながら“EAGLE FLY FREE”な7曲目とか)という感じの楽曲が、微妙に不安定なハイトーンヴォーカルで産み出されています。さすがにセカンドアルバムだけに曲作りもこなれてきて、フックのあるメロディに聴き手のツボを突く展開やキャッチーなサビ&シンガロングなコーラスなど、この系統のアルバムとしては完成度が高まっていて、北欧らしい澄んだサウンドで嫌味の無いものに仕上ってます。
けれども、抜きん出たところの無いこのアルバムを積極的に選ぶ理由を見つけ出すのは難しくなっています。

SWAMPLORD/KALMAH

スワンプロード/カルマ

KING RECORD KICP-788

[☆☆☆☆]

フィンランド出身のメロディックデスメタルバンドの2000年発表のデビューアルバムです。同郷のエターナル・ティアーズ・オヴ・ソロウとかなりメンバーが重なってますが、それは北欧のヘヴィメタルシーンではよくあることなので、さておき。音の方は哀愁たっぷりでトラッド風味満載の少しほろ苦いメロディを徹底的に詰め込んだ上に、咆哮系のディストーションヴォイスという今ではすっかり珍しくなくなった手法で組み立てられています。デスメタル的な邪悪さはほとんど皆無で、どちらかと言えば泣きのメロディ炸裂のゴシックメタルのような雰囲気を持ったサウンドになっており、攻撃的でスリリングな展開よりも感情に訴えかける方向で進んでいきます。一番疾走感があるのがボーナストラックと言うのが何ですが、割と印象が地味と言うか淡々と進行していくので派手なプレイとか、もっと起伏の激しい展開が欲しいところです。

UNLEASHED MEMORIES/LACUNA COIL

アンリーシュト・メモリーズ/ラクーナ・コイル

VICTOR VICP-61322

[☆☆☆☆]

イタリア出身のゴシックメタルバンドのセカンドアルバムです。男女二人のヴォーカルの比重が均等なところが特徴的なこのバンドですが、今回は澄みきった女性ヴォーカルの方がメインになってミステリアスで浮遊感漂うサウンドが粛々と展開されていきます。リフやドラムのエッジがそれなりに立っているので、メロディ満載で唄主導でもあまり甘くなりすぎない締まったサウンドになってます。陰鬱に入り過ぎない適度に湿ったメロディが暗く妖しい世界を情感豊かに描き出します。

AWAKENING THE WORLD/LOST HORIZON

アウェイクニング・ザ・ワールド/ロスト・ホライズン

VICTOR VICP-61274

[☆☆☆☆]

スウェーデン出身のバンドのデビューアルバムです。ハンマーフォールのメンバーと一緒にやっていたHIGHLANDERというバンドが母体になって結成されたバンドですが、そのバンド名から分かるように、日本刀を持った不死人達が現代で闘争を繰り広げる、伝奇アクションチャンバラ活劇カルト映画、でもショーン・コネリーも出演してるんだよコレが、な「ハイランダー」にインスパイアされて歌詞までストーリーに準じるとともにコスチュームを作ってさらにリングネームじゃなくて名前まで付けて闘いのメイクをしつつ、さらに驚愕のバンドのアティテュードがヘヴィメタル万歳という、メタルバカ一代な熱い大型新人(一部地域)です。
曲や雰囲気的には先行しているメタリウムにも似たオーセンティックなヘヴィメタル路線ですが、北欧のバンドらしい叙情的なメロディを大切にするところもあり、馬力で押しまくるだけではない面を見せる、泣きメロ主体なりフを中心にしています。ヴォーカルはロブ・ロックとラプソディーのファイビオ・リオーネを足して二で割ったような力強いタイプですがハイトーンやシャウトも要所ではテンション高く決めていたりで、その歌唱は不安定さを全く感じさせない説得力のあるもので、さらに安定したテクニックを持つバックの演奏陣、特にギターはフラッシーなフレーズ連発でクオリティの高いサウンドを作り上げています。
スウェーデンにもパワーヴォーカルがいたという事を知らしめると共に、メタルバカ一代も伝統的に受け継がれている土地だったのか!という真実を伝える、「真メタル伝導師新世紀伝説」って感じです。

WELCOME TO THE OTHER SIDE/RAGE

ウェルカム・トゥ・ジ・アザー・サイド/RAGE

VICTOR VICP-61328

[☆☆☆☆]

ドイツのベテランヘヴィメタルバンド、RAGEのどう数えても12枚目なのだが、アルバムタイトルからの流れ上15枚目になってしまう3人編成に戻っての二枚目のアルバムです。
なるほど、マインド・オデッセイに居たヴィクター・スモールスキがバンドにもたらした影響は楽曲のクレジットに如実に表れており、そこかしこにネオクラシカルなフレーズやテクニカルなプレイを導入して新たな面を作り出しています。2、3、8などではクラシックとの融合を目指す以前の躍動感が戻ってきており、彼ららしいスタイルのメタルナンバーもあり、“TRIBUTE TO DISHONOUR”の組曲ではピアノを含むオーケストレーションな展開で今までに無いドラマティックな仕上りを見せます。ブルージーな11やダークで怪しいピーヴィー節炸裂なタイトルトラックの12、キャッチーなのかダークなのか良く分からん14とか未だかつてこのバンドでは聴いたことが無いシャッフルするリズムからスピードが上がったりする15など、いつにも増してバラエティに富んだ曲が揃っていますが、良い意味でのバカなところがすっかりなくなってアダルトなヘヴィメタルになってしまったような。
メロディの充実に反して攻撃性や疾走感などは減退している彼らですが、それ以上に獲得したドラマ性やダイナミズム、リリシズムによって楽曲はより充実したものになっています。けれども、もっと速い曲が聴きたいのも人情でしょうか、つーか聴かせろ。いや、それよりもこれだけのソングライターを奪われたマインド・オデッセイの明日はどっちだ。

NATION/SEPULTURA

ネイション/セパルトゥラ

ROADRUNNER RECORDS RRCY-11143

[☆☆☆☆]

ブラジル出身のヘヴィバンドの8枚目のアルバムです。前作では急遽迎えられた新ヴォーカリストとの摩擦がサウンドにも表れていましたが、メンバー揃って製作されたこのアルバムでは、バンドとしての一体感が産み出されています。
シンプルでヘヴィなリズムに煽り気味に叫ぶ根源的な部分に訴えかけるサウンドは、大河に恵まれた密林の奥深くで古来から伝わる伝統と信仰(多分蛙の姿をした神様を崇めている)を守りながら生き続ける部族の年に一度の祭に偶然出くわしてしまって、その場の勢いから部族の長に気に入られてしまって手作りの酒盃を重ねるうちに、どういうわけか長の一人娘(部族内では美人と評判)と結婚する羽目になって、どうやって断ったものかと考えているうちに周りでお祝いの踊りが始まってしまって祭は最高潮になって身動き取れなくなっているような、そんな現地のガイドにも見捨てられてしまった、ある意味心落ち着く年貢の納め時を思わせたり、H.P.ラヴクラフトの描くところの妖しげな未開の民が行なう魔宴が、よくよく見てみれば日本の盆踊りじゃないか、みたいな、そんな異国情緒の中にも故郷の郷愁を感じさせたりする原初の衝動を駆りたてる音作りがされています。
ヴォーカルも怒号一辺倒ではなく怪しげなメロディを唄い上げたりして曲にメリハリをつけています。チェロでヘヴィメタルを演奏するアポカリプティカもゲストで参加して、今までとは異なった面を聴かせる新生セパルトゥラの誕生といった感じです。

BARBE-Q マイケル/SEX MACHINEGUNS

BARBE-Q マイケル/セックス・マシンガンズ

TOSHIBA EMI TOCT-24546

[☆☆☆☆]

お茶の間でも大人気(ホントか)の巷ではコミックバンドと思われているセックス・マシンガンズのサードアルバムです。日本のバンドだと結構一大事ですが、メタル界ではよくあることのメンバーチェンジでドラマーが替わってます。
曲の方は多分テレビでも演奏してイチ押しなのであろうモトリー・クルーの“DR.FEELGOOD”風の1、のろいメタリカみたいで詰まらんですけど、を皮切りに彼等らしい泣きメロ炸裂のメロディックメタルナンバーの2、X−ジャパンみたいな3、ドラマティックな4、何言ってるか分からんブラック/デスメタルに問題提起を促すディストーションヴォーカルを導入したヘヴィでスラッシーな5、初期テスタメントみたいな6、妖しい雰囲気いっぱいなのにコーラスは漢臭い7とか、スピードひかえめの“BATTERY”で唄メロ演歌な8とか、スピードメタルナンバーの11とか、狙ってやってるとしか思えない80年代パワーメタルなサウンドがそこかしこに展開されていくのはいつものことですが、割とシンプルでストレートな曲が増えたような。
とりあえず、今ではバラエティ番組のBGMでしか流れないようなタイプの曲を演り続ける姿勢は評価に値しますが、もう少しオリジナリティのある曲が欲しい今日この頃です。[3/10追記]





April

ARCH ENEMY | AT VANCE | DIMMU BORGIR | FEAR FACTORY | HATESPHERE | IN THY DREAMS | SAVATAGE | UNITED

WAGES OF SIN/ARCH ENEMY

ウェイジズ・オブ・シン/アーク・エネミー

TOY'S FACTORY TFCK-87245

[☆☆☆☆]

スウェーデンのギターブラザース、アモット兄弟率いるアーク・エネミーの4枚目のアルバムです。衝撃のメンバーチェンジであった女性ヴォーカルの導入はスタイルとしては前任者よりも凶悪であったということが判明して容姿では驚愕を与えたものの音としては衝撃では無かったのは喜ぶべきか悲しむべきか。
それはさておき。
ピアノの物悲しい響きに導かれて、小気味いいテンポの微妙にハロウィン風味なリフ及びギターソロのメロディアスなナンバーで始まるこのアルバムは、分かりやすい多彩な表現を得た代わりにバックの演奏からはデスメタルな要素がかなり減退して、ついでに暴虐的な雰囲気や爆発力、突進力も薄まり、その辺りの要素は狂暴で極悪なヴォーカルが孤軍奮闘と言った感じになってます。ミドル〜スローテンポのヘヴィネスを強調した曲が目立ち、これまでには無かったムーディなタイプの曲も増えており、新たな局面に向かう姿勢を強く感じさせています。
しかし、バラエティに富んだ楽曲が増えたことによって、この前任者よりも強力なヴォーカルとの違和感が強調される結果になっていて、思ったよりは居心地のあまり良くないサウンドが展開されることになり、またアモット兄弟の流麗でメロディアスなギタープレイはいつも通りの冴えを見せていますが、ことリフになると今までよりは切れが失われているような感もあります。
とは言え、扇情的で豊潤なメロディを余すことなく聴かせる手腕は相変わらずの巧者振りを見せ付けますし、高いクオリティのサウンドプロダクションとタイトなプレイは後続のバンドがまだまだ到達できないところに位置していることは間違いありません。

DRAGONCHASER/AT VANCE

ドラゴンチェイサー/アット・ヴァンス

VICTOR VICP-61343

[☆☆☆☆]

ドイツ出身のメロディックメタルバンドのサードアルバムです。いつも通りの伝統的なネオクラシカルな展開を見せるドラマティックな楽曲が揃ってますが、とりあえずこのアルバムでは頭の三曲に疾走感のあるナンバーを持ってくることによって聴き手を掴んで強いインパクトをアピールするのに成功しています。能力の限界に挑むかのように全力を投入する華麗なギターの緊迫感あふれるプレイは今までに無い凄みを見せており、この作品に掛ける意気込みを感じさせますが、いかんせん気合を入れすぎてギターが目立ちすぎるせいか、ヴォーカルの個性を半減させており唄えるヴォーカルを持ちながら充分に活かせないのは、かなり勿体無い気がします。表現力豊かに朗々と唄い上げるヴォーカルの魅力を最大限に引き出している曲がアバのカバーというのも何とも。勢いのある曲が増えて全体的にも密度が高いアルバムにはなっていますが、もう少し余裕がある音作りの方が艶っぽい楽曲になって表情が豊かになるような。
4曲目に配されたアルバムの流れを打ち砕くベートーベンの「運命」は流石に二周目にはスキップしたくなること必至です。

PURITANICAL EUPHORIC MISANTHROPIA/DIMMU BORGIR

魔界大憲章/ディム・ボガー

MARQUEE INC., MICP-90005

[☆☆☆☆☆]

ノルウェー出身のベテラン・ブラックメタルバンドのきっと6枚目のアルバムです。メンバーはいつも通り色々足したり引いたりされてますが、元クレイドル・オブ・フィルスのドラマーとオールドマンズ・チャイルドのギターが入ってます。レコーディングはメロディックデスメタルの総本山のスウェーデンのイエテボリでプロデュースは然るべき筋では有名にフレドリック・ノードストロムがやってます。
シンフォニックなブラックメタルを基調にしたサウンドを展開してきた彼らですが、今作では本物のオーケストラを導入して、そのサウンドの重厚さと荘厳さをパワーアップさせており、デスヴォイスだけでなくオペラ風の歌唱を加えたり華麗なキーボードも満載で、さらにドラマティックに曲を磨きこんでます。言わば、恐怖と混沌が支配する邪気と冷気に満ちた有機的な質感に彩られた黒い古城で繰り広げられる荘厳で流麗な暗黒舞踏会で踊る冥府の騎士と骸なる貴婦人達を悠然と見下ろす狂気の領主に導かれて、蒼い月が天空を覆う漆黒の夜の世界で始まる混乱した悪霊と続々出現する魔神が蠢く祝宴によって開かれた異様な秩序に支配される奈落が口を開く様を天空から天使達が不安げに見守る、そんな絵が見えます、いや観てください。
ブルータルなリズム、歪んだギター、ヴォーカルと美しささえ感じさせるオーケストレーションのコントラストが産み出す暗黒の世界が織り成すサウンドは既に映像の域に達しています。そして今作でも話題沸騰のエロスとサディズムとイコンが渾然となったジャケットは見えているのか、見えるのか?本当に見えるのか!?

DIGIMORTAL/FEAR FACTORY

デジモータル/フィア・ファクトリー

ROADRUNNER RECORDS RRCY-11134

[☆☆☆☆]

ロサンゼルス出身のバンドの四枚目のアルバムです。サイエンスフィクションなSEと機械的でクリティカルなビート、それにソリッドなリフの上を咆哮するヴォーカルに浮遊感あるメロディを持ったコーラスとこれまでのスタイルを踏襲しつつ、シンプルに変則的な唄メロを活かす方向で組み立てられた楽曲は、デジタルの海をさ迷いながら増殖する仮想生命体を想起させつつ、緊張感と切迫感に満ちた混沌と秩序の境界を探求する求道者にも似たストイックな感覚を味あわせます。高密度の塊のように聞える渾然一体化したリフ、ヴォーカル、リズム隊の圧搾機のように叩きつけるパートから一転してあらわれる、開放感のあるクリーンなコーラスの強烈なコントラストが繰り出す音の渦が脳髄のシナプスを焼き切る様に突き刺さってくる様は、さしづめ「銃夢」に登場するザレム人の立場に追いやられたような。
高度に進んだ科学は魔術と区別がつかないとか言う言葉がありますが、現在を越え遥か先の領域を見据える彼らも現実を越えた幻想の世界に近づいているのかもしれません。
ボーナストラックはスラッシーで分かりやすい曲になってます。
(4/22 ネタバレ炸裂のため内容修正)

HATESPHERE/HATESPHERE

ヘイトスフィア

SOUNDHOLIC CO.LTD TKCS-85013

[☆☆☆☆]

デンマーク出身のバンドのデビューアルバムです。いわゆる叙情メロディックデスメタルです。初期のイン・フレイムスダーク・トランキュリティーのようなサウンドを主体に突進力のあるスラッシーなリフで疾走感を強調した曲や、ブラックメタル色の強いブラストビートで邪悪に迫る曲など色々バリエーションを広げながら、突っ走ったり起伏のある展開で慟哭のメロディを聴かせたりするスタイルで特別凄いところは無いですが、安定した楽曲を聴かせる良質なアルバムになっちゃってます。
割と迫力のあるディストーションヴォーカルとか時折現れる少し盛り上がるノーマルな叫びとか、泣きのギターソロに光るものがあったりして、先行者(股間にビーム砲ではない)がぬるくなってきたと感じられる向きには、この新しいバンドの勢いに任せて突き進むさまは魅力的に映るでしょう。

HIGHEST BEAUTY/IN THY DREAMS

ハイエスト・ビューティー/イン・ザイ・ドリームス

SOUNDHOLIC CO.LTD TKCS-85012

[☆☆☆]

スウェーデン出身のバンドのセカンドアルバムです。デビューアルバム同様叙情的なメロディを配して邪悪さたっぷりの取って食われそうなわめき声ヴォーカルが叫んで廻るブラックメタルです。いわゆる北欧系メロディックデスメタルなバンド群よりはダークな雰囲気といかがわしさが特盛くらいで、でも全体的な印象はあまり変わらなかったりしてますがスピード感もたっぷりで、起伏のある展開とか一応聴かせどころは押さえてます。ぱっと聴いてもどのバンドか分からないほど個性は希薄ではありますが、まあボチボチ。

POETS AND MADMEN/SAVATAGE

ポエッツ・アンド・マッドメン/サヴァタージ

NIPPON CROWN CRCL-4780

[☆☆☆☆]

アメリカン・ドラマティックロックの雄、サヴァタージの12枚目のアルバムです。前作からしばらくのブランクの間にヴォーカリストは脱退するはギタリストはメガデスに取られるはだ踏んだり蹴ったりな状態のバンドですが、そこはバンド創設者のジョン・オリヴァと黒幕(笑)ポール・オニールの力によって、やっぱりいつも通りのドラマティックなサウンドが展開されているわけで。
最初の一音で既に彼らの世界に引き摺りこむ独特で特徴的な音作りは相変わらずの冴えを見せており、重い題材を扱うアルバムにふさわしい幕開けを迎えます。粘りとタメのある印象的なギターソロや多層に重ねられる輪唱コーラスもあり、華麗で物悲しいピアノパートも揃っており、起伏のある劇的な展開がそこかしこに配されています。少し最近のアルバムとは違う音色のキーボードとギターが用いられているのはヴォーカリストの抜けた分をカバーするためでしょうか。
ジョン・オリヴァの単独ヴォーカルという事で予想されるのは「STREETS A ROCK OPERA」あたりの雰囲気なワケですが、そこまで彼のパフォーマンスも芝居がかったものではなく、ここ最近のアルバムのダークでヘヴィ、かつグルーヴィな部分を抽出したようなものになっています。いかにジョン・オリヴァが経験と表現力を持っているとは言え、そのダーティな声質では楽曲の幅が狭められるのは否めないところで、全体的な印象は質実剛健といった風です。
そして、ボーナストラックを聴くとヴォーカリストの脱退が大変悔やまれます。

INFECTIOUS HAZARD/UNITED

インフェクシャス・ハザード/ユナイテッド

HOWLING BULL RECORDS HWCA-1039

[☆☆☆☆☆]

日本のベテランスラッシュメタルバンドの数えたところでは6枚目になるアルバムです。今作から元DEATH FILEのヴォーカリストが新たに加わって製作されています。
新しいヴォーカルはデスメタル寸前の咆哮系のディストーションヴォーカルで強烈な印象を与える破壊力のある声を披露しています。楽曲の方は今までのヘヴィネス路線を払拭するかのような壮絶な突進力と疾走感にあふれる切れ味鋭いスラッシーなリフを刻み続け、異様にタイトなドラムとベースのリズム隊が休むことなく音の壁を叩きつけてきます。メタリカテスタメントを彷彿とさせる80年代スラッシュメタルの息吹を感じさせるメタリックでカッティングの効いた緊迫感の高いリフに、緊張感を持って衝動的にかき鳴らされるギターソロに繰り返されるリズムチェンジ、そして怒りに満ちたコーラスが90年代のヘヴィなサウンドに彩られて、攻撃的で狂暴なテンションの高いアルバムを産み出しており、国籍を感じさせない苛烈さに満ち満ちています。
締まり過ぎとも思えるドラムの音は多少サウンドを軽くしている感もありますが独特の個性を発揮している風でもあり、細かいことはほとんど気にかけさせない猛烈な勢いと圧迫感に満ちた空間がここには存在しています。そしてCD-EXTRAにはビデオクリップのオマケ付き。





May

ADAGIO | EMBRACED | JEREMY | LYZANXIA | MEGADETH | OPETH | SHADOW | SHADOW GALLERY | TO/DIE/FOR | VOLCANO | ZONATA

SANCTUS IGNIS/ADAGIO

サンクタス・イグニス/アダージョ

MARQUEE INC., MICP-10241

[☆☆☆☆]

フランス出身のギタリスト、ステファン・フォルテがピンク・クリーム69のヴォーカルやマジェスティックのキーボード、エレジーのドラマーなどのメンバーを集めたプロジェクト存続すればバンド、のデビューアルバムです。
荘厳で高貴な雰囲気を醸し出すドラマティックな楽曲にネオクラシカルなギターとテクニカルなキーボードが絡み合い、パワフルなハイトーンヴォーカルが情感豊かに唄い上げるという、まるでシンフォニー・エックスなサウンドが縦横無尽に展開されるメロディアスでスリリングなヘヴィメタルをやってます。ノイジーなギターリフのヘヴィさから湿り気たっぷりのマイナーで煮えきらないヴォーカルメロディ、楽曲の持っている間から、ちょっぴりミステリアスで芝居がかったところも、かなり似ているわけですが、そこはテクニカルで名を馳せるキーボーディストのリチャード・アンダーソンのプレイが目立っておりネオクラシカルな面が強調され、より繊細でヨーロピアンなサウンドになってます。
パフォーマンス、テクニックともに一級品の高品質サウンド、惜しむらくはオリジナリティの不足でしょうか。

WITHIN/EMBRACED

ウィズイン/エンブレイスト

KING RECORD KICP-792

[☆☆☆☆]

スウェーデン出身の7人組バンドのセカンドアルバムです。基本的には叙情メロディ満載のメロディックデスメタルなわけですが、メンバー構成が少し変わっていてツインギターにツインキーボード!というリード楽器が沢山あるメロディ構成要素に関しては手駒が豊富なバンドです。
絶叫型ハイトーン系ディストーションヴォーカルを連れ立って産み出されるサウンドは優雅で豪華なパーティに配されたワイングラスで作られたグラスタワーの上から20年もののワインを流し込んで総てのグラスにワインを行き渡らせたところをカクテルライトで多様に映し出される光の乱舞を目の当たりにして華麗な情景に心を奪われた次の瞬間、一瞬の静寂の後、崩れ落ちるグラスによって次々と響き渡る破砕音の狂騒的な響きと次々生み出されるガラスの破片の新たなる煌きと溢れ出すワインの流れと香りが足元に迫るのを感じながら、破滅的で破壊的な状況に一歩足を踏み入れて突き刺さる破片による苦痛を確かめたくなる、危険な魅力に満ちた光景を現出させています。
緻密な構成とリリカルなメロディ、キーボードの華麗なサウンドと砕き、壊し、崩れ落ちる雪崩のようなコントラストとダイナミズムにあふれるアルバムになっています。でもキーボードが二人必要な理由はイマイチ見当たりませんでした。

FLYING OF EAGLE/JEREMY

フライング・オブ・イーグル/イェレミー

PONY CANYON PCCY-01510

[☆☆☆☆]

お隣韓国出身のクリスチャンバンドのサードアルバムです。サウンドは力むとちょっとアンドレ・マトスっぽくなるハイトーンヴォーカルを有するテクニカルなハードロックです。叙情的かつ柔らかいメロディを中心とした楽曲はキーボードとテクニカルなギターが絡み合い、時にはスリリングに、時にはドラマティックに展開されていきます。思わぬ展開とか驚愕のフレーズとか言うのは少ない分かりやすいサウンドと次々と繰り出される豊潤なメロディが核となって透明感のある楽曲を生み出します。インストゥルメンタルな曲ではネオクラシカルなフレーズ炸裂です。
高音部ではヴォーカルはちょっと余裕が無いように聞えたりしますが、口当たりの良い適度にハードなアルバムになってます。

EDEN/LYZANXIA

エデン/リザンクスィア

SOUNDHOLIC TKCS-85014

[☆☆☆☆]

フランス出身のバンドのファーストアルバムです。インダストリアルな雰囲気が漂うジャケットとは裏腹に展開されていくのはメロディックデスメタル経由の90年代スラッシュメタル風サウンド。プロデュースが北欧メロディックデスメタルの重鎮フレドリック・ノードストロム流に彩られたサウンドはディストーションヴォーカルを使ったデスメタルなパートやノーマルに唄うパワーメタリックな部分などで構成しつつ、叙情感たっぷりのメロディの滑らかかつ強烈な魅力を発するギターソロでドラマティックに盛り上げるものになってます。ギターソロやリフなどにはテスタメントメガデスといったバンドの影響を感じさせ、メロディックデスメタルなサウンドとのゴッタ煮感も強いですが、静と動を使い分けるダイナミズムに満ちた展開など、痛快なものになってます。
でも、つぎはフレドリック・ノードストロムじゃない方が良いと思います、いろんな意味で。

THE WORLD NEEDS A HERO/MEGADETH

ワールド・ニーズ・ア・ヒーロー/メガデス

VICTOR VICP-61348

[☆☆☆☆]

ギタリストに元サヴァタージのアル・ピトレリを迎えて製作された9枚目のアルバムです。前作の「RISK」で大幅にポップ路線に接近した彼らですが、ギタリストを替え、レーベルも移籍した今回のアルバムでは、刃物ロゴに戻してマスコットキャラクターも復活したグロテスクで趣味の良くないジャケットほどではないですが、メタリックな作風が戻ってきています。
YOUTHANASIA」風のミドルテンポでデイヴ・ムステインの自虐調歌詞を聞かせる冷たい1から、政治に対しての嫌味で皮肉たっぷりの皆が大好きスネ夫節のタイトでソリッド、でもサビとギターソロはキャッチーな2、かなり意外性の強いバラード、でもムステイン節だと何故か裏があるように聞える3から間髪いれずに始まるドライヴ感のあるロッカーな4、ダークなリフに他人の修羅場は端から見てると面白いなで恨み節炸裂の5、怒りに満ちたヘヴィでアグレッシヴ、そしてギターソロまで凶悪な6。
サヴァタージにも似たストリングスを導入した普遍的に感動的なドラマティックナンバーの7、ピリオド三つ曲名復活の8では憎悪に満ちた黒い曲調の“RECIPE FOR HATE”から攻撃的な“WARHORSE”へと鮮やかに展開し二人の個性的なギタリストのスリリングなギターバトルを聴かせます。ちょっとひねくれたインド風メロディの9で一息いれつつ、既出ながら「RUST IN PEACE」的なブレイクの効いたナンバーの10から彼らにしては珍しい曲調のインストから、あの“HANGAR 18”の続編に続きます。邪悪な雰囲気復活の戦闘的なリフにミステリアスなギターソロ、そして後半の切れたインストゥルメンタルのパートは緊張感に満ちています。最後のダークで奇怪なリフにムステインの唸り節の集合体の大作、かなりダイアモンド・ヘッドなのは、ご愛嬌な12、で幕を閉じます。全体的には後半から終盤にかけて盛り上がる、クライマックスを迎える曲が多いので最初の2、3分で曲の全体像を判断するのは難しくなってます。

メジャー級で活動するヘヴィメタルとして不特定多数を対象にした音と曲づくりが為されている最近のメガデスと人嫌いな感じたっぷりの昔のメガデスをシャッフルしたら、やっぱりメガデスになったみたいなサウンドがそこかしこで聴かれますが、可も無く不可も無…いや、ちょっと良いかな、な出来映えは喜ぶべきか悲しむべきか。良い人ぶりが板に付いてきたデイヴ・ムステインのひねくれぶりが復活してきたのが収穫でしょうか。でも“RETURN TO HANGAR”のおかげで「RUST IN PEACE」みたいな曲をもっと聴きたいと言う人が増えるような気もします。

BLACKWATER PARK/OPETH

ブラックウォーター・パーク/オーペス

VICTOR VICP-61363

[☆☆☆☆]

スウェーデン出身のバンドの5枚目のアルバムです。モノトーンのジャケットから予想される暗い森の悲しい御伽噺のようなサウンドが展開されていきます。メタリックなリフにディストーションヴォーカルのデスメタル風ナンバーから、まるでフォークソングのような叙情性に満ちたアコースティックな曲まで、微妙に絶望的で陰鬱な世界が様々な手法で描き出されています。メタリックな曲と静かな曲とのコントラストはかなり強いものですが、全編を流れる黒い流れのようなものに導かれて、アルバム全体としては統一されたカラーを持ったものになっています。
同系統アルバム
FOREVER AUTUMN/LAKE OF TEARS
SKELTON SKELETRON/TIAMAT
INSIDE/ORPHANAGE

SHADOW/SHADOW

シャドウ/シャドウ

MARQUEE INC., MICP-10245

[☆☆☆☆]

ブルータルなヘヴィメタルをリリースすることで知られるフィンランドの「SPINEFARM RECORDS」のサブ・レーベル「SPIKEFARM」から逆輸入で登場した日本のバンドのデビューアルバムです。何度聴いてもとても女性には聞えない激しい野獣めいたディストーションヴォーカルに畳みかけるツインギターのメロディアスなフレーズの、いわゆる北欧風メロディックデスメタルなスタイルのサウンドです。そのイン・フレイムスに多大な影響を受けたであろう楽曲は扇情力の高い情感豊かなメロディ満載の上、テクニカルでフラッシーなギターソロにフックのあるギターリフと切れ味の鋭い疾走感のある展開が聴き所ですが、手法としては既に多くのバンドによって試されたものばかりで新味には乏しいです。
それでもクオリティはかなり高いもので、先行するバンドが多様な方向性を得るに至った現在、空白が出来つつある初期のそれらのサウンドを埋めるには充分なものになっています。なによりも一番の衝撃は、このバンド名がまだ使えたという事でしょうか。
同系統アルバム
THE JESTER RACE/IN FLAMES
THE GALLERY/DARK TRANQUILLITY
OF ONE BLOOD/SHADOWS FALL

LEGACY/SHADOW GALLERY

レガシー〜先人たちの証〜/シャドウ・ギャラリー

ROADRUNNER RECORDS RRCY-11145

[☆☆☆☆☆]

アメリカのシンフォニック/プログレッシブロックバンドの4枚目のアルバムです。
透明感のあるヴォーカルメロディと華麗なコーラスを配した優しい前編から聴き手を一気に緊張感と緊迫感に満ちた楽器の攻めぎあいを聴かせるインストゥルメンタルの後編という構成のセカンドアルバム「CARVED IN STONE」収録のCLIFFHANGERの続編に当たる一曲目で幕を開けるこのアルバムは、ワルツのような優雅さとピアノの繊細な響きに導かれて幾重にも重ねられたコーラスが朝日の昇る雲海を進む飛行船のようにゆったりと流れていき、確実な地力に支えられて組み立てられていく音の部品によって完成される幻想の情景が産み出すのは一遍の物語。
音の繰り広げる愉悦にまどろみながら時間のゆらぎに溶け出していくのが至上の快楽かと思われます。

EPILOGUE/TO/DIE/FOR

エピローグ/トゥー/ダイ/フォー

PONY CANYON PCCY-01511

[☆☆☆☆]

フィンランド出身のバンドのセカンドアルバムです。デビューアルバムでも、その叙情的なメロディが際立ったサウンドでしたが、今作もそれに輪を掛けたイントロから思わず吹き出す自らの滂沱の涙で溺死寸前の泣きのメロディが炸裂しています。ニューウェイヴ風の旋律にテクノ調の装飾を施されたバックの演奏に自己憐憫の渦に巻かれて身悶えるヴォーカルの絶望的な歌唱がポップとも言える展開を見せる楽曲は北欧の冬間近の秋の林に吹き込む一陣の寒風のよう。もしくは凍る寸前の湖に一歩ずつ足を踏み込んでいく過程で徐々に感覚を失っていき、そのまま死に至ることを望むような。
とりあえず長く聴くのは精神衛生上良くない気がする凄まじい美麗暗黒系の癒されるような病んでいくようなクリティカルなアルバムです。

DAVI/VOLCANO

ダヴィ/ヴォルケイノ

VICTOR VICP-61365

[☆☆☆☆]

ガーゴイル〜アニメタルでその実力をあらわした屍忌蛇ひきいるヴォルケイノのセカンドアルバムです。今回ベースはレコーディングに参加しておらず、屍忌蛇がベースも演奏しています。
北欧メロディックデスメタルの影響を色濃く残したパワーメタルサウンドを展開していくという基本的なスタンスは変わりありませんが、二枚目となるこのアルバムではその方向性を少し広げ始めており、最近のアーク・エナミーイン・フレイムスに近い、良い意味での一般化を進めた分かりやすいアプローチが見られ、楽曲もバラエティに富んだものが揃っています。
期待感を煽るストイックなイントロからの攻撃的で疾走感ある一曲目から、キャッチーなメロディを持った2、かなりスピリチュアル・ベガーズ風(それより薄いけど)の骨太グルーブナンバーの4。 元VOW WOWの厚見玲衣がハモンドオルガンを弾く70年代ハードロックな雰囲気を出した5。リフからギターソロまで泣きまくる突進型の6やリリカルなメロディをふんだんに盛り込み、静と動のパートのコントラストで劇的なクライマックスを迎える7などにはイン・フレイムス的な手法が強く見られますし、ちょっとアクセプト風に男らしいコーラスのオーセンティックにヘヴィメタルな8や強力に情感を刺激する彼らにとってのパワーバラードと言える9など、どの曲にも華麗なギターソロが組み込まれているのは言うまでもありません。
多彩な展開を見せる楽曲には、少しパワーと表現力不足の感があるヴォーカルが物足りなく聞えるのも確かです。しかし、先行するバンドを時には上回る扇情性と、きっと日本人の琴線に触れるメロディを併せ持ったギターソロは強烈な個性と魅力を放っており、強力無比な日本が誇れるメロディアスヘヴィメタルであることは間違いありません。

REALITY/ZONATA

リアリティ/ゾナタ

VICTOR VICP-61345

[☆☆☆☆]

スウェーデン出身のバンドのセカンドアルバムです。前作では、そのヴォーカルスタイルと言い楽曲と言い、ガンマ・レイの縮小版といった感の強いジャーマンメタル色が色濃く出たサウンドでしたが、まるでプログレバンドのような繊細なジャケットと共に、今作はかなり様変わりしています。
キーボードを前面に押し出したサウンドはネオクラシカル風ギタープレイの華麗なものやフォーク風の民謡調メロディを使ったものやメジャーキーのコミカルなものなど、ドラマティックな展開を見せるものが増えており、表現力を増したハイトーンヴォーカルが扇情的なメロディを歌い上げています。リリカルだったりスリリングだったりするファンタジックな楽曲が、アイアン・メイデンのジャケットを手がけたことで知られるデレク・リッグスのジャケットアートと化学反応を起こして優しげで淡い水彩風の世界観を生み出しています。たった一言で言うならばキラキラです。
かなりレベルアップされたとは言え、先達のバンドの影響は完全には振り払う事は出来ていませんし、かなり辛そうなヴォーカルのパフォーマンスにも不満が残るところではありますが、とりあえずこの先のバンドの行く末にはかなりの期待が出来そうです。





June

BAL-SAGOTH | ICED EARTH | SONATA ARCTICA | STATIC-X

ATLANTIS ASCENDANT/BAL-SAGOTH

アトランティス・アセンダント/バルサゴス

SOUNDHOLIC TKCS-85017

[☆☆☆]

イギリス出身のバンドの4枚目のアルバムです。ロバート・E・ハワードの作品からバンド名をとったバンドがこのアルバムで選んだモチーフはアトランティス大陸の古代王国でコナン・シリーズなヒロイックファンタジーでサウンドの方もシンフォニックかつ壮大な展開のドラマティックメタルになってます。
大仰でサウンドトラック風の派手なイントロ/インストゥルメンタルから始まる楽曲は、そのファンタジックな雰囲気から映画「エクスカリバー」のような重厚長大なものを期待させますが、あまりにもキャッチーかつ能天気で躁状態で突っ走る大げさ加減に「モンティ・パイソンのホーリーグレイル」の方だったか!とドタバタヒロイックファンタジーな展開でちょっぴり笑いがこみ上げます。そんな展開を今時するか?!というようなお約束のベタベタな決めフレーズといい、恥ずかしげもなく飛び出すホーンの響きといい、何もかもがどうでもいい “ヘヴィメタルに似た何か”が徹頭徹尾繰り広げられる、とりあえず凄いアルバムです。
同系統アルバム
DAWN OF VICTORY/RHAPSODY
MIDIAN/CRADLE OF FILTH
GATHERED AROUND THE OAKEN TABLE/MITHOTYN

HORROR SHOW/ICED EARTH

ホラー・ショー/アイスド・アース

VICTOR VICP-61409

[☆☆☆☆☆]

フロリダ出身パワーメタルの雄、アイスド・アースの六枚目のアルバムです。今回のアルバムではDEATHCONTROL DENIEDに参加していたリズム隊の二人を加えて製作されています。
「ホラー・ショー」というタイトルが示すように、今作ではホラー映画でお馴染みのキャラクター、詳しく言えばイギリスのハマープロ系60年代映画とユニヴァーサル怪奇映画にどういうわけかオーメンを加えた、典型的で一般化されたイメージを描き出すものになっています。
ディーモンズ・アンド・ウィザーズのプロジェクトで得た厚いコーラスを効果的に使ってドラマティックなサウンドを更に強力なものにしており、タイトル通りの狼の咆哮を思わせる激しい1から邪悪な香りが漂うコーラスが印象的な666の数字の大曲の2、既に彼らの定番となったパワフルな3、新境地を開いた劇的なパワーバラードの4、アラビアンなメロディを用いた妖しい5から場面展開も鮮やかなハイライトナンバーの6、アイアンメイデンのカバーを挟んで「オペラ座の怪人」をモチーフにした、女性ヴォーカルとの掛け合いによって舞台性を演出しパイプオルガンの音色を盛り込んだ劇的な大作の11など、バンドの持っている怪奇性のイメージにシンクロした鮮やかで魅惑的、そして少しいかがわしい世界観が繰り広げられていきます。
より豊かになったメロディとさらに成長を続けるヴォーカルの表現力が産み出す黒い情動も保ちながら、ベテランの域に達したバンドの余裕を感じさせる楽曲は自信と確信に満ちており、タイトになったリズム隊の効果も加わって彼らの魅力を十二分に発揮するアルバムになっています。
欲を言えばショーだけにカーテンコールが欲しかったところでしょうか。
同系統アルバム
DEMONS & WIZARDS
IMAGINATIONS FROM THE OTHER SIDE/BLIND GUARDIAN
9/MERCYFUL FATE

SILENCE/SONATA ARCTICA

サイレンス/ソナタ・アークティカ

MARQUEE INC., MICP-10247

[☆☆☆☆]

フィンランド出身のバンドのセカンドアルバムです。ベースが脱退してます。キーボードとギターが高速バトルを繰り広げるキラキラ系メロディックメタルという路線は今作でも迷い無く突き進んでおり、それだけには止まらない幅を持たせた多様な面をも見せつつ、ヴォーカルも中音域の表現力をつけて楽曲の表情をより豊かなものにしています。バンドの成長に伴ってサウンドの方も洗練度が増してきて印象的にはストラトヴァリウスに接近しつつあるように聞こえます。
緩急をつけたドラマティックな曲展開、バラードナンバーからスピードナンバーまで、リリカルで少しセンチメンタルな雰囲気に包まれて流れるようなメロディが印象的に迫る順調な成長を伺わせるアルバムになってます。
同系統アルバム
INFINITE/STRATOVARIUS
SUNRISE IN RIVERLAND/INSANIA
THE HALL OF THE OLDEN DREAMS/DARK MOOR

MACHINE/STATIC-X

マシーン/STATIC-X

WEA JAPAN WPCR-10999

[☆☆☆☆]

アメリカ出身のバンドのセカンドアルバムです。デビューアルバムは日本人ギタリストが参加しているということで話題になったようですが、既に脱退しています。
壊れ気味のコミカルなイントロから爆発するように強力な突進ヘヴィリフとテクノ風のデジタルなリズム、そして咆哮系ダミ声ヴォーカルの熱唱によって産み出される衝動音楽は、小気味良いキャッチーなビートに乗って感情の迸りを見せており、町工場の片隅でフル回転を続ける導入されたばかりの新鋭機が熱気を帯びて稼動する様を想起させます。メタリックな感触の強いサウンドは機械的な装飾を呑み込むほどの圧力を感じさせており、伊達にマノウォーTシャツは着てないぜ!という事でしょうか。
同系統アルバム
PHYSICIST/DEVIN TOWNSEND
OBSOLETE/FEAR FACTORY
REINVENTING THE STEEL/PANTERA





July

CRADLE OF FILTH | ENSLAVEMENT OF BEAUTY | THE FORSAKEN | HIGHLORD | IN FLAMES | JUDAS PRIEST | RING OF FIRE

BITTER SUITES TO SUCCUBI/CRADLE OF FILTH

ビター・スイーツ・トゥ・サキュバイ/クレイドル・オブ・フィルス

VICTOR VICP-61431

[MINI]

イギリス出身のブラックメタルバンドのミニアルバムです。新曲が6曲にファーストアルバムからのリメイクが3曲、そしてカバーが一曲となってます。
とりあえず新曲の方はアルバム「ミディアン」からの流れを汲んだスピード感あるドラマティックな曲になっていてアルバムに収録されていてもおかしくないような出来です。ヴォーカルもいつも通りに狂った叫びを撒き散らしています。リメイクの方は元曲が未聴なのでどの辺が変わってるとかは分かりませんが、他の楽曲に比べてサウンド面でも引けを取っていないので音質は向上していることは確かだと思われます。新曲と並べても変わらない品質の曲を聴くにつけ、バンドの変わらない方向性と絶対の自信を感じる今日この頃です。
赤で統一されたジャケット&ライナーは思わずパクリたくなる凶悪な雰囲気を醸し出しています。
同系統アルバム
PURITANICAL EUPHORIC MISANTHROPIA/DIMMU BORGIR
MIDIAN/CRADLE OF FILTH

MEGALOMANIA/ENSLAVEMENT OF BEAUTY

メガロマニア/エンスレイヴメント・オヴ・ビューティー

MARQUEE MICP-10253

[☆☆☆☆]

ノルウェー出身のバンドのセカンドアルバムです。ユニット状態だったデビューアルバムから一応パーマネントではなくてもメンバーを揃えて製作されています。
ドラマティックでシンフォニックにディストーションヴォーカルなデスメタルという形態はさらに進歩して、切れ目無く矢継ぎ早にメロディを産み出し続け、積み重ねられるたびに変化を見せる鮮やかな変遷の美学、言わばメロディの波状攻撃の強烈な扇情性と叙情性を持った楽曲がアルバムの頭から終わりまで隙間無く詰めこまれており、繊細で華麗なキーボードの誘惑と泣きのタイミングを油断無く待ちつづけているギターソロが思いついたメロディをあるだけ吐き出した、もしくはマイナーコードのメロディを総て使いきろうとするかのように繰り広げられていきます。
どこを切ってもリリカルなメロディが飛び出すメロディ洪水勃発中の、ある意味いきつくところまで行ってしまったメロディックメタルの極北のアルバムです。
同系統アルバム
WITHIN/EMBRACED
SWAMPLORD/KALMAH
BLACKWATER PARK/OPETH

MANIFEST OF FATE/THE FORSAKEN

マニフェスト・オブ・ヘイト/フォーセイクン

KING RECORD KICP-822

[☆☆☆☆]

スウェーデン出身のバンドのデビューアルバムです。
切れ味鋭いギターリフとアグレッシヴなドラムを身上にしたブルータルなサウンドと硬質のメロディを併せ持った攻撃型デスメタルをやってます。リズムチェンジを繰り返しながら、叙情的でスラッシーなツインリードの高速リフと突進力のあるテクニカルなリズム隊がノンストップで爆走する中、メロディなぞこれっぽっちも感じさせない炸裂系咆哮ヴォーカルが叫び、フラッシーなギターソロが鮮烈さを印象付ける、アット・ザ・ゲイツディスメンバーの流れを汲んだサウンドは、狂乱のラッシュを徹頭徹尾続けています。甘さを感じさせない硬派なサウンドはストレートに衝動と狂暴性を開放して“強襲”という言葉をイメージさせる音像を産み出します。
同系統アルバム
A PREDATOR'S PORTRAIT/SOILWORK
HATESPHERE/HATESPHERE
AND THEN YOU'LL BEG/CRYPTOPSY

WHEN THE AURORA FALLS.../HIGHLORD

ウェン・ジ・オーロラ・フォールズ/ハイロード

SOUNDHOLIC TKCS-85020

[☆☆☆☆]

イタリア出身のバンドの2000年発表のセカンドアルバムです。イタリアンの熱い血が騒ぎ出す疾走系ドラマティックメタル、いわゆるXaMETAL((C)JIN)に属するアルバムです。
キーボードとギターのアンサンブルを軸に分かりやすくて血湧き肉踊るメロディを恥ずかしげも無く投入し、ツーバスが隙間無く叩き続けられる密度の高い音の中を中高音域で朗々と唄うちょっとメロウな雰囲気のヴォーカルが場面展開の大きな楽曲をクラシカルなフレーズと共に幻想の旅路を行く様は、すっかりファンタジーRPG。キーボードとギターがバトルを繰り広げる姿は先達のバンドを彷彿とさせ…るかも。 広がりを感じさせる音作りやオーケストレーションを使った豪華さの演出などで差別化を図ろうとする試みは、緊張感と期待感を維持できるレベルにはあります。
ヴォーカルの英語が胡散臭いとかギターソロが危なっかしいとか野暮ったいアレンジが残ってるとか、改善の余地は沢山あると思われますが、とにかくドタバタ突っ走る爽快感と高揚感は十二分に持ち合わせている熱いアルバムです。
同系統アルバム
A TIME NEVERCOME/SECRET SPHERE
SONS OF THUNDER/LABYRINTH
DIVINE GATES PART II -GATE OF HEAVEN-/SKYLARK

THE TOKYO SHOWDOWN LIVE IN JAPAN 2000/IN FLAMES

トーキョー・ショウダウン ライヴ・イン・ジャパン2000/イン・フレイムス

TOYS FACTORY TFCK-87255

[LIVE]

スウェーデンのメロディックデスメタルの雄、イン・フレイムスの2000年11月に行われた東京公演の模様を収めたライブアルバムです。
普通のライブアルバムらしくなく、曲がいきなり始まったりしますが、それはさておき。ミョーにバランスの悪いドラムの音とか抜けの悪いギターとかスピーカーの裏の方で録音したんかい!という風な音質の良くない頭4曲くらいですっかり印象が悪くなります、後半は持ちなおしますが。手直しをしていない分ライブ感があるとも言えなくもないですが、ついでに歓声とかもあんまり聞えたりしないため臨場感も少ないので、最近のベスト的選曲はともかく、とりあえずスタジオアルバムを聴いていた方が幸せ感が強そうな一枚です。あー、でもベスト盤を作る手間は省けるかもしれない。
同系統アルバム
BURNING JAPAN LIVE 1999/ARCH ENEMY
TOKYO WARHEARTS - LIVE IN JAPAN 1999/CHILDREN OF BODOM
ALIVE IN ATHENS/ICED EARTH

DEMOLITION/JUDAS PRIEST

デモリッション/ジューダス・プリースト

VICTOR VICP-61349

[☆☆☆]

神の代弁者を失っての第二弾、通算14枚目のアルバムです。新ヴォーカリストを迎えたものの、既に完成されていた楽曲を唄っただけの印象が強いティム“リッパー”オーウェンズの力量を活かしきれなかった前作。それを踏まえて彼のパフォーマンスを把握した曲作りが為されているという点では前作「JAGULATOR」よりはかなりヴォーカルとの一体感が生まれたサウンドになっていることは確かです。極端にメロディを減らした前作からはダークでうねりを感じさせるものではありますが、楽曲に応じたメロディ、そして時折現れる起伏の大きい展開を持った曲には多少は彼ららしいダイナミズムを思い起こさせることもあります。グルーヴ重視でヘヴィネス偏重の傾向はこのアルバムでも変わりませんが、予想されたよりはそれらの追求が完全ではないところは良く言えばバランス感覚のとれたサウンドを作っている、悪く言えば中途半端なポジションに落ち着いた印象を与えます。
ハイトーンシャウトから野獣の咆哮、ムーディな歌唱までこなすティム“リッパー”オーウェンズのパフォーマンスは前任者を忘れさせるに充分なものですが、肝心の楽曲の方は確かに微妙な位置にある現在のバンドの姿が如実に現れているのは間違いありません。
同系統アルバム
THE GATHERING/TESTAMENT
DEAD HEART, IN A DEAD WORLD/NEVERMORE
SADISTIC SYMPHONY/VICIOUS RUMORS

THE ORACLE/RING OF FIRE

ジ・オラクル/リング・オヴ・ファイア

MARQUEE MICP-10251

[☆☆☆☆]

マーク・ボールズのソロアルバム「RING OF FIRE」が発展してバンドになってしまった、リング・オヴ・ファイアのほとんど二枚目なファーストアルバムです。メンバーは残念ながらトニー・マカパインはいなくなってしまいましたが、ヴィタリ・クープリを始め、速弾きで鳴らすジョージ・ベラスなどの実力派で固めた上に、エンジニアにエリク・ノーランダーにニール・シトロンのラナ・レーン組を迎えて磐石の布陣で製作されています。
その音楽性はソロアルバムからも予想されるネオクラシカルなフレーズを盛り込んだメロディックメタルというものですが、バンドとしての体勢が整ったせいかテクニカルな面がかなり強調されてプログレッシブな印象を与える緊張感のある楽曲が揃っています。エリク・ノーランダーのキーボードを借りたか、今まで以上に多彩なサウンドを操るヴィタリ・クープリの驚異的なプレイと、それに拮抗する印象的なギターの産み出す華麗な戦慄にエモーショナルな歌声が加わって、ドラマティックでパーフェクトなネオクラシカルメタルの出来あがり。プロフェッショナルな仕事はそれだけで大きな価値を生み出すものです。
ツボを押さえ過ぎるお約束みたいな曲があったり、リズム隊が妙に薄かったりするとは言え、創始者のアルバムよりは展開が凝っていて微妙に予定調和しないところがポイントでしょうか。
とりあえずヴィタリ・クープリがバカみたいに弾きまくっていればそれで満足だ!
同系統アルバム
WAR TO END ALL WARS/YNGWIE J MALMSTEEN'S RISING FORCE
ANGELS OF THE APOCALYPSE/MASTERMIND
SANCTUS IGNIS/ADAGIO





August

BALANCE OF POWER | GAMMA RAY | JAMES LABRIE'S MULLMUZZLER | NOSTRADAMEUS | ROYAL HUNT | SLAYER | SLIPKNOT

PERFECT BALANCE/BALANCE OF POWER

パーフェクト・バランス/バランス・オヴ・パワー

MARQUEE MICP-10257

[☆☆☆☆]

イギリス出身のメロディックメタルバンドの4枚目のアルバムです。ベーシストが脱退して後任に迎えられたのがファーストアルバムでヴォーカルだったトニー・リッチーという珍しいことになってますが、プレイはもちろんバッキングヴォーカルも強化されて感情的なところはともかく完成度は益々高まっています。
ネオクラシカルから泣きのギターまで聴かせるテクニカルなプレイに伸びやかなハイトーンヴォーカル、そして抜けの良いメロディとエスニックでミステリアスな空気のメロディアスな展開にヘヴィな音像の作風は、非常に作り込まれた展開の妙が更にパワーアップして、独特であまり類を見ない妖しげさもパワーアップ、ある意味プログレ色が増大。 特に4曲目はジューダス・プリーストばりのヘヴィリフにフェア・ウォーニング風な爽やかコーラス、そしてドリームシアター的に丁々発止やりあうインストゥルメンタルの応酬という、盛沢山である意味理想的、でもちょっと奇妙で不思議なものになっています。ドリームシアターを彷彿とさせる7や8などのヘヴィなドラマティックナンバーなども揃えて、そこはオーセンティックなスピードナンバーの9に違和感を感じられるくらいバラエティ豊かなものです。
どう考えても違うパーツが並べられているにも関わらず、最終的に出てくるものには同じ刻印が押されていると言う、この摩訶不思議な錬金術のようなサウンドが堪能できるアルバムになってます。
同系統アルバム
FORBIDDEN FRUIT/ELEGY
THE FOURTH LEGACY/KAMELOT
GOD COMPLEX/CENTAUR

HEAVEN OR HELL/GAMMA RAY

ヘヴン・オア・ヘル/ガンマ・レイ

VICTOR VICP-61450

[SINGLE]

ジャーマンメタルの守護者、ガンマ・レイの7作目のアルバム「ノー・ワールド・オーダー」からの先行シングルです。
SIGH NO MORE」に似た作風の抑えた低音の歌唱から始まるドラマティックなタイトルトラックにジューダス・プリーストの“RAPID FIRE”のカバー、じゃなくてミドルテンポの硬質でゴリゴリなリフで押しの強いAメロにサビは“START RUNNING”な2、そしてスレイヤーじゃなくてシン・リジィのカバーな三曲入りの、ニューアルバムもちっとも変わってそうにないガンマ・レイワールド全開なシングルです。
同系統アルバム
BRITISH STEEL/JUDAS PRIEST
SIGH NO MORE/GAMMA RAY

2/JAMES LABRIE'S MULLMUZZLER

2/ジェイムス・ラブリエズ マルマズラー

MARQUEE MICP-10254

[☆☆☆☆]

ドリーム・シアターのヴォーカリスト、ジェイムス・ラブリエのソロアルバム第二弾です。
前作ではプログレ風のスリリングな展開と安定感ある歌唱の構築するメロディアスハードな作風でしたが、今度のアルバムでは気負った緊張感が無くなって、ゆったりと緩やかな感情の起伏を表現する優しげなサウンドが創り出されており、やはり唄メロを主軸にエモーショナルなプレイで回りを固めるアルバムになっています。
癒し和み系で肩の凝らないリリカルな楽曲は沈静作用全開でリラックスするには丁度良いです。
同系統アルバム
SUNRISE IN EDEN/EDENBRIDGE
NAIVE/CLOCKWISE
STANDING ON THE SHOULDERS OF GIANTS/TRIBE OF GYPSIES

THE PROPHET OF EVIL/NOSTRADAMEUS

ザ・プロフェット・オブ・イーヴル/ノストラダムス

SOUNDHOLIC TKCS-85022

[☆☆☆☆]

スウェーデン出身のバンドの、この前買いそびれたような気がするアルバムがあったけどもうニューアルバムが出るんかい!なセカンドアルバムです。
悪の預言者VS悲運の王子という素晴らしい設定に基づいたコンセプトアルバムだそうで、それを最も良く表現できるのはこれしかない!なメロディックスピードメタルです。物語の開幕を告げるおどろおどろしいナレーションに続き、景気の良いスピード感あふれる勇ましいクワイアを伴った疾走ナンバーはまるでガンマ・レイを彷彿とさせるものですが、そこまで繰状態にはならない北欧風味が残ってます。ちょっと煮えきらないヴォーカルには多少難アリですが、その分バックのテンションの高い演奏やとことん大仰に盛り上げる展開は、気分を高揚させる魅力を充分に持ち合わせています。ストーリーに沿った叙情性に満ちたバラードから渾身の大曲、さらにヨーロッパのカバーまでやってしまった、期待の新星の順当な成長を感じさせるアルバムになっています。
同系統アルバム
AVANTASIA−THE METAL OPERA−/TOBIAS SAMMET
AWAKENING THE WORLD/LOST HORIZON
SOMEWHERE OUT IN SPACE/GAMMA RAY

THE MISSION/ROYAL HUNT

ザ・ミッション/ロイヤル・ハント

TEICHIKU RECORDS TECI-24071

[☆☆☆☆]

デンマークの北欧叙情サウンドの旗手、ロイヤル・ハントの6枚目のアルバムです。 またしてもメンバー脱退があったりしていますが、アルバムの方はゴタゴタを吹き飛ばす出来になってます。
SF作家レイ・ブラッドベリの「火星年代記」をテーマにしたコンセプトアルバムになっており、楽曲の間を短いインストや小品の曲で繋いでいく構成になっています。イントロダクションのSEから始まる2は彼等にしては珍しいデジタルなアレンジが施されており、新しい試みも聴かれますが、全体的には既に完成された叙情的で湿り気を帯びたロイヤル・ハントのサウンドが展開されていきます。前作から加入したヴォーカルのジョン・ウェストを念頭に置いた曲作りが成された事で、ジョンも能力をかなり発揮させることに成功しており、変わりなく美しいコーラスワークと共に起伏の大きいドラマティックな展開を見せます。きらびやかなキーボードや印象的なギタープレイもいつも通り華麗に流れており、新しい局面に向かうバンドの意気込みを感じさせるアルバムになっています。
同系統アルバム
CASTLE OF YESTERDAY/REPTILIAN
THE EMPIRE OF FUTURE/SILENT FORCE
LEGACY/SHADOW GALLERY

GOD HATES US ALL/SLAYER

ゴッド・ヘイツ・アス・オール/スレイヤー

UNIVERSAL INTERNATIONAL UICL-1012

[☆☆☆☆]

スラッシュメタルの既に帝王、スレイヤーの3年ぶり8枚目のアルバムです。アルバム発表直前にレーベル移籍やいつのまにかジャケット変更など、またしてもゴタゴタしていましたが、中身の方はすっかりスレイヤーのようです。
ノイジーで劣化した楽曲が遠めで流れるサウンドのイントロから更に狂暴さと凶悪さを増した突進スラッシュナンバーで始まったりするアルバムは、昨今のヘヴィミュージックで主流なフィーリングの音像は多少抑え気味で、割とバラエティのある「SEASONS IN THE ABYSS」の頃に近い作風になってます。暴虐的で嵐のようなギターリフに荒れ狂うドラミング、不協和音寸前の狂気に満ちたヒステリックなギターソロも戻ってきて緩急の効いた楽曲は、若いバンド達を問答無用で叩き伏せる圧倒的な演奏のパフォーマンスとアンタいったい幾つやねん!というトム・アラヤの咆哮によって狂騒と衝動の謝肉祭の始まりを宣言します。
やっぱりスレイヤーは死ぬまでスレイヤーなのだなあと感慨を深めつつ、ちょっぴり作曲能力には限界が見えつつあるかなあと無駄な心配をする今日この頃です。

さらに聴き続けた結果、圧巻のパフォーマンスに比べるとやはり楽曲の出来はあまり良くないという結論に達しました。
同系統アルバム
MANIFEST OF FATE/THE FORSAKEN
HATE CAMPAIGN/DISMEMBER
AND THEN YOU'LL BEG/CRYPTOPSY

IOWA/SLIPKNOT

アイオワ/スリップノット

ROADRUNNER RECORDS RRCY-11146

[☆☆☆☆]

アメリカ、アイオワ州出身のバンドのセカンドアルバムです。
その奇怪な被り物と怪しいネーミング&コスチューム、そしてそれらに負けず劣らずな病的で混沌としたサウンドをデビューアルバムで叩きつけて、人気を高めてきた彼等のセカンドアルバムは怒りに満ちた狂暴な部分は未だに健在ですが、危険な香りのする狂気の部分は少し減って、ある意味分かりやすい衝動系のヘヴィサウンドになっています。サンプラーやノイズ、エクストリームな音楽要素をタップリ詰めこんだら醗酵されてドロドロ垂れ流され吐き出されていく負の感情の小爆発がそこかしこに。
前作が「悪魔のいけにえ」だとすると本作は「13日の金曜日」って感じでしょうか。普通の人からするとどっちも似たようなものの、こだわる人には全然違うやン!という微妙な質的変化を見せていることは間違い無いですが、そのお客さん寄りになってるサウンドはメジャー化への当然の進歩なのかもしれません。
同系統アルバム
DIGIMORTAL/FEAR FACTORY
MACHINE/STATIC-X
CITY/STRAPPING YOUNG LAD





September

ARMORED SAINT | ARTHEMIS | BRUCE DICKINSON | CONSORTIUM PROJECT II | THE DEFACED | EDGUY | FLOTSAM AND JETSAM | GAMMA RAY | KREATOR | MIDNIGHT SUN | STORMWIND | VIRGO | VOICE | 人間椅子 |

NOD TO THE OLD SCHOOL/ARMORED SAINT

ノッド・トゥ・ジ・オールド・スクール/アーマード・セイント

KING RECORD KICP-836

[EXTRA]

2000年に再結成され復活アルバムを出したピュア・ヘヴィメタルの雄、アーマード・セイントの色々詰めこまれたアルバムです。
新曲2曲に「マーチ・オブ・ザ・セイント」の2001年バージョンにライブ音源、さらに1983年に発表された「ARMORED SAINT」EPがそのまま収録され、そして1989年に製作されたデモ音源と、盛沢山な内容にジューダス・プリーストのカバーもあったりします。新曲の方は骨太な男気あふれるタフなメタルナンバーでまだまだ精力的な活動が出来るぜ!という勢いがあり、聖者の行進はやっぱりサイコー!とヒートアップしたり、「ROCKA ROLA」にも良い曲あったんだ!と驚いたりしてみたり、ライブも熱いぜチキショー!と頭を振ってみたり、昔からパワー全開なメタルしてるぜヤロー共!と満月に向かって叫んでみたりと、もしかすると昔の方が良い曲なんじゃないのか!?と衝撃を受ける、ボーナストラックまで付いたサービス満点な一枚です。
聖なる旗印の元に鎧を装着して悪の軍勢に立ち向かいたい人には必須のお買い得なアルバムになってます。
同系統アルバム
MASTERPEACE/METAL CHURCH
UGLY SIDE/THUNDERHEAD
WARNING FROM HISTORY/MARSHALL LAW

THE DAMNED SHIP/ARTHEMIS

ザ・ダムド・シップ/アルテミス

MARQUEE MICP-10262

[☆☆☆☆]

イタリア出身のバンドのセカンドアルバムで日本デビューアルバムです。ちなみに解説は和田“キャプテン”誠ですが、それはどうでもいいです。
かなりマイケル・キスクを意識しているハイトーンヴォーカルな疾走系メロディックメタルなドラマティックでひたすら熱いという、最近イタリアンメタルの典型的なスタイルになってます。とりたててシンフォニックではないですが、とりあえずツーバスはずーっと叩いてます。ハロウィンの流れを汲むメロディ回しとかツインリードとかも様になっていて、このタイプのバンドでは高品質なものになってます。基本的にはスピード感の強い曲ばっかりですが、黙って聴かせるだけの説得力は備えており、バランスの取れたサウンドはメロディックスピードメタルの代名詞がジャーマンメタルからイタリアンメタルに替わるのも、もうすぐって感じです。
フックのあるリフやキャッチーなメロディ、そしてメタリックなリフと新人離れした安定感と完成度のアルバムで、タイミングが良ければ一気にブレイク!なんてこともありそうですが、この路線を続けて活路を見出すのはかなり苦難の道程になりそうな。大きく飛躍する可能性はありそうなので目は離さない方が良さそうではあります。
同系統アルバム
WHEN THE AURORA FALLS.../HIGHLORD
SUNRISE IN RIVERLAND/INSANIA
AFFAIR OF HONOUR/LIAR SYMPHONY

THE BEST OF BRUCE DICKINSON/BRUCE DICKINSON

ベスト・オブ・ブルース・ディッキンソン/ブルース・ディッキンソン

VICTOR VICP-61523-4

[BEST]

アイアン・メイデンのヴォーカリスト、ブルース・ディッキンソンの初のベストアルバムです。
全曲リマスターで音質向上に新曲追加、さらに初回限定盤には未発表曲多数のアイアン・メイデンだけじゃないんだぜ!なブルースの多彩な表情と魅力爆発なコンチキショー!黙って買っとけ!な一枚じゃなくて二枚ですが“BRING YOUR DAUGHTER... ...TO THE SLAUGHTER”のために二枚組を買うのはちょっと微妙。

CONTINUUM IN EXTREMIS/CONSORTIUM PROJECT II

コンティニューム・イン・エクストリーミス/イアン・パリー/コンソーティアム・プロジェクトII

KING RECORD KICP-837

[☆☆☆☆]

エレジーのヴォーカリスト、イアン・パリーのソロプロジェクトの第二弾です。今回からプロジェクト名を前面に出してバンド形態に近づいたようで、楽曲のクレジットもイアン・パリーの名前ばかりではなくなっています。参加したメンバーは前作とほとんど替わりなく、自身が属するバンドのエレジーのメンバーに加えてヴァンデン・プラスキャメロット、ソロ活動をしているアーティストが集められています。
女性によって支配されている世界での両性の抗争を描き出すSF風未来社会世界観を持ったコンセプトアルバムになっている本作では、もちろんファンが彼に期待するドラマティックなヘヴィメタルが展開されていきます。メタリックでソリッドなギターリフで組み立てられるミドルテンポな曲によって構成されるサウンドは、テクニカルなプレイを聴かせるギターソロや雰囲気作りのキーボードが浮遊し、さらに期待通りのイアン・パリーの力強い歌声が心行くまで堪能できるものです。
本家のエレジーの活動が微妙な状態にはなっていますが、イアン・パリーの声を聴ける環境が一つでも残されれば、それで良しとするべきでしょうか。とりあえずヴォーカルが上手いに越した事はないと実感させられるエモーショナルな歌声に耽溺。
同系統アルバム
THE MISSION/ROYAL HUNT
DRAGONCHASER/AT VANCE
BURN THE SUN/ARK

DOMINATION COMMENCE/THE DEFACED

ドミネイション・コメンス/ザ・ディフェイスド

SOUNHOLIC TKCS-85023

[☆☆☆☆]

スウェーデン出身のバンドのファーストアルバムです。REHABと名乗って活動していた中心人物のギタリストのバンドに同郷のダーケインソイルワークのメンバーが加わって製作されています。その他にテラー2000もかなりメンバーが重なってます。
三つのバンドの組み合わせから生み出されるサウンドは、攻撃的でうねるギターリフに吐き捨て気味に吼えるヴォーカルを合わせた突進型ヘヴィメタルに北欧風味の叙情的なギターソロを少し盛り込んだもので、ゴリゴリした硬い手応えを感じさせるハードコアなアルバムになってます。壮絶に突っ走る暴走ナンバーや破壊的なリフを刻む邪悪な雰囲気を持った曲など、尖った感覚を前面に出したものが多いですが、それらの曲でもリズムチェンジやスピードに変化を付けてダイナミックな展開を作り出しており、一本調子にならない手の込んだ曲作りが成されています。
プロジェクトや掛け持ちバンドが一杯でバンドの活動には不安が残りますし、先行するバンドとの差別化も難しそうですが、直線的で衝動的なサウンドはかなりの求心力を備えており、アルバムを重ねられれば強力な存在になりそうです。
同系統アルバム
HATESPHERE/HATESPHERE
EDEN/LYZANXIA
SLAUGHTERHOUSE SUPREMACY/TERROR 2000

MANDRAKE/EDGUY

マンドレイク/エドガイ

VICTOR VICP-61554

[☆☆☆]

ドイツの若手有望株、エドガイの五枚目のアルバムです。
順調に成長を続けるヴォーカリストのパフォーマンスやサウンドプロダクションは過去最高のものになっていて、彼等の特徴であるキャッチーなコーラスワークを伴ったメロディックメタルがこのアルバムでも貫かれています。ミドルテンポのドラマティックなナンバーから始まって疾走感の強いパワフルな曲やポップなメロディの開放感あふれる曲やバラードなどエドガイらしさを前面に出した安定感のあるサウンドに仕上っており、この系統のアルバムの中では高品質なものになってます。
しかし、アルバムを重ねる毎に露呈され始めたメロディの引き出しの少なさやアレンジ面での定型化がかなり顕著になっており、楽曲での煮詰まり加減が悪い方向に作用しています。ヴォーカリストの別プロジェクトでは様々なヴォーカルを導入することによって類型化と単調ななりがちな楽曲を緩和していましたが、ヴォーカルで表情を変えられないバンドの方では逃げ道が無いようです。デビューアルバムでほとんど完成していたスタイルの束縛から開放されるには困難が予想されます。
同系統アルバム
THE PROPHET OF EVIL/NOSTRADAMEUS
REALITY/ZONATA
CRYSTAL EMPIRE/FREEDOM CALL

MY GOD/FLOTSAM AND JETSAM

マイ・ゴッド/フロットサム・アンド・ジェットサム

KING RECORD KICP-838

[☆☆☆]

アメリカのバンドの8枚目のアルバムです。色々メンバーチェンジがあったみたいです。
スラッシーに疾走する爆発力のある一曲目からメタリックでミステリアスな空気を持った楽曲が並んでますが、微妙に盛り上がりのツボが外れている感じが強くて、煮えきらない状態も続いていきます。疾走ナンバーもあればミドルテンポで押しの強いナンバーもあり、様々な曲を揃えてきましたが、どうもダークでシリアスな雰囲気がテンションの高まりを阻害しているような。
ちょっとクセのある唄いまわしのヴォーカルとメロディアスなギターソロを伴った展開の細かい独特で奇妙なサウンドはどうやら聴き手を選ぶようです。
同系統アルバム
SADISTIC SYMPHONY/VICIOUS RUMORS
COLLISION COURSE/PARADOX
GOD COMPLEX/CENTAUR

NO WORLD ORDER/GAMMA RAY

ノー・ワールド・オーダー/ガンマ・レイ

VICTOR VICP-61465

[☆☆☆]

ジャーマンメタルの代名詞、ガンマ・レイの7枚目のアルバムです。カイ・ハンセンのこれまで手掛けたアルバムの隠されたテーマ(本人にも分からない)を見つけ出したファンの手による本に逆輸入的に影響を受けて作られたアルバム、だそうです。
大仰で派手なコーラスで始まるイントロの1から、いつも通りのハイテンションで突き進むコーラス満載メロディ充分で、やっぱり他の追随を許さない躁状態なドラマティックナンバーで始まるこのアルバムは、3曲目のそんなにジューダス・プリーストからアイアン・メイデンすることはないだろう!なヘヴィで攻撃的なナンバーを経て、十八番のキャッチーなメロディを持ったマイケル・キスクが唄うとハマりそうな曲とか、重厚でアクセプトなコーラスワークを聴かせる漢臭い曲とか、まるでカバーだよ!な曲とか、やっぱりヴォーカルが聴いてて辛いけれどもエモーショナルで感動的なバラードとか、ハモンドオルガンの音色が心地良い70年代ハードロックナンバーなど色々揃ってますが、総じて言えるのはジューダス・プリースト、と言うかそんなにロブ・ハルフォードになりたかったのか!って事です。
長尺の曲や二転三転する豪華な曲が無いことや、ギターソロやリフワークもメタリックかつシンプルでNWOBHM風なコンパクトなものになっている事もあって「SIGH NO MORE」みたいな質感を与える何となく地味な印象のアルバムになっていて、派手なバックサウンドが無い曲だとまたぞろヴォーカルの力量問題が浮上するという事になってしまってます。フォロワーがあふれる現在の状態で差別化を図ろうと言う意図は分からなくも無いですが、特に策を弄さなくとも普通にやっていれば充分に差別化が図られると思われますが、いかがなもんでしょう。
同系統アルバム
RESURRECTION/HALFORD
DEMOLITION/JUDAS PRIEST
BRAVE NEW WORLD/IRON MAIDEN

VIOLENT REVOLUTION/KREATOR

ヴァイオレント・レヴォリューション/クリーター

NIPPON CROWN CRCL-4787

[☆☆☆☆☆]

ジャーマンスラッシュメタルの雄、クリーターの十枚目になるアルバムです。あんまり関係無いですがギタリストが交替しています。
前作、前々作とミドルテンポでメロディやムードを重視した曲作りをしてきた彼等ですが、このアルバムではそれらの変化の過程を織り込んだ上で、攻撃的な面を前面に出したダイナミックなサウンドを作ってます。激烈スラッシュリフで始まる一曲目からダークでムーディなインストからのドラマティックなタイトルトラック、突進力全開からメロディアスな展開を聴かせる4など、個々の曲の中でのスピードの緩急や起伏を大きく取った展開に暗く物悲しげなメロディを刻むギターソロが重なって、まるで北欧メロディックデスメタルに近い感触を与える普遍的なヘヴィメタルの魅力を産み出しています。特にスピード、アグレッション、メロディと現在の彼等の集大成的な8は前進を続けるバンドの強い姿勢を伺わせるものです。
最近のメタル系アルバムで良い仕事をしているアンディ・スニープのタイトなサウンドプロダクションも良好な、未だ成長を続けるヴォーカルに導かれるコントロールされた衝動と情動が炸裂した冷酷な狂乱のヘヴィメタルを産み出した強力なアルバムです。
同系統アルバム
SOUTH OF HEAVEN/SLAYER
WAGES OF SIN/ARCH ENEMY
A PREDATOR'S PORTRAIT/SOILWORK

METALMACHINE/MIDNIGHT SUN

メタルマシーン/ミッドナイト・サン

MARQUEE MICP-10260

[☆☆☆]

スウェーデン出身のバンドの4枚目のアルバムです。主要メンバーの衝撃的な心境の変化で北欧メロディアスサウンドから純粋鋼鉄サウンドに様変わりしてます。で、ヴォーカリストも方向性の変化に伴って交替しています。 パワフルなハイトーンを持った新しいヴォーカリストは同郷のトレジャー・ランドや自身のバンドを率いる実力者です。
ジューダス・プリーストを彷彿とさせるソリッドでメタリックな音像で固められたこのアルバムは、それまでのスタイルを覆す驚きに満ちたもので、伝統的で攻撃的な姿勢が明かになっていますが、彼等の特徴であるメロディアスな部分も残されており、ロブ・ハルフォードマノウォーのエリック・アダムスを思わせる迫力のあるヴォーカルによって産み出されるドラマティックな楽曲が揃っています。またクリアーなサウンドプロダクションや華麗なコーラスワークも緊張感のある楽曲を盛り上げています。
しかしながら、妙にカリカチュアされたヘヴィメタルなサウンドとかなり濃い歌詞が嫌なオーラを放っており、ヘヴィメタル然としていないノーマル状態のサウンドとのギャップが激しくて素直に納得という感じにはならないので、好き嫌いが分かれるような予感。やはりメロディアスハードロックな部分の方がこなれていて聴いていて安心できます。
でもデジタルなボーナストラックは少しお気に入り。
同系統アルバム
RESURRECTION/HALFORD
PERFECT BALANCE/BALANCE OF POWER
THE END OF SANCTUARY/SINNER

REFLECTIONS/STORMWIND

リフレクションズ/ストームウインド

MARQUEE MICP-10261

[☆☆☆☆]

スウェーデン出身の北欧様式美バンドの5枚目のアルバムです。
ミステリアスで壮大なイントロダクションから疾走感あふれるリフに朗々と唄い上げるヴォーカル、様式美で展開の細かいインストゥルメンタルに重厚で豪華なコーラス隊が押し寄せる二曲目から、ドラマティックな楽曲が連なっていますが、特徴のあるキラキラ感の強いコーラス隊が大活躍する透明感のあるサウンドが縦横無尽に繰り出されていています。泣きのギターソロや華麗なキーボードサウンドも情感に訴えかける叙情的な色彩のものや鮮やかに飛翔する展開をもつもので、物語性の強い歌詞世界に合った華麗な雰囲気を醸し出しています。バランスの取れた楽曲配置もこの系統のサウンドで陥りがちなマンネリ化を抑えていて、聴き手を飽きさせない工夫が為されています。
北欧とか様式美といった言葉から予想されるキラキラサウンドに無意識に反応する人の期待を絶対に裏切る事の無い、理想的なサウンドが詰めこまれている会心のアルバムになってます。
同系統アルバム
THE MISSION/ROYAL HUNT
THE ORACLE/RING OF FIRE
SANCTUS IGNIS/ADAGIO

VIRGO/VIRGO

VIRGO

VICTOR VICP-61505

[☆☆☆]

アングラのヴォーカリスト、アンドレ・マトスと、多分元ヘヴンズ・ゲイトのギタリスト、サシャ・ピートが合体したプロジェクトのアルバムです。
メタル畑の二人が組んだということで、様式美なメロディックメタルが連想されたりしますが、ここで聴かれるのはオーケストレーションをふんだんに盛り込んで多彩な表情を見せるメロディアスなロックと言うかポップスと言うかAORと言うか、アングラとヘヴンズ・ゲイトから攻撃的なところを全部取っ払って自分達の好きな音楽を自由にプレイしているような、何かそんなものです。アンドレ・マトスがアングラ在籍時にカバーしていたケイト・ブッシュみたいな感触もあったりしますが、そこまでエキセントリックでは無いし、それだとヴォーカルが女性の方が良いかもと思ったり。
とりあえず、どこを重点に聴けばいいのかは良く分からない感じです。

GOLDEN SIGNS/VOICE

ゴールデン・サインズ/ヴォイス

SOUNDHOLIC TKCS-85024

[☆☆☆☆]

ドイツ出身のバンドのサードアルバムです。今作製作前にメンバーチェンジがあり、ドラマーの後任としてランニング・ワイルド、U.D.O.などで活躍したジャーマンメタル界では有名なステファン・シュワルツマンが加入しています。
アステカ(日本ファルコム製のゲーム。知っている人はベテラン)を思わせる古代風オブジェをジャケットにしたアルバムは、勇壮なコーラスを伴ったパワフルなヘヴィメタルになってます。ブルース・ディッキンソンを思わせる力強い歌唱を聴かせるヴォーカルのドラマティックな雰囲気のメロディックメタルは同郷のシナーアクセプトと言った先達の流れを汲んだ古典的ジャーマンメタルスタイルに哀愁を帯びたメロディを加えたもので、キーボードを盛り込んだ世界観作りも効果的な起伏のある楽曲を揃えており、華美になりすぎない硬派な印象を与えるサウンドと繊細なメロディが調和して暖かみのあるアルバムになっています。
XaMetalという言葉を解説に使ったこの音楽ライターは誰なのか?という疑問はさておき、失われつつあった広義のジャーマンメタルを復活させる可能性を秘めたアルバムです。
同系統アルバム
DARK ASSAULT/IRON SAVIOR
THE MISSION/ROYAL HUNT
NUCLEAR FIRE/PRIMAL FEAR

見知らぬ世界/人間椅子

見知らぬ世界/人間椅子

MELDAC MECR-3006

[☆☆☆☆]

日本のヘヴィロックバンドの10枚目のアルバムです。
微妙にポップで歌詞が普遍的なテーマな気もしますが、ええ、いつもと同じくグルグルで奇怪なサウンドです。
同系統アルバム
MENERGY/HEAVENS GATE
CARAVAN BEYOND REDEMPTION/CATHEDRAL
HEAVEN FORBID/BLUE OYSTER CULT





October

ANGRA | DESTRUCTION | DGM | DOMINE | FINNTROLL | KAMELOT | QUEENSRYCHE | RHAPSODY | WITCHERY |

REBIRTH/ANGRA

リバース/ANGRA

VICTOR VICP-61568

[☆☆☆☆]

ブラジル出身のバンドの4枚目のアルバムです。前作発表後にメンバーの3/5が脱退という、そりゃもう大変な騒ぎになりましたが、新しいメンバーにSYMBOLSのヴォーカルとドラマーを加えて再始動を図ってます。
新しいヴォーカリストはマイク・ヴェセーラとかD.C.クーパー系の伸びやかな癖の無い歌唱を聴かせる実力者で、バンドのイメージを壊さずに新鮮な印象を与えます。心配された曲の方はクラシカルでテクニカルなフレーズと民俗音楽パーカッションを少しにメロディアスでスピード感のあるドラマティックな、いつも通りのペースで作られていますが、バンド内での摩擦が減ったせいか緊張感は少し薄れて落ち着いたムードになってます。また、前任者のエキセントリックなヴォーカルのパフォーマンスが無くなったのは、強烈な個性を失ったと同時に広く受け入れられる普遍性を得たという事で、どちらが良かったのかは微妙なところです。
とりあえず、作曲、演奏能力ともに以前と全く遜色無いわけで順調に活動を続けていければ会心の作品もすぐに出来るのではないでしょうか。
同系統アルバム
THE HALL OF THE OLDEN DREAMS/DARK MOOR
CASTLE OF YESTERDAY/REPTILIAN
REFLECTIONS/STORMWIND

THE ANTICHRIST/DESTRUCTION

アンチクライスト/デストラクション

KING RECORD KICP-840

[☆☆☆☆]

ドイツのベテランスラッシュメタルバンドの7枚目のアルバムです。
前作で再結成してからの第二弾ということで、今作では初期の頃に感じられたメガデス風味がすこーし戻ってきているようなフレーズ回しが増えていていたりしないこともないですが、とことん突っ走る爆走スラッシュメタルを追求したサウンドは「死ぬまでスラッシュ!」な二曲目に象徴されるノンストップな暴走状態を維持してます。分かりやすくて即効性の強い衝動開放系な楽曲が揃えられているアルバムは、シンプルで有無を言わせぬ迫力に満ちていてスラッシュメタルバンザイな爽快感と高揚感を煽りたてる「死ぬまで頭を振り続けろ!」のメッセージを叩きつけるものになってます。
そしてFxxk The U.S.A.は微妙にタイムリー。
同系統アルバム
CODE RED/SODOM
B.A.C.K./ARTILLERY
RESTLESS & DEAD/WITCHERY

DREAMLAND/DGM

ドリームランド/DGM

MARQUEE INC., MICP-10268

[☆☆☆☆]

イタリア出身のバンドのサードアルバムです。ヴォーカリストとベーシストが脱退して、ベースはギタリストが兼任、ヴォーカルは元ABSTRACTAのティッタ・タニが新たに加入しています。
ハイトーンヴォーカルが力強く唄い上げ、キーボードに彩られたメロディックサウンドはソフトタッチのシンフォニー・エックス風味で少しイングヴェイなものになっていて、細かい展開の積み重ねの妙を聴かせる繊細系の曲が揃ってます。ブラック・ジェスターもこれくらいヴォーカルが上手ければ展望が開けたのになあ、と関係無い事を思いつつ。スリリングなインストの応酬とかテクニカルな要素も絡ませつつドラマティックに盛り上げていきます。
確かなテクニック、エモーショナルなパフォーマンスにクリアーなプロダクションと高品質なアルバムの条件を総て満たしてますが、どこが良いのかと聞かれるとちょっと困る、そんな豪勢なのに物足りなさの残るような。やはりちょっと力技の強引さが少ないせいでしょうか。
同系統アルバム
SANCTUS IGNIS/ADAGIO
FLYING OF EAGLE/JEREMY
V/SYMPHONY X

STORMBRINGER RULER
(THE LEGEND OF THE POWER SUPREME)/DOMINE

ストームブリンガー・ルーラー(ザ・レジェンド・オブ・ザ・パワー・スプリーム)/ドミネ

SOUNDHOLIC TKCS-85026

[☆☆☆☆]

イタリア出身の「エルリック・サーガ」をこよなく愛するバンドのサードアルバムです。ドラマーが交替してます。
大仰で荘厳なイントロダクションから、高揚感を煽る扇情的なメロディたっぷりな疾走ナンバーで始まるこのアルバムは、クセの強いパワフルなハイトーンヴォーカルがハイテンションで絶唱する勇壮なサウンドを叙情的で華麗なツインリードで彩るドラマティックなヘヴィメタルを繰り出しています。激しい起伏を持ったヒロイックなナンバーやピアノやアコースティックギターを盛り込んだ劇的ナンバー、さらに4ではタイトル通りのワルキューレの騎行を盛り込んで直球勝負な分かりやすい展開を聴かせたりと、前作から更にレベルアップした楽曲が並べられており、エピックメタル(雄壮で叙事詩的な雰囲気を持ったもの)にふさわしいスケールの大きいサウンドを産み出しています。
ちょっとクセのある、けれども限界に挑むパフォーマンスを聴かせるヴォーカルは少し聴き手を選ぶかもしれませんが、伝統的なドラマティックなサウンドを余すところ無く聴かせる快作になってます。

[いつも気になる対訳正誤表]
原文 対訳 ハヤカワ文庫的訳
STORMBRINGER → 嵐を呼ぶ者 → ストームブリンガー(固有名詞)
HORN OF FATE → 宿命の警笛 → 運命の角笛
THE GREAT BALANCE → 偉大なる調和 → 宇宙の天秤
RUNESWORD → ルーン文字 → 魔剣
THE DREAMING CITY → 夢見る町 → 夢見る都
LAW → 秩序 → <法>
THE HIGH LORDS → 高貴な神々 → 上方世界の神々

同系統アルバム
THE HALL OF THE OLDEN DREAMS/DARK MOOR
WHEN THE AURORA FALLS.../HIGHLORD
DAWN OF VICTORY/RHAPSODY

JAKTENS TID/FINNTROLL

ジャクテンズ・ティド/フィントロール

KING RECORD KICP-842

[☆☆☆☆]

フィンランド出身のバンドのセカンドアルバムです。
ディストーションヴォーカルにシンフォニックなアレンジのキーボードでメロディアス、と材料だけ見るとシンフォニックブラックメタル風のサウンドみたいですが、そのメロディと雰囲気がどっぷり北欧農村風味で、年に一度の村祭りで朝から酒飲んで出来あがってる連中がそのまま夜まで飲み続けた上に酒場になだれ込んで看板娘にあしらわれながら、流れてくるアコーディオンの調べに合わせて暴れまわるような。フォーク色が非常に強いクセの強い楽曲は暴走気味に疾走しながら焚き火の回りを踊り続けてます。
唄ってる歌詞はスウェーデン語だったりしますが、英語でも聞き取れそうもない声なので特に問題ないですし、唄ってる内容はブラックメタルと言うよりはアンチキリスト教な土着宗教に由来する伝承とか伝説の類のようです。
でも、これでダンスしたら血管切れそうです。
同系統アルバム
ATLANTIS ASCENDANT/BAL-SAGOTH
GATHERED AROUND THE OAKEN TABLE/MITHOTYN
FOLKEMON/SKYCLAD

KARMA/KAMELOT

カーマ/キャメロット

VICTOR VICP-61607

[☆☆☆☆☆]

紫は高貴で神聖な色であった…

フロリダ出身のバンドの五枚目のアルバムです。メンバーチェンジもプロデューサーの変更も無く前作と同様の布陣で製作されています。
前作で完全に確立されたキャメロットサウンドと言うべき、高貴な雰囲気と妖美な空気を併せ持ちエロティックな色彩を産み出している、ソリッドでメタリックな音像と優美なキーボードサウンド、そして艶やかなヴォーカルの産み出すアンサンブルは本作において更にグレードアップされています。ギターのサウンドにおいてハードロック的な手法が多かった前作から、ヘヴィメタル的な密度の高い緊張感あふれるリフやフレーズ、そしてタイトでパワフルなドラミングを強化して、ソフトな音像からハードなものへと質を変化させています。豊かな表情を見せるヴォーカルとのコントラストは更に強まり、リリカルなキーボードのフレーズと結びついて魅惑的な世界が展開されていきます。バンドの一体感はより強固なものとなり、一つ一つの音に細心の注意を払った木目の細かい丁寧な音作りが印象的であり、緻密なプロダクションは、一つ上のレベルに達したと感じさせるものになっています。
バンドのイメージカラーである「紫」一色に世界を染めた、劇的で音世界を産み出すメロディックメタルの金字塔と言える作品になりました。
同系統アルバム
SANCTUS IGNIS/ADAGIO
CASTLE OF YESTERDAY/REPTILIAN
SECRETS OF ASTROLOGY/LANA LANE

OPERATION:LIVECRIME/QUEENSRYCHE

オペレーション・ライヴクライム/クイーンズライチ

TOSHIBA EMI TOCP-65886

[LIVE]

アメリカのインテリジェンス・ヘヴィメタルバンドの1991年に収録されたライブアルバムです。アルバム自体の発表は収録と同時期でしたが日本ではどういうわけか、ビデオとの同梱でしか発売されなかったという曰く付きのものです。
サードアルバム「OPERATION:MINDCRIME」を完全再現し衝撃の完成度を誇るそのサウンドは、現在では既に伝説化されていてコンセプトアルバムを作ろうとするバンドが目指す最高峰となっていたりします。もともとのアルバムが持っていた楽曲の緊張感や完成度を保ちながら観客との相乗効果によって更に密度の高い音世界を産み出している、ヘヴィメタル/ハードロックの歴史にその名を刻んだ名盤であることは今更力説する事でもないので、また無くならないうちにお店にダッシュ。

LIVE EVOLUTION/QUEENSRYCHE

ライヴ・エヴォリューション/クィーンズライク

VICTOR VICP-61552-3

[LIVE]

そして、それから10年余りの歳月を経て発表された2枚組ライブアルバムです。
え、バンド名が違うって?

細かい事は気にするな!

2001年7月27・28日にシアトルで行なわれたライブの模様を収録しています。さすがに音響技術も向上したためクリアーなサウンドで録音されてます。
肝心の内容の方はメンバーチェンジなどもあったり、音楽的方向性の変化などもあったバンドですが、ヴォーカルのジェフ・テイトの歌声は10年の月日を感じさせないものですし、演奏の方も安定感抜群なものになってます。アルバムの構成は年代順に分かれていて、ごく初期の曲が聴けたりするのは素晴らしい!ですが、微妙に選曲に不満が残るのも時間の都合上仕方の無い事です。さらに観客の歓声などがひどく引っ込んだミックスになっているため、25人くらい?と思わないでもない冷めた雰囲気が全編を覆っていたりします。
やはりディスク1からディスク2と聴いていくと正直ディスク2を聴くのは辛いところです。「OPERATION:LIVECRIME」を聴いた後では特に。
同系統アルバム
LIVE SCENES FROM NEW YORK/DREAM THEATER

RAIN OF A THOUSAND FLAMES/RHAPSODY

レイン・オブ・ア・サウザンド・フレイムス/ラプソディー

VICTOR VICP-61578

[☆☆☆☆]

イタリア出身シンフォニックヘヴィメタルバンドの4枚目に位置するであろうアルバムです。一応2002年発表予定の新作に繋げる序章となるミニアルバムというか奇妙な存在になってますが、42分もあって10分以上の大曲が2曲もあって、どこがミニやねん!というツッコミはさておき。
タイトルトラックをそのまま絵にしてしまった直球勝負なジャケットと呼応するかのように激しく熱いドラマティックな1で始まるアルバムは、短いインストを挟んで暗黒の畏怖と妙にハイテンションな曲調が交錯する大作に進んで、組曲となる残り4曲に繋がって行きます。オペラ調で語り口調のヴォーカルが延々と事の顛末を説明してくれる4からリリカルで一息つけるファンタジックな5を超えて、ヘヴィメタルのアルバムで耳にするのはブラインド・ガーディアン以来のような気がするドヴォルザークの「新世界」にどっぷり融合したオペラティックで二転三転する7に突入していきます。ヘヴィメタル色は多少薄まって交響曲的な面が強調されて、大仰さと芝居がかったハッタリ満点の雰囲気は更にパワーアップしており、始めて導入されたイタリア語によるコーラスも荘厳さを産み出すのに強く影響しています。
とりあえず、母国語でない言葉で歌詞を綴っているせいなのかは良く分かりませんが、割と汚い単語が多い(レ○プ好き)のが、いつもかなり気になります(読むのは簡単だけど)。この際全編イタリア語でやった方がコテコテ感とか豪華さが増して良いのではないかと思われますが、対訳をいつも担当してしまう akiyama sisters のエキセントリックな文章には瞬殺。
同系統アルバム
THE HOUSE OF ATREUS ACT I / VIRGIN STEELE
THE WAKE OF MAGELLAN/SAVATAGE
NIGHTFALL IN MIDDLE-EARTH/BLIND GUARDIAN

SYMPHONY FOR THE DEVIL/WITCHERY

シンフォニー・フォー・ザ・デビル/ウィッチリー

TOY'S FACTORY TFCK-87249

[☆☆☆☆]

ちょっと聞いてよ、長くなるかもしれないけどさ。
最近色んなものを付け足したり、クロスオーバーだのミクスチャーだのまるで純粋なものがダメみたいな事言う人って多いじゃない。
でも、そんな人はきっと本物に出会った事が無いのね。きっと無いね。
で、そんな人達にお奨めがコレ。
ヘヴィメタルってウサン臭いもんでしょ?基本的に。そんで皆ハッピーで世界平和を祈ってますなんて、甘っちょろい事なんかゴミ箱にポイよ、ポイ。
こいつら頭オカシー!って感じで道行く人に避けられてナンボのもんでしょ、ネ。 けれどね、それでいて只モンじゃねーよ、こいつら!って思わせないと只のクズになっちゃうわけ。このサジ加減が難しいのよ。
それでコレが凄いんだ。
墓場からコンバンワ、ウワーって感じで始まった途端に頭振ってたんだよ、それこそキツツキなみにさ。それから、その辺のモノを殴りたくなるね、とことん。いや手は痛いんだけどさ。沸騰した血液も速く流れてるのが分かったね、ピューって出るしさ、ピューって。多分洗濯機に入れられたらこんな気分なんだろーなって思うよ。入ろうとはしないけど。
なー、生きてて良かったって思うことある?
思ったねコレは。
ホンモノだったらさ、他に何にもいらないんだよ、きっと。

つまり言いたい事はたった一つだけ。
「コレ聴いて何にも感じないようなヤツはヘヴィメタルは聴かんでヨシ」と。
同系統アルバム
VIOLENT REVOLUTION/KREATOR
COLLISION COURSE/PARADOX
B.A.C.K./ARTILLERY





Nobember

BLIND GUARDIAN | BRAINSTORM | BRAVEHEART | ETERNAL TEARS OF SORROW | EVERGREY | GRAVE DIGGER | HEAVENLY | SILENT FORCE | TEN |

AND THEN THERE WAS SILENCE/BLIND GUARDIAN

アンド・ゼン・ゼア・ワズ・サイレンス/ブラインド・ガーディアン

VICTOR VICP-61576

[SINGLE]

既にシンフォニックパワーメタルの代名詞なブラインド・ガーディアンの2002年2月発表予定の7thアルバムからの先行シングルです。
一応2曲入りでシングルとは銘打っていますが、とてもシングルカットするような尺じゃない14分の超大曲を持ってきており、ラジオでヘヴィローテーションなんか出来ッこねえ!という彼等らしい商売ッ気がこれっぽっちもないものになってます。その問題の曲は音の感触とかプロダクション、細かい展開の多さなどのプログレッシヴな感覚は「IMAGINATIONS FROM THE OTHER SIDE」アルバムに近いものになっていて、それに今のところの最新アルバムの大仰さや隙間なく詰めこまれるクワイアで構成されてます。もう一曲はリリカルなバラードで4thアルバムに入ってても違和感なさそうな感じです。
曲の出来はさておき、この系統の先駆者らしいところを見せつける相変わらずの密度の高さは圧巻。そして妙にデジタルっぽいジャケットはアンドレアス・マーシャルじゃないよ!果たしてANRYとはコレか否か。

METUS MORTIS/BRAINSTORM

メタス・モーティス/ブレインストーム

MARQUEE MICP-10274

[☆☆☆☆☆]

ドイツ出身のバンドの4枚目のアルバムです。ヴォーカリストに元アイヴァンホーSYMPHORCEのアンディ・B・フランクを前作から加入させてます。
アメリカンパワーメタル系な、ちょっと冷気の漂うダイナミックなパワーメタルサウンドは変わりませんが、ヴォーカリストは力のあるハイトーンで前任者よりも安定感を持っており、それだけでも一皮剥けたような感覚を与えており、ソリッドでメタリックなギターリフでパワフルに押しまくるかと思えば、叙情的なメロディを刻むギターソロにピアノの繊細な調べを加えたりとドラマティックなサウンドになってます。密度の高いリフで圧力をかけるヘヴィな2から、小気味いい弾むリフのファストナンバーの3、ヴィシャス・ルーマーズ風の突進力のあるリフを聴かせる7や、微妙にメガデス風なリフワークと唄いまわしな10など起伏のある楽曲を揃えてます。
とりあえず、純度を更に上げたパワーメタルなサウンドを思う存分聴かせるアルバムになってます。しかし、これを聴く限りではSYMPHORCEの立場はいったいどうなるのか。
同系統アルバム
INFATUATOR/SILENT FORCE
STATE OF TRIUMPH/METALIUM
POLARIZED/IVANHOE

HIDING PLACE/BRAVEHEART

HIDING PLACE/BRAVEHEART

DEMO

[☆☆☆☆]

ブラジル出身のトリオバンドの4曲入りデモ・ミニアルバムです。
ミディアムテンポの楽曲を渋めの中音域をメインにしたヴォーカルが唄い上げると言うブラジルのバンドですが、サヴァタージネヴァーモアに近いアメリカン正統派メタルな空気を持ったサウンドを作り出しています。メタリカのジェイムズ・ヘットフィールド風の唄いまわしを聴かせるヴォーカルによるほろ苦い情念に満ちた物悲しいメロディーと、クセの強いフックのあるリフで構成された楽曲は、 叙情的なギターソロを聴かせる躍動感のある1、悲哀に満ちた孤立感を表現し、輪唱コーラスをアクセントにしたタイトルトラック、 竜と迷宮のタイトルを持った、ナレーションを大幅導入して劇的要素を増した起伏のある展開を見せるミステリアスな長尺の3に合唱隊風コーラスによって荘厳さを増した飛翔感あるドラマティックな4と、新人離れした完成度になってます。
デビューアルバムの発表が待たれる魅力のあるサウンドは、正統派メタルのニューカマーに久々に期待を持たせてくれます。でも日本で発売される可能性少なし。
同系統アルバム
POETS AND MADMEN/SAVATAGE
DEAD HEART, IN A DEAD WORLD/NEVERMORE
CRIMSON/SENTENCED

A VIRGIN AND A WHORE/ETERNAL TEARS OF SORROW

ヴァージン・アンド・ホアー/エターナル・ティアーズ・オブ・ソロウ

KING RECORD KICP-851

[☆☆☆☆]

フィンランド出身のメロディックメタルバンドの4枚目のアルバムです。 哀愁帯びた叙情的なメロディにディストーションヴォーカルというメロディックデスメタル的なスタイルですが、ヴォーカル以外にデスメタル要素皆無なのは言うまでも無く。
北欧の凍てつく星空の煌きのような繊細な輝きを持ったキーボードとセンチメンタルなメロディを産み出すノイジーなギターがユニゾンで絡み合いながら泣きのメロディ炸裂なギター&キーボードソロに繋げる1から、オーセンティックなヘヴィメタル色の強いスピード感ある2、求心力の強いギターフレーズで迫る悲劇的な悲哀を産み出す3やクリーンヴォーカルを導入して強烈な哀愁に満ちた結晶世界を作り出す5〜6など、感情を揺さぶる訴求力を持った楽曲が神秘的で幻想的な歌詞世界に溶け出していきます。
暗い森の奥深くにある湖で羽を休める白鳥のようなリリカルな雰囲気を持ち、時にはドラマティックに、時にはメランコリックに迫るキーボードとギターが有機的に交じり合う、扇情性の高い楽曲が揃えられた圧倒的な美意識に裏打ちされた世界は、北欧の夜が産み出す幻のようです。

そして可も無く不可も無い、珍しい選曲のアクセプトのカバーはヴォーカルに高音部分が無いので、つい本家を聴きたくなります。
同系統アルバム
MEGALOMANIA/ENSLAVEMENT OF BEAUTY
WITHIN/EMBRACED
BLACKWATER PARK/OPETH

IN SEARCH OF TRUTH/EVERGREY

イン・サーチ・オブ・トゥルース/エヴァグレイ

SOUNDHOLIC TKCS-85029

[☆☆☆☆]

スウェーデン出身のヘヴィメタルバンドのサードアルバムです。このアルバムからソイルワークエンブレイストで活躍するキーボーディストのスヴェン・カールソンが加わってます。そのエンブレイストは解散したようですが。
中身の方はミディアムテンポの曲が中心の、ハスキーなパワーヴォーカルが唄いあげるダークで少し様式美な展開も聴かせるオーセンティックなヘヴィメタルになっていて、パワフルな男女混声合唱団やきらびやかなキーボードの調べを伴ったドラマティックなものです。もうちょっと明るくなるとアット・ヴァンスみたいですけど、情感豊かに唄うヴォーカルは様式美路線のブラックサバス風なサウンドに乗ってX−ファイルなストーリーを展開していきます。ドラムがおとなしいので、あまりパワフルという感じはしませんが、インストパートでのジワジワ盛り上げる多層的な構成は、少しプログレ的。
かなり渋めの哀愁漂うサウンドは、それなりに聴く人を選びそうではありますが、枯葉が落ちるのを眺めながら迎える秋の夜長には(もうすぐ冬だけど)ぴったりなアダルトな雰囲気満点のものになってます。
同系統アルバム
DRAGONCHASER/AT VANCE
THE MISSION/ROYAL HUNT
EMBRACE THE MYSTERY/ARMAGEDDON

THE GRAVE DIGGER/GRAVE DIGGER

ザ・グレイヴ・ディガー/グレイヴ・ディガー

SOUNDHOLIC TKCS-85030

[☆☆☆☆☆]

ドイツ出身のベテランバンドの10枚目のアルバムです。ギタリストに元RAGEのマンニ・シュミットを加えて、最近の大作主義に別れを告げ「THE REAPER」あたりのスタイルに近くなってます。
ホラー映画さながらの邪悪さ全開のイントロダクションから始まるアルバムは、ちょっとクセのあるギターリフが炸裂する、彼等らしいけれど少し異なる触感を与えるものになってます。ダーティでノイジーな、あまり高音域を使わないヴォーカルも手伝って、ダークで凄みのある空気を持った楽曲が揃ってますが、ギターソロとなるとマンニ・シュミットの帰還を告げる独特のメロディアスなフレーズが展開され、まるでRAGEのような空気さえ感じさせます。これまでのアルバムで培ったコーラスワークも効果的に使われるようになって、タイトルトラックや5、8などのドラマティックな構成は、控えめなキーボードのミステリアスな雰囲気に伴われて、クライマックスを迎えていきます。突進力のある10とか、あんたはオジーか!というようなバラードもあったりでバラエティはそれなりに。
ある意味大仰さでは極めてしまって煮詰まり気味だった墓掘人に皆が忘れかけていた特効薬を投与してみたら、妙な化学変化を起こして驚くほど魅力的なサウンドに仕上ってしまった!という予想できたような出来ないような、それはともかく次の一手への布石には充分過ぎるほどのアルバムになりました。
そしてアイアン・メイデンのカバーは自分の能力を完全に把握している見事な選曲です。
同系統アルバム
VIOLENT REVOLUTION/KREATOR
CARNIVAL DIABLOS/ANNIHILATOR
TRAPPED!/RAGE

SIGN OF THE WINNER/HEAVENLY

サイン・オヴ・ザ・ウィナー/ヘヴンリー

VICTOR VICP-61654

[☆+(任意)]

フランス出身のメロディックメタルバンドのセカンドアルバムです。メンバーチェンジとか有ったようですが、トミー・ハンセンをプロデューサーに迎えた骨の髄までジャーマンメタル(フランスのバンドだけど)なサウンドはこれっぽっちも変わりありません。
ガンマ・レイのカイ・ハンセンと元ハロウィンのマイケル・キスクを微妙な感じでブレンドしたハイトーンヴォーカルが、ドラマティックでライブでは皆唄えよ!と言わんばかりのコーラス満載のテンションの高い楽曲を詰めこんだアルバムになってますが、曲自体はかなりの割合でカイ・ハンセンが唄えばそのままガンマ・レイになりそうな。暴走気味に突っ走る先達のフレーズ炸裂で独自性皆無のメロディアスフレーズの応酬は、ある意味潔い爽快感さえ与えるもので、極上の高級食材を惜しげも無く使って料理を作ってみれば個々の味にはすっかり無頓着な寄せ鍋に仕上ってしまったけれど、すごく上手いよコレ!と絶賛されてしまうような、結局は味で勝負だよ!と開き直ってしまった素人の一流料理人を絶句させる仕上りで、冬は鍋物が美味しい季節です。
元ネタを探すよりも独自フレーズを探す方が困難と言う、何はともあれ、このアルバムがファーストコンタクトなら絶賛できるものになってます、人として正しいかどうかは別にして。
同系統アルバム
CRYSTAL EMPIRE/FREEDOM CALL
SUNRISE IN RIVERLAND/INSANIA
POWERPLANT/GAMMA RAY

INFATUATOR/SILENT FORCE

インファチュエイター/サイレント・フォース

VICTOR VICP-61603

[☆☆☆☆☆]

ロイヤルハントのヴォーカリスト、D.C.クーパーとシグネットシナーなどで活動していたギタリスト、アレックス・バイロットが中心になって結成されたバンドのセカンドアルバムです。 デビューアルバムではオーセンティックな正統派ヘヴィメタルをやってましたが、今作でもその路線に変更は無く、期待を裏切らない高品質な作品になってます。
ごく短いイントロからジューダス・プリーストを彷彿とさせる硬質で迫力のあるギターリフを炸裂させながら攻撃的に展開していく滑らかなギターソロが爽快な2から、クイーンズライクを思い出す冷気を伴った物悲しいコーラスのミディアムテンポの3、ネオクラシカルなフレーズを絡めつつドラマティックに展開する開放的なクワイアを持ったファストナンバーの4、ヘヴィメタリックなリフとロブ・ハルフォードに憑かれたかのような鬼気迫るパフォーマンスを聴かせる突進力のあるタイトルトラック、映画「グラディエイター」からインスパイアされた組曲など、ジューダス・プリーストやツアーを共にしたストラトヴァリウスなどの影響を上手く消化したオーセンティックで魅力あるものになっています。決してD.C.クーパーの能力を最大限に引き出したとは言えませんが、そんな事はどうでもいいと思わせる、自分達のあるべき姿を再確認したような迷いの無い楽曲が揃えられており、どの曲にもフックのあるリフとソリッドなメロディが満載のヘヴィメタルの刻印が打たれています。
メロディックパワーメタル一本にバンドの方向性を定めたことによって、楽曲への集中力を高めアイデンティティの確立を果たした、これからのバンドの飛躍を約束された完成度の高い強力なアルバムです。
同系統アルバム
REBIRTH/ANGRA
PERFECT BALANCE/BALANCE OF POWER
METALMACHINE/MIDNIGHT SUN

FAR BEYOND THE WORLD/TEN

ファー・ビヨンド・ザ・ワールド/TEN

VICTOR VICP-61653

[☆☆☆☆]

英国出身のメロディアスロックバンドの六枚目のアルバムです。キーボードが替わってますが、ほとんど影響ありません。
ダルいムードで始まる明るいのか暗いのか分かりにくい1で始まるアルバムは、ちょっとエッジが立ったリフのやはり和み癒し系な2、さらにバラードな3とソフトタッチな曲を続けて今までの形からは少し外れた展開を聴かせます。それから華やかなキーボードに導かれるハードな4からダイナミックなグルーブ感の強い5とハードロック色が強まっていき、AOR風の6、10を挟んでドライブ感の強い7、8へと進んでいき、タイトルトラックなバラードそして、ドラマティックでアグレッシブ、さらにギターソロが嵐のように激しさを増す11でクライマックスを迎えます。
ヨーロッパ盤と日本盤で曲順が異なっていることからも分かるように、王道の楽曲には奇をてらわない王道の曲順が最も効果的なのではないかと、この並びには疑問を抱きつつも高品質のメロディアスハードのツボを押さえた、いつも同じでも何か文句有るかオラァ!と言った信念に満ちたアルバムになってます。
同系統アルバム
INSIGHT/CHROMING ROSE
NEMESIS/MIDNIGHT SUN
NAIVE/CLOCKWISE





December

ARTENSION | DIMENSION ZERO | EDENBRIDGE | SINS OF OMISSION | THE STORYTELLER |

SACRED PATHWAYS/ARTENSION

セイクリッド・パスウェイズ/アーテンション

MARQUEE MICP-10276

[☆☆☆☆]

多国籍テクニカルメタルバンドの五枚目のアルバムです。ヴォーカルはロイヤルハントへ、キーボードはリング・オブ・ファイア、ドラマーはRAGE、ベースはマグニチュード9、ギタリストはリーマン(未確認)と空中分解して散らばっていた結成時のオリジナルラインナップを奇跡的に復活させて製作されました。
確かなテクニックを持ったメンバーの再結集ということで、初期に感じられたダイナミズムが戻ってきた!ような気がする整合性のあるサウンドは、パワフルなリズム隊が土台をガッチリと固めており、その上でヴィタリ・クープリの特長的なキーボードが乱舞する劇的な楽曲を産み出してます。ヴォーカルメロディはそんなに変わったような気がしないけど。
スペーシーなイントロダクションから始まるこのアルバムは、華麗なピアノの響きを聴かせるスリリングなインストナンバーや、アーテンションの疾走ナンバーはやっぱり破壊力があるぜ!な6、11や、テクニカルかつグルーブ感のある3やプログレッシブなタイトルトラックを経て、やっちまったかジョン・ウェスト!な繊細なラヴソングのヨーコさんとか色々揃ってます。
不安定なラインナップだった頃のアルバムよりはサウンドの統一感やバンドとしてのまとまりを感じさせます。けれども冷静に考えると彼等に期待されていたものと出来あがったものが、ようやく一致したという事で、やっとスタートラインに戻ったのかよ!と思わず憤りを覚えずにはいられなかったりする今日この頃ですが、とりあえずヴィタリ・クープリがガンガン弾けば満足デス。


You call sun って聞こえるな…。
同系統アルバム
REBIRTH/ANGRA
SANCTUS IGNIS/ADAGIO
REALITY IN FOCUS/MAGNITUDE 9

SILENT NIGHT FEVER/DIMENSION ZERO

サイレント・ナイト・フィーヴァー/ディメンション・ゼロ

TOY'S FACTORY TFCK-87274

[☆☆☆☆]

スウェーデンで活動を続ける、イン・フレイムスのイエスパー・ストロムブラードと元イン・フレイムスのグレン・ユングストロームが中心となって結成されたバンドのファースト・フルレンス・アルバムです。
先に発表されていたミニアルバムは、攻撃的なイン・フレイムスと言ったサウンドでしたが、ついに登場したこのアルバムはアグレッション、ブルータリティを重点に置いた激烈に疾走するサウンドになってます。嵐のようなドラミングと叙情的な色彩を絡めた扇情的なギターリフで全体を彩り、狂暴なヴォーカルが叫び続ける楽曲は、掘削機が休み無く地面を掘り続けるようなもので、華麗なギターソロはこれっぽっちもありません。
基本的にギターリフを聴かせるような剛球一直線な曲ばかりの衝動系メタルになっているので、イン・フレイムスなどのメロディック・デスメタル勢との差別化は図られてはいますが、そうするとこのタイプのバンドとの差別化が難しくなってくると言う微妙なポジションになってるような気がします。

そしてビートルズのカバー!?
同系統アルバム
SLAUGTHER OF THE SOUL/AT THE GATES
DOMINATION COMMENCE/THE DEFACED
MANIFEST OF FATE/THE FORSAKEN

ARCANA/EDENBRIDGE

アルカナ/エデンブリッジ

KING RECORD KICP-856

[☆☆☆☆]

美女ヴォーカリストを擁するオーストリア出身のバンドのセカンドアルバムです。またしても日本ではクリスマスシーズンなりリースで、このまま恒例行事になるのではないかと思わせたり。
サウンドの方はヨーロピアンな透明感あふれるキーボードとソプラノヴォイスが融合するシンフォニックでファンタジックなものですが、リリカル幻想絵本だった前作からはダイナミズムやハードロック色が強まって、まるでナイトウィッシュのような雰囲気になってます。もっともナイトウィッシュよりはヴォーカルがキュートな魅力を発散していて、柔らかい感じが強いですが。ギタープレイの方もメタル色が強まった微妙にエッジの効いたリフやソロを聴かせていて、エキサイティングなサウンド(シンフォニックロックとしては)を作り出しています。
フィメールヴォーカルなメタルはサイコーだ!更に美形で言う事無し!と両手を握り締めて滂沱の涙を流してしまうタイプの人にとっては砂漠のオアシス、雪降る夜に暖炉、マッチ売りの少女のマッチはいつまで持つのか、と会心の一撃を加えられるアルバムになってます。
そしてアルカナ・サンクチュアリを一番に思い浮かべたのは秘密だ。
同系統アルバム
WISHMASTER/NIGHTWISH
LEGACY/SHADOW GALLERY
QUEEN OF THE OCEAN/LANA LANE

FLESH ON YOUR BONES/SINS OF OMISSION

フレッシュ・オン・ユア・ボーンズ/シンズ・オブ・オミッション

SOUNDHOLIC TKCS-85032

[☆☆☆☆]

スウェーデン出身のバンドのセカンドアルバムです。ヴォーカルでギタリストなフロントマンが脱退したので、専任のヴォーカリストとギタリストが新たに加入しています。
スラッシュメタル風味のディストーションヴォーカル乗せなサウンドは今回のアルバムでも貫かれていますが、リズムチェンジや変拍子を多用する複雑な展開を聴かせるちょっとヘンな楽曲が並んでます。北欧叙情味を持ちながら妙なフックのある初期RAGEを彷彿とさせるギターリフに、イカレ気味なインストパートと、暴虐ヴォーカルと忘れた頃に出てくるノーマルなヴォーカルで、先を予想させないひねくれた展開で引きずりまわす鋭い音を繰り出してきます。その他、女性ヴォーカルやアコースティックなギターでメランコリックな雰囲気を盛り上げたりして、かなり手は込んでます。
とりあえず、テクニカルメタル風の奇妙なサウンドを作り出してきたバンドは確実に成長していることは間違い無いですが、この先どうなるかがとても未知数な気がする今日この頃です。

で、無難だけどリフのキレが足りなくて“エンジェル・オブ・デス”にはどうも聞えないスレイヤーのカバーはともかく、ジューダス・プリーストのカバーは(笑)。
同系統アルバム
HATESPHERE/HATESPHERE
UNDECEIVED/EXTOL
INTO THE ABYSS/HYPOCRISY

CROSSROAD/THE STORYTELLER

クロスロード/ザ・ストーリーテラー

SOUNDHOLIC TKCS-85031

[☆☆☆☆]

スウェーデン出身のバンドのセカンドアルバムです。固定されないセカンドギタリストが交替してますが、特に影響ないようです。
前作でフォーク色の強いメロディ満載のドラマティックなヘヴィメタルを作ってきた彼等ですが、今作ではパワーメタリックな要素が前面に出ており、スピード感のあるテンションの高い楽曲を揃えてきてます。物悲しいメロディとリリカルな空気を紡ぎだす長めのイントロナンバーから、ソリッドなギターリフが炸裂して厚いクワイア、さらにツインリードのハーモニーを聴かせる雄々しいファストナンバーの2、トラッド調のミディアムテンポの3、矢継ぎ早に繰り出されるリズム隊の疾走感が心地よい4、初期ブラインド・ガーディアンを彷彿とさせるスケール感の大きいクワイアを多用した荘厳な5、メロディアスなリフによって導かれるドラマティックで開放感あふれるファストナンバーの6、情念あふれるヴォーカルが印象的なパワーバラードの7、タイトなリズムと叙情的なメロディ、ツインリードギターの掛け合いが炸裂する8、 哀愁漂うファンタジックな焚き火を囲んで飲み明かしてしまう9、民俗音楽風に始まり、疾走、二転三転しながらコーラス満載でドラマティックに突き進む、ディストーションヴォーカルとの掛け合いを導入した新たな局面に挑む大作の10までメロディを中心に据えた劇的な曲が並んでいます。
サウンド面、作曲面で前作から大きく成長したアルバムはパワーメタルな色を強めたことで特徴的だったトラッド風味が多少減って、独自性では後退した感がありますが、ヘヴィメタルらしい雄壮さと力強さを手に入れたバンドの飛躍は間違いなく、さらにツインリードギター万歳。

アイアンメイデンのカバーは、まー普通。
同系統アルバム
RENAGADE/HAMMERFALL
THUNDERSTEEL/RIOT
THE SACRED TALISMAN/NOCTURNAL RITES