ALBUM COLLECTION バックナンバー 2003

January Februaly March April May June July August September October Nobember December


  1. UNDERWORLD/ADAGIO
  2. ORDER OF THE ILLUMINATI/AGENT STEEL
  3. DAYS OF RISING DOOM - METAL OPERA/AINA
  4. PRISTINE IN BONDAGE/AMARAN
  5. DOUBLE LIVE ANNIHILATION/ANNIHILATOR
  6. WE'VE COME FOR YOU ALL/ANTHRAX
  7. PRIMARY FEAR/ARACHNES
  8. ANTHEMS OF REBELLION/ARCH ENEMY
  9. GOLDEN DAWN/ARTHEMIS
  10. THE EVIL IN YOU/AT VANCE
  11. FAR FROM HEAVEN/AXENSTAR
  12. HEATHEN MACHINE/BALANCE OF POWER
  13. SWORD'S SONG/BATTLELORE
  14. UNHALLOWED/THE BLACK DAHLIA MURDER
  15. LIVE/BLIND GUARDIAN
  16. MYSTIC YOUR HEART/BLOOD STAIN CHILD
  17. SOUL TEMPTATION/BRAINSTORM
  18. FEEDING THE FLAMES/BURNING POINT
  19. MY PASSION // YOUR PAIN/CALLENISH CIRCLE
  20. THE MORE YOU SUFFER/CARNAL FORGE
  21. HATE CREW DEATHROLL/CHILDREN OF BODOM
  22. THE IMPOSSIBILITY OF REASON/CHIMAIRA
  23. WATCHING IN SILENCE/CIRCLE II CIRCLE
  24. TRANSITION/CITADEL
  25. DAMNATION AND A DAY/CRADLE OF FILTH
  26. POSSESSED 13/THE CROWN
  27. DARKFIRE/DARKFIRE
  28. DARK MOOR/DARK MOOR
  29. METAL DISCHARGE/DESTRUCTION
  30. IMPACT/DEW-SCENTED
  31. THIS IS HELL/DIMENSION ZERO
  32. HIDDEN PLACE/DGM
  33. DEATH CULT ARMAGEDDON/DIMMU BORGIR
  34. EMPEROR OF THE BLACK RUNES/DOMINE
  35. VALLEY OF THE DAMNED/DRAGONFORCE
  36. EVILIZED/DREAM EVIL
  37. OCEAN'S HEART/DREAMTALE
  38. TRAIN OF THOUGHT/DREAM THEATER
  39. APHELION/EDENBRIDGE
  40. THE PHANTOM AGONY/EPICA
  41. MUSIC MACHINE/ERIK NORLANDER
  42. FALLEN/EVANESCENCE
  43. OF WARS IN OSYRHIA/FAIRYLAND
  44. THE SCEPTER OF DECEPTION/FALCONER
  45. PROMISED LAND/FERRIGNO LEAL KUPRIJ
  46. BURNING EARTH/FIREWIND
  47. THE FLAG OF PUNISHMENT/GALNERYUS
  48. ONCE AND FUTURE KING - PART 1/GARY HUGHES
  49. ONCE AND FUTURE KING - PART II/GARY HUGHES
  50. RHEINGOLD/GRAVE DIGGER
  51. ONE KILL WONDER/THE HAUNTED
  52. RABBIT DON'T COME EASY/HELLOWEEN
  53. THROUGH THE FLESH TO THE SOUL/INVOCATOR
  54. DANCE OF DEATH/IRON MAIDEN
  55. SWAMPSONG/KALMAH
  56. EPICA/KAMELOT
  57. LABYRINTH/LABYRINTH
  58. THE UNCROWNED/LAST TRIBE
  59. A FLAME TO THE GROUND BENEATH/LOST HORIZON
  60. THROUGH THE ASHES OF EMPIRES/MACHINE HEAD
  61. DECODING THE SOUL/MAGNITUDE 9
  62. SIGNE DE VIE/MANIGANCE
  63. MASTERPLAN/MASTERPLAN
  64. AS ONE/METALIUM
  65. ST.ANGER/METALLICA
  66. SADISTIC SEX DAEMON/MISANTHROPE
  67. HOLLOWED BE THY NAME/MOB RULES
  68. HERETIC/MORBID ANGEL
  69. DOMI<>NATION/MORIFADE
  70. INHUMANITY/MORS PRINCIPIUM EST
  71. REGRESSUS/MYSTIC PROHECY
  72. SHEOL/NAGLFAR
  73. ENEMIES OF REALITY/NEVERMORE
  74. SWEET VENGANCE/NIGHTRAGE
  75. MIRROR OF MADNESS/NORTHER
  76. THE THIRD PROPHECY/NOSTRADAMEUS
  77. IN DEFIANCE OF EXISTENCE/OLD MAN'S CHILD
  78. KILLBOX13/OVERKILL
  79. PASSENGER/PASSENGER
  80. SOUNDCHASER/RAGE
  81. EMBRACE THE GALAXY/RICHARD ANDERSSON'S SPACE ODYSSEY
  82. DIARY IN BLACK/RAWHEAD REXX
  83. MASK OF DAMNATION/REQUIEM
  84. STRANGE TO NUMBERS/SCARIOT
  85. SCENT OF HUMAN DESIRE/SECRET SPHERE
  86. ROORBACK/SEPULTURA
  87. THERE WILL BE EXECUTION/SINNER
  88. MIND REVOLUTION/SKYFIRE
  89. FIGURE NUMBER FIVE/SOILWORK
  90. WINTERHEART'S GUILD/SONATA ARCTICA
  91. PREDATOR OF THE EMPIRE/STEEL ATTACK
  92. RISING SYMPHONY/STORMWIND
  93. STRAPPING YOUNG LAD/STRAPPING YOUNG LAD
  94. ELEMENTS PT.1/STRATOVARIUS
  95. ELEMENTS PT.2/STRATOVARIUS
  96. EMPRISE TO AVALON/SUIDAKRA
  97. EMBER TO INFERNO/TRIVIUM
  98. DELIRIUM VEIL/TWILIGHTNING
  99. I MADE MY OWN HELL/VHALDEMAR
  100. WAYFARING/VALIANCE
  101. VOIVOD/VOIVOD
  102. ODIN/WIZARD
  103. A TRIBUTE TO THE PRIEST/VARIOUS ARTIST

January

LOST HORIZON | MASTERPLAN | NOSTRADAMEUS | SINNER | STRATOVARIUS | VALIANCE | A TRIBUTE TO THE PRIEST |

A FLAME TO THE GROUND BENEATH/LOST HORIZON

ア・フレイム・トゥ・ザ・グランド・ビニース/ロスト・ホライズン

VICTOR VICP-62040 [☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドのセカンドアルバムです。ツアーでサポートメンバーだったギタリストとキーボーディストがそのまま正式加入して製作されています。
 スペーシーな雰囲気を持った長めのイントロダクションで期待感を高めるアルバムは、爆発力を持った強烈なギターリフを携えた勇ましい2へと進んでいきます。力強く逞しいハイトーンヴォーカルが強靭な意志を感じさせながら、哀愁帯びたメロディをギターが華麗に奏で、疾走感を持ったストロングスタイルの楽曲を組み立てていく様は圧倒的な存在感を産み出します。エピックスタイルのドラマティックな3はマノウォーを彷彿とさせる勇壮さと誇りに満ちた信念を感じさせます。キャッチーなメロディをストロングスタイルで作り出すミディアムテンポの4はメランコリックなギターソロで曲を盛り上げます。物悲しいメロディの美しく暗いインストゥルメンタルを挟んで、圧倒的な質感を持って迫る6は大仰で歌劇風のイントロから、攻撃的でキーボードが豪華な雰囲気を持ちながら疾走感ある劇的な展開を見せる長編の一曲。弾けるようなイントロから始まる7は硬質なギターリフと憂いを帯びたメロディを力強く唄うヴォーカルが一体となったミディアムテンポのナンバーで、疾走感を増すインストパートが印象的です。映画「ハイランダー」をモチーフにした大作の8は多彩な表情を見せるヴォーカルがテンション全開の激烈ハイトーンを駆使しながらドラマティックな楽曲を強力に表現します。そして、アウトロでアルバムはエンディングを迎えます。
 イントロにアウトロ、さらにインストを除くと実質6曲のアルバムになっており、その少ない楽曲に多くの要素を詰め込んだことでサウンドの密度は飛躍的に高まったものの、その分冗長とも思われる展開も増えており、実際の尺以上の長さを感じさせる楽曲群になっています。さらに長尺の曲にしては曲の締め方はクライマックスほどには注意が払われておらず、首をかしげるような終わり方が多いです。その辺りの細かい点を差し引いても、セカンドアルバムにしてこの高品質のサウンドと楽曲、強力無比のヴォーカルとエピックな要素満載の高密度のヘヴィメタルを劇的に産み出した驚愕のアルバムであることは間違いありません。
同系統アルバム
WARRIORS OF THE WORLD/MANOWAR
HYPERION/MANTICORA
HASTINGS 1066/THY MAJESTIE

MASTERPLAN/MASTERPLAN

マスタープラン/マスタープラン

MARQUEE MICP-10346 [☆☆☆☆]

 元ハロウィンのギタリスト、ローランド・グラポウとドラマーのウリ・カッシュがイングヴェイ・マルムスティーンズ・ライジング・フォースなどで活躍するヴォーカリスト、ヨルン・ランデを迎えて結成したバンドのファーストアルバムです。
 メロディアスでドラマティックなイントロから始まる1はタイトでエッジの効いたリフに渋みのあるヨルン・ランデのハイトーンヴォーカルが煌めくキーボードと共に飛翔感を演出するスピード感のあるナンバーでメリハリのある展開が劇的さを生み出します。シリアスなメロディが展開される2は緊迫感を高めながらヘヴンズ・ゲイトディオ風のオーセンティックなドラマティックメタルを作り出していきます。ピアノのイントロからシンフォニックに展開する3は情感豊かなヴォーカルがじっくりと唄いあげるダークな色彩を持った劇的なミディアムテンポの曲です。キャッチーなメロディでアップテンポ、昔のハロウィン風の4では元ハロウィンのマイケル・キスクを担ぎ出してツインヴォーカルを聴かせていますが、誰も彼もがマイケル・キスクに似たようなメロディを唄わせるのは何故なのだろうか。リリカルなメロディがアコースティックギターで紡がれる5はスケール感の大きいフレーズとのコントラストを高めながらダイナミックに展開します。6はセンチメンタルなメロディで進む泣きのハードロックナンバー、メタリックなリフが鋭く展開する7は攻撃性とドラマ性が交錯するパワーメタリックな一曲。ダークなヘヴィリフで構成される8は勇壮な雰囲気を持ったミディアムテンポの曲。メタリックなリフとブルージーな曲調が合わさった9、キャッチーなメロディがハロウィンを彷彿とさせるメロディックメタルナンバーの10、大陸的な乾いた感覚を持ったバラードナンバーの11と楽曲を揃えています。
 メンバーの構成から期待される路線とは異なって、伝統的で正統派のメロディアスなヘヴィメタルを高品質で作り出しているアルバムは、ヴォーカルのパフォーマンスも相まって安心して聴かせるものになっていて、新たな路線に赴くバンドの意気込みを感じさせますが、メンバーがこのまま固定されて安定した活動を続けていけるかどうかは甚だ疑問だったり。
同系統アルバム
BETWEEN HEAVEN AND HELL/FIREWIND
SIGN OF TRUTH/DIONYSUS
THROUGH THE STORM/RIOT

THE THIRD PROPHECY/NOSTRADAMEUS

ザ・サード・プロフェシー/ノストラダムス

SOUNDHOLIC TKCS-85048 [☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドのサードアルバムです。ドラマーが代わってます。  今度のアルバムは、スケール感の大きいイントロダクションの「指輪物語」をモチーフにしたミディアムテンポのドラマティックな1で始まり、スティーブン・キングの「ザ・スタンド」をテーマに持つシリアスな雰囲気の疾走ナンバーの2はスリリングなインストゥルメンタルで緊張感を高めます。アップテンポでダークな空気を保って展開するパワーメタリックな3、小気味良いギターリフで哀愁あるメロディを繰り出すキャッチーな4、ドラマティックなイントロで始まる5は疾走感あるギターで突進しつつ、クセのあるコーラスで盛り上げていきます。オーセンティックなメタルリフで構成される6はシンガロングなコーラスも加わって攻撃的に進みます。ザクザクしたギターリフから緊迫感を盛り上げていく7はクワイアを盛り込んだサビで一体感を高めます。叙情的なメロディでスピードアップする8は高揚感を高め劇的に展開していきます。勇壮かつ雄々しく突き進む9はテンションの高いヴォーカルで盛り上げます。10は哀愁漂うインストゥルメンタルです。
 ヘヴィメタル的なカタルシスを色々配置しつつ硬質な楽曲をやってのける、全体的にレベルアップしたサウンドはバンドの成長が感じさせる出来栄えで、曲も洗練されつつあるのが分かりますが、その分バンドの特徴と言うかカラーが希薄になってきたような感じがします、と言うかかなりの勢いで普通度が増してます。あと一歩で壁を突き破れそうな感じはしますが、とりあえずこのアルバムは微妙なところにあってサードアルバムでこれはどうなんだろうなー、という気持ちでいっぱいです。
同系統アルバム
BETWEEN HEAVEN AND HELL/FIREWIND
HYPERION/MANTICORA
HASTINGS 1066/THY MAJESTIE

THERE WILL BE EXECUTION/SINNER

ゼア・ウィル・ビー・エクセキューション/SINNER

VICTOR VICP-62148 [☆☆☆☆]

 ドイツのベテランヘヴィメタルバンドの13枚目のアルバムです。ギタリストに一時期脱退していたトム・ナウマン、さらにドラマーのフリッツ・ランドウもサクソンから戻って製作されています。
 トム・ナウマンが戻ったことによって多少方向性が修正されたアルバムは、1、2とマット・シナーが掛け持ちで活動しているプライマル・フィアを思わせるヘヴィメタリックな音像の曲で始まります。サンダーヘッドみたいな突進力のある3、ヘヴィメタルだったころのメタリカを彷彿とさせるダークなリフのヘヴィナンバーの4、キャッチーなメロディとコーラスが印象的なドライブ感の強いアップテンポの5、7、ヘヴィリフで組み立てられる6、10、スローナンバーの8はダークな曲調の中サビのキャッチーさがコントラストを産み出します。ベースラインが目立つ9はオーセンティックなメタルスタイルを貫き、ソフトタッチのアコースティックギターで爪弾かれる哀愁たっぷりのパワーバラードの11が収録されています。ボーナストラックには、まるで彼らの持ち歌みたいに聴こえるメタリカのカバーと初期の楽曲のリメイクが収められています。
 ベテランの凄みを感じさせる骨太のヘヴィメタルを徹頭徹尾やってのける様はジャーマンメタルここに在り、という存在感をたっぷり感じさせるアルバムは、プライマル・フィアとのメンバーの重複が更に加速して差別化を図るのが難しい状況で、マット・シナーの独特のダーティな歌声とフックのある良質のメロディをアピールするオーセンティックなヘヴィメタルを主張した力強いものになっており、バンドの自然体が伝わる安心のブランドになってます。
同系統アルバム
PLANET PANIC/PRETTY MAIDS
BLACK SUN/PRIMAL FEAR
XILED TO INFINITY AND ONE/SEVEN WITCHES

ELEMENTS PT.1/STRATOVARIUS

エレメンツ・パート1/ストラトヴァリウス

VICTOR VICP-62177 [☆☆☆☆]

 フィンランド出身のメロディックメタルバンドの9枚目のアルバムです。
 シングルカットされた、まるで前作収録曲の“HUNTING HIGH AND LOW”の二番かと思わせるキャッチーな1で始まるアルバムは、前作の路線を踏襲しつつもシンフォニックなパートを大胆に増やしたものになっています。続く大作の2においてその傾向は存分に発揮され、重厚でスケール感の大きいサウンドが展開されていく様は「THIRTEEN」の頃あたりのRAGEを思い出したりする若干の冷気が漂うものになってます。さらにティモ・トルキのギタープレイは今まで以上のエモーショナルな表現を作り出しており、タイトな壁を積み重ねるリズム隊と厚みのあるサウンドを産み出します。3は荘厳なイントロダクションから、テンションの高いハイトーンヴォーカルと強力な存在感を持ったビートが刻まれる疾走感あふれるスピードナンバーで、キーボードとギターが絡み合うスリリングなインストゥルメンタルパートが相まって、彼らの特徴が充分に発揮された曲になっています。4はシンフォニックなパートと攻撃的なバンドのプレイが交錯するドラマティックなオープニングから、壮大なイメージを想起させるコーラスを伴ったヴォーカルパートへ、更にリリカルかつ牧歌的なパートを経てメタリックでノイジーなパートを二転三転しながら疾走していき、再びコーラスで終了する大作です。キーボードの情感豊かなイントロから華麗に疾走してのける5は実力を見せつけるキーボードソロが印象的、女性ヴォーカルの可憐な歌声で始まる6はシンフォニックな中間部を持ったバラードナンバー、そしてバンド名の一部を冠するネオクラシカルな超絶疾走インストゥルメンタルの7へと続いていきます。女性コーラスの荘厳なイントロから始まる大作の8は骨太のタイトでヘヴィなパートとシンフォニックなパートが壮大に展開されていき、エキゾチックなギターソロに哀愁たっぷりのキーボードソロと盛り沢山の一曲です。9は物悲しい雰囲気から希望を見つけ出すミディアムテンポの優しい曲で波の音が満載です。ボーナストラックも静かな雰囲気でゆっくりと始まり、エモーショナルなギタープレイで盛り上げていく、ちょっとドリーム・シアターっぽい曲です。
 メインソングライターであるティモ・トルキのパーソナルな側面の強いソロアルバムを発表したことによる効果か、プレイや曲作りにも冒険的な要素が加えられており、新鮮さが多少増しています。さらに安定したプレイを聴かせるベース、ドラムに加えて、驚異的なフレージングによって存在を強く印象付けるキーボードと楽器陣の充実度はバンドのキャリアでも最高潮に達していると思われますが、限界すれすれのハイトーンを連発するヴォーカルのパフォーマンスはあまり見るべきものが無いような。さらに二部作の予定ということで楽曲のバランスや曲順があまり良くない、と言うか何故シングルカットされた1が一曲目なのか?2を一曲目にしてバンドの意志を見せつけた方が聴き手を驚かせられたのではないか?とか二枚組でもいいじゃん、とか色々考えさせられたりしますが、伊達にフォロワーが続出するわけではない!と言うバンドの自信を感じさせるアルバムです。
同系統アルバム
TIME REQUIEM/RICHARD ANDERSSON'S TIME REQUIEM
APOCALYPSE/ARACHNES
PROPHET OF THE LAST ECLIPSE/LUCA TURILLI

WAYFARING/VALIANCE

ウェイフェアリング/ヴァリアンス

KING RECORD KICP-912 [☆☆☆]

 イタリア出身の六人組が2002年に発表したセカンドアルバムです。
 ブラインド・ガーディアンを彷彿とさせる勢いのあるダーティな声質で、コーラス、テクニカルなインストを絡めながら疾走感の強いパワーメタルの1を繰り出して始まるアルバムは、雄大なメロディを朗々と唄いながらスリリングに展開する2、リリカルなピアノのイントロからドラマティックに展開するきらびやかな雰囲気のメランコリックな3、叙情的なメロディが満載でフックのあるインストが炸裂するダイナミックな4、シンフォニックなキーボードを絡めて豪華に迫るミディアムテンポの5は起伏も大きくスケール感を感じさせます。
 緊迫感を煽るイントロから始まる6は小気味良い疾走感を持ったスピードナンバーで勇壮なコーラスと大仰な展開で楽曲を盛り上げます。叙情的なピアノのパートから始まる7はリリカルなミディアムテンポのナンバー、スリリングなギターリフが印象的でギターソロが扇情的な突進気味の8、スパニッシュなギタープレイでフォーク風の哀愁漂う9でアルバムは一応終わりですが、さらにボーナストラックに原曲にとても忠実なマノウォーのカバーなどが収録されています。
 かなりフックのあるメロディや緊張感のある楽曲を作ってはいますが、ヴォーカルはあまり上手いとは言えなかったり、曲の展開にもスムーズでない無理矢理なところもあったりしますが、割とオリジナリティは培われているような気がするので、技術とか表現力がアップすれば化けそうな可能性を持ったアルバムになってます。
同系統アルバム
HYPERION/MANTICORA
HASTINGS 1066/THY MAJESTIE
BREATH OF ETERNITY/HIGHLORD

A TRIBUTE TO THE PRIEST/VARIOUS ARTIST

ア・トリビュート・トゥ・ザ・プリースト〜ジューダスプリーストに捧ぐ

KING RECORD KICP-911 [EXTRA]

 ドイツのレーベルであるニュークリア・ブラストが2002年に製作したジューダス・プリーストのカバーアルバムです。既出の曲が満載ですが、収録曲とアーティストは以下。
HELL BENT FOR LEATHER / ANNIHILATOR
 カナダ出身のバンド、アナイアレイターが1993年に発表したサードアルバム「SET THE WORLD ON FIRE」に収録されたバージョンです。このラインナップでは二度と聴けないものですが、最近のリマスター盤にもやっぱり収録されてます。オリジナルは「KILLING MACHINE」アルバム。
METAL GODS / PRIMAL FEAR
 ドイツ出身のバンド、プライマル・フィアにハルフォードのギタリストがゲスト参加して録音された未発表バージョン。オリジナルは「BRITISH STEEL」アルバム。
BEYOND THE REALMS OF DEATH / 陰陽座
 日本盤のみ特別収録のバージョン。男性ヴォーカルのみで唄いあげるこのバージョンはかなり原曲に忠実です。オリジナルは「STAINED CLASS」アルバム。
RIDING ON THE WIND / WITCHERY
 スウェーデン出身のデスラッシャーがミニアルバム「WITCHBURNER」で発表したバージョン。ヴォーカルはともかく、スリリングなツインギターが心地よい。オリジナルは「SCREAMING FOR VENGEANCE」アルバム。
SCREAMING FOR VENGENCE / ICED EARTH
 アメリカ出身のパワーメタルバンドが、カバーアルバム「TRIBUTE TO THE GODS」で発表したバージョン。もちろんパワフリャーな仕上がり。オリジナルは「SCREAMING FOR VENGEANCE」アルバム。
JAWBREAKER/ SIEBENBURGEN
 スウェーデン出身のブラックメタルバンドが「PLAGUED BE THY ANGEL」のボーナストラックで発表したらしいバージョン。うがいしてるみたいなヴォーカルが盛り上がらない。オリジナルは「DEFENDERS OF THE FAITH」アルバム。
BREAKING THE LAW/HAMMERFALL
 ドイツ出身のピュアメタルバンドがサードアルバムのセカンドシングルで発表したバージョン。メンバーが担当パートを変更して録音した代物。 オリジナルは「BRITISH STEEL」アルバム。
ELECTRIC EYE / BENEDICTION
 イギリスのデスメタルバンドが「GRIND BASTARD」アルバムで発表したバージョン。 オリジナルは「SCREAMING FOR VENGEANCE」アルバム。
PAINKILLER / DEATH
 故チャック・シュルディナー率いるアメリカのテクニカルデスメタルバンドが「THE SOUND OF PERSEVERANCE」アルバムで発表したバージョン。テンションの高いヒステリックヴォーカルが炸裂する凶悪な仕上がり。オリジナルは「PAINKILLER」アルバム。
ALL GUNS BLAZING / SILENT FORCE
 アメリカ出身のパワーメタルバンドが「INFATUATOR」アルバムで発表したバージョン。オリジナルは「PAINKILLER」アルバム。
DREAMER,DECEIVER /STEEL PROPHET
 トリビュートアルバムの常連みたいなアメリカのバンドの「GENESIS」アルバムで発表したバージョン。オリジナルは「SAD WINGS OF DESTINY」アルバム。
NEVER SATISFIED / ARMORED SAINT
 アメリカ出身の正統派メタルバンドが企画盤「NOD TO THE OLD SCHOOL」で発表したバージョン。選曲が渋すぎるオリジナルは「ROCKA ROLA」アルバム。
GREEN MANALISHI / THERION
 スウェーデン出身のシンフォニックメタルバンドの未発表バージョン。まるでシナーなヴォーカルで普通にカバー。 オリジナルは「KILLING MACHINE」アルバム。
DIAMONDS AND RUST / THUNDERSTONE
 フィンランドのスピードメタルバンドが「THUNDERSTONE」アルバムの日本盤ボーナストラックで発表したバージョン。 オリジナルは「SIN AFTER SIN」アルバム。

 というわけで、持ってる人にはあんまり必要が無さそうなアルバムになってますが、どれも高品質のカバーなので未聴が多い人には便利そうな感じです。
同系統アルバム
A TRIBUTE TO JUDAS PRIEST LEGEND OF METAL VOL.I/VARIOUS ARTIST
A TRIBUTE TO JUDAS PRIEST LEGEND OF METAL VOL.II/VARIOUS ARTIST
A TRIBUTE TO THE BEAST/VARIOUS ARTIST





Februaly

ANTHRAX | CHILDREN OF BODOM | DARKFIRE | THE HAUNTED | KAMELOT | MANIGANCE | OLD MAN'S CHILD | SONATA ARCTICA

WE'VE COME FOR YOU ALL/ANTHRAX

ウィ・ハヴ・カム・フォー・ユー・オール/アンスラックス

VICTOR VICP-61920 [☆☆☆☆]

 炭疽菌テロによる影響でバンド名が危ぶまれたりもしたアメリカのバンドの9枚目のアルバムです。プロデュースにプロダクション・チームSCRAP 60が加わって、更に新たなギタリストもSCRAP 60からRob Caggianoが迎えられています。
 アコースティックとノイズ感の強いデジタルなサウンドが混ざり合うタイトなイントロダクションで始まるアルバムは、鋭いドラミングで圧倒するアグレッシヴな2、グルーヴィなリフでタイトに迫るミディアムテンポの3、70年代風ヘヴィリフでヘヴィロック風味な4、カッチリしたリズムのリフと大陸的なメロディを持ったサビ、さらに哀愁あるギターソロが融合する情感豊かな5、哀感たっぷりのギターで始まる6は扇情的に迫るギターリフを伴って激しく熱いメロディを歌い上げます。7では凶暴な衝動をリードする強力なドラムが炸裂しながら爆走し、パンテラのダイムバッグ・ダレルが特徴的なギターソロで参加した8は高圧力に迫ります。デスメタルばりのブラストビートが挿入される9はダークな感覚を持って進みます。さらにダイムバッグ・ダレルがイントロで喋りまで提供させられた10は乾いた空気を持ったサザンロック風の曲、THE WHOのロジャー・ダルトリーがコーラスで参加した11はライブの歓声をSEにした開放感のあるメロディアスナンバーです。ミステリアスな小品の12を挟んで、唄メロのキャッチーさが印象的な13では後半でブリティッシュロック風のフレーズを聴かせます。14は緊張感を高めるタイトなドラムとヴォーカルのパートからグルーヴィに音が重ねられていきます。
 更にソリッドに磨きぬかれたサウンドが哀愁あるメロディや激しい衝動を彩りながら、ジョン・ブッシュの逞しいヴォーカルが唄うスタイルにはどれもこれもアンスラックスの刻印が埋め込まれており、バラエティに富んだ楽曲を揃えてオールドスタイルのロックからの影響が強く感じられる強力なリアル・ヘヴィメタルを作り出しているところはベテランバンドの貫禄が伺えます。様々な逆境にも姿勢を変えることの無いタフなバンドのタフなサウンドが強い存在感を持って詰め込まれているアルバムです。
同系統アルバム
CRUCIBLE/HALFORD
NOD TO THE OLD SCHOOL/ARMORED SAINT
AD ASTRA/SPIRITUAL BEGGARS

HATE CREW DEATHROLL/CHILDREN OF BODOM

ヘイト・クルー・デスロール/チルドレン・オブ・ボドム

UNIVERSAL MUSIC UICO-1048 [☆☆☆☆☆]

 フィンランド出身のバンドの4枚目のアルバムです。日本での配給がTOY'S FACTORYからUNIVERSAL MUSICに替わっています。
 スラッシュメタル然とした切れ味鋭いギターリフが混沌とした音像を切り裂く中、透けるように華麗なキーボードサウンドが乱舞しつつ突進する1はデジタルなフィーリングを隠し味に、ブルータルな側面を露にしたサウンドを展開していきます。ダーティでディストーションがかったヴォーカルが歌メロを意識しながら進む2はヘヴィなリフとムーディなキーボードが交錯するミディアムテンポの曲、続く3はアナイアレイター張りの変則ギターリフと構築性の高いなインストゥルメンタルで構成されるテクニカルな面とライブで効果を発揮しそうなシンガロングなパートのキャッチーさを併せ持ったパワーメタルな一曲。オーケストラヒットが炸裂するイントロから突進力の強いタイトな4では叙情的なインストにコーラスが重なるドラマティックな展開とキレのあるギター&キーボードソロが印象的です。妖しげなキーボードとヘヴィなリフで進むスローテンポの5はリリカルなメロディと扇情的なインストゥルメンタルが絡み合います。6は躍動感あるキーボードにタフなコーラスが加わった派手目の彼ららしいフレーズ満載の曲ですが、これまでの楽曲とはテンションの高め方を少し違うポイントに置いた変わった感触を伝えます。ダイナミックなリフでグイグイ押しまくる7は叙情的なギターのフレーズに雄々しいコーラスを加えてデジタル感の強いキーボードソロ、さらにスリリングなギターソロを聴かせます。 タイトルトラックは激烈かつ凶悪、さらに華麗に盛り上がる彼らの魅力全開の音を隙間無く詰め込んだ大作です。
 ボーナストラックのスレイヤーのカバーは疾走感とキーボードが付加されて混乱と狂乱度が増強。そしてラモーンズのカバーはキラキラ。

 ネオクラシカル路線のサウンドの減少は前作の方向性から予想されることではありましたが、まるで彼らにとっての「SOUTH OF HEAVEN」by スレイヤーに感じられるサウンドの安定感と楽曲の完成度、更に攻撃性が前面に押し出された楽曲は問答無用のヘヴィメタルな存在感を現すものです。荒々しく生々しいエネルギーが噴出する、今もっとも勢いにあふれるリアル・ヘヴィメタルバンドの会心の一枚がここに存在します。


 というわけで、ふと思い付きましたがこのバンドはもしかしてスレイヤー的にアルバムを進歩させているのでは…。





 ってサードアルバムはどう見ても「REIGN IN BLOOD」クラスじゃなかった。ついでにユニバーサルでもこんな帯タタキが書けたのか…。
同系統アルバム
CROWNED IN TERROR/THE CROWN
DREAMS OF ENDLESS WAR/NORTHER
TIME REQUIEM/RICHARD ANDERSSON'S TIME REQUIEM

DARKFIRE/DARKFIRE

ダークファイア/ダークファイア

SOUNDHOLIC TKCS-85058 [☆☆☆]

 イタリア出身のバンドのデビューアルバムです。結成は1994年頃で、デビュー寸前にヴォーカリストが身体を壊してしまったため、レコーディングメンバーに同郷のTIME MACHINEのオマール・ゾンカータが参加して制作されています。
 少し透明感を残したハイトーンヴォーカルによって歌い上げられるのは、ネオクラシカルなフレーズでドラマティックなメロディックメタルです。スリリングなキーボードとギターの掛け合いに様式美を追求するフレーズでスピード感を演出する1はファルセットのコーラスを導入してオペラティックに、更にテクニカルな速弾きギターソロで劇的迫ります。アップテンポの2は情感豊かなヴォーカルが切々と唄うザクザクしたリフの曲で神秘的なキーボードソロとマイナーメロディで盛り上げるギターソロから山場を迎えます。ミディアムテンポの3は艶かしいヴォーカルが哀感帯びたメロディで進みつつ厚いコーラスがアクセントを加える劇的な長編、再び疾走感を強めた4はタイトなギターリフとメロウながら開放感のあるサビがイングヴェイばりのフラッシーなネオクラシカルプレイで彩られる一曲。大陸的なバラード風ナンバーの5、ストラトヴァリウス風の透明感あるキーボードとキャッチーなメロディでシンガロングなクワイアを持った最終的にはハロウィンになる6、ヘヴィでゴリゴリしたリフで迫るダルな雰囲気の7、ピアノの響きが優しいバラードの8、三度ドラマティックに疾走する9は緊張感を保って勇壮なコーラスとスリリングなギターソロが攻撃的に展開されます。
 安定した歌唱を聴かせるヴォーカルに才能を感じさせるギタープレイと新人ばなれした完成度のアルバムでバラエティに富んだ楽曲を収録していますが、正式なヴォーカリストが未だに決定していない、今後の活動への不安を残した状態に陥っています。とくに目新しくはないサウンドですが、これだけのクオリティを生み出せるバンドには次のアルバムの発表を期待して待ちたいところです。
同系統アルバム
ONLY HUMAN/AT VANCE
APOCALYPSE/ARACHNES
PERPETUAL TWILIGHT/AXENSTAR

ONE KILL WONDER/THE HAUNTED

ワン・キル・ワンダー/ザ・ホーンテッド

TOY'S FACTORY TFCK-87304 [☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドの三枚目のアルバムです。
 爛れたムードで始まるヘヴィなイントロダクションで幕を開けるアルバムは、壮絶なリフと激烈なビートが炸裂する豪腕突撃ナンバーの2、間髪いれずパワフルさを増した突進ナンバーの3、4と問答無用の轟音とヴァイオレンスな咆哮を上げるヴォーカルが一体化して襲い掛かる凶悪な楽曲が続きます。叩きつけるようなビートで噛み付くようなエッジの効いたミディアムテンポの5はメロディアスなフレーズとグルーヴィな感覚を持っています。SEから始まるダークな雰囲気でジリジリ迫るインストゥルメンタルの6を経て、爆発力のある高速ナンバーの7、アット・ザ・ゲイツを彷彿とさせるメロディアスなリフで突進する8、ブルータルに突き進む9、圧迫感の強いヘヴィなリフが印象的な10ではアーク・エナミーのマイケル・アモットがギターソロで参加しています。タイトルトラックは激烈に疾走するドラマティックな展開を持った曲で、アルバムはボーナストラックの高圧的なリフで押しまくりながら流麗なギターソロを聴かせる12までが収められています。
 各々のパートをより先鋭にしたダイナミックなサウンドが展開されるアルバムは、メンバーの個々の活動の結果が集結されたような多様性を持っており、バンドの順調な拡大が感じられるものになっています。アグレッシヴミュージックの先鋭感とヘヴィメタルのダイナミックさを取り込んだ強力な一枚になってます。
同系統アルバム
INWARDS/DEW-SCENTED
ARTS OF DESOLATION/THE FORSAKEN
FASTER DISASTER/TERROR 2000

EPICA/KAMELOT

エピカ/キャメロット

PONY CANYON PCCY-01637 [☆☆☆☆☆]

 ドラマティックに刻々と変転を続けるアメリカ出身のバンドの6枚目のアルバムです。今度のアルバムでは多数のゲストミュージシャンにオーケストラと豪華絢爛な幻想絵巻を繰り広げています。
 ゲーテの『ファウスト』に題材をとったコンセプトアルバムの本作は悪魔の誘惑に翻弄される一人の男を描き出すものになっていて、小品の楽曲と本編の曲が有機的に結びつく構成を取っています。SEのイントロダクションから、ドラマティックかつスリリングに展開していく2は哀感と深遠なムードを伴って壮大に盛り上がります。ソリッドなギターリフで展開する3は攻撃的に進み緊迫感を高めていきます。不安感と緊張感を高める男女混声合唱を盛り込んだ4からムードを保ったままアラビア風のフレーズと聖歌風のコーラスを導入したミディアムテンポの5へと。繊細なメロディがメランコリックに紡がれ、切ない感情が溢れ出す6、13と関連付けられるメロディを持ったインストゥルメンタルの7を経て、ラプソディーのルカ・トゥリッリがギターソロで参加したダイナミックで攻撃的に展開する劇的な8、城での宴の開幕を宣言するSEの9からスリリングに展開するメタリックな10、鐘の音が遠くで響くSEからリリカルなピアノの調べを聴かせるセンチメンタルな11、緊迫感を募らせるピアノとストリングスのイントロからメロウなメロディのギターリフが展開される12はタンゴ調のパートを絡めつつ劇的に進みます。女性ヴォーカルをフィーチュアした美しくも物悲しいメロディを持ったワルツ風の13から、イアン・パリーが担当する布告を経てヘヴィに迫る15は哀愁帯びたコーラスが印象的です。叙情的なメロディと緊張感ある激しいパートが交錯しながらクライマックスを演出する16によって余韻を残しながら、、この物語は終りを告げます。
 哀愁帯びたメロディと劇的な楽曲が積み上げるアルバムは、聴き手を物語世界へと深く埋没させるもので、彼らの目指すサウンドの完成形とも言える凄まじいクオリティが提示されたものです。溢れ出す感情を豊かに表現するヴォーカルとあくまでメタリックに構成されるインストゥルメンタル、さらに世界観の確立に多大な力を発揮するオーケストラと、徹底的に妥協を許さない緻密なサウンドに仕立て上げる様は彼らの並々ならぬ才能を感じさせます。メロディックメタルの最強の存在の一つへと上り詰めたバンドの頂点と言える圧倒的な完成度と説得力を持った渾身の一枚です。
同系統アルバム
OPERATION: MINDCRIME/QUEENSRYCHE
METROPOLIS PT.2:SCENES FROM A MEMORY/DREAM THEATER
CENTURY CHILD/NIGHTWISH

SIGNE DE VIE/MANIGANCE

シンヌ・ドゥ・ヴィー 〜生命の証〜 / マニガンス

MARQUEE MICP-10353 [☆☆☆]

 フランス出身のバンドの1986年に発表されたデビュー・ミニアルバムをボーナストラック付でリマスターしたアルバムです。
 奇妙なパーカッションのイントロから始まるアルバムは、正統派ヘヴィメタル風のストレートなギターリフで進むスピード感の強いやっぱりキャッチーなメロディが印象的な1、キーボードのイントロからミディアムテンポでスペーシーな感覚を作り出す2とクライマックスへの畳み掛けが並々ならぬ才能を感じさせる楽曲が続きます。キャッチーなメロディをアップテンポで進める明るい曲調の3、メタリックな刻みリフでオーセンティックなヘヴィメタルからドラマティックに展開する4、メランコリックなメロディと美しいコーラスワークが扇情的に迫るミディアムテンポの5、心地よいメロディが重ねられる6までがミニアルバムからの楽曲で、7はファーストアルバムに収録されていた曲のアコースティックバージョン、8,9はカナダのトライアンフのカバー、そしてファーストアルバムの曲をメドレーにしたデモバージョンの10は、いいところでフレーズが切られていて飢餓感がつのります。
 流石にファーストアルバムと比べると、パフォーマンスや彼らのサウンドの特徴である構築美の仕上げが甘いところも見受けられますが、メロディの質や曲の完成度は新人離れした凄まじい才能を明らかにするものです。ファーストアルバムとの微妙なスタンスの違いも面白い、ニューアルバムを心待ちにさせる良心的な一枚になっています。
同系統アルバム
SIGN OF TRUTH/DIONYSUS
PLANETUDE/HOLY SAGGA
TALES OF A TRAGIC KINGDOM/SUPREME MAJESTY

IN DEFIANCE OF EXISTENCE/OLD MAN'S CHILD

イン・ディファイアンス・オブ・イグジステンス/オールド・マンズ・チャイルド

VICTOR VICP-62237 [☆☆☆☆]

 ノルウェー出身のガルダーのプロジェクトの5枚目のアルバムです。同郷のバンド、ディム・ボガーに加入したことによって、レコーディングメンバーもバンドからドラマーが参加しています。
 ブラストビートが激しく打ち鳴らされる中、荘厳で恐怖感を煽る邪悪なサウンドが狂獣の咆哮で展開されるアルバムは、美麗さと醜悪さを併せ持ったシンフォニックなものになってます。スピード感のあるドラマティックな1はゲストで参加するガス・G(ファイヤーウィンドドリーム・イーヴル)扇情的なギターソロとリリカルなキーボードを配する分かりやすい展開の曲で、今までの彼らのサウンドよりはキャッチーと言えるものになっています。続く2はスピードアップしながらスケール感の大きなキーボードパートを効果的に使って緊迫感を演出します。不安感を煽るミステリアスなメロディからスピードメタル的にリフを刻みながら進む3は疾走感とスリリングな高揚感を高め、タイトルトラックの4ではオーケストレーションで彩るミディアムテンポのドラマティックかつ邪悪なムードを生み出します。アコースティックギターのイントロから襲い掛かるようなリフで進む5、オーケストレーションのイントロから壮大に展開する深遠の旧き神々への賛歌の6、リリカルな調べをアコースティックギターが奏でるインストゥルメンタルの7、叙情的なメロディを伴って疾走する8は荘厳さを加えながら緊張感を増していきます。優雅なパートから激烈に変転していく9はダイナミックに展開しながらドラマティックなクライマックスを迎えます。
 バンドの中心人物がディム・ボガーへと加入ということで、サウンド的に影響も避けられないところですが、コンパクトな楽曲で邪悪さと華麗さを維持しながらヘヴィメタル的な硬質感と構築性を保ったサウンドは過剰になりすぎないブラックメタルとしてのアイデンティティを確立しています。今後の存続が確定していない微妙な状態のバンドですが、終焉の瞬間まで高品質のアルバムを発表し続けてもらいたいものです。
同系統アルバム
BITTER SUITES TO SUCCUBI/CRADLE OF FILTH
PURITANICAL EUPHORIC MISANTHROPIA/DIMMU BORGIR
HIGHEST BEAUTY/IN THY DREAMS

WINTERHEART'S GUILD/SONATA ARCTICA

ウインターハーツ・ギルド/ソナタ・アークティカ

MARQUEE MICO-10351 [☆☆☆☆]

 フィンランド出身のバンドの三枚目のアルバムです。
 繊細なメロディが華やかなキーボードによって扇情的に感情を盛り上げる疾走感のある1で始まるアルバムは、憂いを帯びるハイトーンヴォーカルが透明感のあるメロディックメタルを唄いあげる従来のスタイルを継承したものです。スローテンポで始まる2は情感を高めながら曲調もドラマティックに進行していきます。派手なキーボードのイントロから疾走する3、アップテンポで躍動感のある4、扇情的なメロディで進むファストチューンの6、そして7ではストラトヴァリウスのイェンス・ヨハンソンが参加しています。エモーショナルなバラードの5、ミディアムテンポで毛色の変わったフレーズが積み重なる8、ボーナストラックの9では疾走感の強い煌びやかなスピードチューンを聴かせます。更にスリリングに展開するスピードチューンの10、リリカルなバラードの11と収録されています。
 蒼い衝動が行き場を求めて狂おしく悶える、青春の現在進行形の人にはシンクロし、既に過ぎ去った人には懐かしく切なく感じさせる郷愁の感情が噴き上がるセンチメトゥとしての叙情感は前作から更に増しているものの、ヘヴィメタルとしての緊迫感や鋭さといったソリッドな部分が大幅に減っており、全体的には若さに任せた躍動的な面が減って落ち着いたサウンドになってます。北欧の哀愁あふれるメロディが詰め込まれた物悲しい雰囲気が漂う微妙に突き抜けないもどかしさが少し残るアルバムです。
同系統アルバム
PERPETUAL TWILIGHT/AXENSTAR
OPUS ATLANTICA/OPUS ATLANTICA
ONLY HUMAN/AT VANCE





March

CARNAL FORGE | CRADLE OF FILTH | DREAM EVIL | EDENBRIDGE | FAIRYLAND | MOB RULES | NAGLFAR | NORTHER | SUIDAKRA |

THE MORE YOU SUFFER/CARNAL FORGE

ザ・モア・ユー・サファー/カーナル・フォージ

SOUNDHOLIC TKCS-85056 [☆☆☆☆]

 イン・ザイ・ドリームスのギタリストとドラマーが中心となって結成されたスウェーデン出身のバンドの四枚目のアルバムです。
 聴くものを威嚇するかのような鋭いギターリフに吐き捨て型のクラッシュヴォイスを乗せた突進系のスラッシーなアルバムは、正統派ヘヴィメタルを想起させるエモーショナルなギターソロが加わったダイナミックな展開を持ったものになっています。緩急を付けたダークな色を持ったオープニングナンバーでは攻撃性と衝動が一体となった迫力を作り出し、さらに高速のビートが刻まれる狂乱の破壊力を持った2へと続きます。ダークなムードの3、7ではエッジの効いた多彩なリフの連発で圧倒し、突っ込み気味のリフがヘッドバンギングを誘う突進ナンバーの4、9、ドラマティックと感じさせるイントロから畳み掛けるビートとリフを繰り出す5、6、強烈な疾走感で突進する8など、まるでギターリフの品評会のようにパワフルな楽曲が並んでいます。
 強靭なリフにメロディアスなギターソロが組み込まれる、80年代スラッシュメタル的な曲構造を持ったアルバムは、現在のサウンドプロダクションとデスメタルを経由する攻撃性を伴ったもので、過去と現在が交錯する一枚になっています。特に開放感と飛翔感のあるツインギターによるソロワークは正にドラマティックの一言に尽きるもので、アグレッションとダイナミズムがギリギリのところで繋がり合った、ヘヴィメタルの凶暴性と扇情性の生み出す拮抗を味わえるオールドスラッシャーの琴線に触れるサウンドです。
同系統アルバム
ONE KILL WONDER/THE HAUNTED
INWARDS/DEW-SCENTED
THE ANTICHRIST/DESTRUCTION

DAMNATION AND A DAY/CRADLE OF FILTH

ダムネイション・アンド・デイ/クレイドル・オヴ・フィルス

EPIC RECORDS EICP-197 [☆☆☆☆☆]

 イギリス出身のバンドの5枚目のアルバムです。このアルバムからメジャーレーベルであるエピック・レコードに移籍しています。ギタリストとベーシストがアルバム製作前に脱退していますが、ブタペスト・フィルム&ラジオ・オーケストラが参加してサウンド面での大幅な強化を図っています。
 堕天使を主人公に据えたテーマアルバムになっている今作は楽曲としてはそれほど大きな違いはありませんが、四部に分かれており、それぞれの導入部はインストゥルメンタルナンバーで始められています。雷鳴の轟きが響く中、優雅で荘厳な雰囲気を生み出しながら苦悩に満ちた暗黒物語の開幕を告げる、まるで映画のような映像を現出させる壮大なオープニングテーマから始まるアルバムは、続く合唱隊をバックに狂乱の地獄絵巻を生み出す疾走感の強い攻撃的な2へと進んでいきます。ヒステリックに邪悪な叫びからドスの効いたダミ声まで幅のある声をあげるヴォーカルは起伏の激しい展開の楽曲にシンクロしながら煉獄の情景を映し出します。 キレのある疾走感を持ったギターリフが正統派ヘヴィメタルの命脈を感じさせる3は哀愁帯びたメロディと感情を爆発させるドラマティックな展開を見せており、前作までのメタリックな要素を受け継ぐ楽曲になっています。オーケストレーションされたキーボードで重厚に迫る4はスピードを二転三転しながら、呪詛のようなヴォーカルを絡めつつ緊迫感と圧迫感を高めて雪崩をうつように音を叩き込んできます。
 ストリングスの調べに女性コーラスが恐怖感と未知の領域への扉を開くインストゥルメンタルから、ダイナミックなイントロを持った6は叙情的な哀感を持ったパートとタフなビートを刻みながら畳み掛けるパート、さらに女性コーラスを従えたドラマティックなパートのコントラストの強い曲です。哀愁帯びたメロディで始まる7はブラストビートが炸裂する混乱と衝動へと移行し、再びリリカルなメロディの海へ。8ではツーバスで圧力を高めるドラムとオーケストラサウンドが重なりあう黒い疾走ナンバー。
 古代世界を描き出す三部は、不安感と安らぎが同居するストリングスを中心にした壮大なインストゥルメンタルから、女性コーラスとヘヴィなリフが交錯するヘヴィメタル然としたダイナミックなパートにスペーシーな装飾を凝らした迫力ある10、エキゾチックな雰囲気を醸し出しながらスリリングに展開する11、威圧感のあるイントロから束縛と開放を繰り返しながら進むダークな12。
 荘厳なオーケストラのイントロから繰り出される14は破壊的な凶暴性と繊細な女性コーラスが錯綜するセンシティヴな曲、センチメンタルなメロディでゴシックメタル風な15は破壊的なパートとの融合がドラマを生み出します。最後を飾る16は爆発力を持った疾走曲で壮絶なブラストビートで圧倒しながらオーセンティックなヘヴィメタルと冷気を伴った荘厳なキーボードが渾然一体となって突進し、オーケストラとコーラスがクライマックス、そしてそのままエンディングの17へと収束していきます。

 キリスト教的世界観に基づく神と悪魔、さらに天使が繰り広げる抗争とさらにそれらに翻弄される人間の姿を描き出す渾身の暗黒絵巻は、シンプルでストレートになったヘヴィメタルの部分と、本物のオーケストラの導入によるダイナミズムの強化というメジャー移籍によって得られた要素をミックスさせたものになっており、彼らの特徴である“絵”の浮かぶ幻想的なサウンドがより追求されたアルバムとして結集されています。ヘヴィメタルとしてのフォーマットを恐怖に彩られる異形美として抽出されたサウンドは、純粋なヘヴィメタルとしての一側面であり、英国の旧き血が脈々と流れる圧巻の暗黒音楽の一つの完成形と言えるでしょう。
同系統アルバム
IN DEFIANCE OF EXISTENCE/OLD MAN'S CHILD
PURITANICAL EUPHORIC MISANTHROPIA/DIMMU BORGIR
IX EQUILIBRIUM/EMPEROR

EVILIZED/DREAM EVIL

イーヴライズド/ドリームイーヴル

KING RECORD KICP-923 [☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のプロデューサー、フレドリック・ノードストロム&ガス・Gの強力タッグを組んだバンドのセカンドアルバムです。
 前作から比較的短い期間で製作されたアルバムは、“NO DRAGON”というメンバーのコメントからも分かるように歌詞もファンタジー色を排したシリアスなものが多くなっており、サウンドや曲調もそれに伴ったソリッドで硬質な印象を強く与えるものになっています。パワーあふれる伸びのあるハイトーンヴォーカルに鋭さを増すギタープレイが生み出す楽曲は、漢らしいコーラスで雰囲気を盛り上げタイトなリズムに引き締められたメタリックなリフが緊張感を持って迫る1、攻撃的なリフが圧力を高めながらキャッチーなコーラスへと進む2、アップテンポでヘヴィなリフが展開される硬質なメロディを持った3ではフラッシーなギタープレイを見せ付けます。叙情的なメロディを持ったタイトルトラックはヘヴィ&ダークな雰囲気のパワーバラード、5は扇情的なヴォーカルとソリッドギターリフで構成されるパワフルなナンバー、スローテンポでダークに迫る6はヘヴィでミステリアスなサウンドを生み出します。ピアノのイントロに導かれる7は繊細でセンチメンタルなバラード、キャッチーなコーラスが印象的な正統派ハードロックナンバーの8、スピード感のある9、10はキャッチーなメロディを持ったオーセンティックなメタルチューン、彼らのある意味アピールポイントでもあるマノウォーばりのヘヴィメタル賛歌の11では分厚いコーラスで観客を煽ること必至。ドラマティックな展開と繊細なメロディが融合する12、さらにボーナストラックに入ってアクセプト風なリフのアリーナ系ロックの13、ミディアムテンポで扇情的なメロディが展開される14とメタルな曲が満載です。
 またしてもバラエティのある楽曲が揃ったアルバムですが、デビューアルバムよりもアルバム全体での統一感や整合性が増しており、一本筋の通った自信と経験に裏打ちされたものになってます。伝統的なヘヴィメタルのエッセンスを表出する強靭なサウンドが展開される、シンプルでストレートなピュア・ヘヴィメタルな一枚です。
同系統アルバム
UNITY/RAGE
SHADOWLAND/NOCTURNAL RITES
CRUCIBLE/HALFORD

APHELION/EDENBRIDGE

アフェリオン/エデンブリッジ

KING RECORD KICP-921 [☆☆☆]

 オーストリア出身のバンドのサードアルバムです。ベーシストが脱退したため、セッションベーシストの参加によって製作されています。
 透明感あふれる繊細な女性ヴォーカルが唄いあげるメロディックメタルは、ゆったりと流れる優雅な時が心地よいパートからスリリングでスペーシーなインストゥルメンタルを聴かせる1から、煌めくようなキーボードの調べと硬質なギターのサウンドが混ざり合う、スピード感の強い2、優しいメロディの癒し系な3、アップテンポの4は躍動感のあるメロウな曲。メタル色の増したバックに高貴な雰囲気を醸し出すメロディを乗せた5、哀愁のメロディを切々と唄う6は開放感を伴う叙情的な曲です。ボーナストラックの7はミディアムテンポのシリアスな雰囲気を持った曲、キャッチーなメロディとダイナミックな展開の8、ドラマティックに疾走する9は緊迫感を高めつつカタルシスを生み出していきます。アコースティックギターを従えて唄いあげる10、ドラマティックなイントロからD.C.クーパーがダブルヴォーカルで参加する11はメタリックな質感を持った大作です。

 天空に抜けるような捉えどころの無いメロディを唄う益々神々しさを増したヴォーカルとドラマティックながら癒しを与えるバックのサウンドが一体となった楽曲は、スリリングな緊張感を旨とするヘヴィメタルとは異なる触感の癒し系のもので、思わずまったりしてしまいます。浮遊感と遊離感が伴うアルバムとなっているこの作品は癒されたがっている人には充分過ぎるほどの潤いを与えるでしょう。
同系統アルバム
CENTURY CHILD/NIGHTWISH
PROJECT SHANGRI-LA/LANA LANE
THE GATES OF OBLIVION/DARK MOOR

OF WARS IN OSYRHIA/FAIRYLAND

オヴ・ウォーズ・イン・オシリア/フェアリーランド

MARQUEE MICP-10358 [☆☆☆]

 フランス出身のバンドのフルレンス・デビューアルバムです。ヴォーカリストには元が付きそうなダーク・ムーアのエリサ・C・マーティンを迎えています。
 シンフォニックでファンタジックという豪華なヘヴィメタルをやってのけるアルバムは、上品な雰囲気が全体に漂うスピード感の強いものです。壮大なイントロダクションからオーケストレーションされるキーボードと分厚いクワイアで派手な展開を見せる2は大仰さと荘厳さが合わさった合唱隊を絡めて山場を作り出します。ゆったりと流れるイントロから、やっぱりツーバスが連打されるスピーディーな3、リリカルなメロディを唄うヴォーカルが分厚いコーラスを引き連れる優雅な4、7は最近のブラインド・ガーディアン的な牧歌風味を携えて、シンフォニックなキーボードが色鮮やかに展開するスピードナンバーの5、6、9などスリリングに高揚感を高める曲が目白押しです。鐘の音が高らかに鳴り響くファストチューンの8、ファンタジックなインストゥルメンタルの10から雰囲気を持続して疾走する劇的な大作の11へと。ボーナストラックはダーク・ムーア風の疾走ナンバーです。
 どこを切ってもラプソディー+ダーク・ムーア÷2な作品になっている、まるでコピーかクローンかという新鮮味がほとんど感じられない一枚ですが、ダーク・ムーアほどの繊細さや華麗さは作曲面で想定されていないヴォーカルとのコラボレーションで生まれるはずも無く、かと言ってラプソディーほどのパワーを作り出せてもいないわけで、初聴の人はともかく中庸と言うかインパクトに欠ける代物になってます。アルバム自体の完成度は新人バンド離れした高い位置にあるものですが、シンフォニックメタルとしては目新しいものは見つかりませんでした。
同系統アルバム
THE GATES OF OBLIVION/DARK MOOR
PROPHET OF THE LAST ECLIPSE/LUCA TURILLI
POWER OF THE DRAGONFLAME/RHAPSODY

HOLLOWED BE THY NAME/MOB RULES

ホロウド・ビー・ザイ・ネーム/モブ・ルールズ

KING RECORD KICP-922 [☆☆☆]

 ドイツ出身のバンドの2002年に発表されたサードアルバムです。ゲストにRAGEのピーヴィー・ワグナーと元ハロウィンマスタープランローランド・グラポウが参加しています。
 ガンマ・レイのカイ・ハンセンとハロウィンのアンディ・デリスを足して割ったような、線の細い切羽詰ったハイトーンヴォーカルが唄うのは、派手にオーケストレーションの効いたキーボードが曲を引っ張るドラマティックなメロディックメタルです。ミディアムテンポで壮大な雰囲気を生み出す厚いコーラスも印象的な1から、扇情的なメロディを軸にした楽曲が続いていきます。続く2はオーセンティックなメタルリフを中心に華やかなキーボードで彩るファストナンバーで、フックのあるマイナーメロディを爪弾くギターソロが魅力的です。期待感を高めるイントロからムードを盛り上げながらメタリックなリフで進める3は大仰なインストゥルメンタルから劇的なエンディングを迎えます。ミディアムテンポの4は哀愁のメロディでしっとりと迫るアングラ風のファンタジックなナンバー、ハロウィン風のスピード感のあるキャッチーな5、静かな展開からドラマティックに移行するカバー曲の6ではダブルヴォーカルで参加したピーヴィー・ワグナーの歌声の存在感が強力です。ミディアムテンポの7、10はローランド・グラポウのギタープレイが楽しめるハロウィン的なメロウな曲、ラナ・レーン張りの派手なキーボードワークが印象的な8はドラマティックに泣きのメロディが展開されていきます。

 アルバムジャケットから受けるイメージとは違った、華やかな印象を与えるメロディックメタルには、線の細いヴォーカルのパフォーマンスが多少気になるところですが、いわゆるジャーマンメタルとは違う北欧的な透明感も持ったサウンドは豊潤なメロディ満載で安定したプレイを聴かせるアルバムになってます。
同系統アルバム
IMAGINARIUM/MORIFADE
MEMORIES OF A DREAM/ARWEN
RITUAL/SHAMAN

SHEOL/NAGLFAR

シーオル(死者の国)/ナグルファー

TOY'S FACTORY TFCK-87299 [☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドのサードアルバムです。
 狂乱のブラストビートに乗せて、獣性を露にした破壊的で邪悪なヴォーカルが叫ぶファストスピードな1で始まるアルバムは、冷気漂う暗い煉獄の空気を纏いながら悲壮感に満ちたメロディを織り込んで高密度の地獄の情景を生み出す、初期の段階から完成されているバンドの衝動性と劇的さを更に研ぎ澄ましたものになっています。シリアスな雰囲気を保った楽曲は、時に構築美を感じさせる起伏に富んだ展開を見せるもので、人間性と感情を排したような冷酷なリフとビートと流麗なメロディが生み出す軋轢が加わって地下深くで蠢くマグマのような混沌を感じさせます。
 迫力満点のヴォーカルに強靭なリズム隊、そして美麗なメロディから鋭利なリフまでを危なげなくプレイするギターと確信に満ちたプレイヤーが生み出す圧倒的な破壊力で説得力をもたせた疾走する楽曲群のもたらす本能の深いところに訴えかける暗黒の美学が、聴き手への強烈な衝動を叩きつける凶悪なアルバムになってます。
同系統アルバム
IN DEFIANCE OF EXISTENCE/OLD MAN'S CHILD
THE THIRD ANTICHRIST/NECROPHOBIC
IX EQUILIBRIUM/EMPEROR

MIRROR OF MADNESS/NORTHER

ミラー・オヴ・マッドネス/ノーサー

MARQUEE MICP-10357 [☆☆☆☆]

 フィンランド出身のバンドのセカンドアルバムです。
 メランコリックなメロディを携えたギターとキーボードが織り成す華麗なサウンドに、慟哭の叫びをあげるデスヴォイスが乗ったメロディックデスメタルなアルバムは、ミディアムテンポで扇情的に迫る1から北欧的な透明感と哀愁を帯びるメロディの奔流を繰り出します。さらに繊細さを増したメロディを操るネオクラシカル風味の華麗なツインギターのプレイは、北欧の白い聖域を強く感じさせるものになっていて、気持ちの良いテンポのリズム隊と相まって、感情を爆発させるヴォーカルとシンクロしていく様はバンドの方向性の確立を伺わせます。スローテンポで叙情的な情感を積み上げる3、同郷のナイトウィッシュばりのキャッチーさを持ったアップテンポからファストスピードに展開していく4、キーボードソロで見せ場を作るダークなリフで不穏な空気を演出する5、再びポップな曲調の煌びやかな6、スピード感のある7では衝動性を露にするヴォーカルと豪華なキーボードのコントラストが印象的です。ヘヴィなリフで暗い雰囲気を醸し出す8はダイナミックな展開でドラマティックさを生み出し、更にスピードを増したタイトルトラックの9でコーラスワークを引っさげて劇的なクライマックスを作った後は静謐なインストゥルメンタルで幕を閉じます。ボーナストラックはオフスプリングのカバーという意外な選曲です。
 メロディを奔放に弾きまくるギターと透明度と豪華さを増すキーボードの組み合わせだけで、既に充分過ぎるほどの魅力を放っているアルバムは、インストゥルメンタル陣の充実度に比べるとヴォーカルが少し弱い気がしますが、その辺を差し引いてもメロディアスを絵に描いたような充実感にあふれたものになってます。
同系統アルバム
THE BITTER SELFCAGED MAN/DIVINE SOULS
THEY WILL RETURN/KALMAH
THE COLD WHITE LIGHT/SENTENCED

EMPRISE TO AVALON/SUIDAKRA

エンプライズ・トゥ・アヴァロン/スイダクラ

M&I COMPANY MYCP-30187 [☆☆☆☆]

 ドイツ出身のバンドの5枚目のアルバムです。ほぼ10年選手ですが、メンバーはまだ20代が主力というキャリアに比して若いバンドです。
 喉のあたりがゴロゴロするダーティなデスヴォイスとノーマルなヴォーカルがパートを分け合う、フォーク調のメロディが満載のヴァイキングメタルなアルバムは、アーサー王伝説をモチーフにした歌詞を歌いつつ、哀愁と叙情に満ちる楽曲をやってます。勇ましくメロウなイントロからフォーキーなメロディが炸裂する緩急自在のオープニングナンバーの1からリリカルなアコースティック曲の2、そして泣きのメロディを炸裂させながらスピーディーに展開する大仰さも兼ね備える3は漢臭いキャッチーなコーラスを絡めてツインギターのハーモニーが積み重ねられていき、とことんドラマティックに情感と高揚感を煽ります。アイアン・メイデンばりのフレージングからフックのあるメロディまで奏でるギターが縦横無尽に活躍する楽曲はさらに続いて、細かいメロディアスなリフを刻む4は勇壮さと哀愁が前面に出た躍動的な曲、牧歌的な雰囲気が流れる繊細な5から、劇的にスタートする6はブラインド・ガーディアン的な物語性を孕みつつ、緊迫感を高めて山場を迎えます。リリカルなメロディが紡がれるアコースティックのインストゥルメンタルの7、突進力アップする8では攻撃的に迫るブラストビートが朗々とした劇的な展開と合わさって激しいカタルシスを生み出します。メランコリックなイントロから力強く進むミディアムテンポの9はデスヴォイスとノーマルヴォイスのツインヴォーカルで哀愁帯びるメロディによるドラマティックな展開を軸にした強靭な骨格を持った曲です。
 フォーク色の強いメロディを導入したヴァイキング・メタルとして、更に普遍的なヘヴィメタルとしての佇まいも充分な完成度の高いサウンドを展開するアルバムは、ピュアなヘヴィメタルの魅力たっぷりのパワフルな一枚です。
同系統アルバム
ATLANTIS ASCENDANT/BAL-SAGOTH
JAKTENS TID/FINNTROLL
THE STORYTELLER/THE STORYTELLER





April

DGM | FERRIGNO LEAL KUPRIJ | MYSTIC PROHECY | SKYFIRE | SOILWORK | STORMWIND

HIDDEN PLACE/DGM

ヒドゥン・プレイス/ディー・ジー・エム

MARQUEE MICP-10364 [☆☆☆]

 スイタリア出身のテクニカルバンドの四枚目のアルバムです。キーボードが交替してベーシストが新たに加入しています。
 腰の強い骨太ヴォーカルにヘヴィな曲調はシンフォニー・エックスを、メロウな曲調ではドリーム・シアターと、いいとこどりを目指すアルバムはソフトな感触のイタリアン・プログレッシヴ・ロックの息吹を感じさせたりしながら進むアルバムは、スリリングなインストゥルメンタル・パートを軸にしたテクニカルな1、湿ったメロディを唄うヴォーカルを中心にドラマティックに展開する2、叙情的なギターと情感豊かなヴォーカルが印象的な3、リリカルな優しい雰囲気を醸し出す4、哀愁の調べが心に染みるムーディなパワーバラードの7、小気味いいリズムのスリリングなパートと開放的なコーラスが混ざりあうジャジーなフレーズまで突っ込んだプログレハードな9、雄大なイントロからダイナミックな展開にデスヴォイスのコーラスと攻撃的なパートまで導入した大作の10など、手の込んだ楽曲が並んでいます。
 安定したプレイに結構なサウンドで一定のクオリティを保ったアルバムですが、ボーナストラックのスピードメタルなライヴ音源の方が印象に残ったりする、全体的には影響下にあるバンド群よりも、何かが薄い印象が残る微妙な一枚です。
同系統アルバム
THE ODYSSEY/SYMPHONY X
APOCALYPSE/ARACHNES
TIME REQUIEM/RICHARD ANDERSSON'S TIME REQUIEM

PROMISED LAND/FERRIGNO LEAL KUPRIJ

プロミスト・ランド/フェリーノ・リール・クープリ

MARQUEE MICP-10365 [☆☆☆]

 アーテンションなどで活躍するキーボーディスト、ヴィタリ・クープリの新しいプロジェクトのファーストアルバムです。プロジェクト名にも冠されたメキシコ出身の若手ギタリスト二人を中心としたインストゥルメンタル・アルバムになっています。
 ヴィタリ・クープリが中心人物ながら、サウンドの比重は二人のギタリストによるスリリングなプレイの応酬の方に傾いていて、往年のシュラプネル系ギタリストのソロアルバムを彷彿とさせたりします。ヴィタリ・クープリの派手なプレイが少なめでプログレよりもフュージョンな印象の強いアルバムになっていますが、アーティスティックなフィーリングが前面に押し出された今後の活動が期待される一枚です。
同系統アルバム
SQUADROPHENIA/COSMOSQUAD
TRUE OBSESSIONS/MARTY FRIEDMAN
VK3/VITALIJ KUPRIJ

REGRESSUS/MYSTIC PROHECY

リグレサス/ミスティック・プロフェシー

KING RECORD KICP-930 [☆☆☆]

 働き者のギリシャ出身のギタリスト、ガス・Gが中心となったプロジェクトの二枚目のアルバムです。ヴォーカルとベースには同郷バンドであるVALLEY'S EYEのR.D.リアパキスとマーティン・アルベルヒト、さらにドラマーはスウェーデンのデスメタルバンド、RAISE HELLのデニス・エクダールが参加しています。
 フラッシーなガス・Gのギタープレイがそれなりに炸裂したりしながら、荒々しいヴォーカルによって唄われるダークな雰囲気の至って普通のシンプルなヘヴィメタルをやってるわけですが、ソリッドな感触で迫るギターリフとフラットなメロディの楽曲は80年代パワーメタルを彷彿とさせたりしながら進んでいきます。迫力のあるヘヴィなブリッジのパートと妙にキャッチーにしようとするサビ、更に滑らかなギターソロの三つがあんまりシンクロしないで生み出される無骨なヘヴィメタルはパッチワークみたいに見えなくもなくて、別々の手によって作られた風が感じられがちです。ガス・Gが生み出す鋭利なギターソロなど、それぞれは魅力的に聴こえるところもありますが全体では、何か拠り所が見つけにくい曲が多くなってます。
 ガス・Gが参加している意味が良く分からない、ヴォーカリストのソロアルバムみたいな傾向が強いアルバムは、それなりにクオリティは維持されているものにはなっていますが、プロジェクトを軌道に乗せるなら、もうちょっとメンバーで方向性を固めるとか相談するとかした方が良さげです。
同系統アルバム
SOMETHING WICKED THIS WAY COMES/ICED EARTH
THERE WILL BE EXECUTION/SINNER
PRAYER FOR THE DYING/MESSIAH'S KISS

MIND REVOLUTION/SKYFIRE

マインド・レヴォリューション/スカイファイヤー

KING RECORD KICP-924 [☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドのセカンドアルバムです。ドラマーが交替しています。

 憂いに満ちたメロディを軸に、透明感のあるキーボードとクリアーなギターサウンドで構築されるクラシカルテイストをふんだんに盛り込んだシンフォニックメタルがデスヴォイスを伴って展開されていくアルバムは、スピード感と豪華さをたっぷり詰め込んだ1から問答無用の破壊力を見せながら進んでいきます。ナイトウィッシュばりの叙情感をキープする2ではキラキラキーボードからの畳み掛けるようなスリリングな展開を見せ、緊迫感を保って突進する3でもエレクトリックピアノとギターの絡み合いでドラマを生み出します。哀愁あるギターのイントロから叙情的なメロディ満載で緩急を付けながら進む4や華麗なインストから予想できない展開を見せる5、優雅に流れるキャッチーなメロディを持つアップテンポからスピードを上げていくプログレ風味もある高密度の6、メランコリーにメロディを積み上げる7はちょっぴりヴォーカルが機能したドラマティックな曲、ちょっぴり攻撃的なリフが聴ける8、ピアノとギターのアンサンブルが叙情性を高めていくアルバム最長のタイトルトラックは絢爛豪華な宮廷絵巻のように進んでいきます。そしてボーナストラックは割と普通っぽいメロディックデスメタルな一曲 と全曲が、どこをかじっても甘い果汁があふれる熟した果実のようにメロディに満たされています。

 アルバムの九割方を多彩なメロディに支配される上品さや繊細さが前面に出たほぼ完成形にあるサウンドは、デスヴォイスの存在感がちっとも感じられないものですが、その辺りが気にならない、あんまり気にしても仕方が無いほどのインストゥルメンタル陣の充実ぶりが凄まじいものになってます。やっぱりヘヴィメタルみたいな何か、に属すると思われますが、これでもかッと言うほどフレーズを執拗に―きっと聴き手が憶えこむまで―重ねながら一つ一つのメロディを染み込ませていく手法はきっと中毒性が高くなる反則気味のものですが、ここまで出し惜しみしないでメロディ洪水を生み出せる才能が出来るだけ長く続くことを祈りつつ音の海に溺れます、ズブズブ。
同系統アルバム
MIRROR OF MADNESS/NORTHER
OF WARS IN OSYRHIA/FAIRYLAND
CENTURY CHILD/NIGHTWISH

FIGURE NUMBER FIVE/SOILWORK

フィガー・ナンバー・ファイヴ/ソイルワーク

SOUNDHOLIC TKCS-85061 [☆☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドの5枚目のアルバムです。前作ではデヴィン・タウンゼンドがプロデュースしていましたが、今作ではバンドのセルフプロデュースで製作されています。

 鮮やかなコーラスワークとメタリックなサウンドが拮抗して緊張感を生み出していた前作から更に一歩踏み出した今度のアルバムは、バランスよく配置されたクリーントーンのコーラスとアグレッシヴなデスヴォイスが生み出すダイナミズムが強化され、扇情的なメロディが印象的な濃密なサウンドが作り出されています。衝動的な怒号と叙情的なメロディを唄いあげるコーラスがソリッドなギターリフで浮遊する1から、弾むリズムでルーズな雰囲気を演出するラウドロック風の2でも繊細なコーラスが織り込まれ、一転して攻撃的に迫る3はスリップノットあたりに近い圧迫感と暴虐性を持ったパートとやはりメロディアスなギターソロとの対比が彼等の個性をアピールしています。緊張と弛緩を繰り返しながら進むコンパクトなリフの4にデジタルなエフェクトが前面に押し出された5でも浮遊感を持ったコーラスワークが耳を惹きます。アヴァンギャルドな雰囲気を持ったアコースティックギターを中心にした6はユーロロック的な怠惰な感覚と情動を訴えかける激しいヴォーカルのコントラストが印象に残る彼らの新機軸となる一曲です。ドライヴするリフで疾走感を演出する7、フックのあるリズムで破壊的に迫る8、小気味良いリズムでスリリングな展開とメランコリックなメロディを繰り出す9、圧迫感のあるリフと物悲しいメロディを軸にダーティなコーラスを叩きつける10、アグレッシヴでコンパクトなリフとスローでムーディなパートを使い分ける11、フックのあるメロディアスなリフとキャッチーなコーラスで構成されるボーナストラックの12と密度の高い楽曲が詰め込まれています。

  前作よりも比重が高まったデスヴォイスの衝動性に、より肉感的なプレイを魅せるギターパートとスペーシーなキーボード、そして憂いを帯びたメロディを持ったコーラスが作り出す懐の深い、普遍的なロックの魅力を持ったものになっています。進化を続ける彼らのサウンドの現時点での一つの到達点に達したアルバムであると同時に、北欧メロディックデスメタルとラウドロックのフィールドを強力に結びつける一枚、そしてバンドを特別な存在にする一枚、な気がします。
同系統アルバム
REROUTE TO REMAIN/IN FLAMES
THE ART OF BALANCE/SHADOWS FALL
FIRST STRIKE STILL DEADLY/TESTAMENT

RISING SYMPHONY/STORMWIND

ライジング・シンフォニー/ストームウィンド

MARQUEE MICP-10362 [☆☆☆☆]

 元空手チャンピオン、トーマス・ウルフ率いるスウェーデン出身のバンドの六枚目のアルバムです。ドラマーにブラックスミスで活動していたデイヴィッド・ヴァリンが2001年に加入して製作されています。
 じわじわ盛り上がるクラシカルなイントロダクションを経て、テクニカルなプレイの応酬を見せるキーボードとギターが炸裂する、爆発力のあるドラマティックなスピードメタルナンバーの2へと繋がるアルバムは、パワー全開のクリアーなハイトーンヴォーカルにネオクラシカルなギタープレイの劇的様式美メタルのスタンダードなものになっています。叙情的なイントロからエクスクラメーションマークが沢山付く歌詞を唄いあげるドラマティックなパートへと移る3は、キャッチーなメロディで躍動的に進めながら華麗なコーラスを詰め込みます。おどろおどろしい遠くの鐘の音が響く合唱隊のイントロからスピード感あふれるリフが飛び出す勇壮なクワイアを持つ疾走ナンバーの4、情感あふれるヴォーカルが哀愁のメロディを唄いあげるバラードの5、クイーンのカバーの6を挟んで、ミステリアスなイントロから激しいインストゥルメンタルが展開される7はフックのあるコーラスが印象的な緊張感のある曲になってます。さらにアラビア語なサビのメロドラマ風バラードの8から、アーサー王伝説を題材にしたヘヴィな劇的ナンバーの9、そしてファーストアルバムからのリメイクナンバーと劇的路線の楽曲が揃えられています。
 凄まじいハイトーンヴォーカルが圧倒的な力を発揮するドラマティックメタルの本道を行くアルバムは、厚みのあるサウンドが華麗なプレイをしっかり支える力強いものになっていて、荒々しい感覚を伝える迫力のある一枚です。
同系統アルバム
ONLY HUMAN/AT VANCE
SIGN OF TRUTH/DIONYSUS
OPUS ATLANTICA/OPUS ATLANTICA





May

AT VANCE | CHIMAIRA | DRAGONFORCE | ERIK NORLANDER | GRAVE DIGGER | HELLOWEEN | MORS PRINCIPIUM EST | SECRET SPHERE |

THE EVIL IN YOU/AT VANCE

ジ・イーヴル・イン・ユー/アット・ヴァンス

MARQUEE MICP-10367 [☆☆☆☆]

 ドイツ出身のバンドの5枚目のアルバムです。キーボーディストとベーシスト、さらにヴォーカリストも脱退しています。キーボードは加えずにベーシスト、そしてヴォーカリストにはイングヴェイ・マルムスティーンのところでも活躍していたスウェーデンのマッツ・レヴィンが加わって製作されています。

 新たにバンドの顔となったマッツ・レヴィンの傾向は前任ヴォーカリストに近いもので、前任者よりもマイルドな感触が強く聴きやすい印象を与え、さらに華麗なギタープレイを随所に見せる哀愁帯びたメロディックメタルは健在です。スリリングでスピード感のあるリフとフックのあるコーラスがドラマティックな1から、アップテンポで情感あふれるヴォーカルを聴かせる2、ダークな印象を与えるヘヴィリフから盛り上げるタイトルトラック、ドラマティックなイントロからシリアスな雰囲気のメロディで繋ぐアップテンポの4ではネオクラシカルなフレーズを効果的に配して密度の高いサウンドに仕上げています。メロウなバラードの6から、エスニックなフレーバーを持ったイントロから降るスロットルで疾走する緊張感が高まる7では力強いクワイアも飛び出します。さらに哀愁のバラードの8から、再び疾走感の強い攻撃的なノンストップの9で血圧上昇。ネオクラシカルなギターのみのインストゥルメンタルを挟んで、ミディアムテンポで小気味いいキャッチーな11で本編終了です。

 メンバーの大幅な刷新にも関わらず、高品質のネオクラシカル路線を突き進むアルバムになっている今度の作品は彼らのイメージを壊すことの無い、安心だけれども意外性はやっぱり少ないものでした。ハイウェイ・スターはどうなんだろうとは思われますが。
同系統アルバム
RISING SYMPHONY/STORMWIND
ELEMENTS PT.1/STRATOVARIUS
NOW AND FOREVER/MEDUZA

THE IMPOSSIBILITY OF REASON/CHIMAIRA

ジ・インポッシビリティ・オヴ・リーズン/キマイラ

ROADRUNNER RRCY-21189 [☆☆☆☆]

 アメリカ出身のバンドのセカンドアルバムです。

 ほとんどデスヴォイスな吐き捨てスタイルとノーマルなヴォーカルを使い分けるビートとリフを強調したヘヴィネスサウンドの楽曲を作っているわけですが、前作はもっとデジタル色が強かったらしいです。今度のアルバムはスレイヤーパンテラなどの流れを汲んだヴァイオレントなヘヴィメタルに接近しています。突進型のうねるヘヴィリフで攻撃性を露にするデスヴォイスのみで唄う1から、キレの有るエッジの効いたリフで圧迫感を高めるタイトなミディアムテンポの2、威圧感のあるリフで高圧的に迫りつつクリーンな気だるいコーラスを絡めた3、スラッシーなリフで突進する4はヒステリックなギターが印象的です。叙情的なイントロからダイナミックなリフとメロウなコーラスで進める5ではメランコリックなギターソロで盛り上げます。疾走感のあるタイトなリフでスリリングに展開する6、不穏な空気を持ったイントロからザクザクしたリフでラウドに迫る7、混沌としたメロディでダークな雰囲気の8、スラッシーなリフとクリーンなコーラスでミステリアスな空気を生み出しながら二転三転していく9、タイトなリズムで緊迫感を高める10、再び突進力全開のスラッシュメタルな11はメロウなコーラスでコントラストを付けながら突き進みます。アコースティックでメロディアスなイントロからヘヴィ&ダークな展開を見せる緊張感あふれる大作のインストゥルメンタルの12と、ソリッドなリフを中心にしたヘヴィネスなサウンドが繰り広げられています。

 整合性のある密度の高いサウンドはスラッシュメタルやメロディックデスメタル、さらにヘヴィロックの要素を貪欲に取り込んで、ダークでアグレッシヴなヘヴィメタルのスタイルを持ったインパクトの強い一枚になってます。
同系統アルバム
THE GATHERING/TESTAMENT
SILENT NIGHT FEVER/DIMENSION ZERO
GOD HATES US ALL/SLAYER

VALLEY OF THE DAMNED/DRAGONFORCE

ヴァレイ・オブ・ザ・ダムド/ドラゴンフォース

VICTOR VICP-62258 [☆☆☆]

 輸入盤市場で話題沸騰のイギリス出身のバンドのデビューアルバムです。メンバーは香港、南アフリカ、フランス、ウクライナと実は多国籍。

 線の細いハイトーンヴォーカルにキーボードとツインギターを擁するバンドのサウンドは、躁状態の明るいメロディが乱舞するスピードメタル、いやタメを効かせながら爆走する超疾走タイプの楽曲をやってます。短いイントロダクションを経てメロディアスなリフから緊迫感を高めつつスピードアップしていくタイトルトラック、爆走するリフで押しまくる3、曲名とは違う明朗な曲調でツーバスが連打される4、バラードタイプのしっとりとしたメロディの5、やたらと小刻みなリフで突っ走る6では長尺のインストゥルメンタルを聴かせます。哀愁のメロディでやっぱり突っ走る7では雄々しいクワイアとサワヤカ系コーラスで聴き手を煽り、静かなイントロから疾駆する8、明るいメロディの9はメロコア風な雰囲気を持ったコーラスワークが派手気味の一曲です。ボーナストラックはピアノをバックにしっとりと唄うヴォーカルのイントロから一転してマイナーメロディで疾走する曲です。

 ツインリードギターと強烈な疾走感を武器にして爽やかな空気を運ぶスピードメタルの新星で、さすがにファーストアルバムと言うことで色々なところが色々な感じで不安定だったりしますが今後の活躍が期待される好盤…、みたいですけど、すいません。どの辺が絶賛に値するのかはさっぱり分かりませんでした。
同系統アルバム
WINTERHEART'S GUILD/SONATA ARCTICA
REIGN OF ELEMENTS/CELESTY
PERPETUAL TWILIGHT/AXENSTAR

MUSIC MACHINE/ERIK NORLANDER

ミュージック・マシーン/エリク・ノーランダー

MARQUEE MICP-90010 [☆☆☆☆]

 ラナ・レーンで知られるキーボーディスト兼プロデューサーの二枚組ソロアルバム第三弾です。今回は音楽業界に絡むストーリーを元にしたコンセプトアルバムです。お楽しみの豪華ゲストにはマーク・ボールズ、ヴァージル・ドナティのリング・オヴ・ファイア組やヴィニー・アピスらラナ・レーンにも参加したミュージシャン、そしてヴォーカリストには元ハリケーンのケリー・キーリングさらにブルー・オイスター・カルトのバック・ダーマことドナルド・ルーザーまで担ぎ出してます。

【DISK-1】
 スペーシーなイントロからドラマティックに盛り上がるオープニングにふさわしいスリリングでハードアタックなインストゥルメンタルの1から始まるアルバムは、アルバム全体に絡むモチーフが登場するゴージャスなロックナンバーの2へと続いていきます。荒れた声質のハイトーンヴォーカルが唄うキャッチーなメロディと更に濃密なギターとキーボードの有機的なプレイが印象的です。続く3はクリーンなハイトーンの新人ヴォーカリストが唄う、ラナ・レーンに似合いそうなポップなメロディを持ったドラマティックなナンバー。4はラウドなサウンドでヘヴィに迫る大仰なヘヴィメタルの一曲。スペーシーな雰囲気の5はキーボードワークを存分に詰め込んで、さらにデジタルエフェクトのヴォーカルでアンビエントな感覚を作り出す長編。6はドラマティックなイントロからアップテンポのピアノをバックに叙情的なヴォーカルメロディが展開されるコーラスがキャッチーな曲、えんどみだー。ムーディーなインストゥルメンタルの8からドナルド・ルーザーが唄うパリの散歩道みたいなアダルティーな8、さらにコンパクトなインストゥルメンタル三連発、最後はオープニングと対を為すスリリングな曲で一枚目は終了です。

【DISK-2】
 派手なシンフォニックなキーボードと泣きのギターが炸裂する劇的なインストゥルメンタルから始まる二枚目は、ヘヴィな感触のダークなリフとやっぱりキャッチーなコーラスなロックナンバーの2、ポップな3はエフェクトのかかったコーラスとハイトーンヴォーカルが、扇情性の強いコーラスで盛り上がります。 緊張感の高まるイントロから始まる、マーク・ボールズがパワフルに唄うハードロックな4はキーボードとギターの掛け合いが待ってましたーーーー!という感じでコーラスも劇的にテンションも最高潮。不思議なインストゥルメンタルの5からデジタル色の強いダークなムードのメランコリックな6、ポップなメロディを持ったバラードの7、アメリカの伝統的な行進曲“When Johnny Comes Marching Home”の一節を取り入れた8は哀愁のメロディが物悲しさを強調する一曲です。そしてDISK-1の2曲目を再び登場させる9、センチメンタルな長編のエンディングテーマでアルバムは幕を閉じます。

 スペーシーなキーボードとハードアタックなドラムがツインリードギターでキターーーーー!って感じのシンフォニックなプログレハードな世界が繰り出されていきます。二枚組ですが、どちらの盤もテンションが下がらず物語とリンクした有機的な構造を持った音世界は、エリク・ノーランダー節が存分に堪能できる渾身の超大作になってます。
同系統アルバム
SPACE METAL/ARJEN ANTHONY LUCASSEN'S STAR ONE
SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE/DREAM THEATER
SECRETS OF ASTROLOGY/LANA LANE

RHEINGOLD/GRAVE DIGGER

ラインゴールド/グレイヴ・ディガー

SOUNDHOLIC TKCS-85062 [☆☆☆☆]

 ドイツ出身のベテランバンドの11枚目のアルバムです。前作で元RAGEのマンニ・シュミットが加入して心機一転を図ったバンドは、再びコンセプトアルバム路線に戻って、リヒャルト・ワグナーの楽劇「ニーベルンゲンの指輪」を題材に重厚長大メタルをやってます。

 物語の開幕を告げるシンフォニックなイントロダクションから、続く2は比較的スピード感を抑えたスケール感を重視した音像は合唱団によるクワイアやオーケストレーションされたキーボードサウンドなども取り入れながら神話的雰囲気を盛り上げます。メタル的なアグレッションとコーラスが結びつく勇壮かつパワフルな3、ゴリゴリしたメタルリフがスピード感を感じさせる、これまたシンガロングなコーラスで盛り上げる4と彼ららしさが前面に出たパワーメタルな楽曲が続きます。リリカルなイントロからドラマティックなリフで構成される5は静的なパートと動的なパートのコントラストが強いドラマティックな曲で分厚いコーラスと“ワルキューレの騎行”の一節まで登場して泣きのギターソロが炸裂します。ヘヴィなリフで圧迫感を高めつつ印象的なクワイアを持つ6、マノウォーばりの大仰な漢メタルをやってのける7、パワーメタリックなリフで突き進むアップテンポの8、神秘的なムードが漂う9はヘヴィかつ重厚に盛り上がる一曲です。大作の10はスケール感を更にアップさせつつドラマティックな幕切れを見せます。さらに彼らには珍しいピアノをバックに唄うバラード風ナンバーがボーナストラックで収録されています。

 彼らのもう一つの側面であるダイナミックでスケール感の大きいサウンドとパワーメタルが結びついた十八番とも言える世界が展開されるアルバムは、題材に伴った―彼らにしては―色々な楽曲を揃えた起伏の大きいものになってます。マンニ・シュミットのギターソロもここでは印象的で、重要な役割を果たすようになったキーボードとメロディアスな面を強化しています。再び三部作のコンセプトアルバムに挑んだ意気込みと迫力が如実に伝わるダークファンタジーな力作です。


 ああ、でもレッド・ツェッペリンのカバーはどうかな…。
同系統アルバム
HOLLOWED BE THY NAME/MOB RULES
HYPERION/MANTICORA
A NIGHT AT THE OPERA/BLIND GUARDIAN

RABBIT DON'T COME EASY/HELLOWEEN

ラビット・ドント・カム・イージー/ハロウィン

VICTOR VICP-62323 [☆☆☆]

 ジャーマンメタルの代名詞、ハロウィンの通算10枚目のアルバムです。アルバム製作前に現在マスタープランで活動中のギタリストのローランド・グラポウとドラマーのウリ・カッシュが脱退するという状況に陥ったバンドは、新たなギタリストとしてガンマ・レイのヘニユ・リヒター、新たなドラマーに元メタリウムのマーク・クロスを迎えようとしていましたが、ギタリストには袖にされ、さらにドラマーは急病で参加不可能という事態に陥ってます。困ったバンドはギタリストに元フリーダム・コールのサシャ・ゲルストナー、レコーディング用ドラマーにモーターヘッドのミッキー・ディーを迎えてアルバムを製作しています。そして正式なドラマーにはアクセプトU.D.O.などで活動していたステファン・シュバルツマンが加入しているという、アルバムの出来以前にバンドのドタバタ加減が気になる状態になってます。

 アンディ・デリスのキャッチーなメロディが炸裂するポジティヴな感覚のスピードナンバーの1で始まるアルバムは、新加入のサシャ・ゲルストナーが作曲に加わったメロウなメロディを持つドラマティックなハードチューンの2へと進んでいきます。スピード感のあるキャッチーなメロディックメタルという彼らの特徴的なサウンドを取り戻したような二曲で何だか今度のアルバムは行けそうな気配が漂いますが、続くマイケル・ヴァイカートの手による3はかなり焼き直し感の強いミディアムテンポの曲で、まるでこのタイプの曲を書くのが義務付けられてでもいるかのような窮屈さでいっぱいです。ヴォーカルものの4を挟んで、ヴァイキーを除いたメンバーによるヴァイオレンスな雰囲気の突進ナンバーで溜飲を下げつつ、ミステリアスなムードが漂う哀愁のコーラスの6、バラードな7、押しの強いメタリックなリフで進めながらダーティなヴォーカルとフックのあるコーラスで盛り上げる9、ドラマティックさとアグレッションを併せ持つ扇情性の高いコーラスの11とハロウィンのイメージをあまり壊さない楽曲が並んでいます。

 ミッキー・ディーのドラミングが素敵でマイケル・ヴァイカートの曲がどうにも宜しくないアルバムは、前作までで進めようとしていた新たな要素の導入は脱退したメンバーと共に葬り去られてしまったような感の強い原点回帰なスタイルを追求するものになってますが、ベテランバンドの宿命か、全ての要素がコントロールされている整然とした雰囲気、もしくは突き抜けた感の無い優等生な音になってます。出来自体は特に悪くも無いような絶賛するほどでもないような普通な感じのものですが、リスクを最小限に抑える安全な路線は良識人に眉をひそめさせるヘヴィメタルな存在とは、やっぱりかけ離れたものになってるメジャーなアルバムだなあ、と思いつつ、どう考えてもアクセプトのカバーは不要ですとも!
同系統アルバム
HOLLOWED BE THY NAME/MOB RULES
RISING SYMPHONY/STORMWIND
EPICA/KAMELOT

INHUMANITY/MORS PRINCIPIUM EST

インヒューマニティー/モルス・プリンシピアム・エスト

MARQUEE MICP-10371 [☆☆☆☆]

 フィンランド出身のバンドのデビューアルバムです。デスヴォイスを使ったいわゆる北欧メロディックデスメタルをやってます。

 キレのある鋭いギタープレイに導かれる楽曲は硬質なメロディとダイナミックな展開を持った1から美意識にあふれる楽曲が続いていきます。押しの強いテクニカルで扇情的なギターソロは他のバンドと一線を画した緊張感を持ったもので、柔らかいメロディを中心にした叙情的で劇的な2、疾走感の強いスリリングな3、ミディアムテンポで構築性の高い様式美を見せるタイトルトラックで、その特徴を存分に表します。再び疾走する5ではタイトなリズムで緊迫感を高めていきます。透明感のあるほのかなイントロから鋭いリフで進行する6はスリリングなソロパートでドラマティックに盛り上げます。アコースティックギターによるリリカルなインストゥルメンタルの7は、哀愁漂うメロディアスな8へと繋がっていきます。ツインリードギターの絡みが曲を盛り上げる切迫感の強い9、ヘヴィなリフがダークでメロウなヴォーカルと混ざり合う10など。

 叙情的なメロディだけに頼らない曲作りは、楽曲にドラマを作り出す構築美による緊張感を生み出しており、新人離れした完成度を見せるアルバムに仕上がってます。
同系統アルバム
MIRROR OF MADNESS/NORTHER
AGAINST THE ELEMENTS/BEYOND THE EMBRACE
DAMAGE DONE/DARK TRANQUILLITY

SCENT OF HUMAN DESIRE/SECRET SPHERE

セント・オヴ・ヒューマン・ディザイアー/シークレット・スフィア

MARQUEE MICP-10366 [☆☆☆]

――今度のアルバムは随分ヘヴィになりましたが。
シークレット・スフィア(以下SS):そうかな?ニュークリアブラストに移籍しての第一弾アルバムだからね。ヨーロッパだけじゃなくてアメリカ市場も視野に入れた音作りを目指したんだ。前作のプロダクションには満足できなかったから、もっとパワフルでクリアな音にすることを念頭に置いて製作したんだ。

――女性ヴォーカルを導入したり新しい試みも見られますね。プログレッシヴなプレイが印象的なアルバムです。
SS:もっと新しい要素を増やして音楽性を広げようと思ったんだ。そこら辺のスピード・メタル・バンドみたいにはなりたくなかったんだ。僕たちは他のイタリアのバンドとは違うからね。メンバー全員のレベルアップが分かると思う。

――クイーンズライチを彷彿とさせる部分もありますね。
SS:それは嬉しいね。彼らは素晴らしいバンドだからね。でも僕たちの方が色々なことを試していると思うな。

――日本のファンに一言お願いします。
SS:新しいアルバムを楽しんでくれるといいな。(笑)


 と、こんな感じの仮想インタビューがすぐさま思い浮かぶような、イタリア出身のバンドのサードアルバムです。前作と同じ事をやってるとか言うトボけたレビューも巷にはありますが、疾走感を極力排したサウンドは、ヘヴィなリフが中心のストロングスタイルの楽曲にプログレ風味のメロディアスなインストゥルメンタルが乗るスタイルになっていて、線の細かったハイトーンヴォーカルもファルセットの使用を減らしてダークな雰囲気が強まっています。前作までのスリリングなスピード感と楽器陣のアンサンブルにより生み出されるシンフォニックな要素は影をひそめ、ほとんど単独のギターソロとヴォーカルを前面に出したサウンドによって、ルーズな感触を持った楽曲が増えています。オープニングナンバーは前作までの流れが残るピアノが印象的なドラマティックな曲だったり、バラード風味の優しい楽曲、そしてテクニカルなギターソロの一部に流石に彼等らしい繊細なメロディが残っていますが、メタルなパートの切れ味の鈍さが気になります。ヴィシャス・ルーマーズ風なミディアムテンポのパワーメタルな2やイントロはやたらとカッコいいけどメタリカみたいなパートとメロウなパートが混ざり合うミディアムテンポの3、クイーンズライクみたいなメロウな4、6、ドリームシアター風な5、さらに11で飛び出すジャジーなフレーズにホーンセクション、ついでにマノウォーのカバーと分かりにくい方向性でいっぱいです。ギリギリの線でメロディは残っているもののカタルシスが大幅に減少した楽曲は多様な音楽性が悪い方に作用したような感じで、捉えどころの無い代物になってます。とりあえず前作までの爽快感は微塵も無い広義のメタル然とした曲が増えたアルバムです。

 果たしてバンドに次のチャンスがあるのか、かなーり不安で一杯です。



【次のニューアルバム発表時のインタビュー】
――前作発表後、メンバーが脱退したようですが。
SS:ああ、目指す音楽の方向性が違ってきたんでね、バンドに良くない影響があると思ったんだ。

――レコード会社を移籍したのは何故ですか。
SS:ああ、前作製作の時にバンドに対するプレッシャーはかなりのものだった。彼らの意向に沿うような楽曲を作るのは楽な仕事ではなかったね。僕たち本来のサウンドが充分に発揮されなかったし、それに脱退したメンバーがバンドを違う方向に導こうとしていて、バンド内もギクシャクしてしまったんだ。

――今度のアルバムはシンフォニックな要素が増えていますね。
SS:もちろん!僕たちの原点に戻ったスピード・メタルを待ち焦がれていたと思うよ。皆も気に入ってくれるだろうね!
同系統アルバム
WORD OF MOUTH/VICIOUS RUMORS
ASTRONOMICA/CRIMSON GLORY
BURIED ALIVE/ZONATA





June

AGENT STEEL | ANNIHILATOR | THE BLACK DAHLIA MURDER | BLOOD STAIN CHILD | CALLENISH CIRCLE | DREAMTALE | EVANESCENCE | KALMAH | LABYRINTH | METALLICA | PASSENGER | SEPULTURA | STEEL ATTACK | VOIVOD | WIZARD |

ORDER OF THE ILLUMINATI/AGENT STEEL

オーダー・オブ・ザ・イルミネティ/エージェント・スティール

KING RECORD KICP-934 [☆☆☆☆]

 バンドの歴史とかメンバーの出入りを語ると400字くらい掛かりそうなアメリカのバンドの四枚目のアルバムです。前作からはドラマーが交替しています。

 不穏な空気が漂うイントロから繰り出されるのは、フラット気味ながらパワフルなハイトーンヴォーカルにシャープで引き締まったサウンドを聴かせるギターによって生み出されるスラッシュメタル然としたパワーメタリックな楽曲です。NWOBHMの空気を感じさせる整合性と構築性の高いソリッドなリフに暗いメロディを奏でる高速プレイのギターソロと80年代スピード/パワーメタルのフォーマットを思い出させるアグレッシヴな疾走曲の1、タイトなリフがダークな質感を生むミディアムテンポの2では強いドラマ性を作り出すギターソロからの展開でドラマティックに仕上げており、ヴォーカルもブルース・ディッキンソンを思い出させたりするパフォーマンスを見せます。はねるリズムのヘヴィなリフで進む3はキャッチーなコーラスを持ち、4では高速リフがリズムチェンジを繰り返しながら攻撃的に空を切り裂き、華麗なギターソロで飛翔していきます。エキゾチックな旋律のイントロからミステリアスなムードを高めつつ、超高速ギターソロから一気に盛り上げる5、圧迫感のあるパワーリフで押すヴォーカルのテンションが高い6、激烈に疾走するスラッシーな7、ベースソロを挟んで、ザクザクしたリフで畳み掛けるタイトな9、ソリッドなリフで構築される緊迫感のあるインストゥルメンタルの10、高圧的に迫る11は叙情的なメロディを唄いつつドラマティックに展開します。ダークな雰囲気で威圧的に迫る12がボーナストラックになってます。

 硬質なギターリフを中心にハイスピードのギターソロと、攻撃性と疾走感を持ったダークなヘヴィメタルを作り出したアルバムは、伝統的なメタルの様式を感じさせる楽曲が密度の高いサウンドと相まって強力な一枚へと導いています。自分たちのスタイルに一切迷い無し!の徹頭徹尾ヘヴィメタルのヘッドバンガーな会心の一撃です。
同系統アルバム
HYPERION/MANTICORA
FIRST STRIKE STILL DEADLY/TESTAMENT
COLLISION COURSE/PARADOX

DOUBLE LIVE ANNIHILATION/ANNIHILATOR

ダブル・ライヴ・アナイアレイション/アナイアレイター

MARQUEE MICP-90011 [LIVE]

 カナダ出身のベテランバンドのヨーロッパツアーのパフォーマンスを収録した二枚組ライヴアルバムです。この後ヴォーカリストのジョー・コミューは脱退してしまったので、これが彼の在籍する最後の音源となりそうです。

 ジョー・コミュー加入後の楽曲を中心にしたディスク1は、アルバムでも聴かれる安定したヴォーカルのパフォーマンスがライヴでも忠実に再現されており、確かな実力を感じさせるものになっています。バックの演奏はテクニカルバンドとしても名高い彼等の実力通りのプレイが堪能できます。
 そして、テクニカルスラッシュと呼ばれていた初期の楽曲が多いディスク2では、過去のテクニカルで複雑な歌唱を要求される曲でも危なげない自信に満ちたヴォーカルを叩きつけており、本当に実力のあるヴォーカリストだと実感させられます。さらに初期のアグレッシヴでカオティックな楽曲の魅力も再確認。

 ライヴ盤の常で、選曲にはどこかしら不満が出てきてしまうものですが、バンドの歴史的には三枚組でも良いんじゃないかと思われたり。サウンドはあまりライヴ感を感じさせないカッチリ作りこまれたものになっていますが、アナイアレイターのイメージとしては、これで良し。と言うより本当に完璧な演奏なのに違いない。
同系統アルバム
BURNING JAPAN LIVE 1999/ARCH ENEMY
TOKYO WARHEARTS - LIVE IN JAPAN 1999/CHILDREN OF BODOM
RUDE AWAKENING/MEGADETH

UNHALLOWED/THE BLACK DAHLIA MURDER

アンハロウド/ザ・ブラック・ダリア・マーダー

SOUNDHOLIC TKCS-85066 [☆☆☆]

 1947年にロサンジェルスを震撼させた殺人事件からインスピレーションを得て付けられたバンド名を持つアメリカ、デトロイト出身のバンドのファーストアルバムです。

 不穏で不安なムードを演出するイントロダクションから始まるアルバムは、ブラストビートが炸裂する炸裂系と咆哮系のダブル・デスヴォイスを絡めた突進力のある、叙情的なギターソロを持った2へと進みます。フロリダあたりのデスメタル的なムードと北欧メロディックデスメタルが微妙に絡み合うアグレッシヴな楽曲は、続く緩急のある突進ナンバーの3、ダークなムードのイントロから畳み掛けるようなリフで押しまくる4、ブラックメタル的にブラストビートで捻じ伏せながら流麗なギターソロを聴かせる5、唸りを上げるリフでダークに展開する6、再び突進する7ではツインヴォーカルでラッシュしながら正統派ヘヴィメタルを感じさせるダイナミックな展開を見せます。ブラストする8は細かくリフを展開させながら圧迫感を高めていきます。スピード感の強いリフで圧倒するスラッシーな9、アット・ザ・ゲイツを彷彿とさせる10が収録されています。

 北欧メロディックデスメタルに強い影響を受けたメロディと曲展開は、本家に匹敵するほどのキレと叙情メロディを孕んだもので、新人離れした説得力のある楽曲を詰め込んだアルバムになってます。ダブルヴォーカルの効果的な使い方や独自の部分がもっと全面に現れてくるようになると、頭一つ抜け出せそうな雰囲気を感じさせる一枚です。
同系統アルバム
INHUMANITY/MORS PRINCIPIUM EST
SWAMPSONG/KALMAH
IN DEFIANCE OF EXISTENCE/OLD MAN'S CHILD

MYSTIC YOUR HEART/BLOOD STAIN CHILD

ミスティック・ユア・ハート/ブラッド・ステイン・チャイルド

M&I COMPANY MYCP-30198 [☆☆☆☆]

 日本発メロディックデスメタルバンドのセカンドアルバムです。プロデューサーにチルドレン・オブ・ボドムなどに関わったフィンランドのエンジニア、アンシィ・キッポを迎えて製作されています。

 テクノ風味の繊細なキーボードに導かれて始まるアルバムはブラストビートと咆哮をあげるデスヴォイスが一体となって突き進む音の塊に華麗なメロディが詰め込まれた1から、サウンド、作曲ともにクオリティアップした楽曲が並んでいます。突進力のあるソリッドなリフと透明感のあるキーボードが導く2は華麗なフレーズで切れ込むギターも印象的なチルドレン・オブ・ボドムを彷彿とさせるドラマティックな展開の曲になっています。疾走ナンバーの3は飛翔感の強いキーボードでダイナミックな展開を見せます。ナイトウィッシュを思わせるキャッチーなメロディの応酬が印象的な4、デジタルビートのイントロからスピード感のあるリフ、ブラストビートと哀愁帯びたメロディを背負った起伏の激しい5、から連続性を持った6は攻撃的なビートとメロディが融和するテンションの高い、高速ギター&キーボードで圧倒するドラマティックな曲です。続く7も疾走するメロディアスなリフで畳み掛けます。叙情的なキーボードのイントロから様々なメロディを閉じ込めながら劇的に進むアップテンポの8、ヘヴィなリフでうねりを生み出しながら暗いメロディを作り出すゴシック風の9が収録されています。

 前作から、あらゆる点でパワーアップしたアルバムは、豊潤なメロディを武器にドラマティックでスリリングな楽曲を詰め込んで、世界に大きく飛翔できる可能性を宿した強力な一枚になってます。
同系統アルバム
SWAMPSONG/KALMAH
MIRROR OF MADNESS/NORTHER
MIND REVOLUTION/SKYFIRE

MY PASSION // YOUR PAIN/CALLENISH CIRCLE

マイ・パッション/ユア・ペイン/カレニッシュ・サークル

SOUNDHOLIC TKCS-85064 [☆☆☆☆]

 オランダ出身のバンドの四枚目のアルバムです。日本名はどうなるのか?と一部地域で話題になってましたが、こんな感じに落ち着いたようです。

 噛み付くように咆哮するヴォーカルにヴァイオレントで凶悪なアグレッションが炸裂する切れの良い緊迫感も強い1で始まったアルバムは、タイトでソリッドなサウンドを徹頭徹尾貫きつつ正統派ヘヴィメタル的な展開を持った代物です。不安感を高めるギシギシしたギターリフで押しまくるタイトな2では哀愁帯びたギターソロでアクセントを付けつつ、メロディを孕んだソリッドなリフの3では硬質でストイックな感覚を生み出しながら、ツインギターからツインリードを絡めて唸りを上げるサウンドを展開します。静かなギターの爪弾きから叙情的なメロディを加えつつダークでヘヴィなリフとメロディを展開していく4、叙情的なリフで疾走する5はメロディを展開させつつヘヴィ&スローなパートを挟んで盛り上げていきます。インダストリアルなイントロから一気に疾走する6は不穏なムードを巻き起こしながら激烈に整合性を持って展開します。タイトなリフで圧迫感を強める7でも憂いを帯びるメロディアスなパートを入れつつ、叙情的なメロディが印象的な8〜10の三部作はヘヴィリフとの相乗作用でダイナミズムとドラマ性を作り出す大作となっています。

 メタリックでソリッドな音像と正統派ヘヴィメタルの命脈に繋がる展開を持つ楽曲は、アグレッシヴな側面を損なうことなくヘヴィメタル的なダイナミズムを存分に発揮するパワフルなものになっています。聴き手に隙を見せない密度の高いアルバムです。
同系統アルバム
ONE KILL WONDER/THE HAUNTED
SWAMPSONG/KALMAH
CROWNED IN TERROR/THE CROWN

OCEAN'S HEART/DREAMTALE

オーシャンズ・ハート/ドリームテイル

MARQUEE MICP-10374 [☆☆☆]

 フィンランド出身のバンドのセカンドアルバムです。ヴォーカリストとベーシストを一新して製作されています。

 ナレーションのイントロダクションから、きらめくようなキャッチーさを持ったリフが展開されるドラマティックでスピード感のある2を迎えるアルバムは、ちょっと垢抜けないストラトヴァリウスのティモ・コティペルトが一生懸命に唄っているようなハイトーンヴォーカルを擁するメロディックメタルを展開します。ミディアムテンポの3は湿ったマイナーメロディのリフからキャッチーなコーラス、さらに勇ましい畳み掛けるコーラスパート、そしてピロピロするギターソロで盛り上げます。テンポの良いハロウィン系キーパーメタルな4、リリカルで静かなイントロから、アップテンポでテンションの高いヴォーカルが哀愁帯びたメロディを唄う高揚感を高める5、再びナレーションから始まる疾走ナンバーの6はやっぱりキーパーメタル系の派手なコーラスに女性コーラス、デスヴォイスを加えて盛り上がります。ナイトウィッシュみたいな女性ヴォーカルをフィーチュアしたミディアムテンポの7は優しいコーラスでマターリ。シンフォニックなイントロから愛と勇気のスピード感のある開放的なコーラスで盛り上げつつ、単音ギターソロが心地よいドラマティックな8、ダークな雰囲気がストラトヴァリウス的な9、劇的なバラードの10から、重厚なイントロから悲壮感もある勇壮なスケール感の大きい11、さらにドラマ性を増大させてドラマティックなヘヴィメタルを演出する大作の12へと。静かなナレーションの小品のエンディングからボーナストラックの14は女性ヴォーカルを加えたアップテンポのドラマティックな一曲です。

 ハロウィンとストラトヴァリウスを足して割ったような、ドラマティックなメロディックメタル路線を突っ走るアルバムは安定した品質の安心して聴ける代物になってますが、かなーり予定調和感が強かったり、意外性をあまり感じさせない展開が並んでいて、このスタイルを聴きなれている人には物足りなさが残るものになってます。もちろん初体験の人にはその魅力を充分に発揮できる一枚です。
同系統アルバム
DARKFIRE/DARKFIRE
SIGN OF THE WINNER/HEAVENLY
THE DAMNED SHIP/ARTHEMIS

FALLEN/EVANESCENCE

フォールン/エヴァネッセンス

SONY MUSIC EICP-240-241 [☆☆☆☆]

 アメリカ、アーカンソー州出身のバンドのデビューアルバムです。

 アルバムは、ザワザワしたギターリフに透明感のある女性ヴォーカルの官能的な声が重なる繊細でセンチメンタルな1から始まり、メディアに露出する切っ掛けとなったエンジェリックなヴォーカルとラップ調の男性ヴォーカルをフィーチュアしたリンキン・パークを彷彿とさせるアクティヴな2へと進んでいきます。きっと2でガツンとやられた人が多いと思われますが、このスタイルの曲はこれっきりです。心を打ち砕かれる物悲しさを伝えるメランコリックな3、優しく神聖さまで生み出す静かなナンバーの4、怪しい空気が漂うムードから哀愁のメロディが飛び出すギターソロが印象的な5、物悲しいメロディを唄いあげるヴォーカルが心に染みる6、などインダストリアル系のサウンドとゴシック、ポップスが融合した楽曲が揃っています。

 バンドのスタイルとしてはヨーロッパの方に行けば、沢山いそうな感じのゴシックメタルなわけですが、モダンな要素をプラスして、歴史の重さを感じさせる暗黒が溢れ出すヨーロッパのバンドよりは一般向けにソフトで取っ付きやすい雰囲気を作り出しています。売り方次第ではまだメタルにも可能性が残されている、と言うか今までロクな売り方じゃあなかったんだなあ、とアメリカメジャー系の販売戦略の巧みさを実感する今日この頃です。
同系統アルバム
CENTURY CHILD/NIGHTWISH
THE COLD WHITE LIGHT/SENTENCED
EPILOGUE/TO/DIE/FOR

SWAMPSONG/KALMAH

スワンプソング/カルマ

KING RECORD KICP-933 [☆☆☆☆]

 フィンランド出身のバンドのサードアルバムです。前作から固定されたメンバーによるサウンドは、かなり強力なものになってます。

 ダイナミックなリズム隊と物悲しいメロディを奏でるギターのイントロから、疾走感を急上昇させる激しいドラミングとメロディアスなリフの応酬で圧倒する1は、獣性の高いデスヴォイスが咆哮する北欧の吹きすさぶ嵐のような狂乱のギターソロを聞かせます。続く彼らの定番である沼地っぽいSEから始まる2はパワーメタリックなリフからダークなパートへ、さらにシンフォニックなキーボードが加わる切り替えしの大きな展開でテクニカルなインストゥルメンタルへ収束していきます。扇情的なメロディが高速で展開される3は突進力のあるパートからキーボードとギターが絡みあう劇的なソロパートを持っています。キーボードがリードする4ではヴァイキングメタル風のコーラスを加えながら哀愁を帯びた重厚な雰囲気をかもし出します。そして4のムードを引き継ぐ5は疾走パートとメロディアスなパートを行き交いながらブラストビートを経てアイアン・メイデンを彷彿とさせるスケール感を持ったエンディングを迎えます。オーケストラヒットが炸裂する6はチルドレン・オヴ・ボドムの影響を伺わせるギタープレイを見せながら更に獰猛かつ華麗に展開します。切れのあるリフがスラッシーな空気を産むツインリードが印象的なスピードナンバーの7、スピードを落とさずに始まるスリリングで劇的な8、流れるようなギターが作り出すゴシックメタル風の物悲しい雰囲気を持ったドラマティックなミディアムテンポの9、そしてボーナストラックは煌めくようなキーボードが導くダイナミックなリフが生み出す叙情的なメロディの一曲です。

 チルドレン・オヴ・ボドムにあるポップな要素を一切排して、ストイックに岩石と鋼鉄と作り出したような豪腕路線のメロディックかつドラマティックなサウンドになっている今度のアルバムは、ヘヴィメタルが内包する鋭利さと暗い熱気が結びついた充実の一枚です。
同系統アルバム
INHUMANITY/MORS PRINCIPIUM EST
MIRROR OF MADNESS/NORTHER
EMPRISE TO AVALON/SUIDAKRA

LABYRINTH/LABYRINTH

ラビリンス/ラビリンス

KING RECORD KICP-932 [☆☆☆☆]

 イタリア出身のバンドの四枚目のアルバムです。バンド創設時からのメンバーであるギタリストのオラフ・トーセンが脱退して製作されています。オラフ・トーセンはヴィジョン・ディヴァインの方に専念する模様です。そしてバンドは自分達の名前をイタリア名に戻しています。

 ドラマティックなイントロからパワフルで情熱的なハイトーンヴォーカルを乗せて疾走する1で始まるアルバムは、テクニカルなプレイの比重を高めたものです。哀愁帯びたメロディで情感豊かに進めるアップテンポの2ではテクノ調のキーボードと泣きのギター&ピアノが重なり合いクライマックスを迎えます。ミディアムテンポの3はルーズなリフを積み重ねながら、プログレ風味のインストゥルメンタルでエモーショナルなヴォーカルを盛り立てます。アグレッシヴなリフで進める4はシリアスな空気を保ちながら劇的に疾走します。ピアノとギターの絡み合いが官能的なドラマティックバラードの5、タイトなリフで進むメタリックな6はスピードアップしながら盛り上がり、デジタルなキーボードと哀愁のギターが繰り広げるイントロからオーセンティックなメタルサウンドを展開するメロディアスな7、ユーロビート風のイントロからメロディックスピードメタルが展開される8、繊細なメロディが情感を揺さ振る9ではプログレ風味のキーボードプレイを聞かせます。リリカルなメロディでしっとりとした歌唱を聴かせる10。そして、デモバージョン二曲がボーナストラックとして収録されています。

 オラフ・トーセンの脱退はサウンド面ではそれほど大きな打撃を与えてはおらず、バンドの結束が高まったことによってサウンドにも安定感と集中力が増したような印象をもたらします。タフなフィーリングと哀愁のメロディが繰り出すドラマに耽溺できる一枚です。
同系統アルバム
THE EVIL IN YOU/AT VANCE
EVILIZED/DREAM EVIL
SCENT OF HUMAN DESIRE/SECRET SPHERE

ST.ANGER/METALLICA

セイント・アンガー/メタリカ

SONY MUSIC SICP-373-4 [☆☆☆]

 ヘヴィメタルの隆盛をマスコミあたりから一身に担わされる巨星の八枚目のアルバムです。ベーシストのジェイソン・ニューステッドが脱退してからバンドの状態は悪かったようですが、新しいベーシストにオジー・オズボーンのところにいたロバート・トゥルージロを加えて再始動しています。もっともアルバム製作でベースを弾いたのはプロデューサーのロブ・ロックですが。

 全体的なサウンドはライブ感覚の強いジャムを繰り返した結果を乱雑にそのまま詰め込んだようなパワーはあるけど曲展開を予想できない混沌としたものになっていて、メンバーがインタビューで「デモみたいな音」と言うのにも頷けるものです。
 カンカンいってる妙な音のドラムと攻撃的なギターリフで始まる1は、うねるリフに吐き捨てるように唄うヴォーカルが乗って、衝動的に唸るサビが加わってタフでラフな曲になってます、ティック、ティック、ティック、タック。タイトルトラックはアグレッシヴなパートとムーディなパートが交錯しながら「ラスト・イン・ピース」あたりのメガデスみたいな雰囲気のファストなパートを挟んで音が塊のように突っ込んでいきます。ヘヴィなリフの3は70年代風の空気を生み出しながらリズムチェンジとスピードを変化させながら進みます。モーターヘッドみたいな突進力のある4も微妙に唄メロや展開がメガデスっぽい、アイーン。メロウなメロディとキャッチーなサビを持ったアップテンポのラウドな5、躍動的なパートから衝動的なパートへ移動しながら進む6は思ったほど効果的でなかったり、ムーディなメロディを取り入れたラウドロックな7はスピードアップしながら進んでいきます。キレのあるリフで疾走する8はスピードを落としながらヘヴィにダイナミックに展開します。ルーズなリフで迫る9は唸り節のメロディが印象的、躍動的なロックナンバーの10、プリミティブなリズムと情感込めたヴォーカルで盛り上げる11とフリースタイルな楽曲が並んでいます。

 最近のヘヴィロック系バンドのサウンドスタイルに擦り寄った、構成などを余り気にしない思い付いたものをあるだけ全部詰め込んでコピー・ペーストして作り出したみたいな楽曲は、よく言えばワイルドでロックなフィーリングにあふれていて守りに入らない姿勢が評価できますが、雑然とした未完成な音源のごった煮という見方の方が強いわけで、ただただ冗長に尺を伸ばしていくだけの曲が続いていく様はバンドの混乱がそのまま音に出たような感じです。まあ、バンドの楽曲構成力に問題有りなのは、ブラックアルバムあたりから懸念されるところですが。とりあえずバンドが自由なフィーリングで作り出しているアルバムだと言う事は充分に伝わりますが、聴き手側がそれに付き合ってくれることに期待するのは、ちょっと乱暴すぎる一枚です。同梱されているDVDのスタジオライブの方は鶴次郎じゃなかった、ロバート・トゥルージオの雄姿が見られて、音が普通なので良いかもしれない、と言うよりこっちがメインか…。
同系統アルバム
REINVENTING THE STEEL/PANTERA
KILLING IS MY BUSINESS... AND BUSINESS IS GOOD!/MEGADETH
NATION/SEPULTURA

PASSENGER/PASSENGER

パッセンジャー

TOY'S FACTORY TFCK-87319 [☆☆☆☆]

 イン・フレイムスのヴォーカリスト、アンダース・フリーデンが結成したバンドのファーストアルバムです。ギタリストには元イン・フレイムスでガーデニアンのニクラス・エンゲリン、ドラマーには元TRANSPORT LEAGEでスタジオ・フレッドマンのエンジニアであるパトリック・ヤルクステン、ベーシストはHEADPLATEのハーカン・スコーゲルで構成されています。

 デジタルなビートにグルーヴィなヘヴィリフで始まるアルバムはダーティな歌唱のパートから哀愁たっぷりのコーラスパートのコントラストが強いアップテンポの1で、これまでとは異なる世界観を提示しています。ネヴァーモア風のダークなリフが展開されるクリーンヴォーカルを使った情念的な2、湿ったキャッチーなメロディを軸にした繊細かつダイナミックな3、ラウドながらキャッチーさを持ったリフのアグレッシヴなパートとデジタル色の強いパートとの融合を目論む4、ヘヴィリフでデスヴォイスも戻った5は浮遊感あるコーラスが印象的です。インダストリアル風のグルーヴィなリフで哀愁あるコーラスの6、ダイナミックなリフでメタリックな空気を生み出す7はスペーシーなパートを絡めて切々とした感情を表します。叙情的なメロディを持つ8は哀愁たっぷりのウィスパーヴォーカルで盛り上げます。何か起こりそうな雰囲気の9は開放的なコーラスとのコントラストが強い曲で、キャッチーなメロディで穏やかな雰囲気の10はイン・フレイムスの一部を切り取ったような感覚を覚えます。ダークでスロー、ヘヴィな11は圧迫感の強い空気をダーティヴォイスで生み出しながら女性コーラスを加えて一服の清涼感をもたらします。物悲しく鬱屈した精神が逃げ場を求めて苦悩するボーナストラックの12でアルバムは終わります。

 イン・フレイムスのセンチメンタルな要素を抽出して精錬したようなサウンドは、ヘヴィメタリックながら、イン・フレイムスとは違ったアヴァンギャルドでムーディーなゴシックロックみたいな雰囲気のアルバムをノーマルヴォイス90%でやってます。モダンでテクノロジーな要素も加えてエモーショナルなヴォーカルを軸にした楽曲が揃った衝動よりも感情に訴えかけるアルバムです。
同系統アルバム
DEAD HEART, IN A DEAD WORLD/NEVERMORE
EPILOGUE/TO/DIE/FOR
TUONELA/AMORPHIS

ROORBACK/SEPULTURA

ロアーバック/セパルトゥラ

VICTOR VICP-62324 [☆☆☆☆]

 ブラジル出身の9枚目のアルバムです。

 ノイジーなSEからスレイヤーばりのヘヴィネスとアグレッションを感じさせるリフに狂乱のギターソロを聴かせる突進ナンバーの1から始まるアルバムは、不穏な空気を感じさせるリズムを持った怪しげな2、ヘヴィリフで構成される攻撃的なミドルテンポの3、すべてを踏み潰すようなヘヴィネスが炸裂する4、トライバルリズムのビートが唸るギターリフと連動しながら破壊的なムードを生む5、ソリッドなリフで圧倒するアップテンポの6、スローテンポで圧迫感の強いリフとビートで迫る7ではクリーンな歌唱も聴かせながらダイナミックに展開していきます。タイトなリズムで威圧的に迫る8、スラッシーに疾走する9、アップテンポでアジテイトしていく噛み付くようなヴォーカルが印象に残る10、ムーディなギターに埃っぽい歌唱が乗る途中までサザンロックみたいな11、モーターヘッドみたいな軽快な突進力のある12、嫌な感じのノイズが続くアウトロの13から、ヘヴィな雰囲気に骨太のメロディを唄うヴォーカルが乗ったテンションの高いメロディアス(セパルトゥラ的に)なボーナストラックが収録されています。

 トライバルな要素はバンドのサウンドのかなり深いところへと染み込んでいて既に不可分の状態になってますが、このアルバムではアグレッシヴな面が前面に出ているため、あまり強く意識されない自然なものになってます。あまり冒険はしていないですが、攻撃的で密度の高いサウンドを作り出している重量感たっぷりの一枚です。
同系統アルバム
GOD HATES US ALL/SLAYER
THE IMPOSSIBILITY OF REASON/CHIMAIRA
REINVENTING THE STEEL/PANTERA

PREDATOR OF THE EMPIRE/STEEL ATTACK

プレデター・オブ・ザ・エンパイア/スティール・アタック

KING RECORD KICP-937 [☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドのサードアルバムです。ハロウィンのカバーアルバムなどで楽曲を提供していましたが、アルバムでは日本でのデビュー作になります。アルバム製作前にヴォーカリスト、ベーシスト、ドラマーが交替と言う事態になってますが、クオリティは逆に上がっているようです。

 スコーピオンズにちょっと似ているハイトーンヴォーカルが唄う非常にオーセンティックなメロディックメタルは、ソリッドなリフに勇壮なコーラス、ポジティヴなメロディの1から、ダークなムードのミディアムテンポの2、ライオットみたいなリフとブリッジの疾走曲の3は開放的なサビで盛り上げます。ストーリー・テラーとカーナル・フォージのギタリストがゲスト参加しているヘヴィな4は美しいメロディが印象的な曲です。メタリックなリフとキャッチーなコーラスを持ったメタル賛歌なミディアムテンポの5、湿ったメロディで疾走する6、マイナー系のポップなメロディを持つミディアムテンポの7、さらに硬質な8、アイアン・メイデン風なリフのオーセンティックなメタルナンバーの9、10、泣きのギターが突然響き渡るミディアムテンポのダークでドラマティックな11がボーナストラックです。

 メロディを重視したドラマ性を持つ伝統的なヘヴィメタルは、安定したヴォーカルで聴いていて安心、落ち着くべきところに落ち着く展開にツボを抑えたギターソロが揃ったサウンドですが、ちょっとマターリしすぎてスリリングなところは少なくなってしまったジャケットほどには熱くは無いアルバムになってます。
同系統アルバム
EVILIZED/DREAM EVIL
REGRESSUS/MYSTIC PROHECY
HOLLOWED BE THY NAME/MOB RULES

VOIVOD/VOIVOD

ヴォイヴォド/ヴォイヴォド

VICTOR VICP-62351 [☆☆☆☆]

 カナダ出身のバンドの10枚目のスタジオアルバムです。新たに元メタリカでオジー・オズボーン・バンドにも参加するジェイソン・ニューステッド、さらにオリジナルヴォーカリストも復帰して心機一転で製作されています。

 小気味いいアップテンポのキャッチーなメロディにエッジの効いたギタープレイを聴かせるスピード感のある1から始まるアルバムは、浮遊感のある気だるい感じのヴォーカルに、コントロールされた緻密な演奏で意図的にルーズなムードを作り出すバックのサウンドが合わさった、70年代ブリティッシュロックを彷彿とさせる空気を持ったものになってます。ヘヴィなリフでグルーヴ感を作り出す2はテンポアップしながらドラマティックなパートへと進みます。クセの強いギターリフを中心に怪しげな空間を作り出す3、グルーヴィなリフとフックのあるメロディを絡める4、緊迫感のあるイントロからテンポアップするパートを加えながらドライブ感を演出する5、ミステリアスなムードを持った6はフックのあるギターリフに小刻みなリズム隊が加わってダイナミズムを生み出します。メロウなムードから始まる7は緊迫感を高めたパートへと変転していきキャッチーなサビへと、不穏な空気のキング・クリムゾンみたいな8、11、雰囲気が6に似ている、と言うか対っぽい9、テクニカルなダイナミックリフで押しまくる躍動的な10、攻撃的なリフでスリリングに迫る12で6〜12は宇宙篇という感じの楽曲が並んでいるわけですが。刻みリフが思い出したように炸裂する13はスピーディで乗りの良いサビもポップなハジけた感じの曲です。

 ヴォーカルが変わっていた前作までのノイジーでテクニカル、非人間的な路線は払拭されて、心機一転を図ったアルバムはテクニカルなプレイを感じさせるものの、それを強調することなくシンプルな楽曲を集めたものになっています。アルバム全体が完璧にコントロールされている印象の強い、それでいてロックしている一枚になってますが、ジェイソン・ニューステッドの存在は知名度アップにしか役立っていないかも…。
同系統アルバム
KALEIDOSCOPE/MEKONG DELTA
HEAVEN FORBID/BLUE OYSTER CULT
THE POWER OF BELIEVE/KING CRIMSON

ODIN/WIZARD

オーディン/ウィザード

SOUNDHOLIC TKCS-85065 [☆☆☆☆]

 ドイツ出身のバンドの5枚目のアルバムです。プロデューサーにはアイアン・セイヴィアーなどで活躍するピート・シールクが迎えられています。
 ハイトーンシャウトから雄々しく唄いあげる昌法までパワフルヴォイスを聴かせるヴォーカルを中心に大仰なエピックメタルを作り出すアルバムは、オープニングにふさわしい力強いクワイアから叙情感を残したメロディを持つ武骨な漢臭く熱いメタルナンバーの1では、タメの効いた展開を見せつつ劇的に進みます。続く2は哀愁帯びたメロディとこれでもかという劇的な展開で突き進むツインリードも炸裂のテンションの高い曲、スケール感の大きいメロディを中心に据えたダイナミックなマーチ風の3、畳み掛けるコンパクトなリフが印象的なマノウォー風のタイトな4、メタリックなリフで押しまくる5、ザクザクしたリフで疾走する起伏の激しい展開のパワーメタルな6、ダイナミックな展開で盛り上げる思わず一緒に唄ってしまううちに栄光への道が見えそうな7、ヘヴィリフで重厚に迫る8、ハイトーンシャウト炸裂で突っ走るアイアン・メイデン張りのツインリードもカッコいい暴走ナンバーの9、重々しい雰囲気が徐々に空気を熱くする10、湿り気を帯びたサビが印象的な11、再びマノウォー風のボーナストラックの12で終わります。

 キャッチーなメロディとメタリックなリフ、さらにパワフルなヴォーカルとシンプルな要素を大仰な舞台仕立で演出する、ヒロイックファンタジーなヘヴィメタルのお手本のような劇的路線を突っ走るアルバムは、10年以上のキャリアが生み出す自信に満ちたものになってます。思わず体温が3度くらいあがりそうな高揚感と親しみやすいメロディ、さらにゴツゴツした骨太の感覚を兼ね備える、ドイツのメタルは世界一ィィィィィィィィ!!!!!!!、と敬礼したくなるような一枚です。
同系統アルバム
A FLAME TO THE GROUND BENEATH/LOST HORIZON
EMPRISE TO AVALON/SUIDAKRA
CONDITION RED/IRON SAVIOR





July

ADAGIO | ARCH ENEMY | BLIND GUARDIAN | BRAINSTORM | CITADEL | GARY HUGHES | RAWHEAD REXX | STRAPPING YOUNG LAD |

UNDERWORLD/ADAGIO

アンダーワールド/アダージョ

MARQUEE MIMCP-10373 [☆☆☆☆]

 フランス出身のバンドのセカンドアルバムです。前作でキーボードとして参加していたリチャード・アンダーソンは脱退して、新たなキーボーディストを迎えています。

 サウンドトラックを彷彿とさせるスケール感を持ったイントロから繰り出されるのは渋みのあるパワフルヴォーカルを擁するダークな雰囲気のネオクラシカル系ヘヴィメタルで、全体的にはシンフォニック度が強化されたシンフォニー・エックスみたいな感じになってます。キーボードが交替した影響を微塵も感じさせないプレイに全体を覆うピアノの調べ、さらにテクニカルでプログレッシヴなフィーリングを感じさせる迫真のギタープレイが合わさって始まる1からドラマ性を持った起伏の激しい展開の多い楽曲が並んでいきます。神秘的で壮大なコーラス隊を引っさげたシンフォニックなイントロからの2は、攻撃性を増したヘヴィなギターサウンドで黒い情動を露にする大作で泣きのギターソロが印象的です。荘厳なイントロからのスピード感ある展開を見せる3は哀愁たっぷりのメロディを詰め込んで速弾きプレイも鮮やかにスリリングに進んでいきます。不安感を与えるピアノとストリングに導かれる4は、ANOREXIA NERVOSAのヴォーカルがデスヴォイスの咆哮を聞かせるアグレッシヴなパートで始まり、ドラマティック&テクニカルに展開します。重厚壮大なイントロからの5は13分に及ぶ大作で、緊迫感の強いヘヴィリフにピアノの調べが重なりつつクラシカルに劇的な展開を見せ付けます。叙情的なメロディを唄いあげるイングヴェイ風の劇的バラードの6、プログレッシヴな感触が強まるダークな7、緊迫する壮大なインストゥルメンタルを挟んで、クラシカルなイントロから疾走する9は劇的さを増しつつクライマックスを迎えます。

 緻密に構成された楽曲は、緊張感を強いる密度の高いもので、壮大なスケール感との相乗効果で聴き手を圧倒するものになってますが、全体的にはアイディアを詰め込みすぎで冗長なパートが多く感じられ、もう少し展開やフレーズをシェイプアップしてインパクトを強めたほうが効果的だったと思われます。それでも様式美の化身のような集中力の高いサウンドは今後にも期待大です。
同系統アルバム
THE ODYSSEY/SYMPHONY X
HIDDEN PLACE/DGM
TIME REQUIEM/RICHARD ANDERSSON'S TIME REQUIEM

ANTHEMS OF REBELLION/ARCH ENEMY

アンセムズ・オブ・リベリオン/アーク・エネミー

TOY'S FACTORY TFCK-87322 [☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドの5枚目のアルバムです。プロデューサーにネヴァーモアテスタメントのアルバムなどのサウンド作りで才能を発揮したアンディ・スニープを迎えて製作されています。

 群集の気勢を上げる叫びから始まるアルバムは、疾走感の強いメガデス風なリフにメタル界のマドンナ、アンジェラ・ゴソウのデスヴォイスが乗っかり、やっぱりデイヴ・ムステインを思い出させるスローからファストに展開するギターソロが加わった2、ダークな雰囲気でグルーヴ感を持った3はキーボードの装飾も加えて泣きのギターソロを聴かせます。叩きつけるアグレッシヴなリフで突進する4はタイトなリズムで緊迫感を生み出しながら進みます。デジタルっぽい空気を持ったミディアムテンポの5はヘヴィネス重視、初期の頃の雰囲気を残した6は退廃的なムードを、スローテンポの7はテンポアップしながらグルーヴィに。哀愁漂うアコースティックなインストゥルメンタルを経て、爆発的(ちょっと姑息な手法だけど)な突進力を見せる攻撃的な9へと。アナイアレイター風なリフワークを見せる10はクリストファー・アモットのクリーンコーラスを加えてダイナミックに進みます。 デスヴォイスがコーラスに存在感で負けるのはどうなんだろうなあ、と思うタイトなリフで構成される怪しげな11、メジャーなメロディでシャイニングロードを演出するインストゥルメンタルから、邪悪なリフが噛み付くように襲い掛かる13では雄大なメロディとスリリングな展開のギターソロでアルバムを締めくくります。

 やはり、迫力と言うか圧力があまり掛からないアンジェラ・ゴソウのデスヴォイスを考慮したサウンドは全体的に丸い感じのするもので、鈍器での殴打っぽい空気は生み出せますが、切り裂くような鋭角さには乏しく、さらにスピード感が少ないドラムも相まって緊張感をあまり感じさせない楽曲に繋がっています。独創的にやろうとして色々なところに手を出してみたものの、ほとんど中途半端に終わってしまったような、結局は中庸な変化の少ないアルバムになってます。
同系統アルバム
FIRST STRIKE STILL DEADLY/TESTAMENT
SYL/STRAPPING YOUNG LAD
EXPANDING SENSES/DARKANE

LIVE/BLIND GUARDIAN

ライヴ!/ブラインド・ガーディアン

VICTOR VICP-62536〜7 [LIVE]

 「A NIGHT AT THE OPERA」の発表に伴うヨーロッパツアーの模様を収めた2枚組ライヴアルバムです。

 ここ最近の二枚のスタジオアルバムからの曲を中心にしたセットリストは初期の曲も絡めつつ、観客と一体になった熱いライヴの模様を描き出しています。 VALHALLAとかMAJESTYとか定番だったんだなあ、と思いつつ「TOKYO TALES」と重ならないような選曲の方が良かったような気がする今日この頃です。バンドの歴史的にはやっぱり3枚組コースな訳ですが。あ、そう言えばAND THEN THERE WAS SILENCEってやってないんだなあ…。まあ、とりあえず一緒に合唱してしまうこと請け合いの熱いアルバムです。
同系統アルバム
DOUBLE LIVE ANNIHILATION/ANNIHILATOR
ALIVE IN ATHENS/ICED EARTH
SCREAM FOR ME BRAZIL/BRUCE DICKINSON

SOUL TEMPTATION/BRAINSTORM

ソウル・テンプテーション/ブレインストーム

MARQUEE MIMCP-10381 [☆☆☆☆☆]

 ドイツ出身のバンドの5枚目のアルバムです。

 もう目一杯だろーなー、とつい勢いで前作では満点を付けてしまいましたがすみません、このバンドの事を見くびってました。叩きつけるような高圧のギターリフとクセの強いハイトーンヴォーカルに導かれるパワーメタル路線はそのままに、前作以上にツインギターを有効に使ったインストゥルメンタルの充実、さらに要所で切れ込むキーボードのドラマティックなフレーズが融合したテスタメント meets キャメロット(ちょっと褒めすぎ)なシリアスな劇的ヘヴィメタルが生み出されています。ミディアムテンポでグイグイ迫る圧迫感と説得力を兼ね備える1から、攻撃性を増したソリッドな弾むリフが印象的な2ではドラマ性を持ったメロディを力強く唄うヴォーカルに扇情的なギターソロが絡み合ってダイナミズムを演出します。ヘヴィリフで進む3は哀感含んだメロディを唄うパワフルなヴォーカルが抜けるようなハイトーンのサビでキャッチーさと劇的さを生み出し、ドラマティックなイントロダクションからタイトなギターリフで構成される4は、何語かよく分からないサビをダイナミックな展開でキーボードの演出、さらにツインリードギターも鮮やかに進んでいきます。ミディアムテンポで叙情的なメロディを紡ぎ出す5は情感たっぷりのヴォーカルがドラマティックに歌い上げ、牧歌的なフィーリングを持ったメロディをギターが奏でます。
 と、ここまでは順当な成長ぶりを表しているわけですが、続く6からの三曲はエキゾティックなフレーズを詰め込んだインド神話をバックグラウンドとした三部作となっており、ヘヴィなムードで進行する不穏な空気が漂うスリリングな6、そしてこのアルバムのクライマックスと言えるアップテンポの7は緊張感あふれるエキゾティックなフレーズに攻撃的なリフが絡み合い、ハイテンションのヴォーカルがミステリアスでキャッチーなコーラスへと雪崩れ込んで、ドラマティックで扇情的なインストゥルメンタルを叩きつける、この曲だけでお釣りが来るだろ!な密度の高い一曲です。妖しげなムードが全体を包み込む8は静と動のパートのコントラストが印象的です。微妙に曲の構成に問題がある気がしないでもないですが、大作をまとめきる能力は感じさせるものになってます。
 通常ナンバーに戻って、疾走感のあるツインリードが心地よい9、ソリッドなリフで突進するパワーメタリック然としたクワイアにヒステリックなギターソロも熱い10、情念高まるメロディがヴォーカルと一体となって心に響く11が収録されています。さらにボーナストラックにはヴィシャス・ルーマーズのカバーが!

 ヴォーカリストが中心となっているバンド、SYMPHORCEと楽曲の充実度を比べてしまうと、バンドで楽曲を煮詰めるのは重要な作業だなあ、とつくづく思い知らされてしまう強力なアルバムですが、もう少し先がありそうな可能性も残した一枚になってます。ともあれ、ヘヴィメタルなヘヴィメタルが充分に堪能できるヘヴィメタルなアルバムです、ついでに苦情一切受け付けません。
同系統アルバム
DIARY IN BLACK/RAWHEAD REXX
EVILIZED/DREAM EVIL
SOMETHING WICKED THIS WAY COMES/ICED EARTH

TRANSITION/CITADEL

トランジション/シタデル

SOUNDHOLIC TKCS-85068 [☆☆☆]

 フィンランド出身のバンドのデビューアルバムです。

 かなりカイ・ハンセン系の不安定で線の細いハイトーンヴォーカルによって唄われるスピードメタルなアルバムは、青春のキラメキと躁状態のメロディが、混ざり合った明朗なサウンドを生み出しながら野郎臭いクワイアを詰め込んで突っ走る、やたらとキャッチーなキーボードとギターがガンマ・レイを彷彿とさせる1、メロウなメロディのイントロから徐々に盛り上げていく2はスピードアップして微妙に空気がアングラっぽいメタル賛歌。ツーバスで疾走する3はポップなメロディでスリリングなプレイを聴かせ、ザクザクしたリフとキラキラキーボードが交差する4は徐々に盛り上がっていくドラマティックな曲。やっぱり劇的に疾走してしまう5はブラス系のキーボードが底抜けなタイミングで切れ込んできてドタバタ劇を盛り上げます。少し大陸的な空気の残るアコースティックなロックバラードの6から、アップテンポでバタバタする何か聴いてるとムズムズしてくるキャッチーな7、続く8、910は組曲のようで、アップテンポでメロウなメロディを持った8、壮大なインストゥルメンタルを挟んで、フックのあるメロディを重ねつつテンションを上げていく疾走する劇的な10へと。ボーナストラックはミディアムテンポのメロディアスな曲です。

 ヴォーカルはヘロヘロだしギターもキーボードも落ち着かないしサウンドも薄っぺらい、やたらと不安定なところが目立つアルバムですが、キャッチーなメロディと熱いメタル魂を突っ込んだ、あんまり北欧らしくないサウンドは何となく遠くから生暖かく見守りたくなる妙な魅力の片鱗を感じさせます。色んなところが順調に伸びれば良いなあと思わせる若さあふれる一枚になってます。

 今、急にヴァイパーのサードアルバムを思い出しましたが理由はよく分かりません。
同系統アルバム
VALLEY OF THE DAMNED/DRAGONFORCE
REIGN OF ELEMENTS/CELESTY
RITUAL/SHAMAN

ONCE AND FUTURE KING - PART 1/GARY HUGHES

ワンス・アンド・フューチャー・キング・パート1/ゲイリー・ヒューズ

MARQUEE MIMCP-10379 [☆☆☆☆]

 テンのヴォーカリストであるゲイリー・ヒューズの4枚目のソロアルバムです。アーサー王伝説をテーマにしたロックオペラ形式のコンセプトアルバムと言うことで、ヴォーカリストのゲストは、元スレッショルドのデイミアン・ウィルソン、ラナ・レーン、元TYKETTOのダニー・ヴォーン、アフター・フォーエヴァーのヴォーカリストの姉妹、お馴染みのボブ・カトレイ、ダイアモンド・ヘッドのショーン・ハリス、キーボードにはアルイエン・ルカッセンが加わった豪華な布陣とテンのメンバーで製作されています。

 歴史の重みを感じさせる重厚壮大なイントロから始まるアルバムは、ライオット風のリフを持ったデイミアン・ウィルソンのハイトーンが冴えるハードロックな1へと移っていき、ゲイリー・ヒューズが唄うタイトなリズムとトラディショナルなメロディで迫る、テンを思い出させるドラマティックな2、ラナ・レーンとのデュエットが美しい哀愁たっぷりのラヴソングの3で涙を落としつつ、柔らかいメロディが緩やかな空気を運ぶ4、グルーヴィな感覚とキャッチーなサビを持った70年代風のロックナンバーの5では新人女性ヴォーカリストと哀愁のギターが存在感を主張し、ワルツ風の6はボブ・カトレイが情感豊かに唄いあげ、コーラスが盛り上げる一曲です。キャッチーでポップな7、ハードなギターを重ねる8はディープ・パープル的なブリティッシュロックの空気を生み出すショーン・ハリスが唄う曲。ダイナミックな展開を見せる9はヘヴィなリフでスケール感を増し、哀愁のメロディが心に染みるドラマティックな10でアルバムは幕を閉じます。

 全体的にはちょっとおとなしい印象のある第一部ですが、メロディメイカーとしてのゲイリー・ヒューズの本領発揮と言ったアルバムはゲストヴォーカリストを活かしたファンタジックでドラマティックなもので、バンドでもこれくらいやれよ!と言いたくなること請け合いの第二部が待ち遠しくなる一枚です。
同系統アルバム
MASTERPLAN/MASTERPLAN
BETO VAZQUEZ INFINITY/BETO VAZQUEZ INFINITY
MUSIC MACHINE/ERIK NORLANDER

DIARY IN BLACK/RAWHEAD REXX

ダイアリー・イン・ブラック/ローヘッド・レックス

KING RECORD KICP-939 [☆☆☆☆]

 ドイツ出身のバンドのセカンドアルバムです。バンドの前身はメロディアスなヘヴィメタルをやっていたベテランバンドのGLENMOREで1999年に現在のような状態になってます。バンド名は英国の幻想作家クライヴ・バーカーの作品から取られています。

 憂いを帯びた静かなギターで始まるイントロダクションから、突進力のあるメタリックなツインギターのリフでゴリゴリした質感と湿ったメロディが交錯するパワーメタルな2へと進んでいくアルバムは、苦みばしったハイトーンヴォーカルがパワフルに唄い、ツインリードギターが乱舞する紛れも無いヘヴィメタルな楽曲が揃えられています。続く3はミディアムテンポでザクザクしたリフが繰り出されるソリッドな感触の曲でエモーショナルなギターソロで盛り上げます。密度の高いギターリフで構成される4は硬質なメロディを絡めつつ攻撃的に進みます。ダークなリフとメロディで圧倒する5、弾むヘヴィリフでフックのあるメロディを持った6ではヴィシャス・ルーマースのギタリスト、ジェフ・ソープがゲスト参加しています。哀愁帯びたメロディが心に残るパワーバラードの7、メタリックなリフが不穏な空気を演出するクワイアが熱い8、ドラマティックなコーラスが雄大な空気を生み出す9、スピード感の強いドライヴするリフで押しまくるメタル賛歌の10、タイトなリフとキャッチーなサビが印象的なアップテンポの11、パワーメタリックなリフで圧迫感を強める攻撃的な12はスリリングなギターソロで盛り上げます。ムーディーでダークな13は情感あふれるギター&ヴォーカルで琴線に触れ、ボーナストラックの14は明るいのか暗いのか分かりにくいキャッチーなサビの一曲です。

 徹頭徹尾パワーメタリックなサウンドを追求する正統派ヘヴィメタルの魂を受け継ぐジャーマンメタルなアルバムは、我が道を追求する!という感じの気合に満ちた無骨で不器用な代物になってます。今時これを持ってくるのが信じられない!、なジャケットと言い、どこを切ってもメタルな熱い血が噴き出すメロディ&パワー全開の一枚です。
同系統アルバム
HERO-NATION/METALIUM
REGRESSUS/MYSTIC PROHECY
RHEINGOLD/GRAVE DIGGER

SYL/STRAPPING YOUNG LAD

帰ってきた超高速怒轟重低爆音/ストラッピング・ヤング・ラッド

SONY MUSIC SICP-395 [☆☆☆]

 多くのプロジェクトを抱える奇才、デヴィン・タウンゼンドの最もアグレッシヴなサウンドを追求するプロジェクトの三枚目のアルバムです。

 壮大なスケール感を持ったイントロダクションで始まるアルバムは、デスメタル色の強いタフなドラミングが炸裂する、デスヴォイスも繰り出すヘヴィでモービッド・エンジェル的な邪悪さたっぷりの2、スレイヤーばりの怒涛のアグレッシヴなリフで突進する3はパワフルな骨太なメロディと壁のようなリフのコントラストを聴かせます。ソリッドなリフと狂乱のドラムが拮抗しヴォーカルが咆哮する4、ダークな雰囲気で進む5はヘヴィリフを駆使しながらダイナミックにメロディを詰め込みながら、ラウドなドラムとリフでラッシュします。ドゥームロック風のグルーヴ感を持った6では透明感のあるメロディを詰め込み、ブラックメタル風の壮大さを持つダイナミックな7、ヘヴィリフを叩き込みながら、女性コーラスまで加えてメロディアスなヴォーカルを聴かせる8、やけくそ気味に疾走する高速ナンバーの9、静かなヴォーカルから始まる10は徐々にテンションが上がっていくダイナミックな曲です。

 ヴォーカルがほとんど咆哮している、特に怒りを前面に出したエクストリームなメタルになっているアルバムは、前作までのある意味キャッチーでパンキッシュな突き抜けた爽快感とか呆気に取られる意外性とかフットワークの軽いところが少なくなっており、ブルータルデスに近い感触を与えるサウンドになっています。他のプロジェクトとの境界が曖昧になってきていた最近のデヴィン・タウンゼンド的には差別化を図るためのブルータルな要素の増強と言った感じでしょうが、負の感情ばかりが先走った圧迫感の強いサウンドは逆に他のエクストリーム系バンドとの差別化が難しくなった気がします。
同系統アルバム
THE IMPOSSIBILITY OF REASON/CHIMAIRA
ROORBACK/SEPULTURA
EXPANDING SENSES/DARKANE





August

ARTHEMIS | BURNING POINT | CIRCLE II CIRCLE | EPICA | MISANTHROPE | NIGHTRAGE | OVERKILL | RICHARD ANDERSSON'S SPACE ODYSSEY | TWILIGHTNING |

GOLDEN DAWN/ARTHEMIS

ゴールデン・ドーン/アルテミス

MARQUEE MICP-10386 [☆☆☆☆]

 イタリア出身のバンドの三枚目のアルバムです。

 強烈なドラムロールで始まるアルバムは、疾走感が炸裂するメロディアスで攻撃的なリフの上を自分の限界いっぱいのところで唄うハイトーンヴォーカルがドラマティックに演出する1から、正統派ヘヴィメタルのフォーマットを継承する曲展開に鮮やかなギターソロを聴かせる陰りを帯びたシリアスなスピードメタルを作り出します。メタリックなリフで押す2はやっぱりテンションの高いヴォーカルが引っ張りながら威勢の良いところとネオクラシカル風味の華麗なギターソロを見せます。ソリッドなリフでシリアスなムードを作り出す3はリズムチェンジを繰り返しながら、ダイナミックに突き進み終盤では開放的に。キャッチーでポップなメロディながら薄曇りな4はハロウィン直系のアップテンポの曲でクラシカルなインストゥルメンタルまで飛び出します。メタリックなリフを持ったパワーメタルな5はタメを効かせたリズムでライオットみたいなギターソロが。エスニックなメロディを取り入れたミドルテンポの6は妖しげなムードで進み、続く7は攻撃的に疾走するハイトーンがこれでもかと伸びるスピードナンバー、湿ったメロディとネオクラシカルなフレーズが印象的な8、ブルージーなイントロからのバラードの9が収録されています。

 オーセンティックなヘヴィメタルのスタイルに接近した今度のアルバムは、スピード感は全体的を覆っているものの主役となっているのは曲展開やメロディの構成の方で、イメージとしてのイタリアンメタルからは一線を画したものになりつつあります。バンドの音楽的な成長はバラエティに富んだ楽曲に確かに感じられるものになっていて、路線の微妙な変更はバンドの飛躍にはプラスに働きそうです。
同系統アルバム
GARDEN OF EDEN/CHROMING ROSE
BLACK SUN/PRIMAL FEAR
SHADOWLAND/NOCTURNAL RITES

FEEDING THE FLAMES/BURNING POINT

フィーディング・ザ・フレイムス/バーニング・ポイント

SOUNDHOLIC TKCS-85069 [☆☆☆]

 ヒーロー物の必殺技みたいな名前のフィンランド出身のバンドのセカンドアルバムです。

 ヒロイックなほどにドラマティックなイントロから繰り出される、ブルース・ディッキンソン系の熱いパワフルヴォーカルが唄うのは哀愁漂うメロディアスでオーセンティックなヘヴィメタルです。北欧風味の透明感のあるキーボードを隠し味に、ツインギターのハーモニーが炸裂するスピードナンバーの1、アップテンポでダイナミックなリフを使う2ではスリリングなギターソロを導入するドラマティックな中間部でスケール感アップ。ミドルテンポの3は壮大な空気を生み出す緩急自在の一曲、4ではパワーコードで進むメタル然とした曲調を聴かせ、哀愁のメロディと泣きのギターが重なり合うバラード風の5、クラシカルなイントロからネオクラシカルなギタープレイも使ってドラマティックな展開を見せるアップテンポの6、グラハム・ボネットのカバーを挟んで、ヘヴィリフを使ったキャッチーなサビを持つコンパクトな8。ネオクラシカルなインストゥルメンタルから、アイアン・メイデン風の空気を持ったアップテンポの10、さらにスケール感の大きいミドルテンポの11はツインリードの絡みが扇情的です。クイーンズライクみたいなリフで始まるボーナストラックの12はスローテンポからミドルテンポに移り湿ったメロディのサビへと。そしてタイトルトラックは大仰なイントロから始まるスピード感のある一曲で、北欧らしい繊細さと叙情感、さらにネオクラシカルな壮大さを持ったストラトヴァリウスとアイアン・メイデンが交錯する大作です。

 基本を押さえた曲作りとパワフルな歌唱は安心して聴かせる楽曲を作り出していますが、アルバムの完成度とは裏腹に強烈にアピールする魅力があまり見当たらなくなってしまっている佳作です。バランスが取れた良いアルバムだけど微妙なところで盛り上がりきらない一枚です。
同系統アルバム
TRANSITION/CITADEL
DARKFIRE/DARKFIRE
THE THIRD PROPHECY/NOSTRADAMEUS

WATCHING IN SILENCE/CIRCLE II CIRCLE

ウォッチング・イン・サイレンス/サークル・トゥ・サークル

MARQUEE MICP-10389 [☆☆☆☆]

 元サヴァタージのヴォーカリスト、ザッカリーことザック・スティーヴンスが中心になって結成されたバンドのデビューアルバムです。

 バンドを離れたとは言え、メンバーやその周辺との関係は密接なザック・スティーヴンスが作りだすサウンドは、ダークな色彩を持つドラマティックなヘヴィメタル、すなわちサヴァタージな訳ですが。ミドルテンポでダークなムードからダイナミックなコーラスパートへと移る劇的構築美を見せる1で、既にスタイルの継承を見事に果たしているアルバムは、続く不穏な空気が漲るメタリックなリフが展開される情感的な2、センチメンタルなパートとオーケストレーションを繰り出すドラマティックパートとのコントラストが鮮やかな劇的ナンバーの3、リリカルなイントロからドラマティックさが炸裂する4と、サヴァタージ的な世界が魅力的に生み出されていきます。さらに哀愁のメロディから希望を探して放浪する5、ヘヴィリフで進む6は攻撃性を上げつつ劇的に、情感豊かなヴォーカルが堪能できる叙情的な7、ピアノをバックに優しく希望に満ちたドラマティックなメロディを唄うクィーン的な8、まさしくサヴァタージ的な展開を見せる暗い攻撃性を見せつつ進む9、カウンターパートキターー!なドラマティック大作の10と、どこを切っても劇的な楽曲が並んでいます。

 どう見てもクリス・オリヴァ存命時の過剰すぎないドラマティックメタルを目指しているサウンドは、その意図通りの強烈なドラマ性を持った期待以上のものになっていて、別のサヴァタージが出現したような衝撃を与えています。製作スパンの長い本家にくらべると精力的な活動をやってくれそうな分家、と言うにはもったいないニューバンドの今後には大きく期待したいところです。
同系統アルバム
HANDFUL OF RAIN/SAVATAGE
PRINCIPLES OF PAIN/ELEGY
CROSSROAD/THE STORYTELLER

THE PHANTOM AGONY/EPICA

ザ・ファントム・アゴニー/エピカ

MARQUEE MICP-10388 [☆☆☆☆]

 元アフター・フォーエヴァーのギタリスト、マーク・ヤンセンが新たに結成したオランダ出身のバンドのデビューアルバムです。ヴォーカルには無名の新人ソプラノ、CASSIOPEIAのギタリストとドラマー、AXAMENTAのベーシストらで構成されています。

 荘厳なコーラスに導かれるイントロダクションから始まるアルバムは、シンフォニックなアレンジとクリアなソプラノが神々しさをもたらしながら、デスヴォイスによる暗黒面や暗い美意識によって生み出される劇的空間になっています。ピアノとメタリックなギターによって紡がれる哀愁のメロディを生み出し、さらにオーケストラに合唱隊まで繰り出す中間のパートからのダイナミックな展開を見せる2から、クラシックをモチーフとしたゆったりと流れる時間を作り出す優雅なパートから、一転してエッジの効いたギターリフとデスヴォイスによって作られる緊迫感のコントラストが鮮やかな3、叙情感たっぷりのメロディを優雅に唄うセンチメンタルな4、メタリックなギターとクラシカルなパートが交錯しながら盛り上げていく5、スピーディーなパートで緊張感を高めつつ緩急をつけた起伏のある展開を見せる6、繊細な美意識を追求するパートからドラマティックに進行する7、攻撃的なイントロからデスヴォイスが威嚇する8はオリエンタルなフレーズも導入して暗黒美を描き出します。タイトルトラックではオーケストラと合唱隊が壮大な雰囲気を作り出し、メタリックなギターも絡んで荘厳なシンフォニックロックを描くラプソディーばりの劇的大作です。ボーナストラックは緻密な構成で優雅に迫るインストゥルメンタルです。

 クラシカルな要素を大胆に取り入れたドラマティックかつ優雅なゴシック的世界観を提示するアルバムは、マーク・ヤンセンの高い作曲能力を感じさせる強力なものになっています。新人離れした女性ヴォーカルの今後の成長やバンドとしての経験値が高まれば、さらに凄みを見せ付けそうな期待の一枚です。
同系統アルバム
CENTURY CHILD/NIGHTWISH
SECRET OF THE RUNES/THERION
APHELION/EDENBRIDGE

SADISTIC SEX DAEMON/MISANTHROPE

サディスティック・セックス・ダイモン/ミサントロプ

MARQUEE MICP-10387 [☆☆☆☆]

 フランス出身のバンドの六枚目のアルバムです。ギタリストとドラマーが交替して製作されています。

 絞められ系の唸るデスヴォイスにテクニカルで変幻自在なインストゥルメンタル陣が作り出すサウンドはデス・ブラックメタルの要素を混沌としたスープで煮込んだ彼等独自の世界を追求したものになっていて、ミディアムテンポで暗いメロディを繋いでいくゴシックメタル風の雰囲気を持った正統派メタルにも色気を見せる1から、不穏なリフを積み重ねるブラストビートも詰め込んだ攻撃的なタイトルトラックは、ある意味キャッチーなシンガロングなコーラスからマーシフル・フェイト的に変貌していきます。不安感を煽るイントロから哀愁帯びたメロディアスなリフが展開される3は叙情的な空気を保ちながらブラックメタル的な冷気と狂気を加えていくドラマティックな一曲。アグレッシヴなメタリックリフで進む4は緩急をつけキーボードで彩りつつ緊張感を持って進み、リリカルなイントロから始まる5はダイナミックなギターのドラマティックメロデス風。割と普通にスリリングなブルータルデスメタルをやってる6、かと思えばスペーシーなキーボードがメロディを奏でるシンフォニックな7で驚かせます。ダークなリフで進む8は奇怪な展開を見せつつ、再びアグレッシヴなリフが繰り出される9はブラストビートなブルータルなパートも聴かせるストレートな曲。ヘヴィロック風な10はドラマティックなキーボードを入れながらダイナミックに進みます。ボーナストラックはフランス語で唄われるアグレッシヴなスピードナンバーです。

 メロデス、ブラック、ゴシックと黒いメタル周辺のサウンドてんこ盛な闇鍋的アルバムになっている今作ですが、いつも通り我が道を行ってます。邪悪さと美意識をひたすら追求する少し捻ったフランス人らしいセンスの色んなところに触手を伸ばしてしまった密度の高い一枚です。
同系統アルバム
MYSTIC YOUR HEART/BLOOD STAIN CHILD
IN DEFIANCE OF EXISTENCE/OLD MAN'S CHILD
DAMNATION AND A DAY/CRADLE OF FILTH

SWEET VENGANCE/NIGHTRAGE

スウィート・ヴェンジェンス/ナイトレイジ

KING RECORD KICP-951 [☆☆☆]

 スウェーデンとギリシャ出身のメンバーによるバンドのファーストアルバムです。バンドの中心人物はギリシャの元EXHUMATIONのマリオス・イリオポウロス、そしてギターにはドリームイーヴルファイアーウィンドで活躍するガス・G、ヴォーカリストには元アット・ザ・ゲイツのトーマス・リンドバーグ、ドラムにはザ・ホーンテッドのペル・モラー・ヤンセン、そしてクリーンヴォーカルとしてエヴァグレイのトム・S・エングルンドが加わってアルバムが製作されています。

 突進力のあるリフに炸裂系のデスヴォイスが乗る攻撃的な1から始まるアルバムは、切れ味鋭いギターが印象的な、北欧メロディックデスメタルのフォーマットをなぞったもので、ミドルテンポで押しの強いリフと泣きのメロディが印象的な2、アップテンポで叙情的なメロディが炸裂するイン・フレイムス的な3ではクリーンヴォーカルも飛び出し、ミドルテンポで威圧的に迫る4、メロディ主体の5、ブラストビートで圧倒する6はアット・ザ・ゲイツを彷彿とさせる疾走感を感じさせます。ミドルテンポのダーク・トランキュリティー風の7、8、クリーンヴォーカルを前面に出した哀愁のメロディを唄う9、エッジの効いたリフで進む10は不穏な空気を孕みつつ圧迫感を増していき、そしてリリカルなインストゥルメンタルの11へ。

 北欧メロディックデスメタルの最大公約数的なサウンドは、特に目新しいところもなくてメンバーの過去のバンドを踏襲するものになっています。経験を積んだメンバーが多いことからパフォーマンスや音作りなどには安定感を感じさせますが、バンドとしての個性や主張は感じにくいものになってるアルバムです。
同系統アルバム
MYSTIC YOUR HEART/BLOOD STAIN CHILD
UNHALLOWED/THE BLACK DAHLIA MURDER
INHUMANITY/MORS PRINCIPIUM EST

KILLBOX13/OVERKILL

キルボックス13/オーヴァーキル

NIPPON CROWN CRCL-4574 [☆☆☆☆☆]

 アメリカ出身のベテランスラッシュメタルバンドの13枚目のアルバムです。ツインギター体制に戻してアルバムは製作されています。

 若干スピードを落として、力感と量感たっぷりのソリッドなリフを大量に注ぎ込んで作られる楽曲は、衰えを見せないパワフルなダミ声ヴォーカルと一体となって圧倒的な存在感を示します。ミドルテンポの1は豪腕リフが聴き手を殴りつけながら極悪シャウトを加え、オーセンティックなヘヴィメタル然とした起伏のある曲展開で盛り上げつつ威圧感を高めていきます。タイトなリフが心地よいアップテンポの2はドライヴ感も強烈にノリの良いフックのある恫喝的なサビを聴かせ、さらにスリリングなギターソロまで詰め込んでいきます。ダークでクセのあるリフが印象的な3はヘヴィかつドラマティックに展開する曲で往年のアクセプトを彷彿とさせます。メロディアスなイントロから始まる4はパワーメタリックな側面が強まった曲で印象的なギターソロを聞かせています。70年代ヘヴィロック風の5はブラック・サバス的なグルーヴとダークなメロディを作り出し、続く6はスラッシーなリフが畳み掛ける攻撃性を露にした曲でダイナミックに展開していきます。ミステリアスな雰囲気で迫る7は黒いメロディを唄いあげつつドラマティックに進みます。破壊力のあるリフからダイナミックに突き進む8は中盤からアイアン・メイデン的な展開を見せながら扇情性の高いギターソロが構築美を見せ付けます。タイトなリズムとギターが噛み付くようなヴォーカルを導く威圧的な9でもフラッシーなギターソロを聴かせ、ドラマティックなイントロで始まる10はスピードアップしてソリッドなリフで突進しながらも起伏を持った展開で盛り上げる凶悪な曲です。さらにボーナストラックのライヴ音源でも迫力あるプレイを聴かせます。

 強力なギターリフを出し惜しみすることなく詰め込んで、高密度で圧迫感の強い楽曲を揃えたアルバムは、彼らの様々な要素が垣間見えるバラエティに富んだものになっています。年を経るごとに強力になっているように思われる独特のヴォーカルとツインギターの強力なタッグに頑強なリズム隊が繰り出す一遍の迷いも無いダイナミックなメタルサウンドは、バンドの誇りと自信を突きつける苛烈な一撃です。
同系統アルバム
WE'VE COME FOR YOU ALL/ANTHRAX
TIMEBOMB/U.D.O.
M-16/SODOM

EMBRACE THE GALAXY/
RICHARD ANDERSSON'S SPACE ODYSSEY

エンブレイス・ザ・ギャラクシー/リチャード・アンダーソンズ・スペース・オデッセイ

KING RECORD KICP-950 [☆☆☆☆]

 元マジェスティックのリチャード・アンダーソンの更なるニューバンドのファーストアルバムです。ベースにスウェーデンでは名の知れたマルセル・ヤコブを迎えて製作されています。音楽性は初めて聴いた気がしないネオクラシカル路線を突き進んでいます。

 パクリッシュメタルとか言うあまり有難くない名前で呼ばれそうな、先人へのリスペクトと言うかオマージュと言うかクローンと言うかコピーと言うか、何だかその辺りを総て超越したかのような伝統芸能の命脈を守る!みたいな、サウンドがアルバム全体を覆い尽くしています。抜けのよくない熱唱型のヴォーカルが唄う、まるでイングヴェイな1から始まるアルバムは、ドリーム・シアター風の音色のキーボードからイングヴェイしてみる2や、シンフォニー・エックス的にキラキラしながらダークに展開してみる3、かなりネオクラシカルなイントロで卒倒しそうになる4でも既視感が脳裏を駆け巡ります。テクニカルなインストゥルメンタルを挟んで、キャッチーなサビを持ったスピードナンバーの6、やっぱりイングヴェイなイントロからの7はミドルテンポで哀愁のメロディを唄う劇的ナンバー。スピード感のあるイントロから“OUT OF THE ASHES”しながらイングヴェイで落とす8、オリエンタルフレーズを聴かせる9と、 なんだかんだでネオクラシカルな様式美サウンドを突き進みます。

 どう考えても色々なところをパクってますが、プレイ自体は元ネタを越えるくらいの存在感と迫力を感じさせる、何だかどうしていいのか分からなくなるコラージュみたいな作品ですが、もしかすると元ネタくらい分かるだろ?な過去のマテリアルに素材として価値を見出すパロディメタルなのかもしれない。
同系統アルバム
THE EVIL IN YOU/AT VANCE
THE ODYSSEY/SYMPHONY X
ATTACK!/YNGWIE J MALMSTEEN'S RISING FORCE

DELIRIUM VEIL/TWILIGHTNING

デリリウム・ヴェイル/トワイライトニング

UNIVERSAL MUSIC UICO-1052 [☆☆☆☆]

 フィンランド出身のバンドのデビューアルバムです。

 明朗快活で爽やかな歌声と北欧の透明感を含んだメロディが結びついた、ポップでダイナミックなメロディックメタルをやっているアルバムは、スピード感のあるギターワークと憂いを帯びたメロディをパワフルに朗々と唄いあげるヴォーカルが絡み合って、ドラマティックなインストゥルメンタルを加えて劇的世界を生み出す1から、ヨーロッパを彷彿とさせる華やかなキーボードと哀愁帯びるキャッチーなメロディが印象的なミドルテンポの2、先達のストラトヴァリウスを彷彿とさせるセンチメンタルなメロディが紡がれる3は緩急をつけながら情感豊かに盛り上げる速弾きギターソロも詰め込まれたアップテンポの曲で、インストゥルメンタルを絡めつつ進んでいき、続くフックのあるメロディで引っ張るスリリングなスピードナンバーのタイトルトラックへと。ギターとキーボードのユニゾンからエモーショナルなギターソロへと繋いでいく展開で盛り上げて高揚感を高めつつ、連続性を持って緊迫感を高めるアップテンポのドラマティックな5に。哀愁のギターが奏でるバラードの6から、キーボードが主導権を握るメロディアスな7、タフなパートと煌びやかなパートとのコントラストが強い8、ヘヴィリフでダイナミックに進む9は、劇的な展開で劇場性を強めています。ボーナストラックは、スピードナンバーの10、物悲しいイントロからメタリックなリフが刻まれるミディアムテンポの11が収められています。

 80年代ヘヴィメタルの香りが漂うフックのあるメロディを中心とした楽曲は、パワーのあるハイトーンヴォーカルと、存在感を主張するギターワークに煌めくようなキーボードがガッチリしたリズム隊に支えられて、美意識に満ちた鮮やかなものになっています。ポップさとメタル感が合わさったサウンドは耳当りの良い爽やかさが印象に残るもので、新人離れした完成度を持った好盤になってます。
同系統アルバム
OCEAN'S HEART/DREAMTALE
TRANSITION/CITADEL
DARKFIRE/DARKFIRE





September

ARACHNES | THE CROWN | DESTRUCTION | DEW-SCENTED | DIMMU BORGIR | GARY HUGHES | IRON MAIDEN | IRON MAIDEN | MORBID ANGEL | RAGE |

PRIMARY FEAR/ARACHNES

プライマリー・フィア/アラクネス

MARQUEE MICP-10395 [☆☆☆☆]

 イタリア出身のバンドの4枚目のアルバムです。

 プログレ色の強いインストゥルメンタルパートと、ちょっと微妙な感じのハイトーンヴォーカルが合わさると、なぜか割と普通のパワーメタル路線になってしまうのが不思議ですが、ボーナストラックを含めるとインストゥルメンタル8曲という驚愕の構成のアルバムは、ミステリアスで荘厳なコーラスを詰め込んだインストの1からメタリックで攻撃的なリフで進める荘厳なコーラスを引き継ぐドラマティックな2へと繋がっていきます。スリリングな展開を見せるインストパートは印象的ですが、唄メロはどうなんだろうという感じですが。シンフォニー・エックス風のヘヴィリフから品良く盛り上がりを見せる3でもテクニカルなインストが存在をアピールし、さらに4ではダークなムードを強めつつ進んでいきます。泣きのメロディで進める物悲しい静かな5から緊張感高まるテクニカルなネオクラ風味の6とインストゥルメンタル二連発を経て、ミドルテンポのヘヴィリフで進む7は緊迫する空気を孕みつつ。さらにクリスタルのような繊細さとメタリックな強さを併せ持ったインストから叙情的なメロディで突き進むドラマティックなスピード感のある9へと。荘厳なオルガンの音が響くインストの10からメタリックなリフが展開される11はネオクラ風のメロディが印象的。メロウなバラードの12、ネオクラシカルなフレーズからハイトーンヴォーカルを炸裂させる13、そして残りはインスト。それにしてもEL&Pのカバーは再現度が高い。

 どうも、バンドがやろうとしている音楽とバンドイメージ、さらに楽曲との間に微妙な違和感を感じてしまうのですが、それはインストゥルメンタルと唄ありの曲があまり仲良くないように見えるからかも。もう少しインストゥルメンタルと唄を密接に結び付けて欲しい気がする今日この頃です。
同系統アルバム
UNDERWORLD/ADAGIO
HIDDEN PLACE/DGM
DOMI<>NATION/MORIFADE

POSSESSED 13/THE CROWN

ポゼスト・サーティーン/ザ・クラウン

VICTOR VICP-62449 [☆☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドの六枚目のアルバムです。ヴォーカリストが元アット・ザ・ゲイツのトーマス・リンドベルグから再び、ヨハン・リンドストランドに戻って製作されています。

 ハマーフィルムかフィーリング的にはナイト・オブ・ザ・リビングデッドもあるかなー、なホラー映画風ジャケットワークにデスメタル系アーティストを輩出する老舗レーベル「EARACHE」をもじったバンドロゴ、レコード盤を模したレーベルデザインと、マニアックなこだわりをアピールしてみるアルバムは、これまた古いレコードプレイヤーを模したノイズ混じりのイントロから不穏なリフへと続くスレイヤーを彷彿とさせる凶悪な疾走感を持った激烈デスラッシャーな1から問答無用の圧倒的な存在感を持ったリズム隊に、鋭角にメロディを刻むギターソロが加わった楽曲が並べられています。1から更にスピードアップする攻撃性を開放した爆裂疾走系の2、畳み掛けるようなリフとメロディアスなギターソロが繰り出されるダイナミックな3と破壊力のある曲を続けた後は、ヘヴィリフで圧迫感を高めるミドルテンポの4でほんの少しクールダウン。不安感を煽るコードを鳴らすインストゥルメンタルで第一部を終え、で書き忘れてましたがアルバムは三部構成になっています、それほどコンセプト然としているわけではありませんが。
 第二部は再び嵐のようなドラムと一体となったリフで緩急を付けつつ押しまくる6で刃物のようなハイテンションのギターソロを聴かせ、さらに爆走する7でもダイナミズムを強調する展開を見せます。グルーヴィなリフから哀愁帯びたメロディを聴かせ、クリーンヴォイスのコーラスも見せるドラマティックと言える8はアルバムの中では一服の清涼感をもたらす…かもしれない。そして曲名からしてメタリカのオマージュとした爽快感さえ残す疾走感を持ったスラッシーな9、さらに続く10でもスラッシュメタル色の強い衝動性とドラマ性を持った曲を聴かせつつ第二部終了です。
 初期北欧メロディックデスメタル風のリフを持つブラストビートが炸裂するブルータルな11で始まる第三部はヘヴィなリフと続く黒い質感を持った12へと進み、寂寥感の漂うヘヴィなインストゥルメンタルで幕を閉じます。

 凶暴性を抽出して生み出される破壊的な楽曲は、ヘヴィメタル的なドラマツルギーを持ち合わせるアグレッシヴなものとなっていて、アルバム全体を覆う容赦の無い鋭角なサウンドも伴って圧倒的な存在感を見せ付けます。妥協も迎合も微塵も無い強靭な信念を貫き通した、ある意味ヘヴィメタルの鑑とも言える強力なアルバムです。
同系統アルバム
ONE KILL WONDER/THE HAUNTED
M-16/SODOM
DEAD, HOT AND READY/WITCHERY

METAL DISCHARGE/DESTRUCTION

メタル・ディスチャージ/デストラクション

KING RECORD KICP-957 [☆☆☆☆]

 ドイツ出身のスラッシュメタルバンドの8枚目のアルバムです。

 スラッシーな疾走ナンバーで幕を開けるアルバムは、起伏たっぷりのテンションの高いサウンドで聴き手を圧倒しながら、さらにダイナミックに突っ走る2、グルーヴィに始まる3は暗い情動を吐き出しつつ緊迫感を高めていきます。小気味良いリズムでやっぱり疾走する4、6、骨太のリフで押すタイトな5、ダークかつヘヴィに進む7では唸るギターソロ。叩きつけるリフが戦闘意欲を高めていく8、ヘヴィロックする9では、後半パートからスラッシャーの本性を露にしてスピードアップ。凶暴性を増して突進する10で一応オリジナル収録曲は終了です。

 切れ味鋭いリフに衝動が炸裂するヴォーカルはいつも通りの強靭さを発揮してるアルバムですが、勢いは感じられるものの何となく急いで作ったみたいな曲が多い気がします。まあ、スラッシュメタルだから急いで上等なんですけど。でもボーナストラック沢山なのはお得。
同系統アルバム
KILLBOX13/OVERKILL
ORDER OF THE ILLUMINATI/AGENT STEEL
POSSESSED 13/THE CROWN

IMPACT/DEW-SCENTED

インパクト/デュー・センテッド

SOUDHOLIC TKCS-85072 [☆☆☆☆]

 ドイツ出身のバンドの5枚目のアルバムです。

 一曲目からアクセル全開暴走状態のアルバムは、アドレナリンが噴出する格闘家の容赦の無いラッシュのように畳み掛けられるリフの嵐によって突き進んでいきます。絞められ系の野獣のようなデスヴォイスに鋭角に切れ込むリフと休むことなく叩きつけられるドラムが一体となって突進する様は初期のスレイヤーあたりを彷彿とさせる凶悪さと威圧感を生み出しており、さらにテンションを高めるエキセントリックなメロディのギターソロを加えた高速ナンバーで理屈抜きの衝動を露にしています。起伏のある展開を見せる5でドラマ性を見せたり、ダークな雰囲気で不安感を煽るミドルテンポからすピー度を変化させる6などもありますが、ほとんど速い曲バンザイ。さらにメタリカのカバーも暴虐度アップ、もう少し暴走した方が良かった気がするけど。
 スピードナンバーの区別がつきにくいとか、だんだんスピード感が麻痺してくるとかはともかく。とにかく、やたらと速い運転中に聴くのは危険そうな匂いがプンプンする本能系サウンドが展開される心拍数が急上昇の一枚です。
同系統アルバム
M-16/SODOM
THE MORE YOU SUFFER/CARNAL FORGE
ONE KILL WONDER/THE HAUNTED

DEATH CULT ARMAGEDDON/DIMMU BORGIR

デス・カルト・アルマゲドン〜最終戦争賛歌〜/ディム・ボガー

MARQUEE MICP-10391 [☆☆☆☆]

 ノルウェー出身のバンドの7枚目のアルバムです。前作に引き続いて生オーケストラ、今回はプラハ・フィルハーモニック・オーケストラを導入して楽曲を豪華に彩っています。

 緊迫感を高める不穏なイントロからオーケストラとバンドが一体となった分厚いサウンドを叩きつけるアルバムは、攻撃的なバンドパートと優雅なオーケストラパートが交錯する高密度のドラマティックな1を筆頭に、咆哮を上げるデスヴォイスによって描き出される暗黒神話はスケール感も増大させて聴き手を呑み込んでいきます。サウンドトラックもかくや、と言う広がりを感じさせる2はクリーンヴォイスのコーラスで清冽さをアピールし、メタリックなリフを中心に緊張感をもった展開を見せる3ではブラックメタルの出自を露にするブラストビートで攻撃性と邪悪さを作り出します。マイナーメロディのリフとオーケストラがスピード感を高めつつ進む4はヘヴィメタル的な醍醐味を見せつつ扇情的な盛り上がりを作る起伏の激しい曲です。破壊的なリフで圧倒してみせる5は黒い河を優雅に流れるミドルテンポのパートでコントラストを付けつつ、スローナンバーの6では叙情性と呪詛が絡みつき、エッジの効いたリフで進む7は不安感を高めつつクリーンパートで暗いドラマを生み出します。攻撃性の強いメタルらしいリフで疾走する8はストレートな曲でピアノソロを聴かせたりしますがアルバムの中ではコンパクトな部類。オーケストラが奏でる壮麗としたイントロから凶悪なギターが絡む暗黒地獄の情景へと突き落とす9、戦場のSEから始まる10はダイナミックなリフと彩りを添えるキーボードが一体となって混乱の情景を映し出す大作です。暗いメロディを背負った11は暗黒面を強調しつつテンションを高めていきアルバムを締めくくります。

 すっかりオケ無しの彼等の姿を思い浮かべることが出来なくなって久しいですが、最終戦争一大絵巻を確かなビジョンを持って具体的に提示してみせる手腕は既に疑問の余地がありません。とは言え、もう第一撃のインパクトで勝負することは出来なくなって楽曲の質のみが問われるようになっている状況で環境音楽に陥らないためには、よりバランスの取れた高品質の曲か、どこかに特化した曲に行き着くわけで。アルバムが進むにつれて少しづつ疲労感が蓄積されていくのは呪いのせいかどうか分かりませんが、詰まるところラプソディーの次のアルバムくらいに次の一手が重要そうだなあ、と思いつつ、DVD-AUDIOも出るらしいですよ奥さん。
同系統アルバム
DAMNATION AND A DAY/CRADLE OF FILTH
IN DEFIANCE OF EXISTENCE/OLD MAN'S CHILD
THE PHANTOM AGONY/EPICA

ONCE AND FUTURE KING - PART II/GARY HUGHES

ワンス・アンド・フューチャー・キング・パート2/ゲイリー・ヒューズ

MARQUEE MICP-10393 [☆☆☆☆]

 テンのヴォーカリストであるゲイリー・ヒューズの5枚目のソロアルバムで、二部作の後編です。面子が微妙に違ってますが、楽曲はパート1同様メロディ洪水です、次のテンのアルバムはどうなるんだろうなあ、以上。
同系統アルバム
MASTERPLAN/MASTERPLAN
BETO VAZQUEZ INFINITY/BETO VAZQUEZ INFINITY
MUSIC MACHINE/ERIK NORLANDER

DANCE OF DEATH/IRON MAIDEN

死の舞踏/アイアン・メイデン

TOCP-66212 [CCCD]

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄」
―――――――――――――‐┬┘
                    |
      ____.____..  |
     |        |        |   |
     |        | ∧_∧ |   |
     |        |( ´∀`)つ.ミ.|
     |        |/ ⊃ ノ |..  |
       ̄ ̄ ̄ ̄' ̄ ̄ ̄ ̄'   |
                    |


うりゃー、危険なので良い子はマネしないでね!

東芝EMI様のご希望通りコピー不可にしておきました。
同系統アルバム
BANANAS/DEEP PURPLE
SKULL RING/IGGY POP
FAR FROM THE SUN/AMORPHIS

DANCE OF DEATH/IRON MAIDEN

DANCE OF DEATH/IRON MAIDEN

COLUMBIA CK-89061 [☆☆☆]

 英国が誇るメタルの心を歌い上げます伝統芸能の域に達したベテランバンドの13枚目のアルバムです。六人編成になっての二枚目のアルバムで、作曲とかのコンビネーションもスマートになってきてトリプルギターを中心としたインストゥルメンタル陣が充実した仕上がりになってます。

 ですが、最近のスティーヴ・ハリスの楽曲に顕著に見られるようになった、執拗に繰り返される同じフレーズの展開(これは多分に老人性脅迫観念が伴った省略できない、もしくは何度も同じ事をいってしまう痴呆の初期段階と思われかねない症状)が曲の冗長性を際立たせるものになっていて、いくらギターソロが独特のメロディ(アイアン・メイデン的なメロディって聴いた瞬間に分かる割には真似できるバンドがいないなあ…)を華麗に決めても、いつまでたっても終わりの来ない曲へ効果的に機能させることが出来ないという悪循環に陥ったりしてます。インパクトの無い軽い一曲目は、さておき。大曲志向のメイデン節が炸裂していく楽曲を並べてあるアルバムは紛れも無くアイアン・メイデン。とは言えブルースとエイドリアン復帰のご祝儀相場だった前作から、あまり問題点が改善されていないのは、どうなんだろうなあ、と疑問符が沢山ついてしまいますが、ボーッと聴いてると弛緩状態になるのは・・・・・・・・・・ぐー。

 あ、ジャケットは彼ららしくて良いと思いますが、3Dモデルのシワ取りは気合を入れて欲しいものです。
同系統アルバム
メイデン全部。

HERETIC/MORBID ANGEL

ヘレティック/モービッド・エンジェル

VICTOR VICP-62491〜2 [☆☆☆]

 アメリカ出身のベテランデスメタルバンドの7枚目のアルバムです。

モービッド・エンジェルのサウンドは、このドロドロした音質と聴き手を呪うかのような
ビースト的なヴォーカルに奇妙な品格みたいなものが醸し出す他のデスメタルバンドとの
エゴイスティックなほどの区分を要求する特異性がデビュー当時からあったわけですが、メ
ンバーが変わってもそれは不変なわけで。所謂デスメタルの枠内には存在するものの、
最も病的な暗黒面を描きだす世界は基本的に魔宴であって異次元の存在への賛歌であり
高次元の存在が人類への隷属を強制する縛鎖なわけです。曲の速度は確かに遅いよう
だが、狂気と背徳の論理が支配するこの暗黒世界において、それは些細な問題に過ぎ
ない。このサウンドと同調して太古の神々を召喚せよ!

 でも、シークレットトラックが激しく邪魔なんですけど。さらに二枚目は謎ディスク。
同系統アルバム
IN THEIR DARKENED SHRINES/NILE
LITANY/VADER
NOTHING/MESHUGGAH

DOMI<>NATION/MORIFADE

ドミネイション/モリフェイド

KING RECORD KICP-945 [☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドのサードアルバムです。プロデュースは前作から引き続き、キング・ダイアモンドのギタリスト、アンディ・ラ・ロックが担当しています。

 ストロングスタイルに少し接近したエッジの効いたサウンドが繰り出されるアルバムは、緊迫感を高める鋭いギターリフと繊細なメロディを唄いあげる少しハスキーさの残るハイトーンヴォーカルが合わさった構築美を見せるドラマティックな1から、キーボードの叙情的なイントロからヘヴィなギターリフとクリアーなキーボードがシンクロして進む印象的なインストゥルメンタルを組み込んだミドルテンポの2と、ダークさが残る叙情感を持った曲を連ねていきます。3では緊張感を持ったタイトリズムとソリッドなリフの応酬からメロウなコーラス、華麗なギターソロへと繋ぐ劇的展開を見せ、ヘヴィに迫るダークな4ではストラトヴァリウスクイーンズライクの系譜にあるシリアスな様相を垣間見せます。スピード感ある5は北欧の透明感と哀愁帯びたメロディを引き連れて合唱隊のコーラスで扇情的に盛り上げます。アップテンポで劇的展開を聴かせるフックのあるメロディを持った6、ドラマティックなコーラスからメタリックなリフで繋ぎつつオーケストレーションを用いて更に構築性の高い劇的楽曲に仕上げる7、暗く美しいメロディのイントロからタイトなリフでダークな世界を導く8、テクニカルメタル的な側面を露にするエッジの効いたリフと起伏の大きい展開が印象的な9、キーボードの響きとギターリフが融合しながら哀愁帯びた世界を築きだすタイトな10と、劇的な展開で構成される楽曲を揃えています。11〜14はデビューミニアルバムをそのまま収録したもので、現在に通じるメロディックメタルを聴かせています。

 時々フラット気味になるヴォーカルが少し気になったりしますが、総じて安定したパフォーマンスを聴かせるアルバムは、キング・ダイアモンドを彷彿とさせるソリッドなギターとタイトなリズム隊が、ヴォーカルとキーボードを圧倒するような存在感を見せて微妙に居心地の良くないバランスになっているような。それは別にしても太い印象を与えるギターはメタルらしい力強さを、ハイトーンヴォーカルは北欧らしさをそれぞれ提示するものになっていて、楽曲の整然とした構築性と相まって揺ぎ無いサウンドを生み出しています。日本盤はミニアルバム完全収録でお買い得な一枚になってます。
同系統アルバム
HOLLOWED BE THY NAME/MOB RULES
APOCALYPSE/ARACHNES
ANGE OU DEMON/MANIGANCE

SOUNDCHASER/RAGE

サウンドチェイサー/レイジ

NIPPON CROWN CRCL-4820 [☆☆☆☆☆]

 ドイツ出身のベテランバンドの17枚目って言われてますが、きっと14枚目のアルバムです。バンドのリーダー、ピーヴィーが得意とする題材であるH.P.ラブクラフトに通じる太古の超生命体に関わるストーリーを軸にしたアルバムになってます。

 雷鳴轟くオープニングのソリッドなリフが展開されるインストゥルメンタルから風雲急を告げる緊迫感を持った空気を生み出すアルバムは、強靭なリズム隊に彼らの特徴である奇妙なフックを効かせるギターリフにキャッチーなサビを詰め込んだ攻撃的な2から歌詞と音楽が一体となった存在感の強い楽曲を繰り出していきます。「SECRETS IN A WEIRD WORLD」アルバムの“WITHOUT A TRACE”や「THE MISSING LINK」の“LOST IN THE ICE”などで提示されていた“大いなる古のもの”に関する題材がアルバムすべてで展開されていくと言うだけで、ある意味キタ――――――(゜∀゜)――――――!!! な感じですが、その話題の3では躍動感あふれるタイトなリズムに乗せて妙なキャッチーさを持ったコーラスが、旧き神々の教団に入信します!と言いたくなるようなポジティヴさを生み出しつつ、バンドの歴史上最強のギタリストであるヴィクター・スモールスキが縦横無尽のプレイを聴かせます。オーセンティックなリフで始まるアップテンポのタイトルトラックは、多彩なメロディを繰り出して聴き手を捉えつつ扇情的なサビで一気に盛り上げます。湿ったメロディと変則的なリフで押しまくる5はダイナミックに展開しつつスピードアップする早口なサビも印象的な衝動的でスリリングな曲です。
 怒涛の勢いの5曲の後は7枚目のアルバムタイトルを持った、このモチーフの集大成的な側面を持った6へと。跳ねるようなリズムのシャウトするパートからピアノを絡めた美しいオーケストレーションパートへと変転するプログレッシヴな一面を持つ曲はこれまでの世界観を広げつつ情感豊かなギターソロ経てドラマティックな結末へと向います。ミステリアスなムードが漂う哀愁メロディの7はバラード風と見せかけつつ分厚いコーラスを含んだヘヴィな展開とエキゾチックなギターソロで盛り上げます。炸裂するようなギターリフが空気を切り裂くミドルテンポの8は不穏な空気を孕みながら扇情性を高めたサビでヘヴィメタルらしい盛り上がりを見せます。ソリッドなリフに変なメロディが乗るピーヴィーっぽいキャッチーな9から、二部作となっている10,11に。繊細なメロディから始まる10は、邪悪さを増すギターリフと泣きのギターソロを絡めつつドラマティックに進んでいき、さらに11では叙情的なメロディを膨らませながらトリッキーなギターソロへと、さらにメタリックにヘヴィに流転して、スリリングなスピードパートへ収束していきます。そしてバッハの曲をアレンジしたヴィクターの才能を感じつつアルバムは幕を閉じます。

 過去のフィーリングを感じさせる彼等独特のクセのある楽曲に多く絡んだヴィクター・スモールスキの大きな貢献によって、今まで以上に仕掛けの多いヘンさ倍増のアルバムになっている今作は、この先これ以外のメンバーで再現することが出来ないのではないかと思わせるほどの強固なプレイとあふれんばかりのアイデアに支えられた魅力的な楽曲が揃ったバンドの最高峰になっています。これほどのベテランバンドでありながら未だ驚きに満ちたアルバムを提示する旺盛な創作意欲にはひたすら平伏です。



 でー、アンディ・デリスはどこですか?
同系統アルバム
ORDER OF THE ILLUMINATI/AGENT STEEL
SIGNE DE VIE/MANIGANCE
DOMI<>NATION/MORIFADE





October

FALCONER | GALNERYUS | INVOCATOR | LAST TRIBE | NEVERMORE | STRATOVARIUS |

THE SCEPTER OF DECEPTION/FALCONER

ザ・セプター・オブ・ディセプション/ファルコナー

SOUNDHOLIC TKCS-85076 [☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドの三枚目のアルバムです。ヴォーカリストにDESTINYのクリストファー・ヨーベルを迎えて製作されています。13世紀頃のスウェーデン王家の権力闘争を描いたコンセプトアルバムのようです。

 力むとマノウォーのエリック・アダムスっぽくなってしまうハイトーンヴォーカリストを加えての心機一転のアルバムは、路線的には変わりない哀愁フォーク風メロディ満載のヘヴィメタルになってます。トラッド風味のメロディが全開のヴァイキングメタル的な勇壮さも兼ね備えるミドルテンポの1、3、やオーセンティックなメタル路線の5、6、哀愁パートを挟みながらストレートに疾走する2、センチメンタルなイントロからブラストビートも加えて激しく展開するドラマティックな構築美を見せる4、疾走感と哀愁を込めたメロディ全開で女性コーラスも加えながら進める7や起伏の激しい展開を見せるパワフルなタイトルトラックでの劇的なパワーメタルらしさを前面に出した路線に加えて、叙情性を前面に押し出した9、前ヴォーカリストが唄う10などのリリカルな面も見せて前作よりもバラエティあふれる楽曲が並んでいます。

 ヴォーカルの声質が変わって声による繊細さや叙情感が少なくなったアルバムは、独自性の減少というマイナス面がゲスト参加した個性的な前ヴォーカリストの声が加わることで如実に感じられますが、インストゥルメンタルの充実度は今まで通りに独特の質感を持ったヴァイキングメタルにも通じる世界観を提示しています。新ヴォーカリストの特性に引っ張られる形での普遍的なスタイルのパワーメタル路線に接近しつつあるバンドですが、勇壮さと哀感のバランスを取りながら独自のサウンドを追求してもらいたいものです。
同系統アルバム
DANCE OF DEATH/IRON MAIDEN
A NIGHT AT THE OPERA/BLIND GUARDIAN
WARRIORS OF THE WORLD/MANOWAR

THE FLAG OF PUNISHMENT/GALNERYUS

ザ・フラッグ・オブ・パニッシュメント/ガルネリウス

VAP INC. VPCC-81464 [☆☆☆☆]

 個人プロジェクトで活動してアニメタルにも参加しているSyuが中心となって結成されたバンドのファーストアルバムです。ヴォーカリストにはGUNBRIDGEなどの個人プロジェクトで活動するYAMA-Bに元マージュ・リッチのYUUKI、元コンチェルト・ムーンの佐藤潤一らを加えて製作されています。

 クラシカルな展開で始まるドラマティックなイントロダクションから繰り広げられる様式美世界は、ハイトーンヴォーカルが熱く唄うネオクラシカルでフラッシーなギタープレイも鮮やかなドラマティックな疾走ナンバーの2へとその舞台を移していきます。泣きのメロディ全開で進む3でも印象的な速弾きギタープレイの劇的路線を突っ走り、扇情的でフックのあるメロディでアップテンポに進む4ではスムーズなヴォーカルが味わえます。クラシカルなイントロから激しく物語を刻むようにテクニカルに劇的に展開する開放系の5、哀愁のメロディを切々と爪弾くギターが琴線にふれるインストゥルメンタルの6から、宮廷音楽のように華麗に始まるミドルテンポの7へ。扇情的ながらポップさを持ったメロディのソフトなナンバーの8、スケール感の大きいダイナミックなイントロからフックのある泣きのメロディで押し流す流麗なギターが印象的な劇的展開の9、ドラマティックなバラードの10、劇的に疾走する華麗な11でアルバムは幕を閉じます。

 力んで唄う低音パートの処理が結構違和感を感じさせたりしますが、ハイトーンパートではソフトなタッチの伸びやかさを聴かせるヴォーカルはジャパニーズ・メタルの路線にあるメロディにフィットしており、スリリングで構築性の高いインストゥルメンタルとのコントラストが鮮やかに楽曲を表現するアルバムになっています。世界水準のクオリティの高い演奏は日本産をほとんど意識させないもので、あとヴォーカルが更に向上すれば世界に打って出られるだろう期待の一枚です。
同系統アルバム
THE EVIL IN YOU/AT VANCE
DARKFIRE/DARKFIRE
WINTERHEART'S GUILD/SONATA ARCTICA

THROUGH THE FLESH TO THE SOUL/INVOCATOR

スルー・ザ・フレッシュ・トゥ・ザ・ソウル/インヴォケイター

KING RECORD KICP-966 [☆☆☆]

 デンマーク出身のベテランスラッシュメタルバンドの約8年ぶりの復活4thアルバムです。

 緊迫した空気を生み出すSEを抜けて、塊のようなリフを叩きつけてくる重さと破壊力が高まったミドルテンポの2から始まるアルバムは、フラット気味の吐き捨てヴォーカルが叫ぶモダンヘヴィネスを通過したスラッシュメタルが多く選択した重圧路線の楽曲が中心になっています。タイトなリフと混沌としたギターメロディがうねりを生み出すダークな3、スラッシュメタルの血脈を思い出させるザクザクした攻撃的なリフの応酬とダイナミックな展開で大きな起伏を見せる4、ヘヴィリフでグイグイ迫る圧迫感の強い乾いたメロディの5、ドラマティックなイントロから妖しいメロディを経てスラッシュメタルに復帰する攻撃的な6、さらに小刻みなリフを重ねながら疾走し艶のあるギターソロを聴かせる7、ダークな色合いに満ちた締め付けるような8、ヘヴィメタル的ダイナミズムを見せるパワーメタリックな9は後期のヴィシャス・ルーマーズを彷彿とさせたりさせなかったり。再びテクニカルに疾走する10、不穏な空気の流れるデスメタル的なリフで進むミドルテンポの11とヘヴィメタルに徹した楽曲が揃っています。

 1990年代のヘヴィサウンドを経由してモダンな感触のアグレッシヴなメタルを生み出した現代の空気を読んだサウンドは、最近のバンドのヘヴィネスほどにはモダンさが突き詰められておらず、かといって80年代スラッシュメタルの興奮にも及ばないし、メロディも思わず引き込まれるほどではないと言う、微妙に色々なところが物足りない気がする、ちょっぴりもどかしい感じになっています。演奏、サウンド共にヘヴィメタル的にはバランスが取れているアルバムですが、もう一押し何か欲しいところです。
同系統アルバム
MINDCRIMES/LYZANXIA
VIOLENT REVOLUTION/KREATOR
KILLBOX13/OVERKILL

THE UNCROWNED/LAST TRIBE

ジ・アンクラウンド/ラスト・トライブ

MARQUEE MICP-10401 [☆☆☆☆]

 元ミッドナイト・サンのギタリスト、マグナス・カールソンが率いるスウェーデン出身のバンドのサードアルバムです。ヴォーカリストにはアーマゲドンでも唄っていたリカルド・ベンソン、ベーシストにイン・フレイムスなどにも参加したディック・ロウグレン、ドラマーにミッドナイト・サンなどにいたハイメ・サラザールによって製作されています。

 シンフォニー・エックスばりのソリッドなリフワークにパワフルなヴォーカルが叙情的なメロディを熱唱する、テクニカルなギターソロも印象的なサウンドを生み出すアルバムは、エッジの効いたリフとキャッチーなサビが残る1から、タイトでヘヴィなリフに開放的なコーラスで表情を変転させていくプログレハード的な2、哀愁のメロディが琴線にふれるドラマティックなバラードの3、パイプオルガンのイントロから緊迫感を高める4は扇情的なメロディを積み重ねながらプログレッシヴな展開を含みつつ、メタル的クワイアやフックのあるサビでパワフルにインテレクチュアルに進むメロディとテクニックが融合するバンドの特徴をよく表したハイライトと言える一曲です。
 プログレメタル的に進む5は迫真のスリリングなソロワークが聴き手を圧倒していき、ドラマティックなインストゥルメンタルを挟んで、ヘヴィリフとダイナミックなコーラスワークでドラマティックに進む7へと進んでいきます。ミドルテンポのメロディアスナンバーの8から、静かなムードで始まる9は徐々に盛り上がりを見せて進みます。10はドラマティックな展開とテクニカルなプレイが融合する圧巻の一曲になっています。マグナスが唄うボーナストラックの11はギターオリエンテッドな色の強いスピード感のあるナンバーです。

 ハードなエッジと豊潤なメロディが溶け合わさった、完成度の高いメロディックメタルをやってのけるアルバムは、伝統的なヘヴィメタルとメロディアスロックの両方の欲求を満たす強力な一枚になってます。
同系統アルバム
UNDERWORLD/ADAGIO
PRIMARY FEAR/ARACHNES
HIDDEN PLACE/DGM

ENEMIES OF REALITY/NEVERMORE

エネミーズ・オブ・リアリティ/ネヴァーモア

NIPPON CROWN CRCL-4575 [☆☆☆☆]

 アメリカ出身のバンドの5枚目のアルバムです。

 バラエティが結構豊かだった前作から、今度のアルバムでは「THE POLITICS OF ECSTASY」と「DREAMNING NEON BLACK」の中間くらいのアグレッシヴでダークさを強調したサウンドになっています。今まで以上に弾きまくるギターがスリリングに突き刺さる圧迫感の強い躍動感のある1〜3や、情念の迸りが狂おしく迫るメロディアスでミドルテンポのムードのある4、うねりを持ったメロディを重ねながら突進するリフを持った5では鋭いプレイを聴かせるストレートなギターソロが印象的です。圧力を強めたリフで迫るミドルテンポの6はテンションを上げていくヴォーカルとの相乗効果で圧迫感を高めていきます。破壊的なイントロから哀感たっぷりのギターとヴォーカルが繊細に切々と情感を積み重ねる7、でもエンディングも怒涛のヘヴィリフ。エキゾチックな雰囲気を持ちつつスローテンポでダークな世界を築き上げる泣きのギター満載の8、ヘヴィリフで圧倒する戦闘的な9はフックのあるサビと鬼気迫るギタープレイを詰め込んでクライマックスへと雪崩れ込みます。

 ヘヴィメタルにあまり慣れていないプロデューサーのせいかどうかは分かりませんが、抜けと分離があまり良くないサウンドは、彼らの特徴ともいえる混沌としつつ情念が蠢く曲調とクリアーで刃物のような鋭利さを持ったサウンドとのコントラストが効果的に表現されていないように思われます。サウンド面での多少の問題はありますが、精神の深く暗いところに訴えかける独特のメロディと世界観は健在で、割とストレートなアプローチも戻したバランスの取れたアルバムは安定感を増した完成度を見せています。

 やっぱりサウンド面の変化は前作がキャッチーだ!とかポップになった!とか言われ過ぎて頭にきたからなんだろーか、と思いつつ日本盤に向けての追記をするわけですが、紙ケースでゲロゲロなジャケットを覆い隠したり、ケース内のスクワームな画像を黒プラスチックで隠したりと、担当の中の人も大変だなあと感じさせる労作に涙しながらのボーナストラックは「DREAMNING NEON BLACK」あたりの雰囲気を持った静と動のコントラストの激しいダークな10に、哀愁帯びたアコースティックギターの調べをバックに物悲しいメロディをファルセットを交えながら切々と唄い上げるセンチメンタルな小品と、質の高い曲が収録されています。
同系統アルバム
ROORBACK/SEPULTURA
KILLBOX13/OVERKILL
THE GATHERING/TESTAMENT

ELEMENTS PT.2/STRATOVARIUS

エレメンツ・パート2/ストラトヴァリウス

VICTOR VICP-62477 [☆☆☆]

 フィンランド出身のメロディックメタルバンドの10枚目のアルバムです。コンセプト二部作の後編にあたる一枚です。

 季節柄、秋をイメージしたジャケットに象徴されるサウンドの方も秋っぽい物悲しさが漂う雰囲気のアルバムは、ゆったりとしたスケールで展開される深遠なる思索を想起させる大作の1から、アップテンポのまさにストラト節が繰り出される憂いを帯びたキャッチーな2、鋭いドラミングとスリリングなインストゥルメンタルで突き進む飛翔系の疾走ナンバーな3、叙情メロディで情感豊かなヴォーカルが堪能できる劇的バラード風の4、タイトなリズムで進むヘヴィでダークな5、ネオクラシカルなイントロからアップテンポで進む6、優しいメロディが包みこむファンタジックな7、扇情的なメロディで哀感たっぷりのムードを演出するミドルテンポの劇的な8、 スローになったハロウィンガーディアンズ?みたいな悠々と流れる9などの今一つ薄い印象しか残らない曲はさらに一番盛り上がってしまうボーナストラックである、スリリングなプレイが印象的で躍動感のあるドラマティックなスピードナンバーの10で、その傾向が増幅されるという悪循環に。

 安定したパフォーマンスを聴かせるバンドのプレイに、クリアーなプロダクションと、既に音楽性としては完成されきっている彼等のサウンドの核は今度のアルバムでも全く変わらないわけで。プロフェッショナルに徹した“産業メタル”とも形容できるサウンドが絶賛も酷評も可能な評価の分かれ目、というよりは聴き手の姿勢の方が如実に露になりそうな、彼らのファンに対しても試金石ともなるだろう一枚です。
同系統アルバム
TRANSITION/CITADEL
DARKFIRE/DARKFIRE
OCEAN'S HEART/DREAMTALE





Nobember

AINA | AXENSTAR | BATTLELORE | DIMENSION ZERO | DOMINE | DREAM THEATER | FIREWIND | MACHINE HEAD | SCARIOT |

DAYS OF RISING DOOM - METAL OPERA/AINA

アイーナ〜デイズ・オヴ・ライジング・ドゥーム

MARQUEE MICP-90013 [☆☆☆☆]

 元ヘヴンズ・ゲイトのベーシスト、ロバート・ヒューニケが中心となって製作されたメタルオペラ・プロジェクトのアルバムです。共同プロデューサーには、これまたヘヴンズ・ゲイト組でシンフォニックメタルを多く手掛けるサシャ・ピートが就いています。主な参加メンバーは  などなど、顔触れを見るだけでもクラクラしそうな感じです。物語の方は恋に破れた王子が悪の魔王になって女王の国に襲い掛かってくるという感じの愛憎絵巻ですが、サウンドの方はラプソディーやキャメロットのアルバムで培われた手法が存分に発揮されている物語性の強いドラマティックな世界が展開されていきます。

 オーケストレーションされたキーボードとメタルギターが一体となってドラマティックかつスリリングに展開していくオープニングナンバーのインストゥルメンタルから始まる一大絵巻は、マイルドなヴォーカルと少年合唱団に導かれながらディミアン・ウィルソン登場する開放感が強まる、一聴で分かるイェンス・ヨハンソンのプレイもアクセントを加えるプログレ風味のシンフォニックロックな2、さらに牧歌的なゆるやかな空気と伸びやかなマイケル・キスクのヴォーカルが聴ける繊細なクラシカルナンバーの3へと進みます。曲調が一転してトビアス・サメットがテンションの高いパフォーマンスを聴かせるシンフォニックなアレンジが加えられた劇的なスピードメタルナンバーの4は、グレン・ヒューズのマイルドな歌唱を加えてムードと場面を転換していき、トーマス・リトケの絶唱から5へと繋いでいきます。ヘヴィなムードが高まるメタルナンバーの5は正に魔王役のトーマス・リトケの独壇場。ヘヴンズ・ゲイトの力強さを思い出させるパワーメタルが披露されていきます。続く6も歌劇要素が少し入ったアグレッシヴなパワーメタルナンバーで衰えの無い声を聴かせるトーマス・リトケがカッコ良すぎです。オペラティックな合唱団で重厚に迫る7はオラフ・ヘイヤーとトーマス・リトケが掛け合うミドルテンポのメタリックな曲調からグレン・ヒューズの登場で盛り上げますが、やはりトーマス・リトケがカッコ良すぎな、クラシック要素も詰め込まれるハイライトの一曲。グレン・ヒューズとアンドレ・マトスが情感豊かに唄う暗いムードの8、キャンディス・ナイトの唄う物悲しい小品の9から、景気の良い掛け声コーラスに伴われて再びトーマス・リトケのアップテンポのメタルナンバーの10、再びマイケル・キスクの唄うリリカルな物悲しさが伴う11、エスニックな雰囲気からメタルなギターソロが飛び出す12、グレン・ヒューズの熱唱で盛り上げるハードロックな13、マルコ・ヒエタラ登場で最終決戦の決着を付けるひたすらドラマティックに盛り上がる緊迫感たっぷりの14からマイケル・キスクの15でアルバムは幕を閉じます。

 メタルオペラとしては比較的分かりやすい曲の構成で、あまり肩肘張らなくても聴ける圧迫感の少ないものになっていて、個々としての曲も単独で成り立つ、連続性をあまり要求されない感じです。ストーリーの方はまあ何ですが、トーマス・リトケの大活躍を聴くにつけ黙ってヘヴンズ・ゲイトのニューアルバムだ!とか言って出してくれると面白かったのにと思わないでもないドラマティックメタルの一枚です。一枚って言うのは二枚目を聴く気力はそんなに起こらないという問題が(笑)。
同系統アルバム
THE METAL OPERA II/TOBIAS SAMMET'S AVANTASIA
POWER OF THE DRAGONFLAME/RHAPSODY
EPICA/KAMELOT

FAR FROM HEAVEN/AXENSTAR

ファー・フロム・ヘヴン/アクセンスター

KING RECORD KICP-964 [☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドのセカンドアルバムです。

 ちょっと鼻に抜ける甘い声質の繊細なハイトーンヴォーカルによって唄われるのは、北欧の空気に満たされる哀愁帯びた秋らしいメロディックメタルで、教会音楽のような厳かな雰囲気のイントロダクションの1からセンチメンタルなメロディ満載でハードなエッジを刻むリズム隊がスピード感をもたらすキャッチーな2へとアルバムは進んでいきます。オーセンティックなヘヴィメタル的なリフワークに北欧メタルの流れを汲んだキラキラしたキーボードと組み合わされるソフトなフィーリングのサウンド、そして印象的なフレーズを連発するギタープレイが一体となった楽曲は、切れのあるアップテンポなリズムが心地いい更に泣きそうなサビが炸裂するセンチメトゥな3、バラード調で始まる4はダイナミックなリフとギャロップするアップテンポへと展開し哀愁のメロディが噴出する泣きのギターで高みへと。ナイトウィッシュ風の哀メロギターリフで進むタイトルトラックは哀感たっぷりに焦燥感を高めるサビが印象的。さらにタイトに進む6はナイトウィッシュあたりのフィンランドのバンドを思わせるミドルテンポの曲。ハードアタックなギターとビートで進む7はメタル色が強まっても、やっぱりメランコリックな曲。エッジのあるギターとスピーディーなリズムで進むキャッチーな8、キラキラメロディで北欧メロデスあたりにも通じる叙情感を生み出すスピード感のある9、アコースティックのバラードの10とどこを切ってもメロディアスな楽曲が揃っています。

 伝統的な北欧メタルに今風のスピード感を加えたメロディックメタルは、ヴォーカルのソフトな要素がヘヴィメタルな楽曲にポップなフィーリングを与える、微炭酸飲料のような味わいのアルバムになってます。ソナタ・アークティカあたりと比較されることが多そうなバンドですが、青春の憤りが迸る熱情のソナタ・アークティカよりは敷居の低い、少し涼しげで秋の快晴の空に落ち葉が舞い散る、肩の凝らないサウンドが展開される淡い味わいの一枚です。
同系統アルバム
OCEAN'S HEART/DREAMTALE
DELIRIUM VEIL/TWILIGHTNING
THE SACRED TALISMAN/NOCTURNAL RITES

SWORD'S SONG/BATTLELORE

ソード・ソング/バトルロー

M&I COMPANY MYCP-30241 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 フィンランド出身のファンタジック・コスプレ・バンドのセカンドアルバムです。ギタリストが交替したようですが、大所帯なので、あまり関係ないようです。今度のアルバムは「指輪物語」に基づいたストーリーが展開されるコンセプトアルバムになっています。

 ファンタジックかつ大仰なイントロダクションで始まるアルバムは、ゆったりと流れる物語の息吹を感じさせます。勇壮なコーラスが突き進んでいく中、繊細な女性ヴォーカルが加わり一体となった1から、デス・ヴォイスが叫び、リリカルなメロディと女性ヴォーカルが唄いあげるアップテンポの2へ。ダークファンタジーな雰囲気を作り出すダイナミックな3、テンポの良いキーボードサウンドから女性ヴォーカルの優しいメロディに包まれるナイトウィッシュ的な4、デジタルサウンドとデスヴォイスで進むミドルテンポの5、男女ヴォーカルの掛け合いで進む6、ダイナミックなシンフォニックサウンドが展開される7、フォーク調のリリカルなメロディが印象的なインストゥルメンタルの8、荘厳な雰囲気で進むダークな雰囲気の9、アップテンポでキャッチーなメロディを紡ぐ10はやっぱりナイトウィッシュ。叙情的なメロディとデスヴォイスが交錯する11は女性ヴォーカルとのコントラストも強いドラマティックな一曲。ボーナストラックは三拍子のリズムが優雅さを生み出すセンチメンタルな曲。

 やっぱり北欧色の強い繊細で透明感を持ったサウンドが展開されるアルバムは、想起させられるバンドイメージとはずいぶんな差異があって、ゴリゴリしたメタル的な感触の少ない柔らかいものになってます。デスヴォイスとかオーケストレーションとかもそれなりに使われている割には、どうも女性ヴォーカルが前面に出た淡々と進んでいく印象ばかりが残るバンドの見た目よりは、すっかりおとなしい一枚です。
同系統アルバム
THE PHANTOM AGONY/EPICA
MIRROR OF MADNESS/NORTHER
APHELION/EDENBRIDGE

THIS IS HELL/DIMENSION ZERO

ディス・イズ・ヘル/ディメンション・ゼロ

TOY'S FACTORY TFCK-87335 [☆☆☆☆]

 イン・フレイムスのギタリスト、イェスパー・ストロムブラードと元ギタリスト、グレン・ユングストロームが中心となったスウェーデン出身のバンドのセカンドアルバムです。しかしグレン・ユングストロームはアルバム製作後にバンドから離れている模様。

 廃工場で神経質な音を搾り出すような剣呑な空気のイントロダクションから導かれるのは、超高速で繰り出されるビートと破壊的なリフの嵐。獣性を露にしたデスヴォイスを伴い、血潮を沸騰させそうな凶悪な疾走感を持って激烈を絵に描いたようなサウンドが展開されています。明快なギターソロはほとんど存在しませんが、根底に流れるメロディの息吹が苛烈なサウンドにアクセントとして曲を彩ります。休み無く叩きつけられるドラムの凶暴さと唸りを上げるギターの生み出す音の奔流が聴き手を押し流すどこを切っても暴走中の、衝動開放問答無用一点集中高圧騒乱破壊憤怒直線系のハードコアなアルバムです。

同系統アルバム
THE MORE YOU SUFFER/CARNAL FORGE
IMPACT/DEW-SCENTED
ARTS OF DESOLATION/THE FORSAKEN

EMPEROR OF THE BLACK RUNES/DOMINE

エンペラー・オヴ・ザ・ブラック・ルーンズ/ドミネ

MARQUEE MICP-10408 [☆☆☆☆]

 イタリア出身のバンドの4枚目のアルバムです。英国のSF作家マイクル・ムアコックが描く「エターナル・チャンピオン」シリーズに多大な影響を受けている彼等ですが今作でもそれは健在で、エルリック・サーガに次ぐ人気と言われる紅衣の公子コルムを題材に加えています。もっとも、それより力が入ってるのは混沌の神々の一柱、アリオッチですが。

 アリアをイメージしたスケール感の大きい荘厳なイントロダクションから始まるアルバムは、続くスピードナンバーの2で一気にヒートアップ。絞められ系の怪鳥ハイトーンヴォイスも絶好調な熱いエピックメタルな世界は剣に生きる戦士の生き様を映し出す高圧のサウンドで彩られていきます。混沌の神アリオッチを唄う3は緊迫した空気で劇的空間を作り出すミドルテンポの曲で、扇情的なハイトーンヴォイスで神への賛歌を描き出します。英雄コナンシリーズにインスパイアされた大作の4は映画のサウンドトラックを思わせる壮大な盛り上がりがバンドの構成力、表現力の向上を感じさせる迫真の出来です。リリカルなイントロから始まるのは紅衣の公子コルムの哀愁漂う苦痛に満ちた冒険譚を描き出すミドルテンポのナンバー。アイアン・メイデン的なフィーリングを感じさせる明るいタッチのミドルテンポの曲である6、鞘鳴りのSEから二振りの魔剣の闘いを描き出す7は威嚇的に迫る劇的メタルナンバーでメイデン風なギターソロも印象的な一曲。哀愁帯びたギターの音色が情感を揺さ振るイントロの8は組曲形式の大作で、ゲスト女性ヴォーカルにBEHOLDERのLeanan Sidheを迎えて感動的な楽曲を演出していきます。再びハイトーンシャウトが炸裂する9は突進疾走の漢コーラスも熱いライヴでも大盛り上がり必至のドラマティックメタルナンバー。新たな面を見せるリリカルなメロディを持った安らぎを感じさせるタネローンへの帰還を描く10、さらにライオットのカバーが収録されています。

 信念を貫き通すバンドの姿勢が遂に楽曲の質的転換を起こした、アイアン・メイデンやマノウォーと言ったベテランバンドに近づく風格のようなものを感じさせる強力な一枚となったアルバムは、自信に裏打ちされる安定したサウンドと完成度を伺わせます。滾る血潮がメタル魂に火をつける、どこを切ってもヘヴィメトゥな一枚です。
同系統アルバム
A FLAME TO THE GROUND BENEATH/LOST HORIZON
HYPERION/MANTICORA
RHEINGOLD/GRAVE DIGGER

TRAIN OF THOUGHT/DREAM THEATER

トレイン・オブ・ソート/ドリーム・シアター

WARNER MUSIC JAPAN WPCR-11703 [☆☆☆☆☆]

ドリーム・シアターはメタル

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1 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 25:35 ID:6p7Mt6zw

たてますた。

2 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/02 25:35 ID:79h9dNjI
今だ!2ゲットオォォォォ!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄       (´´
     ∧∧   )      (´⌒(´
  ⊂(゜Д゜⊂⌒`つ≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡
        ̄ ̄  (´⌒(´⌒;;
      ズザーーーーーッ

3 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 25:36 ID:???
2をゲッツしたわけです

4 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 25:36 ID:???
2

5 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 25:36 ID:???

新譜ヘヴィになったね。

6 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 25:37 ID:LeyYgQlx
7枚目のアルマム?


7 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 25:37 ID:???
メタリカのパクリだろ。2曲目blackendじゃねーか。

8 名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 25:38 ID:???
メロディ激弱。前作の方がマシ



9 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 25:39 ID:???
( ´,_ゝ`)プッ

10 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 25:40 ID:???
>>8
(*・∀・)< メロディ厨はカエレ!

11 名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 25:44 ID:???
ジョーダンの頭やばすぎ。

12 名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 25:50 ID:???
ペトルーシ弾きまくり。どこかネジでも外れたか?
その代りジョーダンの出番は少ないわけだが。



13 :ラヴ理恵 :03/11/12 25:55 ID:???
(´・ω・`) <雇われショボーーーン


14 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:00 ID:IMvCk4Ma
こんなのDTじゃないよ!ヘビーなのは他のバンドにやらせとけばいいんだよ!
MP2やAWAKEの頃に戻って欲しいよ・・・・・


15 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:00 ID:???
新作最高。
これがダメな奴って他のメタル聞いてないのか?


16 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:11 ID:???
ラブリエのムステイン物真似にワロタ

17 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:12 ID:???
改めて聴くとAwakeの方がイイ!



18 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:14 ID:???
後半の3曲はドラマチックでいいんだけどなあ。前半がヘヴィでグダグダ。

19 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:15 ID:???
ANNIHILATORって入ってない?

20 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:15 ID:???
つまらん!メロがつまらん!!

21 :儲ファン :03/11/12 21:23 ID:NXZb5Uwi

最強のバカテク・メタルアルバム!一生ついて行きます!!



22 名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:25 ID:UygGEsEr
つまんねーもう解散していいよ


23 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:26 ID:???
>>22
激しく同意


24 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:27 ID:???
スラッシュメタルのパクリがたまりません。

25 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:29 ID:???
漏れはDT暦10年だが、これはバンドの最高傑作だと思う。
モダンなサウンドにスリリングなプレイ、超バカテクがバンドの
本質だろ?いつまでもI&Wを求めてるファンは用無しってわけだ。
メロメロいってる奴らはTHE DARKNESSでも聴いてろ。



26 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:29 ID:KUKHyIee
新作には圧倒されたね!

27 名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:31 ID:???
Castle of Paganでは98点という高評価

28 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:31 ID:???
メロディアスに戻っても文句言うんだろ?気に入らないヤシは


29 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:35 ID:???
>>27
やっぱり他人のレヴューは信用できないな。

30 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:35 ID:???
OPETHやTOOLの影響出まくりだよなー

だがそれがヽ( ・∀・)ノ  イイ!

31 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:35 ID:???
>>11
ジョーダンは既にメタルゴッドです。

32 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:36 ID:???
ライヴではMaster of PuppetsとBLACK ALBUMを丸ごとやります。



33 名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:40 ID:???
前作のグダグダ感はかなり解消されてる。
小奇麗なメロディは大幅に減ったけどな。

34 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:40 ID:???
新作悪くないけど、バンド名と違うね。


35 名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:41 ID:???
>>33
6DOITは結構いいと思うけど?
falling into infinityよりはるかに良い。


36 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:43 ID:???
>>35
尿意


37 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:44 ID:???
メロメロスピスピ


38 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:45 ID:???
この糞アルバムを高得点付けてる糞サイトはさっさと閉鎖汁!


39 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:46 ID:???
3曲目が最高!
メタリカのWELCOME HOME(SANITARIUM) 風悶絶哀愁メロディから
ヘヴィな演奏が始まった途端P.O.S的世界へ。
セカンドパートに移るとスラッシーな刻みリフに華麗なキーボードの応酬!
コミカルなパートで場を和ませたと思ったら
おーっと、メタリカかぁー?メタリカの次はなんとメガデスに。
ジョン・ペトルーシもムステインになりきってるよ! さらにアナイアレイターかあ?
すごーい。
1曲でこんな贅沢、他のバンドでは味わえないね!

40 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:47 ID:???
あぼーん

41 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:48 ID:???
失望しますた。


42 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:48 ID:???
ヘビーメタルだから全然OK
デス声がもっとあれば言うことなし。

43 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:49 ID:???
ここは儲と工作員のスクツですか。

44 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:50 ID:???
さいごの曲とかドラマティックでいいやん。
ラブリエに無理矢理なラップはあんまり合わん気がするけど。

45 :30 :03/11/12 21:50 ID:???
リピートし過ぎて何度も逝ってしまいますた。。。。。

46 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:50 ID:???
武道館でやるって?

47 :35 :03/11/12 21:52 ID:???
所詮B級バンドだったか・・・・

48 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:53 ID:???
現在進行形のメタルじゃん。サイコー。

49 :名無しさんのみボーナストラック収録 :03/11/12 21:53 ID:???
>>12
>>その代りジョーダンの出番は少ないわけだが。


ラブリエの間違いだろ?


50 :停止しました。。。 :停止
真・スレッドストッパー。。。( ̄ー ̄)ニヤリッ
同系統アルバム
THE MUSIC OF ERICH ZANN/MEKONG DELTA
EMERGENT/GORDIAN KNOT
A SCEPTIC'S UNIVERSE/SPIRAL ARCHITECT

BURNING EARTH/FIREWIND

バーニング・アース/ファイアーウィンド

TOSHIBA EMI TOCP-67279 [☆☆☆]

 ギリシャ出身のギタリスト、ガス・G率いるバンドのセカンドアルバムです。ベースにブレイキング・サイレンスのPetros Christo、ドラムにPAGAN'S MINDのStian Kristoffersenを迎えて製作されています。

 雷鳴轟く中、預言者の声が響く不穏なイントロを経て、メロディックデスメタルを彷彿とさせるメタリックなリフが炸裂する1から始まるアルバムは、ガス・Gが参加している他のバンドでの鬱憤を晴らすかのように弾きまくられるギターも印象的なダーティな声質のパワーヴォーカルが唄いあげるストロングスタイルのヘヴィメタルを追求したものになってます。刻みリフで圧迫する2はジャーマンメタル風の哀愁パワフルナンバー、ヘヴィリフでタイトに迫る重厚なマノウォー風の3は扇情的なヴォーカルパートで盛り上げます。タイトなリフでメタリックに進むタイトルトラック、そしてテクニックをたっぷりと見せつける緊迫感と緊張感、更に情念あふれる迫真のインストゥルメンタルの5へと。熱い歌唱で押しの強いミドルテンポの6、哀愁メロディで進むドラマティックナンバーの7、ソリッドなリフで威圧的に迫る8はキャッチーなサビとギターソロでムードを一変させていきます。バラードナンバーの9、叙情的なインストゥルメンタルでアルバムは締めくくられます。

 ガス・Gが参加したバンドでの影響があちこちに見受けられたりする、ごった煮風サウンドはとりあえずギターで無理矢理味を調えたみたいな力ワザを感じさせるもので、特に悪いところは見あたらなさそうな割には、あまり楽しくない代物になってます。ギタープレイは印象に残るけれど、どんな曲だったかは今一つ思い出せない多分アグレッシヴなインストゥルメンタルが一番心を揺さぶるようなアルバムです。
同系統アルバム
FEEDING THE FLAMES/BURNING POINT
EVILIZED/DREAM EVIL
HOLLOWED BE THY NAME/MOB RULES

THROUGH THE ASHES OF EMPIRES/MACHINE HEAD

スルー・ジ・アッシュズ・オヴ・エンパイアーズ/マシーン・ヘッド

ROADRUNNER RRCY-21197 [☆☆☆☆]

 アメリカ西海岸、ベイエリアシーンを拠点とする元フォービドンのロブ・フリンが中心となったバンドの5枚目のアルバムです。今作では新たなギタリストとしてベイアエイア・スラッシュメタルバンド、ヴァイオレンスに加入していたフィル・デンメルを迎えています。

 ラップやエクストリーム・ミュージックの要素を多く取り入れたサウンドを構築してきたバンドですが、今度のアルバムでは盟邦だったスラッシュ畑のギタリストが加入した影響もあって、原点回帰したヘヴィメタル色の強い、いやヘヴィメタルそのものと言えるサウンドが展開されていきます。ヘヴィでダークな色彩を持ち圧迫感の強い質量を備えた1から、咆哮と骨太のメロディを生み出すヴォーカルを携えたタフな楽曲が繰り出されるアルバムは、畳み掛けるリフとルーズな空気のコントラストで衝動性を露にするミドルテンポの2、オルゴールのSEから80年代スラッシュメタル然とした突進力を持った起伏の激しい、哀愁帯びたサビを持つ劇的な3、ヘヴィリフで沈滞したムードを演出する破壊的な4、緊迫感のあるソリッドなリフで進むミドルテンポの5、黒い旋律を孕んだリフから苦悩に満ちたメロディが展開されるダイナミックな展開の6、リフとヴォーカルが一体となって聴き手を威嚇するタイトな7、アンビエントな空気と繊細なメロディ、さらにアグレッシヴなサウンドが渾然一体となったドラマティックな8、吐き捨て歌唱で怒りの感情を、メロディアスなパートで哀しみを生み出すコントラストの強いアグレッシヴな9、リリカルなイントロから叙情感たっぷりのヴォーカルを経て寂寥感を備えた美意識を感じさせる、ドラマティックな展開に至る10と様々な楽曲が収録されています。

 ダークでヘヴィなサウンドに支配された90年代スラッシュメタル的な圧迫感の強い空気を生み出すアルバムは、衝動性と情念の塊のような楽曲を徹底して送り出します。ドラマ性を持った展開を見せる楽曲にメタル魂の炎を感じさせる、メロディとパワー、ヘヴィネスが合わさった力感と存在感を持ったパワフルなアルバムになってます。
同系統アルバム
ROORBACK/SEPULTURA
THE IMPOSSIBILITY OF REASON/CHIMAIRA
ST.ANGER/METALLICA

STRANGE TO NUMBERS/SCARIOT

ストレンジ・トゥ・ナンバーズ/スカリオット

SPIRITUAL BEAST SBCD-1009 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 ノルウェー出身のバンドのサードアルバムです。

 濁った声質の高音から低音まで唄いあげるパワフルヴォーカルを擁するサウンドは、スラッシュメタル的なリフワークに暗いメロディを背負ったパワーメタルを作り出します。圧迫感の強いリフにヒステリックなギターソロを加えるミドルテンポの1、ヘヴィリフで進める2は閉塞感の強いメロディが印象的です。ソリッドな3ではアルペジオを奏でるギターからのインストゥルメンタルが山場を作り出し、疾走感の強いイントロで始まるミドルテンポの4はエキセントリックなヴォーカルとギターソロが楽曲に異なる表情を与え、ともにネヴァーモア的な衝動を押さえ込むメロディで進めていきます。リリカルなメロディが支配する5は速度と衝動を増しつつエモーショナルなギターソロ&コーラスでドラマティックに進みます。タイトなリフで組み立てられるアップテンポの6、ソリッドなリフからスラッシーに展開するアグレッシヴでギターソロまでかなりテスタメント風の7、さらにネヴァーモア的なうねりからマーシフル・フェイト的なシアトリカルなヴォーカルを聴かせる8、トリッキーなリフからフックのあるサビへと誘導していく9、そしてボーナストラックはダークな雰囲気でフラットなメロディを聴かせる10、タイトなリフが緊迫感を高め、うねるメロディとテクニカルなギターソロが圧迫感の強めるミドルテンポの11です。

 テスタメントとアナイアレイターを重ね合わせているうちにヨーロピアンな暗さが顔をもたげてきてネヴァーモアに接近するという、ノルウェーらしさはリリカルなメロディラインあたりにしか感じさせないサウンドは、鬱屈したムードが全編を包み込む、マグマのような衝動を深い大地に抱え込んだものになっています。上記のバンドよりもメロディや展開、さらにスラッシーなところもマイルドで比較的このスタイルのバンドでは聴きやすくなっているアルバムは、重い空気がやっぱり聴く人を選びそうな取っ付きの悪い代物で特に日本ではほとんど評価されない気がしますが、オリジナリティを生み出そうと奮闘するバンドの姿勢が伝わってくる好盤です。
同系統アルバム
DEAD HEART, IN A DEAD WORLD/NEVERMORE
PRACTICE WHAT YOU PREACH/TESTAMENT
NEVER,NEVERLAND/ANNIHILATOR





December

AMARAN | BALANCE OF POWER | DARK MOOR | MAGNITUDE 9 | METALIUM | REQUIEM | VHALDEMAR |

PRISTINE IN BONDAGE/AMARAN

プリスタイン・イン・バンディッジ/アマラン

MARQUEE MICP-10414 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スウェーデン出身のバンドのセカンドアルバムです。

 艶っぽい雰囲気を醸し出す女性ヴォーカルを擁したサウンドは、テクニカルでソリッドな演奏と交錯して、まるでデスメタルのような冷気を持ったものになってます。ゴシック的な扇情性を持ったメロディにテクニカルメタルの鋭さを併せ持つ1、攻撃性を露にしたギターリフが空気を切り裂き、メランコリックなメロディが浮遊感を生みだす2、北欧メロディックデスメタル的な扇情的なメロディのリフで進む3、叙情的なメロディがダイナミックなギターサウンドと融合する4、アーク・エネミー的な展開を見せる5、緊迫感を高める激しいリフからドラマティックに展開する6ではデスヴォイスも導入してダイナミックに迫ります。まるでパワーメタルな疾走感を持ったメロディアスな8、繊細なメロディで進む陰鬱な空気を作り出すゴシック風の9、冷気漂うドラマティックな展開が印象的な10。ボーナストラックはセンチメンタルなメロディを持ったスローな11、メタリカみたいなイントロから扇情力の強いメロディが展開される12、メランコリックなメロディが膨らんでいく13が収録されています。

 女性ヴォーカルながら耽美的な雰囲気に飲み込まれない鋭角なサウンドとのコントラストが印象的なアルバムは、ゴシックメタル的なサウンドの中に一石を投じるもので、この組み合わせだけでかなりの独自性を生み出している、今後に注目の一枚です。
同系統アルバム
THE PHANTOM AGONY/EPICA
FOCUS/CYNIC
UNDECEIVED/EXTOL

HEATHEN MACHINE/BALANCE OF POWER

ヒーゼン・マシーン/バランス・オヴ・パワー

MARQUEE MICP-10411 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 ブリティッシュメタルバンドの五枚目のアルバムです。BIOMECHANICALのジョン・Kをヴォーカルに迎えて製作されています。

 ソフトマイルドな質感が特徴だった前作までのサウンドとは異なった印象を与えるアルバムは、ジェフ・テイトを彷彿とさせる冷気漂うハイトーンヴォーカルに導かれるダークさが強まったものになってます。ヴォーカルメインのイントロの1からスリリングさと高密度の圧迫感が加えられるダイナミックな2、ドラマティックなギターイントロからシリアスな空気に満ちたダークさを演出するミドルテンポの3、クールなドラマ性を持った4はタイトなリフで進むダイナミズムを感じさせるスリリングなギターソロも飛び出す一曲。ピアノの調べから、ドラマティックに展開されるヘヴィかつ叙情的な4、ドラマティックなイントロからタイトなサウンドが繰り出される5、密度の高いインストが構築性を生み出す6、静かなパートからダイナミックに変貌するコントラストの強いドラマティックな7、緊張感のあるリフがスピード感を生み出す8はハイトーンヴォーカルがテンション高く唄うドライヴ感の強い劇的な曲。期待感を煽るイントロからミステリアスに展開されるメタリックなリフ、ドラマティックな展開が緊迫感を高めるスリリングな曲です。

 前作までのサウンドを全く思い出させない、硬質なサウンドはスリリングで安定したプレイに構築度の高さを感じさせるそれなりにクオリティを保ったものですが、前作までのポップさにあふれるメロディに魅力を感じているとかなり失望させられそうな感じです。全体的に曲の尺も長くて、我慢するパートが多いのもマイナスに繋がりそうな、曲数の割には何だか疲れるアルバムです。
同系統アルバム
DOMI<>NATION/MORIFADE
THE UNCROWNED/LAST TRIBE
WATCHING IN SILENCE/CIRCLE II CIRCLE

DARK MOOR/DARK MOOR

DARK MOOR/ダーク・ムーア

VICTOR VICP-62551 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スペイン出身のバンドの四枚目のアルバムです。バンドの顔だった女性ヴォーカリストを含め4人が脱退することになってしまったバンドですが、今度は男性ヴォーカリストを迎えて新たなスタートを切っています。

 男前だった前女性ヴォーカルに引けを取らない、かなり女性的な側面を持ったハイトーンヴォーカルを引っさげて繰り出されるのは、ネオクラシカルな要素とクワイアが大幅に強化された劇的メロディックメタル。ヘヴィネスとダークさを増した叙情感たっぷりの1から、リリカルなクラシカルフレーズを加えつつ疾走感と開放感を持った2、重厚さとエキセントリックなヴォーカルのパフォーマンスで緊迫感と叙情感を持ったドラマを演出する3、スケール感の大きなドラマ性を生み出す4は扇情的なメロディを繰り出しながらクライマックスに向けて畳み掛けていきます。スピード感のあるリフと泣きのメロディからドラマティックなコーラスと一体になったサビとスリリングなクラシカルフレーズで圧倒する5、混声合唱団のイントロから叙情的なメロディが積み重ねられる6は女性ヴォーカルなどの多彩なパートを持った多層的な一曲。クラシカルでドラマティックなインストの7から、緊迫感を持ったコーラスのイントロ、さらに流れを引き継いだ楽器パートからドラマティックでパワフルなサウンドが展開されるアグレッシヴな8、ヘヴィリフで迫るダークな9ではメロディアスなギターで盛り上げます。合唱団のコーラスの10から、スリリングなリフが展開されるスピード感のある11へ。そして、バンド名を冠したドラマティックな大作の12は耳に残るキャッチーなサビがバンドの新生を印象付ける強力な構成力を持った構築性の高い曲です。

 クラシカルなパートの影響でアングラに近い感触を持ったアルバムは、ヴォーカルの声質が似ていることからサウンド面での違和感は少ないですが、特に個性的だった前ヴォーカルよりも押しが弱いので、厚みを増しつつあるバックの演奏に圧倒される場面が多くなってます。楽曲にはまだ、前ヴォーカルの影を引き摺っているような印象を与えるパートもあり、居心地の悪い感じが残っており新ヴォーカルとバンドのバランスが取れるのには少し時間が掛かりそうです。それでも、豊潤なメロディや印象的な展開などのバンドの個性は十分に発揮されているアルバムになってます。
同系統アルバム
REBIRTH/ANGRA
OF WARS IN OSYRHIA/FAIRYLAND
RITUAL/SHAMAN

DECODING THE SOUL/MAGNITUDE 9

デコーディング・ザ・ソウル/マグニチュード・ナイン

MARQUEE MICP-10410 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 アメリカ出身のバンドのサードアルバムです。

 一聴して変化を感じさせるアルバムは、ヘヴィでタイトなリフを中心としたシンプルな楽曲に、湿ったメロディを唄いあげるソフトなハイトーンヴォーカルが乗ったテクニカルでプログレ色の強かったバンドのイメージを一変させるものになっています。縦横無尽に華麗なプレイを見せていたギターもあからさまなテクニックを前面に押し出さずポイントを抑えた楽曲の枠からはみ出さない調和を重視したものになっており、叙情的なメロディラインを壊さないことに気を配っているようです。
 ドライブ感の増したネオクラシカルなプレイが聴ける8、ダイナミズムを前面に押し出した9など後半には激しさを露にした曲も数曲ありますが、全体的な印象はほとんど唄メロを中心に据えたミドルテンポの曲が並んだアルバム。テクニックを感じさせるギタープレイも影のように楽曲に重なっていますが、似た曲調が多いので全体としては起伏が少ないものになっています。ボーナストラックのインストゥルメンタルで派手なプレイを見せてくれますが、その他の楽曲は今までのハジけっぷりがあまり味わえない、落ち着いた雰囲気と叙情感に支配されるメロディアスな一枚です。
同系統アルバム
WATCHING IN SILENCE/CIRCLE II CIRCLE
HEATHEN MACHINE/BALANCE OF POWER
SCENT OF HUMAN DESIRE/SECRET SPHERE

AS ONE/METALIUM

アズ・ワン/メタリウム

MARQUEE MICP-10416 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 ドイツ出身のバンドの4枚目のアルバムです。今回は元FAIRY MIRRORの日本人女性ヴォーカル、SAEKO嬢と前作から引き続きドン・エイリーがキーボードで参加して制作されています。

 ドラマティックなナレーションを含んだイントロダクションから繰り広げられるギリシャ神話世界を舞台にした物語は、爆発的な疾走感を持った漢らしいコーラスも血圧を上昇させるパワーメタルを絵に描いたような2でメタリアムワールドへ強制連行されていきます。前作で迷いが見られた作風も、何か一本線が切れてしまったような吹っ切れ方を感じさせるノンストップな暴走状態が長く続きます。シャウトしてないと何だか危なっかしくて仕様が無いビブラート炸裂のハイトーンヴォーカルもアクセル全開で、続く最近のハロウィンを甲殻化したみたいなメタリックなリフとタイトなドラミングが繰り出される3へと。女性ヴォーカルとのツインヴォーカルを聴かせる4は芝居がかった劇的さを生み出すミドルテンポのフックのあるメロディが印象的です。メインヴォーカルはハラハラさせますけど。さらにソリッドなリフとメロディが融合する5は高揚感を高めつつ、思わず一緒に叫んでしまうサビが気持ちいい一曲です。次の曲へのイントロとなる壮大なスケール感を感じさせる情感たっぷりのインストゥルメンタルを挟んで、ヘヴィリフで展開される長編の7へと繋がっていきますが、魂込めて唄いあげるヴォーカルのパフォーマンスやシンフォロック的なキーボードソロとは裏腹に、かなりの冗長さに多少の忍耐を強いられる代物になってます、さらにアウトロ。9はダイナミックなコーラスからドラマティックに展開するアテナな一曲。ヘヴィなリフから開放感あるサビへ繋ぐテンションの高いヴォーカルが聴ける10、ナレーションから期待感を高めるイントロ、さらに勇壮なコーラスへと進む泣きのメロディが印象的な11、ドラムが暴走気味の12ではリフとリズムが跳ねるような疾走感を生み出しつつ劇的な展開を見せ、エンディングを飾る13は漢コーラス全開の勇壮かつ熱いウォーリアーなヘヴィメタルが繰り広げられます。

 初期のバカさ加減、じゃなかった遮二無二突っ込む暴れ馬のようなひたむきさに、構成力が上がった楽曲が結びついて、説得力があるようなメタリアム・ワールドが展開されていく様は、メタリアン帰還!を強く印象付けます。ビブラートが嫌?コーラスが暑苦しい?普通の人が身を引いてしまうような濃厚な空間を作り出してこそメタリウムの真骨頂と言うものなので、多少の問題とか世間の評価を無視して地平線の彼方へと突っ走って欲しい今日この頃です。
同系統アルバム
I MADE MY OWN HELL/VHALDEMAR
A FLAME TO THE GROUND BENEATH/LOST HORIZON
CONDITION RED/IRON SAVIOR

MASK OF DAMNATION/REQUIEM

マスク・オブ・ダムネイション/レクイエム

SOUNDHOLIC TKCS-85082 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 フィンランド出身のバンドのセカンドアルバムです。中心人物のキーボーディストがソナタ・アークティカにも参加していますが、こちらの活動も継続されるようです。

 勢いに任せて突っ走るエキセントリックなハイトーンヴォーカルと華麗なキーボードとギターが激しく交錯する劇的メロディの乱舞で疾走する爆発力を持った起伏も激しい1から始まるアルバムは、高揚感を高めるストレートな展開が増えたパワフルなスピードメタルを繰り出していきます。更に疾走する2でもドラマティックさに輪をかけて畳み掛けるインストの嵐がスピードメタルの真骨頂を見せていきます。ミドルテンポの3では叙情感を前面に押し出し、テクニカルな要素を盛り込んだダイナミックな劇的ナンバーを聴かせ、スリリングなイントロから激しさを高めつつ気持ちを鼓舞していくドラマティックな疾走ナンバーの4へと。劇的イントロからアップテンポで進む5はタイトなリズムで勢いを付けながらアヴァンギャルドなインストを経てテンションを高めていきます。スケール感を感じさせる雄大さを生み出すリリシズムたっぷりの6はソフトタッチからハードアタックまでリズムチェンジを繰り返しながら進む劇的な展開の様々なアイデアを詰め込んだ大作。哀愁のイントロからタイトなリフで進む、情感たっぷりのヴォーカルが聴けるメロディアスな7、軽やかなピアノのイントロから爆走する8はヴォーカルのテンションも最高潮でコーラスも加わった起伏の激しい劇的なナンバーになってます。ボーナストラックは明るいムードでやっぱりサビで疾走したりするドラマティックな曲です。

 ヴォーカルがふらふらするとかギターも何だか危なっかしい気がするとか色々あったりしますが、ドラマティックなスピードメタルに焦点を絞った勢いと才能のキラメキを感じさせるキレの良いパワー全開のアルバムは、バンドの順調な成長を願いたくなる煌きに満ちた一枚です。
同系統アルバム
OF WARS IN OSYRHIA/FAIRYLAND
LABYRINTH/LABYRINTH
UNDERWORLD/ADAGIO

EMBER TO INFERNO/TRIVIUM

エンバー・トゥ・インフェルノ/トリヴィアム

SOUNDHOLIC TKCS-85083 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 フロリダ出身のバンドのデビューアルバムです。バンドの中心人物は山口県生まれの17歳(アメリカ人)と言う平均年齢19歳の若いメンバーで構成されています。

 不穏なイントロからアグレッシヴに展開されるビートに咆哮型のデスヴォイスが乗ったヘヴィな1から始まるアルバムは、ノーマルヴォイスのメロディアスなフレーズも導入しながらオールドスタイルのスラッシュメタルや北欧メロディック・デスメタルの影響が垣間見える混沌としたサウンドを生み出していきます。攻撃的なデスラッシュなパートに叙情感を持ったメロディのクリーンパートが重なる3は激しい緩急が緊迫感を強め、流麗なギターソロが異なる表情を持った楽曲にアクセントを加えます。ソリッドなリフとダブルヴォーカルでダイナミズムを作り出す4、メロディアスなリフにデスヴォイスが乗る5は正統派メタルの息吹を感じさせるドラマ性を持ち合わせています。ダイナミックなリフワークを繰り出しながら劇的に進む6、哀愁たっぷりのアコースティックなインストゥルメンタルを挟んで、浮遊感のあるキャッチーなコーラスと小気味いいタイトなビートから邪悪に変貌していく8、メガデスを彷彿とさせる泣きのイントロからドラマティックに進む9、ダイナミックなイントロからスピード感のあるリフへ進行していくソリッドな10、アップテンポで進む哀愁のコーラスと苦悩の咆哮を上げるデスヴォイスが印象的な11はスリリングなギターソロで盛り上げ、アウトロで締めます。 更にスラッシーなボーナストラック2曲が収録されています。

 出身地フロリダのデス/スラッシュメタルは勿論、イン・フレイムスソイルワーク、更にはアイアン・メイデン辺りのメンバーの好みのバンドの影響がかなり表に出ているサウンドは、様々な要素を貪欲に取り込んだ最近のヘヴィメタルの潮流に沿ったもので、攻撃性とドラマ性をあわせ持ったアルバムになっている新人離れした今後にも期待が持てそうな一枚です。
同系統アルバム
FIGURE NUMBER FIVE/SOILWORK
REROUTE TO REMAIN/IN FLAMES
AGAINST THE ELEMENTS/BEYOND THE EMBRACE

I MADE MY OWN HELL/VHALDEMAR

アイ・メイド・マイ・オウン・ヘル/ヴァルデマール

KING RECORD KICP-968 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スペイン出身のバンドのセカンドアルバムです。

 前作に引き続いて繰り出されるカイ・ハンセンエリック・アダムスを足して3で割ったくらいの締め上げ系熱唱ハイトーンヴォーカルにネオクラシカルなフィーリングを持ったギターが加わる漢臭いパワーメタルは、爆発的な一曲目からドラマティックに疾走していきます。アップテンポでタイトなメロディと熱いコーラスを聴かせる2、メロディアスなリフで進む3はキャッチーなクワイアで盛り上げます。ザクザクしたメタリックなリフの4はマノウォー風。毛色の変わった静かなパートから盛り上がっていくドラマ性を高めたナンバーの5で新たな面を伺わせつつ、リリカルなアコースティックの小品から、劇的なメロディを重ねるミドルテンポの7へと繋いでいきます。アップテンポの鋭いインストゥルメンタルで気分を盛り上げた後は、 血管切れそうなシャウトと魂のギターソロで爆走ハイテンションチューンの9でクワイアをかまして血圧急上昇させつつ、繊細な10のインストで一休みして、ミドルテンポでグイグイ進めるメロディックでタフな11を迎えます。ヘヴィリフで噛み付くような歌唱を聴かせるダークな12、ネオクラシカルなギターが華麗に展開される13はメタリックなリフとの相乗作用で緊迫感と勇壮さを高め、テクニカルなプレイのインストゥルメンタルの14で締めます。

 全体的には前作の方向性を保ちつつ、更にバラエティを加えた楽曲を取り揃えて成長の証を刻んでいるアルバムですが、勢いで突っ走るメタルな曲はともかく唄を聞かせようとする段になるとヴォーカルの危うさが如実にあらわれる不安なところが前面に。マノウォーばりのテンションの高さと、これはレベルアップした華麗なギタープレイという武器を活かして更にパワーアップしていって欲しいところです。
同系統アルバム
EMPEROR OF THE BLACK RUNES/DOMINE
A FLAME TO THE GROUND BENEATH/LOST HORIZON
DIARY IN BLACK/RAWHEAD REXX