(04/5/4)

行政訴訟の現場からZ


入札排除違法確認住民訴訟(判例地方自治247号89頁)

 福島県川内村であった話だが、村長選挙に当選した村長が対立候補を応援した業者を入札の指名から除外したのは選挙の報復であるとして、住民が村長に対して村長個人に対する損害賠償請求を怠っていることの違法確認を求めた住民訴訟が棄却された(福島地裁H15.3.11判決判例地方自治247号89頁)。

 事案は、これまで7者の村内建設業者が村発注工事の大半を受注していたが、村長選挙の後、村長が対立候補を応援した6者を指名から外したというものだ。当の村長は、村長選挙で自分を支持しなかったことの報復であることを新聞社の取材で認めており、明らかに入札指名業者の指名における権限の濫用であって違法だと考えられる。ところが、住民訴訟は棄却された。

 その理由は、指名除外の前も後も落札率は96.91%〜99.96%と変わらないから、村には損害はないというのである。何のことはない、選挙の前後を問わず、官製談合が行われていたということであり、建設業者間の談合受注の争いでしかなかった。そこでは、選挙の前後を問わず、村民の利益は全く無視されていたということである。おそらく、村長個人に対する損害賠償請求事件としてではなく、損害賠償請求を怠る事実の違法確認という請求の趣旨にしたのは、その辺の事情をも考慮したものであろう。

 しかし、このような明らかな違法行為が行われているのに、裁判所がそれに対して請求棄却という形で住民の訴えを退けるのは釈然としない。少なくとも村長の行為が違法であることは確認すべきであったろう。


 それでは、どういう訴訟をすれば良かったのか。

 入札参加業者の指名または指名除外は、抗告訴訟の処分性がないとされるから、取消訴訟を提起することはできないとされている。

 それなら、今次の司法改革推進本部行政訴訟検討会で検討された「確認訴訟」を提起することは出来るのか。あるいは、入札除外が違法な財務会計行為であるとしてその違法確認訴訟を住民訴訟として提起することは出来るのか。

 指名除外を受けた6社であれば、前者の違法確認訴訟は提起できるように思われるが、村民一般には訴えの利益がない(原告適格がない)と言われるのであろうか。しかし、村民にも公正な入札に基づく公共工事がなされる利益(そうすれば、より廉価な公共事業がなされる可能性はある)というものが認められてよいように思うのだが、それともそれも村民一般の資格に基づいて受ける利益でしかないのだろうか。

 他方、後者の住民訴訟は、そのような類型の住民訴訟というのは法は予定していないとして棄却されるおそれが強い。


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