アルコールという薬は、睡眠薬として、ほめられた薬物でありません。使用している内に効果がすぐに薄れてきたり、飲んでも最初に興奮したりしてなかなか催眠効果が得られなかったりします。よく一般医が、睡眠導入剤の服用より寝酒の方を勧めたりする事がありますが、間違っていると思います。睡眠剤の方が、アルコールよりも耐性ができにくい(慣れの現象が起こりにくい)し、安全性が高く、服用すれば速やかに催眠効果がでてきます。 睡眠薬のかわりにアルコールを使うことは、飲酒量が増加し、アルコール依存症への入門切符をいただいたようなものです。何も使用しないのが一番で、次が睡眠導入剤の使用、一番避けるべきがアルコールの使用とお考えください。
実際に、大量飲酒のきっかけが「眠れなくてアルコールに頼ってしまった。」という方が多いので、お酒という睡眠薬の使用はアルコール依存症への第一歩となる可能性が高いと考えた方がよさそうです。
■アルコールの睡眠に対する影響(やや専門的)
@非日常的にアルコールを飲んだ場合
入眠しやすくなり(入眠潜時の短縮)、深い睡眠が多くなり(stage3,4の出現の増大や全睡眠時間に占める割合の増大)、夢と深い関係のある REM睡眠は飲酒量によって異なりますが、多く飲むと抑制されます。
A日常的にアルコールを飲んでいる場合
入眠しやすさは、同じアルコール飲酒量ではすぐに得られなくなります。同じような入眠促進効果をアルコールに期待する場合、飲む量を増加させなければなりません。一方、飲酒が習慣になっている場合、急に飲酒を中断しますと、離脱性不眠といわれる一過性の強い不眠が出現します。その強さは毎日飲んでいたアルコールの量に比例します。また、この時の睡眠は、REM睡眠が反跳的に増加し悪夢をみることが多いと言われています。そんな事情のため、不眠や悪夢を避けるために飲酒というパターンを繰り返すとアルコール依存症です。
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