やまなし

 二 十二月

かにの子供らはもうよほど大きくなり、底の景色も夏から秋の間にすっかり変わりました。  白いやわらかな丸石も転がってき、小さなきりの形の水晶のつぶや金雲母のかけらも、流れてきて止まりました。

 その冷たい水の底まで、ラムネのびんの月光がいっぱいにすき通り、天井では、波が青白い火を燃やしたり消したりしているよう。辺りはしんとして、ただ、いかにも遠くからというように、その波の音がひびいてくるだけです。

 かにの子供らは、あんまり月が明るく水がきれいなので、ねむらないで外に出て、しばらくだまってあわをはいて天井の方を見ていました。

「やっぱり、ぼくのあわは大きいね。」

「兄さん、わざと大きくはいてるんだい。ぼくだって、わざとならもっと大きくはけるよ。」

「はいてごらん。おや、たったそれきりだろう。いいかい、兄さんがはくから見ておいで。そら、ね、大 きいだろう。」

「大きかないや、おんなじだい。」

「近くだから、自分のが大きく見えるんだよ。そんならいっしょにはいてみよう。いいかい、そら。」

「やっぱりぼくのほう、大きいよ。」

「本当かい。じゃ、も一つはくよ。」

「だめだい、そんなにのび上がっては。」

 

絵を工夫したところ

月光の所と、白い丸石を柔らかそうにした所。

作者の思い

金雲母やラムネのびんの月光など、いろいろ想像しやすいようにした。