「厄介な古傷」電子書籍版の解説

厄介な古傷  本編 (Old Wounds Always Make Trouble) は《ミステリマガジン》2019年9月号に掲載されたニューヨークの私立探偵ジョー・ヴェニスもの中編です。《ミステリマガジン》にヴェニスが最後に登場したのが、1994年11月臨時増刊号掲載の「孤独な逃亡者」ですから、なんと24年ぶりの“里帰り”ということになります。

 雑誌掲載時には、小さい活字で3段組が約60頁続くというかなり読みづらい割り付けだったので、読む気を失ったり、読み続けられなかったりする方が多かったそうです。それで、フォント・サイズを調整できる電子書籍化したかったのです。

 それに、ヴェニスものが電子書籍になるのもこれが初めてです。ヴェニスもの作品集はこれまでに『ヴェニスを見て死ね』(早川書房、1994年刊;単行本未収録の2編を加えて、2011年に創元推理文庫より『ヴェニスを見て死ね』と『予期せぬ来訪者』の2分冊で再刊)と『残酷なチョコレート』(東京創元社、2013年刊)が刊行されていますが、2冊とも絶版です。

 本編にはそれまでのヴェニスものに登場した人物が多く顔を出していますので、絶版の活字版作品集をネットで購入していただければ幸いです。本編にはもう1人のシリーズ・キャラクターである女性探偵フィリス・マーリーも特別出演して、マーリーとヴェニスの交友関係が明らかになります。冒頭部はある有名作品にそっくりですが、もちろん故意です。

 英語タイトルは推敲を重ねるたびに変わり、《ミステリマガジン》に提出したときも英語タイトルをつけたのですが、幸か不幸か、掲載時には英語タイトルは記されませんでした。電子書籍版の表紙を作成していただく段階になって、最終的な英語タイトルを考えているときに、ピッと頭に閃いたのです。でも、客観的に完璧なタイトルというものはないので、まだ迷っているところです。(著者)

(c) 1919, 2020 by Jiro Kimura
http://www.amazon.co.jp/dp/B08DH8Z8XY
価格は500円です。
(2020年07月23日)



日本版ホームページへ

国際版ホームページへ