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「 愛を下さい 」





ただ一つ

僕に、愛を下さい

何を見ても、何を聞いても

何かに触れても、触れられなくても

決して終わったり、尽きたりすることのない

大きな、大きな

豊かな愛を

負けることない

元気な愛を



こうやって

絶望に打ちひしがれながら

どうしようもなく、涙を流しながら

拳が砕けてもなお、世界中を叩き続けながら

もう何も取り戻さなくていい

もう何も振り向かなくていい

ただ一つ

広々と包み込む

確かな愛を僕に下さい



曇り空に

菜の花が影を亡くして

戸惑っています

小川の清流が光を亡くして

夜の方へ逃げていきます

僕の行方を知るものは

いつの間にか絶えて

ただ一つのものを受け入れるために

僕はこの命を空っぽにしたのです



イルカの合図で

メテオ・レインが降り注ぐ島

僕は地球が生えている岩盤を見据えながら

何も知らなかった未来へ帰っていきます

立ちふさがる壁に穴を穿つためだけの

純粋な水の一滴に、回帰するのです

子供の頃、確かに空飛ぶ鯨を見ました

あれもまた、連続して落ちる粒子の一つ

何も悩まずに、ただ向こう側を見たかった



心の世界よりも

現実は淡く、何でもなくて

すぐに剥がれ落ちて、寒くて、痛くて

何か足りない僕が言い訳ばかりして

生きているのに言い訳ばかりして

もう

おしまいなのです

どれほどの意味や価値にも

温もりにさえ、反応できないのです



どうか僕に、愛を下さい

誰にも嘘をつかなくてすむように

強くて果てない、愛を下さい

僕が一筋となって流れていけるように

どんな大きな壁にも負けない

永遠の点滴の一粒となれるように

何もかもを亡くした僕を

ただ一つ

愛だけで満たして下さい


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