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「Drums」

Poem by kobashiri



病院の表玄関

出迎える人は誰もいない

あなたは“こんなもんです”と笑う



声の人が

声を亡くして旅に出る

せみしぐれが襲ってくる



文字ってやつは

声にはかなわないです

気持ちが伝わらんのです



そう言おうとしたあなたの唇は

涙に汚れてゆがんでいるだけ

吐き出されるのは気流だけ



それからあなたは胸を張って見せる

命のど真ん中を指さしながら

歯を食いしばって笑う



まだ残っています

この体には音が残っているんです

だから歌い続けようと思います



体全部を音にして

心全部を歌に変えて

あなたは命を振り絞る



あなたが放った心臓の音が

僕の鼓動を痛いほどに打ち上げる

船底のような重低音の共鳴波が



あなたの旅の後ろ姿は

空しいほどに凡庸だけれど

それは声よりも僕に響きわたる



ずっとずっと探し続けてた

心に力満ちるDrums

歌をうたうときにも



生きてる証を探し続けてた

魂の風が吹くDrums

息をするときでさえ



どこかのステージで

CDなんかじゃわからない

誰かの絶唱を聴いている



どこかの街角で

画面なんかじゃ伝わらない

誰かの情熱を感じている



僕は大地に生えている

声を亡くした後ろ姿から

突き上げてくるDrums



僕は大空を吹いている

見送る僕が鳴り止まない

あなたに向かうDrums



叫ぼうとして叫べず

ただ明日の方へ

僕も行くよ、と頭を下げた










comment


「Drums」


私は歌が好きです。

詞とメロディーと、それから“声”が、

三位一体となって響きわたるからです。

お腹の底から声が出るときの快感は、

何ものにも代え難い喜びなんですよね・・・。




Poem & comment by Kobashiri


EMAIL:kobashi@nsknet.or.jp
http://hideo.com/kobashi/



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