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「パンドラ1998」

Poem by kobashiri



今もたくさんの人々が

この悲しみを知ることもなく

日常を謳歌しているに違いないのだ

私はこの悲しみを知って

感情の嵐とともに

人生の確かさを得ている

果たしてこの世の悲しみを知らないことは

私よりも幸せだといえるのだろうか



一生懸命に生きすぎると

この街はちょっとやかましい

神経が音を立てて千切れるくらい

人も人じゃないものもうるさい



おにぎりが食べたい

弁当箱で半日寝かされて

雑多な汁が染み込んだ

乱暴で優しい

あのおにぎりが食べたい



並べ立てられた記号通りに動くのは

機械だけだと知って欲しい

世界も社会も人も

マニュアルでは動かない

マニュアルには残せないものを

人は人の間に蓄積しながら継いでいる

遺伝子だとか文字だとか

そういう乾燥した骨組みではなく

もっと生々しい言葉を使って

僕は人間を練習し続ける

そして疲れ果てても

不可能主義者にはなるまい

相手の言葉にじっと耳を傾けてる

その忍耐強い仕草のことを人間と呼ぼう



三日月の刃先に

舌を這わせて

滴る血脈は

温もりの縮み上がるような

鋼断つ透光は憎しみを湛え

その真実の熱に心浸すとき

世界中の全ての傷を受けたあなたは

再び愛し始める






comment


「パンドラ1998」


この詩はオムニバスです。だから統一性というか、ストーリー的な流れには乏し

いかもしれません。今の職場って、パンドラの箱が開いたみたいに、いろんな人

がいろんな想いを叫んで飛び出してきます(どんな職場だ?)。たいてい問題を

抱えていて悲観的なのですが、それはまるで社会の縮図みたいに思えます。その

ひとつひとつにじっと耳を傾けるのは、とても疲れます。真剣に聞きながら同化

しないでいることって、難しいですよね・・・(同化してしまうと、大変なこと

になります(汗))。パンドラの箱に最後に残されたものは何だったか、そんな

ことを考えながら、修行中の身分です(笑)。




Poem & comment by Kobashiri


EMAIL:kobashi@nsknet.or.jp
http://hideo.com/kobashi/



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