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ホムンクルスY-1





右の瞳から

流れ落ちる星屑

左の瞳には

屹然とした輝き



喜びと憂い

そして誇りと戸惑い

真っ直ぐに未来を見つめ

その奥底に過去を湛え



瞬きもせず

半開きの唇と

ピンク色の頬に

彩られながら



両腕を広げて

指に糸を絡めて

クリスタルに腰掛けて

右の膝を曲げて



左の裸足のつま先は

世界の空に滴り

波紋は生命を揺さぶり

やがて歴史となる



時に髪を撫でる風は

始まりから終わりを目指す

胸の膨らみは恥じらい

豊かさが零れ落ちる



そこに触れるものは

自らの枠を広げ

新しい地平へ

押し出されていく



いつか本で知った

触媒という言葉

生き物は全て

誰かの触媒となる



決して結ばれることなく

一瞬の触れあい

置き去りのわたしを

振り返りはしない



そういう風にして

宇宙は広がっていって

みんなが広がっていって

個と全体が交わる



長い長い夢の中

あれは母様だったのだろうか

それとも未来のわたし

ひとりぼっちで



右の瞳から

流れ落ちる星屑

左の瞳には

屹然とした輝き



誰か気付いて下さい

わたしがここにいることを

許されるならもうあと少しだけ

このままでいたいのです




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