今までのお話。(ただし、詩・詩小説については、要約はしてありません。)
 

序章

◇第1章「エスタミス」
 ()()()()()()()()()(10)(11 )(12)(13
 

◇第2章「アカシック・ロード」
 

◇第3章「森」
 ()()( )()()( )()()( )(10
 

◇第4章「水域」
 

◇最終章
 ()-あるいは第一主題へのひとつの解釈-
 

◇Interlude(間奏曲)"Searchin' for my LOVE"
 ()()(
 




 

第1章「エスタミス」(1)

エミィ・ウィンタースは、第7ムーンベース出身の17才。エクセレント級のテレパスでもある
彼女は、両親が中心となって推進された「ノア計画」に参加。アストロノーツ養成学校「ライト
スタッフ」ではオチコボレだったが、幼なじみで限りなく恋人に近い存在のアリム・レイや、彼
の両親、更に世界テレパス連盟の会長であるペドリュー・ジュニアなどに励まされ、何とか地球
人類初の恒星間連絡船「ノア」に乗り組むことができた。そして、夢半ばに急逝した両親に代わ
り、αケンタウリの小惑星都市メレウスへと旅立った。
しかし、「ノア」はディメンション・ジャンプのトラブルを起こし、エミィ一人が生き残る。ア
リムの両親もこの事故で亡くなり、頼みのアリムは同型艦「ノア2」に乗り組んでメレウスを目
指していた。エミィは管理システム“ジーンズ”の助けを借りて、一番近くにあった未知の惑星
を目指す。生き延びて、アリムが迎えに来てくれるのを待つために・・・。
一方、惑星上では小国ファレシアの青年国王シン・ファレシアが、星(=シャトル)が落ちたこ
とを知らせるため、師であるモス・アレス老を訪ねていた。老は全てを見通して、国王に星を隠
すよう指示する。
ここは、惑星ヴェスタリオミア。夜の闇に赤く輝く大石柱と、三つの月に見守られた大地。シャ
トルの故障のため惑星の地表に激突するかに思われたエミィは、心に響く暖かい「声」と惑星そ
のものに受け止められて、今は幸せな眠りの中にいた・・・。




 

第1章「エスタミス」(2)

エミィの「星」が落ちたことは、ファレシア王国の隠蔽工作にも関わらず、惑星ヴェスタリオミ
ア全体に密かに知れ渡っていった。その情報は、侍女のサーマ・アンティルマを通じて、古代ア
ルティメア王朝の王族の末裔、リーナ・アルティメアにも伝えられた。彼女は惑星全体でも数名
しかその存在が公にされていない、「アルティメア人」であり、性転換能力やテレポート能力な
ど、超絶的な力を受け継いでいた。しかし彼女はその力を、恋人のエルメ・アレクに逢うためだ
けに使っては、惑星中の空間を歪ませてしまったり、楽しいことを探してはあちこち飛び回って
いるお転婆娘である。今回もエミィが、旧知の間柄であるモス・アレス老の家にかくまわれたと
知ると、エミィに逢うために飛び出していくのだった。抜けるような青空に「星風」が駆け抜け
ていく・・・。
星が降り、風が吹いた。時は、ヴェスタリオミア新歴43年2月。リーナ・アルティメアの運命
も、この星の歴史も、今ゆっくりと、しかし確実に回転し始めていた。




 

第1章「エスタミス」(3)

エミィは幸せな夢の中で、やがて両親が亡くなったと知らされた日のことを思い出していた。
それは哀しい思い出だったけれど、アリムとの心の絆を確認した記憶でもあった。
しかし、夢から覚めようとしたとき、突然、無数の波のような光が押し寄せてきて、エミィの
心を蹂躙する。それは、テレパシー能力の遮蔽装置であるテレパスカードが壊れたために、惑
星全体の生命の「想い」が、彼女の心に流れ込んできたものだった。
モス・アレス老の優しい声に導かれて落ち着きを取り戻したエミィの心には、父と共に地球の
最高峰から見た壮大なる光景の記憶が呼び起こされる。そしていつしか、彼女の周囲には銀河
のような無数の輝きが取り巻いていて、そのうちのいくつかが、彼女のそばに来ては挨拶して
いくのだった。
その中にはリーナの光もあったが、彼女の光は惑星全体よりも巨大なものであり、エミィは驚
きのあまり身構えてしまう。エミィに受け入れられなかったことで哀しむリーナと、リーナを
傷つけてしまったことを後悔するエミィ。いつかきっと、リーナの大きな光だって受け止めて
あげるんだ・・・リーナの光の中心部に底知れない影を感じながらも、エミィはそう決意する
のだった。




 

第1章「エスタミス」(4)

心の世界から目覚めてみると、エミィの周りにはモス・アレス老やリーナを含めて7人の男
女が集まっていた。彼らヴェスタリオミア人類は、外見的には地球型の生命体であったが、
指が4本であったり、翼や鰓(えら)を持っていたりと、やはり地球人類には見られないよ
うな特徴を持っていた。集まったメンバーはというと・・・(設定ノートより抜粋)。

モス・アレス老:ティミア村在住の、唯一公認されたアルティメア人。神話レアナレスを完
全に解読しており、人々からは遺跡の守護職アルティメンと並ぶ尊敬を集める。シン・ファ
レシアの師でもある。

シン・ファレシア:ファレシア王国の青年国王。王国を文化大国として確立した人。妻のセ
シャルは、名宰相ヘスタロト・ラスを生んだ名門ラス家の出身であり、現在の王国はラス家
の後ろ立てなくしては成り立たないと言われているのだが・・・。

リーナ・アルティメア:古代アルティメア王家の末裔(まつえい)。アルティメア人として
の超絶的な能力を受け継いでおり、性転換能力や空間転移能力などを使いこなす。男性体の
ときの名は、アーク・レクというらしい・・・。エルメ・アレクという恋人がいる。

ロレッタ・アンティルマ:サーマ・アンティルマの妹で、アルティメア王家の侍従長の末裔
にあたる。一応アルティメア人なのだが、能力は完全に廃絶しているらしい・・・。リーナ
とは同い年で、一緒に行動することが多い。

イーダ・ホルン:浮遊島群メアラスに住む、古代王朝時代の遺跡の守護職、アルティメンの
ひとり。神技「風」を使う女性。メアラスの中でも女性だけが住む島「ノメスン」の代表
でもある。普段はおしとやかな女性らしいが・・・。

クーア・ホルン:同じくアルティメンのひとり。イーダの弟。神技「雷」を使う。ステネリ
ル島に住んでいる。子供っぽい性格だが、正義感が強く、熱血漢な一面も・・・。姉には頭
が上がらない。

シルト・ペイサ:同じくアルティメンのひとり。双子の妹ペーナもアルティメンである。神
技「火炎」を使う。古代兵器の残骸が多く見つかるアレシシア島に住んでいる。真っ赤な髪
を短く刈り上げている、陽気で紳士なお兄ちゃんである。




 

第1章「エスタミス」(5)

リーナたちが帰った後、モス・アレス老の家の一室にひとり残されたエミィは、ふとしたこ
とをきっかけに、「ノア」の副医長だったメルリア・パロット大佐のことなど、今は亡きク
ルー一人一人のことを思い出す。脳裏に鮮やかに浮かんでくる、「ノア」の最後のシーン。
永遠の愛を貫いたメルリアの最後の姿を通して、エミィはアリム・レイのことを想う。アリ
ムに逢いたいっ!その想いを叶えるべく、エミィはエスタミス(=ファレシア王国の首都)
郊外の森に不時着しているらしい脱出シャトルへ向かうため、走り出した・・・。




 

第1章「エスタミス」(6)

森に向かって走るエミィのかたわらには、ヴェスタリオミア特有の動植物や小鳥たちが、そ
れぞれの生活を営んでいた。エミィは走りながら、気持ちがスッキリしていくのを感じ、空
気の中に「何か」が溶け込んでいると考える。
森の入り口まで来たエミィだったが、ホログラムではない、本物の森の持つ雰囲気に恐怖感
すら覚えるのだった。木の根につまづいて転んだエミィに、声をかける人物がいた。それは
何と、モス・アレス老であった。アルティメア人である老は、普段はただの老人だったが、
いざとなればエミィよりも速く走ることもできる。(エミィいわく)スーパーおじいちゃん
なのである。
老はその背にエミィを背負って走り出す。そして、背中のエミィに、森もまた自分たちと同
じ「星」なのであって、むやみに怖がったり疑ったりしてはいけない、と教えるのだった。




 

第1章「エスタミス」(7)

川の流れが海を目指すように、よどみなく目的地へと走っていくモス・アレス老。その背中
に乗っているエミィは、自分のシャトルが落ちたために火事が起こり、森の一部が燃えてし
まっていることに、深い罪悪感を覚えて涙ぐむ。そんなエミィに、森も少しずつ心を開くの
だった。
シャトルのところにたどり着いてみると、不思議なことに、シャトルはまるでずうっと以前
からそこにあったかのように、周りの風景に溶け込んでいるように見えた。星が受け止めて
くれたのだ、とモス・アレス老は言う。
シャトルは、ファレシア王家の近衛騎士団であるリンベル騎士団によって警護されていた。
騎士団のリーダー、リル・ヴィトリカイセンとの語らいの中で、エミィは彼ら騎士団が実践
しているという非暴力主義に反発を覚える。地球圏での時代背景など、エミィの心にあった
偏見による誤解だったのだが・・・。
生き物が滞りなく流れるために、自分を燃やしている森。シャトルの事故という、偶発的な
アクシデントさえも包み込んでしまう、大きな大きな生命たちの鼓動を、エミィは感じずに
はいられなかった。
気を取り直して、さっそくシャトルのハッチに手をかけるエミィ。そんなエミィの目の前に
突然、ハッチの中から黒いカタマリがせり出してきて・・・!?




 

第1章「エスタミス」(8)

シャトルのハッチから出てきたのは、エスタミス大学の天文学部教授、サンドレイ・ランテ
ルスであった。彼は国王からの委託を受けて(?)、シャトルの内部調査をしていたのであ
る。彼はまた、モス・アレス老とは喧嘩友達であった。教授はエミィのことを「星の嬢ちゃ
ん」と呼ぶ。
しばらく呆気にとられていたエミィは、ふと我に返ると、シャトルの内部に入って管理シス
テム「ジーンズ」を起動させる。エミィにしてみれば、「ジーンズ」はたったふたりきりの
生き残りであった。
何とか、超空間通信機を作動させて、アリムの乗る「ノア2」へ救難信号を送ろうとするエ
ミィ。しかし動力系の損傷のため、送信は1回きり、それも、「ジーンズ」は2度と起動
しなくなるという条件付きだった。「ジーンズ」との永遠の別れ、たった1度だけのチャン
ス・・・。エミィは迷いながらも、「信じることが大切」というモス・アレス老の言葉に勇
気づけられ、送信ボタンを押した。

届け、心・・・!!




 

第1章「エスタミス」(9)

エスタミス市のランテルス教授の家に泊まり込んで、惑星ヴェスタリオミアのことについ
て勉強するエミィ。教授の長女のレジアが、教育係であった。時間や暦のこと、種族構成
のこと、成長や寿命のこと・・・。地球人類とは「生きる時間」が異なっているこの星で
は、エミィは非常に「短命な」存在ということになってしまう。お互いにとってこの違い
は、大きな衝撃であった。レジアにしてみれば、自分たちよりはるかに早く死んでしまう
であろうエミィに、少しでも多くのことを教えようと、必死であった。
けれど、そんなレジアの想いに気づきながらも、エミィはレジアや彼女の妹のカティナと
大石柱見学に行くことに一生懸命で、レジアは切ない想いをする。
そんなレジアに、エミィはリーナのマネをして、左頬にキスをした。それは古代王家の人
間だけが行う挨拶であったため、レジアは大いに驚く。

注:この回では、ヴェスタリオミア物語の背景となる人種構成や暦などが語られています
ので、今後のお話をいっそう理解していただくために、是非お読み下さることを、お願い
いたします。




 

第1章「エスタミス」(10)

大石柱見学のために、エスタミス市内を歩くエミィたち。エミィは、教授の妻のシシアが
準備してくれた服や帽子や靴のおかげで、異星人であることに気づかれずに出歩くことが
できた。
エスタミス市は、3層構造を持つ大城郭都市であり、市の内部は土との調和がはかられた
造りとなっており、人々はイキイキと暮らしていた。彼らは自分たちを「五十万の人の城
壁」と呼び、エスタミス市は「文化的防衛線」機能を備えるに至っていた。実際、ヴェス
タリオミア新暦25年に起きたノーリスの戦いにおいて、その機能の有効性が証明され、
エスタミス市が守られたばかりか、戦争を終結させる原動力にさえなったのである。(し
かし、そのことが後になって、エスタミス市を哀しい運命へと導くことになってしまうの
だが・・・。)
エミィたちは、第2層の入り口の「草門」を通り、第3層の入り口の「朱門」を目指して
いく。オスナム川に架かるセシャル橋まで来たとき、何ものかにつけられていることに気
づくレジアとエミィ。レジアはカティナにエミィを背負わせると、全速力で走り出したの
だった。




 

第1章「エスタミス」(11)

追っ手を振りきって、「朱門」にたどり着いたエミィたち。そこでは、リンベル騎士団が
シン・ファレシアのメッセージを携えて、エミィたちを待っていた。
そして、大石柱との出会い・・・。妖精の舞う大石柱の根元の壁に頬を当てて、天空へと
滴り落ちていく「生命の水」の音に耳を澄ませるエミィ。惑星ヴェスタリオミアで出会っ
たあらゆるものたちが、何かひとつにつながっていくような、そんなイメージをエミィは
おぼろげに抱くようになっていった。
そこに突然、怪人物が現れる。国際放送協会の花形記者、エノビ・ルースキンである。そ
のかたわらには、助手のセル・ニルビニマが忍んでいた。彼の登場によって、ガルシア帝
国の陰謀がより現実的にエミィたちに突きつけられる。
それからルースキンは、「案外ホントの敵は、自分の心の一番近いところにいるのかもし
れないよ?」という忠告を残して、エミィたちの前から姿を消したのだった。




 

第1章「エスタミス」(12)

ランテルス教授の自宅の屋上から、「ノア」の砕け散った辺りを見つめてテレパシーを飛ば
す練習をするエミィ。キウォユーヌをほおばりながら、エノビ・ルースキンとの出会いを思
い起こす。情報箱からは、「ガルシア帝国がガルシア大陸の北側の水域際に、軍隊を集結し
始めている」という、ショッキングなニュースが流れた。時代は戦乱の影を増し、エミィと
ランテルス一家との穏やかな日々にも終わりが近づいていた。ランテルス教授は、ルースキ
ンの行動がエミィに危険を知らせるためのものだったと推測し、エスタミスからしばらく離
れるようエミィを説得する。レジアやカティナにも促され、エミィはモス・アレス老の家で
状況を見守ることにした。
出発の日の朝、レジアとカティナに見送られ、それからランテルス教授と共に森の入り口ま
で来たエミィは、エスタミス市を振り返って、もう二度とこの街を見ることはないかもしれ
ない、そんな不安を覚えるのだった。




 

第1章「エスタミス」(13)

モス・アレス老の家に戻り、エスタミスとランテルス一家の行く末を思って、不安な毎日を
送るエミィ。情報箱からは、エスタミス市に迫るガルシア帝国軍のニュースが流されていた
が、モス・アレス老の家に住み込みで働くニウ・ニルビニマ(エノビ・ルースキンの助手の
セルの妹)によれば、それはガルシア寄りの経営陣に代わった国際放送協会による情報操作
の一部だった。
ランテルス一家も教授の故郷ロステムスに避難することとなり、なんとか戦争を回避する方
法を探そうとして、モス・アレス老を訪ねてくる人の数も増え、緊迫の度合いは日増しに強
まっていった。
やがて、士気を鼓舞するような歌がエスタミス市に流れるようになり、市民たちは「人の城
壁」戦術を採ってガルシア軍を迎え撃つ準備を始めた。情報箱からはまだ、エスタミスの遙
か南を行軍するガルシア軍の様子が流されていたが、突如として大地を揺るがすような轟音
が、エスタミスの方向から響きわたったのだった。
それからしばらくして、特殊な周波数を使ったルースキンの放送が情報箱から流れ出す。そ
こには、信じられないような凄惨な光景が映し出されていた。




 

最終章(0)-あるいは第一主題へのひとつの解釈

後日、掲載予定。




 

Interlude(間奏曲)"Searchin' for my LOVE"(1)
 

後日、掲載予定。




 

Interlude(間奏曲)"Searchin' for my LOVE"(2)
 

後日、掲載予定。




 

Interlude(間奏曲)"Searchin' for my LOVE"(3)

後日、掲載予定。